第二百八十八話 クィーンの記憶
妖精アルラの3DをVRoidモバイルに投稿して動かしてみたら、
何か知らないけど動きがやたら可愛い。
アニメーションでお見せできないのが残念です。
麻衣
「う・・・ん、かわいいんだけど、
これに欲情するのは絶対に犯罪者だよ・・・。」
マルゴット女王
「というか、サイズが小さすぎはしまいか?
確かに妖精というイメージにはぴったりじゃが、
これで殿方のアレは入るまい?」
あ、あれ?
なんでこんな小さく?
妖魔リーリト・・・
そんな生き物が存在するのか・・・。
見た目は全く人間と変わらないようだが・・・。
「麻衣さん・・・
君は・・・人間じゃなかったのか・・・。
今までどうやって鑑定をごまかして・・・?」
カラドックの鑑定すら欺けていたのか。
確かに高位の妖魔なら人間社会にも隠れ潜む事が出来るらしいからな。
それにタバサやアガサに追随するほどの魔力を持つ麻衣さんだ。
冒険者ギルドの強者どもでも見抜けるものはいなかったのだろう。
麻衣さんは、同じ状況だったなら、オレには到底真似できないほどの落ち着きを見せている・・・。
いつかこうなる事も想定していたのかもしれない。
「普通の鑑定なら『ステータス隠蔽』ってスキルで見えなく出来るんですよ。
あたしが人間かどうかについては言いたいこともありますけどね、
あたしの種族表示に妖魔って書かれているのは確かです。
バレないのならこのままでいいかなと思ってました。
もちろん、注目されないに越したことはないですからね、
だから、元の世界に戻ってもあたしの存在は秘密にして欲しかったんですよ。
まぁ、元の世界が一緒でないならその心配は必要ないんでしたっけ。
でも短い間でも楽しかったですよ。
皆さんに会えて良ったです。
・・・それじゃあ、この辺で・・・。」
ん?
待ってくれ、麻衣さんはオレらの元から離れようと言うのか?
「い、いや、麻衣さん、
何を言っている?
いったい、どこに行こうって言うんだ?」
「さぁ?
でもなんとかなりますよ、
もともと、元の世界でもぼっちみたいなもんですからね。
心配していただかなくても結構ですよ。」
「カラドック。」
オレは思わず声をかけた。
奴は無言でオレに視線を合わせる。
頷いてくれた。
良かった、考えることは一緒のようだ。
じゃあこの場面で、さっき醜態晒したオレの名誉を挽回させてくれ。
「麻衣さん。」
「はい、何でしょう、ケイジさん?」
「まだオレは麻衣さんから受けた恩を返してないぞ?」
「え・・・え?」
オレの言ってることがすぐには理解できないかな?
「え、ケイジさん?
恩も何も、さっきの戦闘でもあたしを助けてくれたじゃないですか、
それでおあいこでは?」
「何言ってるんだ?
同じパーティーの前衛が、後衛の盾になるのは当たり前だろ?
麻衣さんが、オレたちを助けてくれた時は同じパーティーですらなかったじゃないか。」
「あ、そ、そーいう理屈で・・・っ?」
言ったら申し訳ないが、彼女はあまり言い合いが得意そうでない感じだからな、
オレやカラドックなら説得できるはずだ。
いや、してみせる。
「だいたい何だよ?
オレらにおせっかいするだけしておいて、
後は知らんぷりするつもりだってんじゃないだろうな?」
「え・・・い、いえ、だって・・・
あたし・・・人間じゃないかもしれないんですよ・・・?」
「それが?」
「そ、それがって・・・。」
「麻衣さんだって、さっきオレが無様にカラドックに説教されたの見てたろう?
あれが全てさ。
オレやリィナだってヒューマンじゃないし、
ヨルは魔族だし、それがどうしたってんだ?
麻衣さんがオレたちを助けてくれたことと、麻衣さんがヒューマンじゃないこととは、
一切、関係がない。」
「・・・あ、あたしを信じてくれるんですか・・・?」
「水臭いな、オレたちはもう仲間だろ、
だよな、カラドック?」
「勿論だとも。」
ここでそんな眩しい笑顔を繰り出すか、カラドックよ。
周りを見れば、リィナもニッコリと笑っている。
タバサとアガサに関してはいつも通り。
「麻衣の虚術と魔力は希少。」
「麻衣の猫っかぶりとムッツリは貴重。」
「ああああああっ!?」
あ、麻衣さんに精神的なダメージが!?
ヨルの反応も予想できる。
「ふ、ふん!
カラドックに手を出さないならヨルは大目にみてあげるですうぅぅぅ!」
「・・・ヨルさん、
まだ小豆乗せプリンご馳走してませんでしたよね?」
「嫌ですねぇぇぇぇっ!?
なんてこというんですかぁぁぁぁっ!!
麻衣ちゃんは永遠にヨルの友達ですよぉぉぉぉっ!!」
あ、それはオレも食いたい。
「ほう、どうやら要らぬ心配だったようじゃの。」
マルゴット女王が笑顔を取り戻した。
ん?
女王も魔眼を持っている筈・・・
あ、今の言い回しは女王も知っていたのか、
麻衣さんが妖魔だと言う事を。
・・・そうだよな、
その女王自身、今も魔物を首に巻いてるんだしな。
獣人であるオレを受け入れてくれたくらいなんだから、女王も全く気にしてないわけか。
・・・だがここで爆弾が落ちる。
今までオレらの騒ぎを静観していたクィーンからだ。
「リ、リーリト?
リーリトですって?
聞き覚えありますわ?
で、でも、おかしいですわ・・・また、こ、これは何時の記憶なのかしら・・・。
長い黒髪の妖魔・・・リーリト?
陶器のような白い肌の・・・名前は・・・あざみ?
いえ・・・あずみさんだったかしら・・・?」
クィーンがまた何かを思い出した。
あざみ?
あずみ?
日本人の名前だろうか。
少なくともオレに心当たりはない。
だがここで血相を変えたのは麻衣さんだ。
「い・・・いま、何て言いましたっ!?」
今まで後ろの方で隠れていた麻衣さんが飛び出してきた。
知り合いの名前だったのだろうか。
重ねて言うがオレは心当たりない。
けれど、カラドックと共に、この世界に転移してきた麻衣さんには、
とても・・・絶対に無視できないほど重要な名前であったのだ・・・。
「あ・・・待ってくださいね、
今思い出せそうですので・・・
あざみ・・・ちゃんは食人鬼の子でしたわね・・・。
日本人の方のお名前は本当に区別しづらいですわ?
もう一人のお名前は・・・
えーと・・・確か・・・そう、百合子さん、
安曇百合子さんでしたわね!
確かあの方もリーリトという種族でした。
伊藤麻衣さんでしたっけ?
あなたの同族かしら?
もしかして、あなたのお知り合いなんですの?」
恐らく、麻衣さんがこれほどショックを受けたような顔をオレたちに見せるのは、
今が初めてだろう。
あの、悪魔どもが現れた際も、まだどこかに余裕を見せていた麻衣さんが、だ。
ついさっき、自分の正体を見抜かれた際も、落ち着き払っていた麻衣さんが、
今や、他のことに目を向ける余裕すら失っている。
「あ、安曇って、ママの旧姓・・・
・・・ママを・・・
あなたはママを知ってるんですかっ!?」
この先、いったいどうなるんだ?
戦いどころじゃなくなってきたぞ!?
次回、
またもや旧世界のエピソード。
ちなみに「安曇」の苗字は、
前作で「外伝 白いリリス」の中で一度だけ使ったっきりですね。