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第二百六十九話 話を終えて

 

 「むごいの・・・。」


マルゴット女王は涙を浮かべていた・・・。

息も少し乱れているようだ。

イゾルテやヨルも目元が滲んでいる。

他人にも感情移入できる人間なら、あんな話を聞かされて涙を堪えられる筈もないんだろう。


ましてや続きがある。

それ程まで、

家族を犠牲にしてまで大国を築いたアスラ王を、

「あの男」は更に追い詰めて、その国を一瞬にして滅ぼして見せたのだ。


オレたちは安全圏にいてケガなどはしなかったが、

地球そのものが吹き飛んだのではないかとも思える大爆発の凄まじさに、

騒ぐことも逃げることも忘れて、いつまでもその場にへたり込んでいた。


戦いのさなかに知り合った男もいた。

朱武さんを奸計に嵌める計画を立てた奴もいた。

理想を追い求めながら、その手を血で汚した男もいた。

それら全てを、

問答無用に、悉く皆殺しにしたのだ。


後から「あの男」が何をしたか教えてくれて、オレは更に身の毛をよだつような思いに身を振るわせた・・・。



いや、もう思い出したくもないな、あの時のことは。



他の皆んなの反応はどうだろう。

自分にも関係あるかもしれないと思っているのか、

リィナは涙こそ見せてないが沈痛な表情をしている。

・・・麻衣さんもか。


麻衣さんは、なにか・・・こう、耐え忍んでいるようにも見えるな・・・。


カラドックの話は続く。

 「結局、その時のいざこざで、李那ちゃんの家族は離れ離れになりまして、

 誘拐された朱武の長男と次男は・・・その裏切り者の弟子が、自分の養子として育て上げることになったのです。

 ・・・自分が朱武を裏切ったたことを隠し続けて。」


 「どいつもこいつも最低の男どもよな・・・。」


え? そうか?

マルゴット女王の目にはそう映るのか・・・。

そりゃ弟子の方は最低だろうが・・・。


 「弟子の方も、朱武の死に罪悪感を感じていたのでしょうね、

 彼には、その・・・自分を甘言で惑わした女性との間に、ミュラという子供が生まれましたが、そのミュラを含めた三人を実の兄弟のように育てたのですよ。」


ミュラも親には恵まれなかったな。

李那にちょっかいかけようとしていたから、オレはアイツに気を許すことなどなかったが、それさえなければ仲良くできたかもしれない。

スーサとウイグルが戦争始まる前に行方をくらましたそうだが、

あいつはその後、幸せになれたのだろうか、


李那がいない世界で。





部屋のドアが叩かれた。

メイド魔族のメナが扉を開けると、無表情のエルフらしき女性がそこにいた。

肌の色が白い・・・。

顔の造りは似てないがタバサと同じハイエルフかもしれない。

・・・て、なんだ、あのスケスケの衣装は!?


オレはカラドックと、ベディベールに視線を合わせてから何も見なかったことにする。

するしかない。

女性陣も何か言いたいのを必死にこらえて・・・

 「な、なんなんですかああああああ、 

 その破廉恥な服はああああっ!?

 はっ、さ、さてはカラドックを誘wムグっ!?」


リィナが途中でヨルの口を塞いだ。

ウチはウチ、他所は他所、人様の習慣や文化にケチをつけちゃいけないよな?



 「皆さま、お待たせしました。

 こちらへどうぞ。」


・・・このハイエルフもオレらを前にして全く動じてないな。

ヨルの反応にもスルーってかい。


 「ま、魔人クィーンは私たちと会ってくれるのかい?」

カラドックは視線を微妙にずらしてスケスケエルフに尋ねる。

がんばれ、カラドック。


 「・・・いえ、クィーンがお会いする前に、

 別の者にご用件をお話になってください。

 その者が認めれば、クィーンに謁見できるでしょう。」


まぁ、いきなり親玉は出てこないか。

 「どうする、カラドック?」

 「仕方ないね、いう通りにしようか。」


 「もちろん、武器などはこちらに置いていただく形になります・・・。」

 「・・・わかった、じゃあ。」


オレはこれ見よがしに抱えている弓や、

リィナのロングナイフ、カラドックの剣などを纏めて武装解除した。

護衛騎士のブレモアだけは帯剣を許してもらった。

なんでも諸侯同士の会見でも重鎮の護衛のみ武装は許されるということだ。

え?

オレの剣やリィナの天叢雲剣はどうしたのかって?


さぁ、どうしたんだろうなー(棒読み)?


迎賓室を出て、再び、城門へのメインストリートを進む。

それにしても広い道だよな。

そんな大きな宮殿でもないだろうに、こんな広さは必要あるのかと思うんだが、

あちらさんにはドラゴンも控えているのなら、戦闘にドラゴンを投入することも考慮されて作られているのだろう。


 「麻衣さん、ドラゴンはどうしてるのかな?」

当然、カラドックも同じことを気にしているようだな。


 「あ、はい、

 ドラゴンさんはあたしたちのことを既に知覚しているようですが、

 敵意は今のところ見られません。

 ・・・警戒はしているようですが。」


 「ドラゴンのタイプとかはわかる?」

 「え、えっと、遠隔透視だと鑑定機能はないので・・・

 あ、でもかなり毒々しい感じの色合いですよ?

 翼は・・・あるんだか、ないんだか・・・あんまり飛べそうな感じじゃないです。

 重量級タイプです・・・。」


うえ。

まさかのヴェノムドラゴンか。

話には聞いたことあるが・・・アガサやタバサも・・・

やっぱり戦ったことはないらしい。

だが毒持ちなら・・・


 「タバサちゃん、大活躍。」


そう、ヴェノムドラゴンはそれほど攻撃力・防御力共に脅威な部類ではない。

昨日大量に襲ってきたワイバーンよりは勿論、強力だが、

空も飛べないので機動力すら劣ると見ていい。

パーティーに回復役がいないと、かなり難易度の高いドラゴンではあるが、

タバサがいる限り、安心して戦えよう。


オレらの接近に伴い、正面エントランスの観音開きの巨大な扉が開いていく。

門の左右に物見台があり、そこから兵士か誰かが仕掛けを動かしているようだ。



頭上を見上げると、まだこの辺りは黄金宮殿の本体ではないようだ。

エントランスの扉は開けられたが、もう少し歩くのだろう。

ただ、扉をくぐると、もう中は完全に屋内だ。

とはいえ、やはり広く、大きい。

天井は見上げると5メートルはありそうだし、

ホールは・・・そうそう、オレは前世で通ったことはないが学校の体育館くらいの広さか。

昔住んでいた集落の集会場替わりに使っていたからな。

何度も利用していたものだ。


目の前の奥には左右に分かれる階段が二階部分に通じている。

そしてその二階部分にはこれまた豪華な意匠を施した二枚扉が見える。

ようやくその向こうが黄金宮殿本体といったところか。

見た所、階段の手摺や扉の装飾、左右の壁の燭台は、

真鍮などではなく全て黄金のようだ。

もちろん、屋内全てが黄金で出来ているわけではない。

壁とかは乳白色の石材をレンガ状に繋ぎ合わせているようだ。

その為か、上品で清潔そうなイメージにも見える。


 「あ・・・誰か来ますよ・・・

 かなりの魔力を持った・・・魔族の人。」


麻衣さんの遠隔透視・・・いや、魔力感知か。

オレらは緊張を高める。

本来なら、先に案内役のスケスケエルフが告げるべきだったのだろうが、

麻衣さんが機先を制したということだな。


 「・・・私の案内はここまでです。

 今からやってくる者にお話をしていただけますでしょうか?」


スケスケエルフはここで頭を下げて元来た道へと去っていく。


そして・・・先ほどの二階部分の扉が開いた。

そこから現れたのは・・・



因縁の相手・・・!

そんなことだろうと思ったぜ。


 「これはこれは、皆様方、

 こんなに早く再会できるとは思いませんでしたよ、

 ようこそ、この黄金宮殿へ・・・!」


魔族執事シグ!!

やはりお前か!!

 

次回、一気に悪魔召喚!!


有名どころが一番手です。

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