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第二百七十六話 ぼっち妖魔は禁忌に手を出す

ぶっくま、ありがとうございます!


カラドックさんが信じられないものを見るような目であたしを凝視する。


 「か、勝てるかもしれないって!?

 そ、それはどんな手が・・・!?」


一から説明してあげたいところだけど、そんな余裕はなさそうだ。

悪魔のみなさんや、魔族の人の目が全てあたしにロックオンしている。

このままだと集中的に狙われかねない。


すでにあたしは左手で巾着袋の口を拡げて、右手をその中に突っ込んでいる。


・・・あった!


悪魔たちの攻撃に備えるため、視線は彼らから切らさない。

ただ、これだけはカラドックさんに伝えないと・・・。


 「カラドックさん、あたしがこれからやろうとするのは召喚術の一種です。

 ただ・・・何が呼び出されるのか一切分からないんです。

 もしかしたら、悪魔に全く歯が立たないかもしれないし、

 逆にやっつける事が出来ても、あたしにコントロールが出来ない可能性もあります。

 そのぐらい危険・・・いえ、正体不明なものなんです。

 それでも・・・よければ・・・。」


もともと自分たちの命が関わっているのだ、

カラドックさんに許可を貰うのは何か違う気がするけども、

あたしは元々、このパーティーの・・・

いや、物語の主役でもない筈だ。


リーリトの特性上、やりたいようにやりゃあいいがね、と主張してもいいのだけど、

ここは種族よりもあたし個人のパーソナリティの問題だ。

筋は通そう。


 「・・・わかった、

 私からも頼むよ、麻衣さん。

 後始末は気にしないでくれ、

 私とケイジできっちりフォローするよ・・・!」


即答であった。

この人、なんでこんなにあたしを信じちゃってくれてるのだろう?

下手したらあなたのお父さんの敵なんですけど、あたしは。

まぁ、今はその話はいいか。


 「ただ、その前にカラドックさん、

 一つ確かめたいことが・・・。」

 「確かめたい事って?」


これ以上、ここで問答しづらいな・・・。

でもたぶん、カラドックさんも知りたい話だろう。

あたしは前方の悪魔たちに向かって大声をあげる。


 「悪魔の皆さん!!

 聞きたいことがあります!!」


目に視えなくても、周りのみんなが信じられないような顔であたしのセリフを聞いてらっしゃることだろう。

でもどうしても確認したい。


 「ふっくっく、

 なにかな、黒髪の少女よ・・・。」

おお、フクロウ悪魔が答えてくれるのか・・・。


悪魔は四体・・・。

誰か一人でも問答無用と攻撃をかけてきたらアウトだ。

せっかくのチャンスを無駄にしてしまう。

いや、でも、さっきあたしが悪魔の黒炎を一瞬で消し去ってしまったのは、

彼らの興味を惹いてくれたはず、

だからやっぱりこのタイミングでしかあり得ないだろう、


あたしが聞きたいのはこの一点・・・


 「あなたがた・・・悪魔の主は誰ですか!?」




静かになってしまった。


ちょっとしてから牡牛悪魔が口を開いてくれた。

 「我らをー呼び寄せた者の事かー?」

 「違います!!

 あなたたちには元来た世界が・・・

 悪魔の仲間たちがいるんでしょう!?

 その中の一番偉い人は・・・総元締めはどなたですか!!」


また静かになった。

あたしの望む答えを彼らは持っているのだろうか?


 「ふ、ふっくっくっく・・・。」

 「ふーはーはーはーはー。」

 「・・・これは笑止・・・、物を知らぬにも程があるな・・・。」


フクロウ悪魔や牡牛悪魔、豹悪魔があたしをバカにする。

そんなものはどうでもいい。

彼らが答えられるかどうか・・・。


 「まさか、知らないんですか!?

 自分たちの主を!?」


これは挑発になるのだろうか?

悪魔たちの笑い声が消える。

・・・あ、怒らせちゃったっぽい。


金色悪魔、ベリアルさんが激高する。

 「小娘!!

 我らを愚弄するか!?

 少々、変わった術を使うからといい気になるなよ!?」


 「では、聞かせてください!

 あなた達の主の名前を!!」


 「・・・ふむ!

 聞いて後悔するなよ!!

 我ら72柱の悪魔・・・その全ての頂点に立つお方!!

 恐れおののくがいい!!

 その名も至高にして偉大なる魔王サタン様だっ!!」



・・・あ、



そう。



・・・そっか。

そうなんだね・・・。


期待外れ・・・か。

なら・・・


何の遠慮もいりませんよねぇえええええええええええええええっ!!




あたしは巾着袋からあのアイテムを取り出す!!

吸血鬼エドガー戦で手に入れた、謎のアイテム、うち出の小槌!!


 うち出の小槌・・・

 異世界より禁忌の生物達を一度だけ召喚するアイテム。

 消費MP2000

 武器や大工道具としての価値は殆どない。

 ピコピコハンマーよりは攻撃力がある程度。

 召喚された生物は、対人、対魔特効。


鑑定で視えた情報はこれだけ!

あたしも生まれの関係上、世界の伝説やら言い伝えやら調べたことはあるけど、

日本の民話はあんまり詳しくない。

うち出の小槌って一寸法師をおっきくするだけじゃなかったっけ?

まぁ、でも鑑定でそう書いてあるんだから間違いないのだろう。


カラドックさんが叫ぶ。

 「ま、麻衣さん! それはっ!?」

 「吸血鬼からドロップした召喚アイテムです!!

 対魔特効の異世界生物を召喚できるそうですけど、何が来るかわかりませんっ!!」


念のためにその形状を確認する。

柄の根元から小さな鈴が二つ、

カラコロと可愛い音がする。

そして柄自体にはヘチマの蔓のような装飾、槌の側面にはその蔓とビラビラのお花が描かれている。

どう見ても和風。

なぜこれが吸血鬼からドロップするのか未だにわからないのだけど、

それだけ希少なアイテムということか。


まぁ、そんな話はどうでもいいよね!

使い方は頭の中に響いてきた。


 『手に持って縦に三回振るだけです』


鑑定士ジョブに就いてるわけでもないのにインフォメーションさんの声が響く。

このアイテムを使用する時だけの特別サービスだろうか?


あたしは覚悟を決めつつ肩の上までその小槌を振り上げた!!


ゾッ・・・


 ・・・突然、背中に悪寒がした!!



ヤバくない!?


直感である。

危険察知スキルの一種かもしれない。

これを使ったら取り返しのつかない事が起きる・・・


そんな予感である。

でも・・・でも他に現状を覆す手段など見つからない。

やるしかないでしょ!!


 カラン♪


一回目・・・!


あたしの身体から魔力が抜けてく・・・。

消費魔力2000MPだったっけ、

これ使ったら、もうほとんどあたしは何もできなくなるな。

それにこれは一度しか使えないアイテムだ。

ここで使ったら、あたしはもう、魔人との戦闘では役に立たない。

下手をしたら、あたしがこのパーティーに貢献できるのはこれが最後・・・。


でも・・・


 カラン♪

二回目!!


ドクン!

また背筋が寒くなる・・・!

たぶん、いまあたしの顔からは大量の油汗を流しているのだろう・・・。

手足も震えているのかもしれない。

でも、

もう後には・・・退けない。




最後の動作だ。

あたしは今一度小槌を振り上げる・・・。

あとはそのまま振り下ろすだけ・・・!


 「世界が壊れてしまう」


い・・・今のは!?

あたしの声!?

これも直感!?


察知スキルなのか、未来視スキルなのか判断できない!!

恐らくそれだけの事が起きるのだろう。


今なら止められるか?

MPは消費してしまったけれども、使用カウントは取られてない筈、

いや、で、でも、このままだと・・・


 カラン・・・♪



やっちゃった・・・。


三回振ってしまった・・・。

これで何も起きないなんてオチはないよね・・・。

 

厨二展開大好きな方、ごめんなさい。

次回・・・あの方々がやってくる!

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