第二百七十五話 ぼっち妖魔は禁忌を思い出す
連休もらったんで、この機会に下書き溜めようと思ってましたが、ついつい他の方の作品読んでたら一日潰れてしまいました・・・。
いや、休日はあと一日ある!!
果たしてあたしのユニークスキルは悪魔に通じるのか!?
「この子に七つのお祝いを!!」
狙いは牡牛の悪魔!
状態異常!!
沈黙・・・レジスト!
狂乱・・・レジスト!
痴呆・・・レジスト!
脱衣・・・レジスト!
レベルダウン・・・行ったっ!
興奮・・・レジスト!
麻痺・・・レジスト!
あ、う・・・ひ、一つだけしか通らない!!
レベルダウン?
多少は弱くなったってこと?
「んー?
その子供がなにかしたのかー?」
あ、あたしの仕業ってバレたかな・・・。
牡牛さん悪魔があたしに視線を向ける。
隣にいらっしゃった豹の悪魔さんも、その変化が気になったようだ。
「・・・どうした、ザガンよ?」
「むー、なんか力を弱められた感じだー、
小癪ー。」
「ほう、・・・変わった力を持つ者もおるのだな?
面白い。」
「我は面白くないー、殺すー。」
え? あれ? ちょっと?
わあああああ、牡牛悪魔が突っ込んできたー!?
やばいやばいやばい!!
やば・・・
ガチィン!
あっ
あたしは逃げることも出来なかった。
ついにここでお陀仏かとも思ったけど、
いつの間にかあたしの目の前にケイジさんが立ちはだかってくれた。
でも体格差が半端ない・・・。
それでもケイジさんは牡牛悪魔の爪をなんとか剣で受け止めてくれた。
「ケイジさん!?」
「麻衣さん、ぶ、無事かっ!?」
「むー、止められたー、
悔しいー・・・。」
多少はレベルダウンの効果があったってことだろうか?
出来るなら連発で弱体化させたいところだけど、
もともと「この子に七つのお祝いを」の効果はランダム。
更には殆どレジストされてしまうのなら、これ以上、術を使っても意味をなさないだろう。
けど・・・だめだ・・・、
牡牛悪魔ザガンとケイジさんとのせめぎあいは、最初の方こそ拮抗してるかに見えたけど、
どんどんケイジさんの身体が圧されてゆく・・・。
「ぐ・・・オレのパワーを以てしても・・・っ!」
そしてあたしは別の方向から瓦礫が崩れる音を聞く。
・・・リィナさんが立ち上がった音だ。
牡牛悪魔からは死角の位置にいるけど・・・。
でも・・・ダメ。
リィナさんの力だって通じる筈もない!
「うああああああああっ!!」
「よっ、止せっ! リィナ!
お前でも・・・!?」
牡牛悪魔がニタリと笑って背後を振り返る。
やっぱりリィナさんの接近は見透かされていた!!
裏拳!?
そのまま牡牛悪魔は左腕を振り回す!!
「ぐぼっ!!」
リィナさんの口から有り得ない声が漏れ、再び壁際に吹き飛ばされた。
ぐちゃあっ、と今度も異様な音が響く。
「リィナッ!!」
一瞬だけ牡牛悪魔の注意が削がれたせいか、ケイジさんは態勢を盛り返したけど、
あたしの前から動くことまでは出来ない。
リィナさんの所に走り寄りたいだろうに。
あ、なんとかタバサさんが体を起こしてリィナさんの元へ・・・。
回復は間に合うだろうか!?
でも・・・みんな表情がヤバいことになっている・・・。
その目には絶望の表情が浮かんでいるんだ。
頼みの綱のカラドックさんの精霊術まで打ち破られてしまったのだから・・・。
マルゴット女王も・・・
ヨルさんも・・・
アガサさんも・・・
マルゴット女王の首にしがみついてる妖精さえも恐怖で何もできないようだ。
「いやじゃ、いやじゃ、死にたくなぃぃぃぃっ!!」
妖精ラウネの戦意は完全消失・・・ブルブル震えているだけになっている。
無理もないか。
魔物としても格が違い過ぎるのだ。
ましてやあの妖精は生まれて間もないという。
いかに驚異的なスキルを持っていたって・・・
そう、あたしのユニークスキル同様、
どんなに凶悪なスキルだろうと通じなければ何の役にも立たない。
どうすればいい?
まだカラドックさんに手札は残っているのだろうか?
けれど、悪魔たちはあたしに考える時間も与えてくれはしない。
「ザガン、オセ、
一度退くが良い・・・。
最初に呼ばれたのは我だ・・・。
まずは我が掃除をしよう・・・。
残ったゴミがあったら始末を頼む・・・。」
黄金悪魔ベリアルが剣を翳す。
また遠距離攻撃!?
いや、ちょっと違う!
炎の気配がする。
・・・あと、これ・・・闇!?
「暗黒の炎よ、
敵の肉片一つ残さず焼き尽くせ、ヘルフレイムッ!!」
宮殿のエントランスに黒炎が拡がるっ!!
あたしには視えたっ!!
次の瞬間、その炎の津波があたしたちを飲み込むのだ!!
アガサさんやタバサさんのシールドをも破壊するだろうっ!!
そんなことになったら・・・ここにいる全員・・・
「「「「「「うわあああああああああっ!?」」」」」
させないっ!!
「虚術第三の術っ!!
バキューム!!」
あたしは右腕を振り払うのと同時に虚術を起動っ!!
化学も物理も成績良くないけど通じるはずっ!!
「「「「「ああああああああああああああああっ!?」」」」」
よしっ!!
まるで時間が巻き戻ったかのように、突然現れた炎の津波は消え去った。
これには悪魔どもも驚いたろう。
魔術で作り上げられた炎だろうと、空気がなければ炎は存在できない!
とりあえずバキュームかけっぱなしだと魔力を大量に消費してしまうので、すぐに解除!
「ま、麻衣さん・・・助かった。」
「麻衣ちゃん、すっ、凄いですよぉぉぉぉっ!!
あっという間に炎が消滅しちゃったですぅぅぅぅぅっ!!」
「な、なんと・・・あれだけの魔力で練られた炎を・・・。」
「ファイアーストームに闇属性が付加された術・・・それをあっさり・・・。」
「嫌じゃ、嫌じゃ、死ぬ死ぬ死ぬ死ぬうっ!!」
はいはい、誰のセリフかわかりますか?
上からカラドックさん、ヨルさん、マルゴット女王、アガサさん、妖精さんですよ。
あと魔族のシグさんて言ったっけ、
敵の親玉もびっくりなさってるみたいだね。
「な・・・何者ですか、あの黒髪の少女は!?
まさか前回、獣人のお二人を助けたのも彼女なのですか!!」
ふ、ふふふふ、
あ、いえ、あたしの術だけでどうにかなったわけじゃありませんけどね、
ていうか、なんとか首の皮一枚でつながった感じだけど、もうこちらには反撃の手段がない。
タバサさんはリィナさんの回復に手こずっている。
何とかリィナさんの一命は取り留めたみたい。
ケイジさんはさっき牡牛悪魔の襲撃から逃れられたけど、うずくまったまま立ち上がるのも一苦労のようだ。
どうしよう?
まだあの牡牛悪魔、あたしを睨んでいるし、
他の悪魔たちにも注目されてしまった。
あとはどうすればいいんだ・・・。
魔力はまだいっぱい残ってるけど・・・スネちゃんでも呼んだ方がまだマシだろうか?
でもあの悪魔に毒攻撃だって通じるとは思えない。
そんな時だ。
『まだあるでしょう?』
え。
この声・・・
『麻衣にはまだ一つ残っているじゃありませんか。』
この声・・・久しぶりに聞いた。
前はカタンダ村のオックスダンジョンで蝙蝠たちに襲われた時に・・・
・・・いや、今考えるのはその事じゃない!!
あたしが出来る事!?
召喚・・・スネちゃんもふくちゃんもラミィさんも悪魔には届かない!
妖魔変化!?
魔力が増えたって、あたしには攻撃魔術もない!
虚術は使えるけども・・・辺り一面無重力にしちゃってグダグダにするか?
それでもみんなが無事にやり過ごせるか保証もないし、
悪魔をどうにかできる予感すら働かない!
カタンダ村じゃ・・・あの時・・・
あ。
あそこであたしは何を手に入れた?
瞬間、あたしは腰元の古ぼけた金糸使いの巾着袋に目を落とす・・・。
そうだ、
あたしはあそこで、このマジックアイテムを手に入れたのだ・・・。
そして中には何が入っている!?
「麻衣さん、どうした!?」
カラドックさんがあたしのおかしな様子に気付いたようだ。
もしかしたら・・・
「カラドックさん・・・。」
「どうしたんだ、麻衣さん!?」
「勝てるかもしれません・・・。
でも・・・それには代償が。」
いよいよ次回!