第二百八十九話 語られない物語 一つの物語のエピローグ1
ぶっくま、ありがとうございます!
タイトル通り、ある物語のラストバトル以降の話です。
初登場の人間はいません。
全て過去の物語のどこかに皆さん出演しています。
そして性懲りもなく、ストーリーの流れに関係なく麻衣ちゃんの冒険者スタイル3Dをアップ!
<視点 ???>
・・・う、ん、
オ、オレはどうなった?
ここはどこだ・・・て、
手足を縛り付けられて・・・クソッ、
いや、待てよ?
確かオレは腹をあのルードヴィッヒに斬り裂かれた筈・・・。
姉さんの魔術のおかげで出血で死ぬことはないが、
あの痛みが消えてなくなる筈も・・・
今どうなってる?
見えるか・・・オレの腹・・・
あれ?
傷一つない・・・ていうか!!
すっぱだかかよ!!
なんで下着も剥がされてすっぽんぽんで拘束されているんだ!?
ここはあのシャンバラの宮殿の中だろう!?
手術室ですらありもしない!
いったい、周りは・・・
うわああああああああああああああああああああああああっ!?
とっとっ、とととなりに・・・
こっちもすっぱだかの女の子!?
あ、あの子はミィナさんっ!?
なっ、なんで!?
い、生きている!?
オレと同じように縛り付けられているってことは、生きているんだろうけどもっ!
ちょ、待て!
この状況はまずい!!
ここの所、戦いばかりで発散するところもなくて・・・
いや、ヤバい、ここでオレの体が反応したら・・・
「う・・・うう~ん・・・」
うわあああああ、向こうも目を覚ましたぁ!?
「あ、れ、ここ・・・どこ・・・」
あああ、もう駄目だ・・・向こうを見ちゃいけない見ちゃいけない見ちゃいけない!!
尻を上げろ、アーサー!!
体勢が苦しくても、無理矢理腰をひねって大事なところが少しでも隠れる様に・・・
向こうからは見えなくなったろうか?
首も反対方向に傾ける。
オレは何にも見てない・・・ぞ!!
それでも彼女が首をキョロキョロさせていることくらいはわかる・・・。
いま、オレの体もガン見されているのだろうか?
「ぅあ・・・」
み・・・見られた!?
「う・・・っぎゃあああああああああああああああああああああっ!?」
ああ・・・見られた・・・もうお婿に行けない・・・。
「うわああああああああああっ!?
ア、アーサー!?
なんでそんな格好で!?
ていうか・・・あたしもかよぉぉぉぉぉっ!!
みっ見るな見るな見るなよっ!?」
「見・・・見てない!!
オ、オレはずっとこっちの方を向いて・・・!?」
「見・・・見たんだな・・・!」
「見・・・見てないっ!!」
「あたしより先に目を覚ましてたのかよっ!」
「い、いや、今さっきだよっ!
君が目覚めるのとほとんど差はないっ!!」
「・・・てことは見たんじゃねーかよーーーーーーっ!!」
「・・・えっ、あ、あ・・・ああっ!?」
「うう、殺す・・・ぶっ殺す・・・
無礼殺・・・」
ミ、ミィナさん、涙声でそんな殺害宣言しなくても・・・
ていうか、この子はこういう子だったっけ。
いや、今はそんな場合じゃないだろ。
「ま、待ってくれ!
まずは今ここで何がどうなったか、現状を把握するのが先だ!!」
「うう、わ、分かったよ、
アーサーぶっ殺すのはその後にする・・・!」
やめてくれーっ!!
お、落ち着こう。
ミィナさんに殺されるから、首は少ししか動かせないが、このエスニックで古めかしい部屋は、これまで歩いてきたシャンバラ宮殿の一部であることは想像に難くない。
室内は装飾の施された燭台に火が灯っており、
大まかな部屋の構造は認識できる。
他に人のいる気配はない。
ならば、やはりミィナさんと情報を共有せねば。
「ま、まず、君はどこまで覚えている?
アイツが・・・天叢雲剣を折られて・・・その後は・・・。」
「うう、グス、
・・・あ、あのルードヴィッヒとかいう野郎は、左腕を失ってたな・・・
それで・・・あいつが・・・槍でカラダを貫かれて・・・」
そうだ・・・幻なんかじゃない。
そのままあいつは槍で貫かれた勢いで壁に串刺しになった。
その時に、首元の「紋章」も弾け飛んでいたっけ。
あれで・・・生きているわけがない。
即死の筈だ。
だけど。
「あ、あたしがあの部屋に入ったのはその時、だよな。
そんであたしは半狂乱になってルードヴィッヒに向かったんだけど、
こっちの攻撃は一切届かなくて・・・そこで・・・。」
そうだ・・・
あの醜悪なヤギのような上半身を持っていたあの男は、
そこでわざわざ人間の姿に戻った。
もう・・・全てが終わったからと言って・・・。
オレが戦闘不能になり、
アイツが串刺しにされて・・・
他の奴らは・・・
ランスロットは生きているだろうか?
彼ならば、オレの身に何かあっても代わりに任務を全うできるだろう。
大地を揺らすとか言う、信じられないほどの超能力を持っているカール・サルペドンはどうだ?
あの男なら、ルードヴィッヒ相手でも勝ち目があるだろうか?
「そこであのジジイは演説かまし始めたよな・・・。
ほとんど意味は分からなかったけど・・・。」
いや、オレには言っていること自体は分かった。
だがその話の内容は信じられないものばかりだった。
信じ・・・信じられるわけがない。
今度の戦い・・・いや、それどころか、
オレたち騎士団が世界に侵攻を企てたあの忌まわしい過去も・・・全て・・・
全てがあのルードヴィッヒ達の計画だったとは!!
オレの父、ウーサー・ペンドラゴンは真に腐った世界の浄化に向けて心を痛めていた。
もちろん、今となってはその志も間違っていたと言えるけれど、
父を・・・そこまで追い詰めていたのがこいつらだったなんて・・・
そしてそれどころか・・・
スサの・・・あいつの最愛の姉を殺すよう、モードレイユをけしかけたのも・・・
あいつの両親を殺したのも・・・全て・・・
全て・・・!
その本当の目的が・・・
まさか・・・あんな!
「なんだったっけ?
ポセイドンもスサノヲも、全て偽りの名だとか言ってたよな?
なんだ、あれ?」
そう、絶対に信じる事が出来ないのがその話だ!!
オレたち騎士団も・・・そのオレたちが戦ったスサの連中も・・・
世界中で伝えられてきた話が全て間違いで・・・
本当の世界の真実がルードヴィッヒの言う通りだなんて・・・
神に仕えるオレらが絶対に信じる事など出来ない話だ。
そして・・・
「そしたら・・・いきなり宮殿が揺れ始めて・・・
なにか・・・ドクン、ドクンて心臓が波打つみたいに、
どんどん音が大きくなって・・・
あたしは立っていることも出来なくなって、宮殿が崩れるんじゃないかって・・・」
ああ、完全に思い出してきたぞ。
けれど、そこで意識を失ったんだ・・・。
最後に覚えているものは、
アイツを貫いていた槍が・・・
いきなり粉々に砕け散り・・・
身動き一つしなくなっていた筈のアイツの髪が逆立ち始め・・・
ルードヴィッヒの後ろで、
あいつが・・・あの男の・・・
瞼が開いたんだ。
禍々しくも溢れんばかりのオーラを纏う、
黄金色の瞳を輝かせたあの男が・・・!
オレとミィナさんが先の出来事を整理しようとしていると、周りに変化があった。
ここがどこだかわからないままではあったが、複数の人間が入ってくる気配を感じたのだ。
音のした方へ首を動かそうとするも、
「く、首を動かすんじゃねぇえええええええええっ!!」
とミィナさんに怒られた。
「い、いや、君の体は見ないから!!」
見ない、見ないけども、
頭の中には、既にさっき見てしまった映像が明瞭に残っている。
ピンク色した二つの突起が・・・いや、何でもない!!
部屋に誰かが入って来たのかはすぐにわかった。
「彼女達」はゆっくりとオレたちの周りを取り囲んだからだ。
「な、なんだ、オメーら!?」
日常では絶対に着ないであろう、布地の面積が不自然に少ない衣装と、
ジャラジャラした装身具を体の各所に身に着けた四人の女性・・・。
デザインそのものはインド系だろうか?
いや、インド系というか、ヒンドゥー系と言うべきなのか、
その辺りはオレも詳しく知らないので、はっきりとは断じえない。
黒十字軍の統括者の一人に、インド出身の「黒の巫女」カーリーという女性がいるそうだから、その女性のセンスなのかもしれないな。
・・・だって、ここにいる女性全員インド系に見えない。
妖美な笑みを浮かべる、あどけない顔の白人が一人・・・
どことなく見覚えがあるような気がするのは気のせいだろうか?
そして完全に場違いじゃないかと思われるショートアフロの黒人少女・・・。
・・・胸がバスケットボール並みにデカいぞ・・・。
これは脅威だ・・・!
後の二人は・・・日本人か東洋人か、
二人とも黒髪だが、顔そのものは似ていないと思う。
一人はその黒髪に虹色の輝きが煌めき、それは異様なほど長く、ストレートに腰元まで伸びている。
その女が、オレやミィナさんのカラダを舐めまわすように見ていると思えるのは気のせいだろうか。
何よりも不気味なのは、唇が血の色に見えることだ・・・。
もう一人の女性の黒髪は肩までくらいの普通の長さ。
だがその表情は機械ではないかと思うくらい冷徹で、感情というものがまるで見られない。
東洋人のルックスだが、肌は陶器のように白いせいもあるのか、ある意味人形のようにも見える。
一つ気づいたのは瞳の色が濃緑色だ。
アジア人では珍しいのではないだろうか?
「あらぁ?
お二人ともお目覚めになったんですのね?
ご気分はいかがですか?」
鈴のような声で白人の少女が語りかけてくる。
やはりどこか既視感を覚える。
この声もだ。
どこだ・・・。
どこでオレは彼女を知っている?
今回の麻衣ちゃんの衣装は、私の自作ではなく、VRoidモバイルのアイテムを移植したものです。