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第二百九十三話 共通の目的

なんとか更新!


・・・衝撃的、というほどの話でもなかった。

それは別に驚くような展開ではなかったと言える。

ただ、あまりにも意表を突かれた言葉というだけだった。


恐らくカラドックにしてもそうだろうし、

当事者である麻衣さんですら想定していなかったのではないだろうか?


クィーンが麻衣さんの母親と知り合い・・・というか仲間!?

であるならば。


 「え!? あ、あの、そ、それは・・・」

オレが麻衣さんの立場だったなら、何と答えたろうか?


 「麻衣様は、転移してこちらの世界に参られたのですよね?

 一体それはどんな目的で?

 最初からこの私を討伐されるおつもりでしたの?」


う・・・確かカラドックは勇者を救えというミッションが与えられたそうだが、

麻衣さんには何もないという話だ。

これは話がどこへ向かうことになるのだろうか?


 「え、いえ、特にそれは・・・」

 「であるならば、この世界の冒険者パーティーに肩入れする義務は何もないのでは?

 ・・・ましてや同じ転移者でもカラドック様は私たちの敵ではございませんか?」


え・・・それは?

ど、どういうことだ?


 「待ってくれ!

 今の話は何だ!?

 どんな話の流れで麻衣さんが私たちの敵だということになるんだ!?」


オレの疑問をカラドックが聞いてくれた。

今現在は、オレの疑問とカラドックのそれが一致しているからいいが、

オレだけが気付いた疑問を問いかけるには、オレの出自がバレないように細心の注意を払わねばならないようだ。

・・・それだけの覚悟が必要だな。


とりあえず今はクィーンの話の行方だ。

麻衣さんが普通の人間でなく、妖魔というカテゴリーに属する生き物だとは聞いたばかりだ。

だが、だからと言ってオレたちの敵になるというのは短絡的過ぎる。

そしてたった今、オレとカラドックで、「種族」が違うというだけではなんの障害にもならないと断言したばかりなのに。


麻衣さんの返答はいかに?


・・・見れば麻衣さんは不審者のように視線をあちこちに飛ばせて狼狽えている・・・。

状況の整理が出来ていないのかもしれない。

オレたちはどうすればいい?


もちろん、麻衣さんにクィーン側に回ってしまっては困る。

彼女の能力の点でももちろんだが、

この短い旅の中で、すでに彼女の存在は、オレたちにとって必要不可欠なものだ。


であるならば、オレたちは麻衣さんの返答を待たずに彼女の説得に回るべきだったのだろうが、

先にクィーンに追い打ちを与えてしまっていた。


 「麻衣様?

 麻衣様がどこまでご存知かはわかりませんが、そこのカラドック様は、

 あなた様や百合子様の主の敵・・・天使の息子さんですよ?

 私はその前に死んでしまったようですが、天使によってあの方の作り上げた国は滅んでしまった模様です。

 そうであるなら、麻衣様がカラドック様に協力する謂れはこれっぽっちもないかと?」


・・・なんだと?

今の言い回しだと、クィーンのいう「あの方」というのはアスラ王のことか?

アスラ王が麻衣さんやその母親の主!?


当然カラドックもそこに気付くと。

 「麻衣さん、今の話は本当かい!?

 アスラ王が麻衣さんの・・・!?」


そうか、よく考えてみたら、今まで麻衣さんと情報共有していたのは、

麻衣さんの知人や、麻衣さんの特殊能力による夢の話ばかり・・・。

麻衣さん自身の話は、全くと言っていいほど聞いていなかった。


先の妖魔リーリトという種族の話と同様に・・・

これは麻衣さん自身が敢えて口に出さないようにしていたわけか。


ようやく麻衣さんが必死に反論する。

・・・反論、なのだろうか?

 「あ、あの・・・あたしは、そのアスラ王、という人を知りませんっ!

 だ、だから、カラドックさんがあたし達の敵かどうかなんて・・・?」


ムカつくくらい楽しそうに笑い声をあげるクィーン。

 「ウフフフフフッ!

 そこはこのクィーンが保証しますわ!

 皆様のおかげで、たった今、二つの記憶の擦り合わせができたところですもの!

 ・・・同じ人間、同じ人物!

 年齢は開いていましたけども、

 私の直接の前世で、天使と対立し、スーサという強大な軍事王国を作り上げたアスラ王と、

 あなたのお母様である百合子さんが仕えようとしていた日本人男性は同一人物ですわ!!」


そこはオレも頷かざるを得ない。

恐らくあの男のことだろう。


 「ほ、本当に・・・その、アスラ王という人は・・・

 天使に・・・カラドックさんのお父さんに滅ぼされたって言うんですか・・・?」


麻衣さんはその疑問をクィーンではなく、カラドックに向ける。

ここで惚ける、或いは嘘をつくというのも一つの手ではあるが・・・

巫女職である麻衣さんにそんな手が通じるかどうかも定かでないし、

あまりにもそれは誠意のない態度だろう。

ここで、逃げるカラドックでもないよな・・・。


 「事実だ・・・、

 私達ウィグル王国が・・・スーサを滅ぼした・・・。」



そう、言うしかないよな。


だが麻衣さんは首をかしげる。

 「あ、あの、いえ、その、国の方でなくて、

 天使は・・・その少年は、本当に・・・あの人を・・・殺したんですか?

 だ、誰かその死体を見たんですか・・・?」



ん?

それは・・・


あの時、そう言えば、シリスは何て言った?

オレが生き延びて、20年間、生き地獄を味わっていた時もアスラ王の消息については、何の情報も入っていなかった。

なんだった?


確か・・・


 「い、いや、アスラ王は行方不明だ・・・。

 父上も、もはや二度と地上に姿を現すことはないだろうと、

 いかようにも解釈できる言葉を使っていたが・・・。」


そうだ、そうだった。

それを聞いて、結局どうなったんだよと突っ込みたい気持ちはあったが、

あの時の空気は、もう完全に、スーサ? 何それおいしいの? ってぐらい、完全勝利に浮かれていたからな。

アイツの言葉が全てにおいて優先するウィグルにおいては、誰もそれ以上、突っ込むことは出来なかったんだ。


そこへ更なるクィーンの哄笑。

 「ウッフッフッフッフフ、

 なぁんだぁ、そうでしたのぉ?

 考えてみたらあの方が殺されるはずもありませんものねぇ?

 麻衣様、

 もう一つ、二つの世界の知識を持つ私が真実をお教えしますわぁ?

 少なくとも、カラドック様の世界で、私が死を迎えるまでの間、

 あのお方は人間のままでしたわ。

 お年は召していましたけども。

 けれど、私が百合子さんと知り合った世界では、

 ちょうどあのお方が完全復活されるところでしたのよ?

 ・・・そして、これはこの場で確認したい事ですけども、

 カラドック様、

 あなたは天使シリスから、アスラ王の本当の正体をお聞きになってらっしゃるのかしら?」


アスラ王の本当の正体?

なんだ、それは!?


 「クィーン・・・あなたは何を言っているのだ?

 完全復活とは何の意味だ!?」


 「ウフフフ、やっぱり何も聞いてらっしゃらないのですね?

 本当に面白いことになってきましたわ?」


 「お二人とも待ってください!!」

麻衣さんが意を決したように大声を上げる。


 「クィーンさん・・・!

 あなたが本当にあの人に仕えているのなら・・・

 これ以上、情報をカラドックさんに与えてはならない筈です!!

 カラドックさんは全てが終わったら、元の世界に戻る可能性が高いんですよ!?」


 「麻衣さん!?」

カラドックが狼狽える。


今の麻衣さんの発言は完全にアスラ王側のセリフだからだ。

そして当然、逆の立場のクィーンはそれに同意してしまう。

 「あらあら?

 それはいけませんですわ!

 ごめんなさい、気を付けますわね?

 でも・・・ここでカラドック様を始末してしまえば・・・

 その心配がなくなるとも言えますわ?」


ヤバい、

何がヤバいって、マルゴット女王とヨルが殺意を高め始めた。

麻衣さんも今のセリフは短慮すぎる!


 「そして、カラドックさんも誤解しないでください!」


む?

 「ま、麻衣さん、誤解とは!?」


 「あ、ご、誤解っていうか、

 あたしも天使の目論見とか、ハッキリ言って雲の上の話なんで、根拠のある事は何もいえないし、

 カラドックさんの世界の、アスラ王って人も、シリスって人も直接会った事は有りません、

 で、でも、これだけは言えます!!」



麻衣さんは言いたいことははっきりしているようだが、

それについてどんなセリフを使えばいいのか、迷いまくっているようだ。

・・・麻衣さん、自分で自分のことをそこら辺の女子校生と変わらないと言ってたからな、

難しい言葉遣いも出来ないのだろう。


 「いま、話に上がってる二人の人物・・・

 彼らには共通の目的・・・?

 いえ、最終目的でなく、その目的に至るまでの一つの手段ていうか・・・

 互いに認め合ってるものがあります!!」


ん?

なんだ、それは!?

少なくとも今のおれには全く想像つかないぞ?

カラドックも・・・そしてクィーンもか!?


 「・・・それは、少年・・・

 えーと、そっちの世界で言う天使シリスに・・・人間の『心』を学ばせることです!!」



なん・・・だって?

 

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