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第二百九十話 語られない物語 一つの物語のエピローグ2

ぶっくま、ありがとうございます!


今回も画像つきです。


 「こ、ここはどこだ!!

 アイツはどうなったんだよ!!

 あ、あのジジィ・・・ルードヴィッヒは!?

 ていうか、どうしてあたしら裸なんだよ!!

 それよりさっさとこれをほどけ!!

 あたしらの服を返せ!!」

ミィナさんが矢継ぎ早に、というかマシンガンのごとく質問を浴びせる。


 「まぁまぁ、質問や要求がいっぱいですのね?

 申し訳ありません、

 私たちは与えられた命令をこなすだけで、何の権限もございませんの。

 ・・・でも答えられる質問にはお答えしますわ?

 ここはシャンバラ宮殿の一角で祭事を執り行うお部屋と聞いておりますわ。」


ここはオレも質問させてもらおう。

 「戦いはどうなった・・・。

 そして君らは何者だ・・・。」


透き通るような瞳の少女はオレの声に気付くと、

まるで久しぶりの知り合いでも見つけたかのように嬉しそうな笑顔を見せる。

 「あら、アーサー様、

 戦いは無事に終わったようですよ?

 なお、黒十字軍側はルードヴィッヒ様を除いて全滅・・・

 私たちの直接の雇い主であるカーリー様も亡くなられたようです。

 予知能力を持っていても、ご自分の死は視えなかったんでしょうか?

 本来、ここで儀式を行うのは、『黒の巫女』カーリー様のご予定だったのですが、

 あの方がリタイアしてしまったので、

 急遽、私達四人にその出番が回って来たということでございます。」


・・・意外と口が回るんだな・・・。

それにしてもルードヴィッヒ以外全滅って、それは無事といっていいのか?

いや、それは多少なりとも気を利かしたつもりで、オレたちにしてみれば、ということかもしれないな。


 「ちょっと!

 あたしの質問にも答えろよ!!」


そりゃ、ミィナさんも不満だろう。

けど、彼女の先程の質問はオレも聞きたかったことでもある。

 「アイツはどうなった・・・

 殺されたと思ったが・・・生きているのか?」


 「ええ、もちろん、生きておいでですよ?」


それは良かった・・・と言っていいのだろうか。

アイツとは一度殺し合いまでした仲だが、もちろんそこに個人的な恨みはない。

仲間は大勢殺されたが、先に戦いをしかけたのはこっちだ。

オレが逆の立場ならアイツと同じ行動を取ったろう。

それに今や家族と呼べる者も姉一人だけとなったオレには、アイツとシンパシーを感じるものもある。


けれど・・・先程オレたちが意識を失う前に見たもの・・・

あれが何だったのか・・・

それが分からないうちに安心はできない。


 「そ、そうか、生きているんだな!!

 いまアイツはどこにいるんだ!?」


オレの質問をつなぐようにミィナさんが問いかける。

この戦場に着くまで、一年ほど彼女はアイツと二人で生き死にの旅を続けてきたそうだ。

・・・まぁ、男女の仲になっていたとしても何の不思議もない。

それだけに余計にアイツのことが心配だろう。


 「・・・ああ、間もなくここにいらっしゃいますよ?

 いまはお召し替えをなさっておいでかと。」

 「そ、そうか!!」


嬉しそうな声だな、ミィナさん。

だけど違和感はぬぐえない。

単に白人少女の声が丁寧過ぎるだけかもしれないが、

なぜ敵方であるアイツのことをそんな敬うような喋り方なんだ?


 「ただ・・・。」


む?


 「それがあなた方の仰る方と言っていいのかどうかわかりませんが。」


ど、どういうことだ?


そこへ長い黒髪の東洋人女性が割って入って来た。

 「うふふふ・・・

 喋りすぎよ、ベアトリチェさん・・・。」


ベアトリチェ・・・?

その名前もどこかで・・・どこでだ!?


 「あらぁ? 申し訳ありません、あざみさん?

 ついつい前のお仕事の感覚で・・・

 アーサー様には何でもしてあげたくなっちゃうんですもの。」


あ?

そ、それはどういうことだ?


 「・・・なら。」


今度は黒人少女か。

 「ベアトリチェとあざみはこの男性を・・・

 私と百合子はそこの女の子を・・・。」


 「はぁい、わかりましたわ、

 ああ、これも運命なのでしょうかね?

 お父上様どころか、そのご子息のあられもない姿も拝見できるなんて・・・。」


なんだと・・・!?

 「い、いま、何と言った!?

 父上を・・・ウーサー・ペンドラゴンを知っているのか!?」

 「あら、嫌ですわ、アーサー様、

 まだ思い出していただけませんでしょうか?

 でも仕方ありませんよね?

 アーサー様とは直接お話しする機会はございませんでしたものね、

 でも遠目では何度もお姿を拝見しておりますわ?

 アーサー様にとっては大勢いる使用人の中の一人にすぎなかったのでしょうけども・・・。」


彼女は透き通るような水色の瞳で笑う・・・

とても妖しく。


覚えがあった。

ようやく思い出したのだ。

何度も見た事がある筈だ・・・

彼女は父上に仕えていた専属メイド・・・。


ベアトリチェ!!


四人の女性は先ほど黒人少女が言ったように、二手に分かれてオレやミィナさんの脇に立つ。

だが、オレは問い直さずにいられない。


 「な・・・なぜ!

 なぜ、父の専属メイドだった君がここにいる!?」


その瞬間、彼女はオレの頬にキスでもするかのように顔を近づけてきた。

 「うふふ・・・。」


ち、近すぎる・・・。


 「アーサー様、話はシンプルです。

 黒十字団からウーサー様に近づくよう、お仕事をいただきましたの。」


オレは視線だけ彼女に向ける。

顔ごと彼女に向けたら唇同士がくっつきそうだ。

事実、彼女の暖かい吐息がオレの頬に吹きかけられている。

女性と唇を交わす直前に嗅ぐ、あの特有の甘い匂いだ・・・。

オレが「唇を」と望めば、髪をかき上げながら「いいですよ?」とそのまま口を被せて来るのではないだろうか?


これが全く別のシチュエーションなら、オレもその誘惑に耐えられないだろう。

だが、ここでは必死に抵抗せざるを得ない。


 「ま・・・まさか、い、いったい何のために!?」



そこで彼女の顔がこれまでにないほど歪む。

 「はぁい、まだおわかりになりませんか?

 騎士団を動かす権限を持つウーサー様が、

 ちょっと方向性を間違えば・・・、

 その戦力を何処に向けられるのでしょうか?

 このベアトリチェがウーサー様のお嘆きを聞いてさしあげましたら、

 あの方は、何か人間そのものを地上から一掃させねばならないとお考えになってしまったようで・・・。」

 「お、お前が・・・!

 お前が父上を!?」


ベアトリチェの細い指がオレの腕にそっと触れる。

 「いやですわ? 

 勘違いなさらないでくださいませね?

 私が何か強制したことは何もありませんわ?

 全てウーサー様や騎士団が元々潜在していた思想じゃありません?

 だからこそ、円卓会議で騎士団の世界侵攻が決定されたのでしょう?

 私が近づいたのはきっかけに過ぎません。

 遅かれ早かれ、いつか同じことが起きたのではないですか?

 私がいなくとも・・・。」


 「ふざけるな!!

 お前が・・・父上を操っていたんだなっ!!

 父上が自殺したのも貴様の手筈かっ!!」


オレの腕の上をベアトリチェの小さな指が這いまわる。

オレの腕で何をしたいんだ?


 「うふふ、それも誤解ですわ、

 そっちは後ろにいらっしゃる『ブードゥー・プリンセス』メァリ・ラブゥさんのお仕事ですわよっ、てきゃあっ!?」


そこでベアトリチェがオレから離れ、まるで操り人形のようにおかしな動きを始めた。

 「ラ、ラブゥさん、おやめになってっ!?」



挿絵(By みてみん)


 

百合子ママ VRoidで復活!

パーティーキャッスルで作った画像と違うとか言わないでくださいませ。



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