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第二十九話 ぼっち妖魔は天敵に襲われる

<視点 麻衣>


 「ぎゃあああ!

 来るな来るなーっ!!」


誰の声かって?

すいません、

あたしです、あたし。


 「落ち着け、お嬢ちゃん!!

 数は多いが攻撃力はない!

 松明を前方にかざして壁を背にしろ!!」


そうは言っても足に力が入らない。

膝がガクガクする。

どうしてこうなった。


地下二階層に降りてフロアを軽く透視した時、あいつらがいるのは分かってた。

でもこんな集団で襲って来るなんて、予想もしてなかったのはあたしの慢心だ。

一匹や二匹ならここまであたしは恐怖しない。


集団で襲ってきやがったのだ。

何が襲ってきたのかって?


ムカデ?

うん、怖いね、気持ち悪いね、

ベルナさんに焼いてもらうよ。


ゴキブリ?

そうだね、あれが集団でやってきたら発狂するかもね。

ベルナさんに焼き尽くしてもらうよ。


違う。

襲ってきたのは巨大吸血蝙蝠。

一匹一匹がカラス並みに大きい。


だって、ベルナさんのファイアーボールもウィンドカッターも避けまくるんだよ?

召喚したスネちゃんの牙も届かない!

もともと蛇は蝙蝠の天敵らしいけど、あくまで一箇所に固まってる時に狙うらしい。

空中で蝙蝠を捕食するのは困難だ。


素早いケーニッヒさんのナイフが、時々蝙蝠を落としてくれるけど数が多すぎる!


え?

なんでそんなにパニクってるのかって?

すいません、トラウマというやつです。

六年くらい前、富士の樹海の洞窟でコウモリの大群に襲われたことがあって。


もちろんこんな巨大じゃないけどさ。


あの時はぁ、あの時はぁー、

強烈な音と光で、半狂乱になったマーゴさんが蹴散らしてくれたけど、今はそんな現代武器もないよねえええ!?


 「ベルナっ!

 ファイアーウォールを使えるか!?」

 「効果はあるけど一時凌ぎにしかならないよっ!

 それにあれは使用してる間に魔力をガンガン食う!

 ここで使っちまったらここから下には降りれないよ!?」


 「むううう、こんな蝙蝠ども、無視して一気に下のフロアまで駆け抜けてもいいんだが!」


ごめんなさいごめんなさい、

あたしが足を止めてるんだよねっ!


これが普通の蝙蝠なら、あたしもトラウマあるとは言え、無視できると思うんだけど、こいつらに纏わり付かれたら、あっという間に血を吸われてばたんきゅうとなる気がする。

あとは、あとは・・・「この子に七つのお祝いを」?

アレもダメだ。

個体の魔物には通じるけど集団相手に効く気がしない。


ああああっ!

悔しい悔しいっ!

あたしはホントに大バカだっ!

いっつも調子に乗って、反省してもまた同じバカなことを繰り返すっ!


おばあちゃんが言ってた。

リーリトなんて自分の身を守るのが精一杯、

余計なことに手を出すから痛い目に遭うんだって。

悔しいけど何も出来ない。

エステハンさん達が頑張って、蝙蝠たちを追い払うことは出来るかもしれないけど、あたしはこのトラウマを乗り越えることが出来ない。

こんなことだったら・・・え?


 『出来ますよ』


だ、誰?


 『麻衣なら出来ます』



まさか・・・

いや、ママじゃない。

ママの口調でもない。

だいいちママは・・・。


違う・・・違う!

違う違う!! 違うっ!!


 『リーリトの眷属は蛇だけじゃありません』


・・・え?

そこで声は消えた。


聞き覚えあるような気もするけど、今の声の主が誰だったか、突き止めるのは後回し。


リーリトの眷属が蛇だけじゃないって?

知識としては知っている。

自分のルーツに関する事なのでいろいろ調べたから。

けれど、いきなりできるかな?

まあでも今は、事の真偽を確かめる余裕もない!

やるしかない。


もし可能であるならばっ!

 「お願いっ、来てっ! 召喚!!」

カラダに魔力がみなぎるっ!!



 「え、ええ!?

 こんだけ強力な大蛇を呼んで、更にそれ以上召喚できるのかいっ!?」


 「お嬢ちゃんの魔力量はいったい・・・」


いえ、いっぱいいっぱいです。

それでも・・・


 「召喚! フクロウさんっ!!」


足元から眩い光が生じる。

現れたのは一羽のフクロウ。

呼び出したばかりでレベルは1。

それでもあたしの召喚士レベルが2になっているので、身体ステータスが強化されてるはず。

一匹一匹の大きさでは差がないようだけど、

空中戦ならフクロウの鉤爪にコウモリが敵うわけもない!!


自分達の天敵が何者なのか理解しているのか、途端にコウモリ達はあたしから離れて、それこそ蜘蛛の子を散らすように逃げ出し始めた。


だけどフクロウは夜の森の王様、

光源は松明の炎しかないのに、確実に一匹一匹その鉤爪で握り潰していく。


フロアに墜落したコウモリはスネちゃんの餌食。

気がつくとあれだけいたコウモリはその場から全て消えていた。

うまく逃げ延びたのもいるかもしれないけど、これで暫くは襲ってこれまい。


フクロウさんは巨大コウモリの死肉を食べてるのか、しばらく羽を休めてコウモリをついばんでいる。

よくコウモリって細菌やウィルス持ってるっていうけど大丈夫かな?

あたしも傷だらけだけど。


ようやく満足したのかフクロウさんは、あたしの顔の前まで飛んできて、羽をばたつかせて空中静止している。


・・・これはあれかな?

腕を差し出すと、それだ! とでもいうようにあたしの腕に着地成功。

一応、外套の上からだけど、その爪できつく握らないでね?


理解してくれたのか、フクロウさんは、「ほう!」とだけ鳴いて、肩の方までトテトテと擦り寄ってきた。

もしかしてこの子、昨夜のフクロウさんかしら。


うーん、

初の鳥類召喚。

六年前にお世話になったカラスさんにしようかとも思ったけど、一応フクロウの方がリーリトには馴染み深いことになっているからなあ。

ホラ、瞬きが可愛いし。

目玉がオレンジ色だよ、

これは確かアフリカオオコノハズクという種類だっけ?

フクロウカフェに行ったことがあるので知っているのだよ、ふふふ。


 「助かったよ、これから宜しくね、

 えーと、・・・フクちゃん!!」


だから人のネーミングセンスには突っ込まないで下さいね?


その後あたしはスネちゃん、フクちゃんを引っ込めた。

それにしてもどこから召喚してるんだろう?


それとさっきの声。

誰かの声に似ていた。

一瞬ママかと思ったけど絶対に違う。


となると考えられるのは、

リーリトに詳しく、あたしを麻衣と呼ぶ・・・

一番可能性が高いのは「あの人」だけど、どうやってこの異世界に?




【別世界のとある場所にて】


 「なーあ?

 聞こえとるか、ナレーションはん?」


おや、どうかされましたか、うりぃちゃん?


 「さっきコソコソと、なんかしとらんかった?」


・・・いいえ、なんにも。

私はただのナレーション。

現実世界には何の干渉もできません。


 「とはいえ、現実世界に生きとるのは間違いないんやろ?」


ええ、もちろん。

ですが、戸籍上は既に死んでることになっているのでまともな仕事はないのですよ。


 「ああ、だからこんなとこでナレーションやっとるんやな。」


ええ、そんなわけです。


 「ちなみになんて名前なん?

 もう付き合い結構長いんやから教えてくれてもええんちゃう?」


ふふふ、いえいえ、私はただのナレーションで十分ですよ。

エンドロールくらいには名前出してもいいかもしれませんけどね、

まあ、でもいいでしょうかね?

小百合、と申します。


 「小百合はんか、

 ・・・なるほどな、世相的に・・・。」


どうかしましたか(殺気)?


 「い、いいや、な、なんもないでっ!?」



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