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第二百五十九話 ぼっち妖魔は辿り着く

おっ、ポイントが上がってます!

ぶっくまと評価かな?

ありがとうございます!



みなさん、またまたこんばんわ。

麻衣です。

えっ? もう挨拶はいい?

あ、でも、もう少しだけお付き合いいただけませんでしょうか。

いえ、もう何も起こりませんよ。

お話は全て終わりました。


野営班と仮眠班に分かれ、交代で眠ることになりました。

ラプラスさんはあくまでも運転手というか御者というか、パーティーメンバーではないので朝まで眠って完全にMPを回復させることに。

女王チームも交代で寝起きするとは言ってたけども、ケイジさんとカラドックさんで説得して眠ってもらった。

もちろん、守護騎士のブレモアさんとメイドのニムエさんは代わりに見張りを行う。


ちなみにロリ妖精は眠る必要ないらしいのだけど、お外で膝から下を土の中に植えて休むらしい。

不思議な生態だ。


あたしはと言えば、先に休ませてもらって、馬車の中で毛布にくるまるわけだけども・・・



眠れなくなった・・・。



原因?


あの天叢雲剣のサイコメトリーのせいに決まってる。

あまりに情報量が多く・・・

いや、正確に言えば、天叢雲剣にこびりついた前の持ち主の人の感情が強すぎて・・・

それらがあますところなく、あたしの中に入って来たのだ。


あたしにもキャパシティーというものがある。

例えばこう・・・

目の前にマンガ本何十冊も拡げられて全てのページを見せられたとしても、

その中で意識を向けられるのはほんのわずかだ。

いや、食事に例えた方がいいか、

仮に胃袋無制限だとして、目の前に何十種類もの料理を並べられ、

それを一気に食べさせられたような・・・。


その料理の味の感想を言えと言われて、最後の・・・或いは味付けが強かったものについて、その感想を口にするのは容易い。

でも、二皿めはどうだったか、とか、途中のこの料理はどうだったとか聞かれても、思い出すのに時間がかかる。

そう、記憶の咀嚼というべきか、後になってから思い出して、ああ、あのお皿は何のソースを使っていたんだろうとか検証することができるのだ。


今も目をつむると、「あの人」が天叢雲剣を使って戦い続けてきた記憶が、

あたしの脳裏にフラッシュバックする。

さっき、ケイジさんたちと話をしていた時には気づかなかったことまでも。


まず、まとめよう。

いま、リィナさんが所持している天叢雲剣は、間違いなくあたし達の世界の産物。

そして、前の世界での天叢雲剣の持ち主は、あたし達リーリトの主・・・。

正確にはその主の「器」とでもいうべきか、

・・・この表現が正しいかどうかは自信がない。


二年前あたし達を助けてくれたあのお兄さんの人格が、

あたしたちの「主」とどういう関係性なのか、あたしにそれを言い切る自信などないからだ。


天使・・・少年と、「斐山優一」と呼ばれた彼の人格が別々であるように、

あの人もまたそうだと言っていいのだろうか?

そして・・・カラドックさんやケイジさんの話からすると、

人格は別々だとしても・・・互いに影響しあっているような・・・

それとも融合してしまっているのだろうか、

そんな印象すら受ける。


でも、この件に関しては、これ以上何も言えないか。


それ以外にあたしが気付いてしまった事と言えば・・・



「あの人」が天叢雲剣を使って戦ってきたほぼ全てのシーン・・・。

もちろん、それらは瞬間的な映像だったり、もしかしたらあたしの意識に現れていないだけで、この後、ふとした拍子に記憶の底から浮かび上がってくるかもしれない。


衝撃を受けたのは、あたしを助けてくれた「あの人が」、

6年前、あたし達家族を同じく助けてくれた探偵の日浦のおじさん、

そしてマーゴさんと一緒にいたライラックさん、その二人を殺した映像だった・・・。


カラドックさんからは、日浦さんやライラックさんが死んだのは凄い昔のことで、

亡くなった原因は戦争・・・のようなことだと言っていた気がする。


「あの人」が・・・カラドックさん、ケイジさんが言う敵国の王「アスラ」?だったとしたら、

「ライラックさんがアスラって人に殺された」と、カラドックさんが言わなかったことに違和感を覚える。


つまり、日浦のおじさんたちの死については、天叢雲剣の映像の世界と、カラドックさんの世界とで異なる世界の出来事ということか。


世界が違えば、似たような出来事で死んだとしても、誰が殺したとか、どういった原因でとかは異なっていくのかもしれない。


ああ、一応、念のために言っておくね?

あたしが眠れない原因は、

あたしの知り合いが、これまた別の知り合いに殺されたからってわけでもないと思って欲しい。

それなりにショックはあるけども、あたしの立場は明確だ。


あたし達リーリトは「主」の側につく。


自由にやってくれて構わない、とは言われてるような気がするけども。



眠れない原因は、

天叢雲剣の前の持ち主、すなわちあたし達の「主」の感情が激し過ぎるせいだ。

その気になれば、感情をオフに出来る筈のあたしが、もはや感情をコントロールできなくなるほどの影響を今も浴び続けている。

ある意味、二年前の悪霊リジー・ボーデンを上回る勢いだ。


幸いなことに、「主」の激しい感情は、

「狂気」を孕んだものでも「異常」なものでもなく、人間として真っ当なものなだけに、

あたしの精神に変調をきたすという種類のものではないけども、

おかげで心が荒れ狂って眠れなくなっているのだ。


激しい怒り・・・憎しみ、肉親を失った悲しみ・・・


日浦のおじさんを殺した時の、「あの人」の全ての感情が入り混じった心を、あたしは一言で言い表す事が出来ない。

そして何よりも、あたしの中に飛び込んできた映像には、日浦のおじさんの優しい目が最後に焼き付いていた・・・。



頬が暖かい・・・。

気が付くと、あたしの頬は涙でぬれていた。


泣いたのなんていつぶりだろう。

でもこれはあたしの涙ではない。

「あの人」の涙なのだ。

肉親を次々と殺されて・・・それが自分のカラダの中に眠る「神」の力のために、

最愛の家族が犠牲になっていったと知らされた「あの人」の気持ち・・・。


カラダが大きい以外、どこにでもいる普通のお兄さんだったよね・・・。

ちょっと間の抜けた感じだけど、弱い人には迷いなく手を差し伸べられる優しいお兄さん。




ていうか、天叢雲剣さん、

あなたはどれだけの事実をあたしに教えてくれたのか・・・。


カラドックさんや、ケイジさんから衝撃の事実はたくさん聞かされたけども、

下手すると、このサイコメトリーが一番の衝撃を受けたぞ?



そして最も衝撃を受けたことは・・・


ケイジさん・・・あなた。


あたし達の主の・・・最愛のお姉さんを殺したのは・・・


あなた・・・なんだね。





世界が別々・・・という概念を先に聞いておかなかったら理解できないままだったろう。


以前、夢で見た・・少年を短剣で刺した白人将校の人、

そして、天叢雲剣からサイコメトリーで視えた、ライダースーツに身を固めた拳銃を手にした黒髪の青年・・・、


年齢に開きがあるようだったけど、二人はほぼ同じ顔だった。

そして何か法則性でもあるのか、二人はほとんど似たような死に様だった・・・。


ケイジさんに対して、あたし自身が憎しみや憤りを覚えることはないけども、

ある意味凄いよ、ケイジさん、

別々の世界において、それぞれまた別々の天使と相対し命のやり取りをしているのだから。


おそらく、ケイジさんが、前世でやらかしたと言っていること、

もしかしたらこの天叢雲剣が見せてくれた映像に近いことをやっているのかもしれない。


・・・勿論、詳細もわからないし、そこに深いわけがあったのかもしれないけども。



それにしても、もしケイジさんの異世界転生に、

あたしたちの主の思惑が絡んでいるとしたら・・・

いったい、ケイジさんに何をさせるつもりなのだろうか?


けれど、カラドックさんの世界のケイジさんは、あたしたちの「主」の孫娘と恋人関係にあり、・・・それでも彼女を守り切れずに死なせてしまった・・・。


図らずも、あたしは先日、その二人を丸ごと助けてしまい、

ケイジさんは前世での心残りの一つを解消させたみたい・・・。


・・・慈悲なのか?

それとも同情?

あたしたちの「主」は自分のお姉さんを殺されたにも関わらず、

あたしにケイジさんを救ってあげろとでも?


いや、待って。

じゃあ、少年は?


天叢雲剣で見た映像の中に「少年」は一切関わってこない。

ていうか、年齢的にケイジさんの父親であることも不可能だ。

天叢雲剣の世界ではケイジさんと少年は親子ではない?

あたしの印象だと、天叢雲剣の世界の中のケイジさんは、

ライラックさんやマーゴお姉さんと同じ組織の人間という雰囲気だ。

まぁ、この異世界でもケイジさんはマーゴ・・・じゃなくてマルゴット女王の甥だそうだから、その点ではむしろ違和感はないのだけど。


・・・そういえば、最初にあの夢を見た時も、

白人将校の人が誰かに似てると思ったら、マーゴお姉さんを思いだしたんだよね。

・・・あれ?


そうすると変だな。

ケイジさん・・・の元の人のお母さんは日本人の加藤さんで・・・あれ?


ていうか、世界が違うせいなんだよね?

ケイジさんの前世は、あくまでもカラドックさんの世界だから、

あたしたちの「主」がケイジさんに憎しみを覚えることもないだろう。

むしろ、異世界に転生させたとしたら、企んだのは「主」ではなく「少年」のほうか?


いや、そもそも天叢雲剣の世界があたしの世界かどうかも怪しい気がする。

なにせ「少年」の気配がどこにも感じないのだ。

「主」があれだけ暴れまわっているにも関わらず、接触したり関係者を送り込んでいる気配もない。

単にあたしが感知できないだけの話かもしれないけどさ。



あああああ、もうわからなくなってきたあああああっ!!

いくら考えてもきりがない。

明日は魔人とやらの黄金宮殿を目指すのだ。


・・・黄金落ちてないかな・・・


あ、いや、そうじゃなくて、

戦いになるとしたら、こんな前世のお話とかはどうでもいいこと。

明日はそっちに集中しないとね・・・!



あれ?

そういえば・・・魔人クィーンも・・・転生者なんだっけ!?

まさか・・・これ以上・・・話が・・・複雑にぃぃぃぃぃっ!?

 

次回、いよいよ魔人クィーンの居城へ!!


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