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第二百八十六話 話し合い


ここにいる誰もが、それなりの衝撃と驚愕を感じたことだろう。

だがそれを表に出す程、短慮なものはいn・・・


 「うっひゃあああああああ!

 けっ、けしからんですぅぅぅっ!!

 ホントにいやらしい格好ですよぉぉぉっ!!

 角が二本とも丸出しじゃないですかぁぁぁぁぁぁっ!!」


うん、まぁヨルはいつも通りだな。

ていうか、魔族的には肌の露出より角の露出の方が問題なのか。

さっきのスケスケエルフを見た時より反応が大きい気がする。


 「あら? あなたがシグが仰ってた魔族の娘さんですね?

 申し訳ありません、

 私は優れたもの、美しいものは人の目に触れさせてこそ、価値があると思っておりますの。

 あ、もちろん、隠し札・・・というものの有用性も理解しておりますけども。

 どちらにしろ、魔族の価値観とやらに縛られるつもりは全く有りませんわ?」


なるほど、

マドランドの街でクィーンに対し、いい評判を聞かなかったのはこういうところか。


 「・・・それで先程の私の質問についてはいかなる返答をいただけるのだろうか?

 何か私に思うところがあるようにも見受けられたが・・・。」


カラドックが、何も見なかった聞かなかったとばかりに、ヨルの反応をスルーして会話を元に戻す。

さすがのカラドックだ。

それと、クィーンはさっきカラドックの顔を見て「思い出せない」とか言っていたようだ。

転生者だという噂のクィーンは、カラドックの出自についても聞き及んでいるのだろうか?

そういえば、執事シグもそんな反応を見せていたっけ。


 「あっ、はい、申し訳ありません、

 邪龍のお話が皆様の最大懸念事項だというのは理解しておりますわ?

 ただ、先にお互いの身の上を話してからでも良いのではありませんか?

 特に、異世界からの転移者であるというカラドック様とは、特にお話したいと思っていましたの。」


そこでクィーンは怪しい笑みを浮かべて前のめりとなる。

胸の谷間が自然と強調される。


・・・オレは平常心だ。

そんなものに心を惑わされなんかしないぞっ!!


ヨルが長槍を掲げてカラドックの前に出る。

彼女が一番敵意を剥き出しにしているな・・・。

多分、クィーンの興味がカラドックにあることに最も危機感を覚えたのだろう。


当のカラドックは眉間にしわを寄せながらヨルを引き留める。

 「ヨ、ヨルさん、大丈夫だから・・・。」

 「で、でもカラドックをあの破廉恥女の毒牙にかけるわけにはぁぁ・・・」


ヨルの目には涙が溜まっている。

・・・オレたちは何の芝居を見せられているのだろうか・・・。


 「ゴホン、

 なるほど、それで私に目をつけていたと・・・。

 それにしても一つ、先にお聞きしたいのだが・・・。」

 「はい、なんでしょう、カラドック様、

 私の好みのお話でしたら大歓迎ですよ?」


 「い、いや、そうではなく、

 私が転移者だとどこで聞かれたのか?

 執事シグもそこまで知らなかった筈だが・・・。」


 「あら、嫌ですわ?

 冒険者ギルドの間で有名じゃあございませんか?」


 「え? 冒険者ギルドで・・・なぜ・・・あっ。」


カラドックが何かに気付いたように声を出す。

そこでオレも周りを見回す。

オレたちを見張るように立っているAランクパーティー「聖なる護り手」・・・。

そうか、

クィーンは何もこんな外界と隔絶された世界にひっそりと暮らしているわけでもなく、

こういった人間社会と繋がっている奴らから、情報なり知識なりを常に手に入れているのか・・・。


 「まぁ、もちろん、たった今、この目で確認させていただいたわけですけども。」


なにっ?


鑑定か、

・・・なるほど、さすがにクィーンとまで自称するだけにそれなりの目も持っているという訳か。


・・・だが、オレの判断は甘かったようだ。


 「・・・これは厄介じゃの・・・。」


ん? 今の声はマルゴット女王か、

そうだ、女王の魔眼なら・・・


 「妾の魔眼を以てしても、奴めのステータスを見通すことが出来ん・・・。

 桁違いのレベルか・・・もしくは結界師系の能力か・・・。」


それ程の物なのか・・・!


 「うふふふふ・・・。」


そこでクィーンが静かな笑い声をあげる。

なにがおかしい?


 「そちらの美しい方は魔眼持ちなのですね?

 嬉しいですわぁ、

 私と同じ能力を持つ方に初めてお会いしましたわぁ?」


何だと!?


 「そなたも魔眼持ちか!!」

 「はぁい、よろしくお願いいたします、

 フェー・マルゴット・ペンドラッヘ女王、

 同じ能力なら・・・ステータスの高い私の方が、あなたの情報を見る事が出来・・・

あら?」


クィーンの言葉が途中で止まる。

何かに気付いたような・・・だが今の話なら、同じ魔眼持ちでもヒューマンのマルゴット女王より、サキュバスのクィーンの方が高い能力を示すということか。


 「なんじゃ・・・

 妾の顔に何かついておるのか・・・!」


珍しく女王が不機嫌そうだな・・・。

いつも敵対する相手にも余裕を見せているのが女王だと思ったが・・・。


 「・・・あ、いえ、

 女王のお名前と・・・あとお顔についても、どこかで覚えがあるのですが・・・

 おかしいですわね?

 私の前世では、そんな記憶など・・・。」


初めてクィーンに困惑するような表情が見て取れた。

だが、今の彼女の言い回しにオレも引っ掛かる部分がある。


「前世で記憶がないのに覚えがある」?


どういう意味かわからない、という反応をすべきだろうか。

だが理屈ではなく反射でオレは思い出してしまった。

最初にシグと戦って、リィナと共に大地の底に落とされそうになった時、

オレにも似たような現象が起きた。

状況や細部はまるで違うが、あれと同じような話なのだろうか?


 「クィーン・・・あなたも異世界人・・・

 それも転生者と聞いたが、それに相違ないか・・・。」

 「ええ、そうですよ、カラドック様。」

 「では、あなたの前世でのお名前やご出身を聞いても?」


 「あらあら? ごめんなさい、言ってませんでしたわね?

 それ程、大した身分ではございませんわ、

 それこそ、小さな国の器量の狭い権力者の妃の地位をあてがわれたに過ぎませんの、

 それなりに好き勝手に過ごしておりましたが、幸福とも不幸とも言えない、矮小な存在でしたわ?」


ん?

やはり貴族か。

だが、今の話だと、オレには何も心当たりはないな・・・。

麻衣さんのように、異世界と言ってもオレらの世界とはまた別の世界からの転生者なのだろうか?


 「それではお名前は・・・。」


 「名前ですか・・・

 あまり思い出したくないのですよね・・・。」


少しだけクィーンが悲しそうな表情をする。

会話はカラドックに任せようかと思ったが・・・

異世界からの転生者・・・であるならば、その意味においてはオレと同じ立場なわけだ。

反射的にオレは彼女に質問をしていた。


 「・・・前の世界で辛い最期にでも遭ったのか・・・。」



隣でカラドックがやや驚いたような表情をしていた。

クィーンも意外そうに眼を見開いている。


「転生」というものが偶然なのか、誰かの意図によるものなのか、

それすらわからない現象だが、もしオレと同じようなパターンならば、

何かの物語のようなエピソードがあるのかと思ったのだ。


クィーンは目を伏せがちに淋しそうな表情を見せる。

 「・・・ふふ、そうですね、

 辛い目・・・といえばそうなのかもしれません。

 邪龍の話はあとにしようかと思ったのですが、

 私が邪龍と取引しようと思った原因の一つに繋がるので・・・ここで、

 いえ、申し訳ありません、

 やはり全てを語るのはご勘弁いただけないでしょうか?

 私もこのカラダを見せるのは抵抗ないのですが、

 自分にとって恥ずかしいと思える過去の行状は、さすがに赤裸々に語ることは耐えがたいのです。」


え・・・。

そう・・・なのか。

単に不老不死を得たいがため邪龍と手を組んだわけでなく・・・、

何かの理由があって?

まさか、その点もオレと同じように過去の世界で後悔するようなことを・・・。


カラドックも同じ心象を得たのだろうか。

 「クィーンよ、

 不老不死を得るために邪龍に人間の魂を捧げるなどという行為は、

 いかなる理由があっても認める事など出来ない。

 ・・・ただ、何か訳があるなら・・・

 もしかしたら、何か別の手段を見つけるとか、回避策があるなら、

 それに協力できるかもしれない。

 出来る限り話してくれないか?

 こちらも無駄な血を見たくはない・・・!」


クィーンの表情がまた変わる。

最初に見た時のような蠱惑的なものでなく・・・


 「ふふ、お優しいのですね、

 称号『賢王』・・・ですか?

 私の前の世界では心当たりありませんが、

 もし・・・私が結婚する前に出会えていたら、幸せな人生を歩めたのでしょうか・・・?」


・・・あ。

ヤバい、オレでもわかる。

ヨルと・・・え? マルゴット女王?

二人がカラドックの前に出て戦闘態勢に入ったぞ!?


でもなんでマルゴット女王まで!?


 「のう、カラドックよ・・・。」

 「マ、マルゴット女王どうしたのです!?」

カラドックでさえ、女王の反応が理解できないようだ。

いったい何が起こっている?


 「・・・妾にもわからん・・・

 分からんが、どうにも魂の奥底から怒りのようなものが湧いてきおってな・・・。

 まるで親の仇にでも出会ったような気分じゃっ!!」


ええっ!?


 



次回、クィーンと麻衣ちゃんとの因縁が?

麻衣「え、いえ、会ったことないですよ!?」

マルゴット女王「わ、妾の方は!?」

クィーン「カラドック様の世界ではお会いしたこともありませんわぁ。」


次回、ついにあの方のお名前がこちらの物語に初登場。

クィーン

「えーと、なんでしたっけ、

あざみだったかあずみだったか・・・。

日本人て紛らわしい名前が多いですわね?」

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