第二百八十五話 対面
画像ありです!
「プロテクションマインド!」
入室直前にタバサが精神耐性上昇呪文をみんなにかける。
事前情報はないが、魔人がサキュバスであるならば魅了を使ってくる可能性が高い。
こちらには男性は四名だけだが、オレやカラドックが魅了されたらこのパーティーは崩壊しかねない。
少しでもリスクは避けなければ。
・・・プロテクションマインドでどこまで魅了スキルを防げるのかは未知数だが。
全員、クィーンの玉座のある部屋に入った所で扉が閉められた。
見ると冒険者らしきイケメン二名も一緒に入ってきやがった。
顔は薄い笑みを浮かべているが、クィーンの護衛でもあるのか。
オレたちの存在を無視するがごとく、
スケスケエルフが正面のカーテンの向こうにいる存在に声をかける。
「大変お待たせしました、クィーン、
『蒼い狼』の皆様をお連れしました・・・。」
「はぁい、待ちくたびれましたわぁ?」
これがクィーンの声か。
想像を裏切らない艶めかしい声だ。
カーテンの手前両脇にはやはり二人の人間が構えている。
ローブを纏った男性だが、魔術士の類だろうか。
この場を守る兵としては、なるほど、と思うのだが、
一般的な王宮ならば、その位置には護衛騎士が務めるべきだと思う。
それとも、オレたちと同時にこの部屋に入った冒険者に見える二人がその役を果たすのかもしれない。
つまりこの場には、魔人クィーンを除いて四人・・・いや、スケスケエルフを入れて五人の護衛がいると見ていいのだろう。
スケスケエルフは「では私はこれで」と言いつつ、カーテンの右手側裾へと控えるようだ。
クィーンを前に障害となる敵は五人か、
オレはカラドックに視線を合わせてから前に進む。
「アンタが魔人クィーンか・・・!」
仮にも「クィーン」を名乗る相手に対してぞんざいな口の聞き方と思われるだろうが、
さきほど、ど派手な殺し合いをしてきたばかりなんだから、これくらいでいいだろう。
・・・けれど、対する魔人の声はあまりにも明るい。
「はぁい、はじめましてですわぁ?
冒険者パーティー『蒼い狼』の皆さまですわね?
お聞きしていたより、人数は増えてらっしゃるようですが、
まさか悪魔四体を退けられるとは思いませんでしたわぁ?」
「・・・それでどうするんだ?
オレたちの目的は知っているのか?
もし話し合いが必要だと言うなら、交渉に乗るが・・・
あくまでも邪龍への協力をやめないというならば・・・。」
「そうですわねぇ?
話し合いは大事ですわぁ。
ただ、一つ確認させていただきたいのですけれど・・・。」
「なんだ?」
「皆様方は、私たちを虐めに来た侵略者ということで良いのでしょうか?
『蒼い狼』の皆様は、私の僕であったドラゴンやブラックワイバーンを、
一方的に攻撃を仕掛け殺めたとお聞きしておりますのですが・・・。」
「・・・なっ?」
「私どもの方からはヒューマン社会にも、『蒼い狼』の皆様にも直接攻撃はおこなっていませんわよね?
魔族のシグにも争いが避けられないようであれば、排除するように申し付けておりましたわ。
私たちは自衛のために戦ったに過ぎません。
皆様方・・・その認識で構わないということでよろしいのですよね?」
な・・・た、確かに魔人側は「直接」、誰にも被害は与えてはいない。
オレたちが手を下したドラゴンやブラックワイバーンにしても、
あいつらは門番の役目を果たしただけで、人間やその街に危害は加えていたわけではない。
いや、だが・・・クィーンが人間の魂を邪龍に捧げる行為ってのは・・・
犯罪・・・なのか?
いや、もちろん、許せる行為でないのは間違いないが、
少なくともいかなる国の法律でも裁けるようなものでもないはずだ。
「こちらからも確認したい、クィーンよ!」
カラドック!?
横からカラドックが出てきてオレの代わりに答えてくれる。
頼りになりすぎるぞ・・・!
「はぁい、なんでしょう?
・・・あら?
あなたが異世界からいらっしゃったという方ですかぁ?」
「・・・お初にお目にかかる、カラドックという。
確かにこちらへ押し入ったのは我々の方だが・・・
あなたがヒューマン、亜人の魂を邪龍に捧げているのは事実として良いのだろうね?
魔族シグからもそう聞いているのだが。」
まさか、このタイミングでそれを否定したりしないだろうな?
ここで「証拠は?」とか言われたらめちゃくちゃ面倒なことになる。
・・・しばらく返答がない。
カラドックも黙って答えを待っている。
すると、カーテンの奥から、「うーん、カラドック・・・カラドック・・・、
思い出せませんわぁ・・・。」
と呟いているのが聞こえてくる。
「すみません、オスカ、
前のカーテンを開けてくれませんこと?」
スケスケエルフがびっくりしたように反応する。
「よろしいのですか・・・?」
「構いませんわぁ?
争いになろうがなるまいが、こんな薄い幕がなくても変わり有りませんことよ?」
あのエルフの名前はオスカか。
まぁ今更どうでもいいが・・・
「オスカ!?」
タバサが反応した。
「知っている名前か、タバサ?」
「10年ほど前、森都ビスタールの神学校で歴代最高の成績を残したという名前、
確かビスタールを出て、ヒューマンの国で冒険者として活躍しているという噂を・・・!」
なんだって!?
「よく知ってるな、ハイエルフのお嬢ちゃん!」
後ろから声が飛んできた。
入り口に控えていた冒険者に見えたオヤジだ。
ニコニコ笑みを浮かべているもう一人も口を開く。
「オレらは、五人パーティーでな、
『聖なる護り手』って冒険者さ。
一応、これでもAランクな。
よろしく頼むわ。」
「聖なる護り手」だと!?
聞いたことあるぞ!
確かどこかの国で起きたスタンピードを蹴散らしたとかで名をあげたパーティーだったはずだ。
最近、名前を聞かないと思っていたらこんなところにいたのか。
オレの驚きを他所に、正面では不服そうにハイエルフのオスカがカーテンを開けていった。
・・・そして次第に彼女・・・クィーンの顔がはっきりと露わになった・・・!
あれが・・・!
「どうぞ、皆さまぁ、お近くに寄ってお顔をお見せになってくださぁい?
・・・あらあら・・・美男美女ばっかりぃぃぃ。
これはシグの言った通りですのねぇ?」
なるほど・・・
事前に聞いておいて良かったぜ・・・。
頭から生えた二本の角・・・それはいい。
それより服装だ。
露出度が高いなんてもんじゃない。
黒のレザーの下着っていうか、局部しか覆ってないんじゃないかっていうくらいの・・・
おいおい!
その状態で足を組むな!
位置的に太ももが強調されて、真正面から見たら何も履いてないようにしか見えないだろっ!!
光り輝くような金色の髪、
魔族の肌は全員、浅黒いものだと思ったが、
こいつは真逆だ。
その肌に触れたら吸い付いて離れないんじゃないかと思うほどに柔らかそうで・・・真っ白だ。
肝心の顔は・・・少女のようにあどけない。
だが・・・その妖しい笑みが・・・何よりも不気味だ。
瞳は薄氷のように透き通るような水色・・・。
これが・・・魔人クィーン!!
お尻はもう少し大きくできないものか・・・。
さて、
次回どこまで、進められるか・・・。