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第二百七十八話 ぼっち妖魔は観戦する

ぶっくまありがとうございます!


打ち出の小槌を本格的に調べたことはありませんが、

桃太郎が鬼ヶ島で手に入れるというストーリーもあるようですね。

効能も、背丈が大きくなるとかではなく、小槌を振ると欲しいものが出て来るとか。


まぁ、桃太郎も、一寸法師も、瓜子姫も、元は同じ何かオリジナルの物語があるのかもしれません。


・・・異界から流れてくる正体不明の生き物・・・。


かぐや姫も、元は竹藪の中の光る石の中から発見されたという話も・・・。


おかしい!

全てがおかしい!!


うち出の小槌によって呼び出された一団の構成はわかった。


あのど派手な柄の着物を来た女の子がリーダーなのだろう、

うりぃ・めりーって言った!?


あ、てことは、あの着物の柄も、小槌に描かれたお花も、

へちまじゃなくて瓜なのか?

そして着物というからには和風テイストなのだろうけど、江戸時代の庶民が着るような大人しいデザインなどではありもしない。

どちらかというと、吉原とかの芸者さんが・・・いや知らないけど、芸者さんだってあんな裾丈が太ももの上に来るような、伝統を丸ごと無視したような着物は着ないだろう。


これは・・・あれだ、

吉祥寺の東側の薄暗い路地で、

「さぁ、さぁ、お兄さん、今晩は女子大生の着物ナイト!!」と、

パンパン手拍子を叩いてるボーイさんのいる店の中で着るようなコスチュームではないか?


え、いえ、自転車で脇を通り過ぎただけですよ!

たまったまっ、その客引き行為を見ただけです!!

あたしにそんな知識ありませんから!!


話を戻そう・・・。


そして従える動物?は、犬・雉・猿!

まるで桃太郎さんではないか!!


だけど、その動物はこの世界の魔物以上に規格外!! 巨大!!

犬はまだいいだろう、

とてつもない神気を纏ってはいるけど、姿形に違和感はない。

ただただ巨大で、普通の和犬より毛深いくらいだ。


猿!!

おまえだ、おまえ!

どうみてもゾンビだろう!!

この世界の区分でゾンビに分類されるのか、グールになるのか分からないけど、

知能があるなら屍鬼扱いなのだろうか?


そして雉!!

思わず火の鳥か、フェニックスかと言いたくなるようなその姿!

どこの日本昔話にそんな物騒な鳥が活躍するというのだろうか?


さらにどこからともなく聞こえてくるテーマソング・・・。

何か聞いたことあるなと思ったら、スター〇ォーズの有名な曲でしょう!?

それを笛かウクレレみたいな楽器で演奏してるとか?



そして黒髪眉上パッツンの女の子は楽しそうに号令をかけた。

・・・まるで歌でも歌うかのように・・・。


 「おいっちにーさんしー、はよぉしぃ♪

 おまえらぁあ! 戦闘準備はええかあああああっ!!

 うりぃ・めりぃぃ、出陣やぁぁぁぁぁああああっ!!」


その言葉に三匹の動物たちが鳴き声をあげる!




 「うえーはっはっはっはー!

 呼ばれて来たでぇぇ! うりぃ・めりー!!

 なんやぁ!?

 そこの間抜けな不細工面のバケモンいてまえばええんかぁ!?」


し、しかも日本語どころか関西弁!?

うりぃめりー?

なんだろう、どこかで聞き覚えがあるような?


あ、

目が合った。

うりぃ・めりーという女の人があたしを見つけたようだ。

すると、

呆気に取られてるあたしに向かって、その女の子はとんでもないことを言ってきたのだ。


 「お?

 うちを呼んだのは麻衣はん、あんたかぁ!

 少し女っぽくなったなぁ?」


はい!?

 「えっ!

 あたしあなたに会ったことなんて?」


うん、こんなインパクトある人に会ったら忘れるはずない。

 「ああ、まぁこんまいことはええんや!

 うちが前におうた時は、こっちも10才相当のからだやったしなぁ?」


えっ?

何かとんでもないことを聞いた気がする。

あたしの記憶に誰か封印でも施していたんだろうか、

・・・会ったことが・・・ある!?


全然思い出せないけど・・・

うりぃ めりー 

あれ?

・・・史上最恐の和製ゴスロリ少女・・・


なに、そのキャッチフレーズ?

ていうか、どうしてあたしの脳裏にそんな言葉が浮かび上がるの?

で、でも突っ込まずにいられない!!

 「ちょっと待って!?

 和製はともかく、ゴスロリ要素はどこいったの!? 」


うりぃさん? うりぃちゃんという子はケラケラ笑う。

どう見ても年上に見えるけど、なんとなくちゃん付で呼んだ方が違和感ない気がする。


 「ああ! 卒業や卒業!!

 年頃のおじょーちゃんが、いつまでもおんなじ路線はあかんやろ!?」


ああ、そうなんだ、としか言いようがない。

無理やり納得せざるを得なかったあたしにカラドックさんが声をかける。

ようやく我に返ったようだ・・・。


 「ま・・麻衣さん、

 あの人たちを知ってるの!?」


こ、これはなんて答えればいいんだ・・・。

 「あ、あ、あの、あたしの記憶に何か封印されてるみたいで・・・

 でも、敵じゃないのは確かみたいです・・・。」


いつの間にかケイジさんも、タバサさんにヒールされていたのか、

多少、元気になったようだ。

 「じゃ、じゃあ、この場であいつら、役に立つってことでいいのか・・・?」


ま、まぁ、この流れなら・・・そう思って・・・いいんだよね?


 「た、たぶん・・・え、と、うりぃちゃん?

 ここにいる悪魔さんたち、やっつけてもらえる?」


 「おお! まーかさんかーい!?

 おら、いぬぅ! きじぃ!! さるぅ!!

 ひっさしぶりの出番やでぇ!!

 おもいっきりやったらんかーい!!」


その号令と共に二匹と一羽が突進!


吠える!

唸る!

羽ばたく!!


悪魔たちもその戦意に触発されたか、再びその爪と牙を剥いて戦闘モードになる!!


本来、あたし達もこの機に乗じて参戦すべきだったのかもしれない。

でもその必要はなかった。

うりぃちゃんたちは魔法を持っていないようだけれど、

まさしく普通の動物と同じように、

爪・牙・嘴で戦っている。

けれどその戦闘能力が普通でなかった。

・・・そう言えば鑑定の時に、うちでの小槌に「対人・対魔特効」ってあったっけ。


豹の顔を持った悪魔オセにはいぬ君が突っ込む!!

爪と牙の対決だ!!


牡牛悪魔のザガンとゾンビのお猿さんが激突!

うりぃちゃんは左肩に乗ったままだけど、余裕の笑みで観戦だ。

こっちは完全な肉弾戦!

ならば悪魔の錬金術とやらも役に立たないだろう。


そして鳥同士というわけなのか、

フクロウ悪魔のストラスには雉さんが相手!!

相手は回復術の使い手だけれども大丈夫だろうか?



 「な、なぁ、あれ・・・。」

途中、ケイジさんが同意を求めるかのようにあたしに声をかけた。


うん、何を言いたいか、だいたいわかるよ。


 「あ、あの白い犬・・・

 なんども斬り裂かれて・・・致命傷喰らってると思うんだけど、

 すぐに何もなかったかのように反撃してるよな?」


攻撃力そのものは悪魔の方が上回っていたかもしれない。

けれど、いつの間にやらいぬ君は、

「ちめいしょう? なにそれ、おいしいの?」と言わんばかりに全快して、

豹の悪魔オセを追い込んでいるのだ。

 

こっそりと鑑定してみよう。

 「あ・・・あのいぬ君、

 再生スキル持ちですよ・・・しかも超級って出ています・・・。」

 「ま・・・まじで!?」


いつの間にかリィナさんも傍に来ていた。

 「ね、ねぇ・・・、

 あのお猿さん? あれ・・・死体だよね?

 いわゆるゾンビ?」


うん、鑑定はいらないかな。

誰がどう見てもゾンビだろう。


て、思ってたら・・・あれ?


お猿さんの体毛の中から、もう一体、ちっちゃいお猿さんが出てきた!!

頭にリボンつけてるから女の子?

あっ、牡牛悪魔にヨーヨーぶつけてるっ!


 「えーと、鑑定・・・子猿エテカリーナ・・・

 状態・・・ゾンビ、窃盗などの補導歴有り・・・。」

 

こっちもゾンビか。

よく見ると、頭の一部が陥没してるね。

ていうか、鑑定って前科までわかるの?



そして空中戦を支配するのは雉さん?

燃えるように光り輝く羽を広げて、フクロウ悪魔の爪がかすりもしない。

それどころかその攻撃の隙を突いて喉元にブサリと嘴が・・・!


あ、悪魔が凄い苦しんでる・・・

もしかして血を吸ってるの!?


 「みなぎりましたんどーっ!!」

うん、何も聞こえない、

おかしな日本語なんか聞こえない。


あ・・・

フクロウ悪魔が干からびていく・・・。

さすがにこれは回復しようがないのだろう。

確か、この世界の僧侶が使うヒールも、怪我を治すことはできても、

失った血までは回復させることは出来ないそうだし。




・・・凄い。

数分後、あたし達は信じられない光景に直面していた・・・。


悪魔三体・・・

豹の悪魔も、牡牛の悪魔も、・・・フクロウ悪魔も全て息絶えていたのだ・・・。


残るは黄金悪魔ベリアル・・・。

信じられない光景に直面していたのは彼も同じことなのだろう。

ベリアルも眼前の光景を受け入れられずに狼狽え続けている。


・・・ズシン、ズシン、

そのベリアルに向かって巨大ゾンビのお猿さんが近づいていく。

左肩にはうりぃちゃんを乗せたまま・・・。


 「ば、バカな・・・こんなバカな!?

 き、貴様ら何者だ!?」


そう言って剣を振り上げるベリアル。

それを不器用ながらもゾンビ猿が組み付いて、ベリアルに剣を振らせない。

悪魔とお猿さんは膠着状態だ。


すると、先程のベリアルの問いかけに答えるように、

お猿さんの左肩に座ったままのうりぃちゃんはにこやかな笑みを浮かべたのだ。


 「うちかぁ?

 うちはうりぃ・めりーっていうんやぁ、

 社長はん、これからもご贔屓になぁ?」


あら?

うりぃちゃんたら哀願するような流し目を・・・。

ど、どこでそんなスキル覚えてきたの?


 「ふ、ふざけるなよ、しょんべん臭い小娘が・・・!

 この偉大なる悪魔の我を・・・」



あ・・・

空気が変わった。

なんかヤバい。

うりぃちゃんの顔から笑みが消えた・・・。



その直後、うりぃちゃんの着物の胸元から、

一本のおっきな・・・扇子?

あ、あれ、扇子じゃないよね?

ハリセン!?


 「うちが、ちゃんと挨拶しとんのになぁ・・・?」


 「な・・・なんだ、それは!!

 武器か!?」



両手が塞がって・・・無防備な悪魔の顔面に・・・ああああ


 「あいさつくらい・・・

 ちゃんとでけんのかーいっ!!」


ばちこーん!!



あっけ・・・


そのハリセンの衝撃で悪魔ベリアルの顔面が潰れてしまった・・・

どんな威力なのよ?

ていうか・・・勝負ありだ。


ゾンビのお猿さんが両手を離すと、

悪魔ベリアルはそのまま大地に崩れ落ちていく・・・。


あれ?

そのうち、お猿さんは、

ソワソワと地面の辺りを何か探すかのようにして・・・

何か探し物?

あ、見つかったのかな?

お猿さんが拾い上げたのは・・・

目玉っ?


悪魔と組みあってる最中に自分の目玉を落としたみたいね、

さすがゾンビである。

あ、ちょっと待って、

それお猿さんの目玉じゃなくて、

ハリセンで吹き飛んだ悪魔の眼球だから。

ほら、サイズおかしいってば。

だから無理に顔面に入れようとしないでっ!




終ってみれば圧倒的だった・・・。

まさか、こんな結末を迎えるとは・・・。

自分が呼び寄せといてなんだけど、今もこの展開が信じられない。

こっちは何もすることがなかったし。

使用回数限度一回の意味がよく分かったよ。

あれはこの世界の設定、全てをぶっ壊しちゃうよね・・・。


そして最後にあたしは気づく。

ああ、そうか、

うち出の小槌って、「ウチが出る」小槌なわけね・・・。


 

 

また下書きストックがなくなりました。


次回、ちゃんと更新できるか・・・。


このステージの後始末をしたら魔人と対面です。

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