第二百五十七話 ぼっち妖魔は気づいてしまう
おおおお、評価とぶっくま、ありがとうございますー!!
「ケ、ケイジさんは・・・実の父親を憎んでいるってことなんですか・・・。」
あの少年の息子かー、
どう育つんだか想像つかない。
といっても、カラドックさんにしても、ケイジさんにしても、
彼に育てられた、というわけではないんだよね。
あくまで遺伝子上の父親、というだけであって。
「・・・その答えは・・・いや、
とりあえず、転生した今はもう恨みも憎しみもないな・・・。
ただ、父親として認めることは今後も絶対にない。」
へぇ、それはちょっと意外に感じる。
「そういうものなんですか・・・。」
まぁ、あたしにそれを否定する根拠も意味もないけど。
「あいつには前世の死に際に、真実を教えてもらったからな。
あの男は紛れもなく、人間なんかじゃなかった。
あの男に父親の姿を求めたオレが間違っていたんだ・・・。
最後にそれを思い知らされた・・・。
だから・・・恨みとかは・・・消えたんだ。」
なんかここも重要な事実があるような気がするけど、
聞くのが怖いな・・・。
今はスルーしよう。
「・・・それは・・・わかりましたっていうか、
わかったことにします。
でも・・・それはカラドックさんは何も悪くないんですよね?
目の前にケイジさんがいると知ったら、カラドックさん喜ぶのでは・・・。」
「かもしれない。
けれど、オレは前世で父親を憎むあまりに、償いきれない罪を犯していくんだ。
そして後にカラドックはそれを知ってしまう。
・・・その後に・・・
この後に、カラドックが向こうの世界に戻って・・・オレの罪を知って・・・
『じゃあ、あの異世界での恵介は、何を呑気に自分との再会を喜び合ってたんだ!?』なんてことになってみろ!!
それこそ、オレは最低の男だろうっ!?
もう、オレは・・・これ以上、カラドックに軽蔑されたくないんだ!!」
「そこまで言うなんて・・・ケイジさん、
一体何を・・・。」
「聞かないでくれ、
この場でそれを言ったら、リィナも麻衣さんもオレを軽蔑するだろう・・・。
オレも男なんだ。
女の子に軽蔑されたくはないさ・・・。」
ケイジさんがそんな悪人には思えないんだけどね。
でも・・・追い詰められた人間は、普通の精神状態ではなくなってしまうのだろう。
「え・・・と、じゃ、その話はそれでいいとして・・・
カラドックさんはケイジさんに、死んだ弟さんの境遇を重ねているようでしたけど?」
「ああ、それはそれでいいと思っている。
カラドック自身も、この世界でオレに最初に会った時に、自分の自己満足で構わないようなことも言ってたしな。
このままこのパーティーで、
魔人や・・・事によっては邪龍も倒し、
オレがグリフィス公国に凱旋できれば、万々歳ってことになるんだろう。
あいつをずっと騙しているようで申し訳ないが・・・、
恐らくそれがみんなが幸せに終わる・・・結末だと・・・思いたい。」
それでいいのだろうか・・・。
果たして本当に。
いや、もともとあたしには何の関係もない話だ。
マーゴさんにはお世話になったから、何かしらで恩返し的なことをする分には抵抗ないけども、
その息子だというカラドックさんに何か求められているわけでもないし。
逆に少年には恨み言しかないぞ?
それこそ、あたしに何の義理もない。
ケイジさんの言うように、ただひたすら不干渉を決め込むだけでいいのだろうか?
でも、リィナさんは・・・あたしたちのご主人様的な人の血縁者っぽいし・・・。
複雑だー・・・。
「まぁ、話は・・・一応わかりましたけど、
あたしの知っている人と、ケイジさんたちのお父さんとは世界が違っているというのは・・・。」
「ああ、オレも最初に麻衣さんの世界の話を聞いた時には、違和感を感じまくっていた。
逆にカラドックの昔話は殆どオレの記憶と一致している。
だから、オレとカラドックが同じ世界から来たのは間違いないだろう。」
そうかぁ。
「あとそれともう一つ・・・。」
「はい、まだ何か?」
「麻衣さんは夢で前世のオレの姿を見ている。」
ふわあああああああっ!?
また衝撃の事実きたーっ!!
もう勘弁してくださーい!!
「間違いないと思うぞ、
今はこんな狼フェイスだから、オレの前世の顔なんて想像できないだろうけども。」
「はい!?
でもなんでそんなきっぱりと・・・
あ、夢でってことは・・・前回あたしが喋った内容の中にケイジさんが登場してる・・・ってことですよね。」
「そうだ・・・。」
え、てことはてことはてことは・・・。
でもあの時語ったのは、二つの夢・・・登場人物に日本人なんて・・・
少年と女性の加藤さんだけで・・・
「あ・・・ケイジさんてハーフなんでしたっけ・・・。
あれ? でも少年の名前は斐山・・・ああ、日本人・・・じゃないのか。」
苗字が日本の苗字だから日本人と思ったけど、
考えてみれば少年の風貌は日本人離れしてるよね。
「・・・。」
ん?
ケイジさん、何か隠してるな・・・。
さっきの話以外にも・・・。
ただ・・・あの時の夢の中には大勢の人間が登場してたと思うけど、
ケイジさんたちに対して喋ったのはそのうちの一部の人だ。
消去法で考えられるのは・・・
「少年が短剣で刺された時・・・。」
「そうだ、あいつを刺したのがオレだよ。
そしてその後、オレは殺された筈だ・・・。」
「あ・・・」
思い出せ、
確かあの時の夢に出てきたのは・・・
少年と・・・腰に剣を差した白人将校の人・・・。
「少年を刺した後、まるで叱られた子供みたいに逃げ出して・・・」
あ、ケイジさんが笑った?
「・・・叱られた子供みたい、か・・・、
そう、そこでオレの記憶は途切れた。」
「空からレーザーみたいな強い光が、その人を飲み込んで・・・。」
「そこでオレは死んだんだな・・・。」
「・・・。」
なるほど・・・。
ケイジさんの前世の死についてだけど・・・
なぜかあたしはそれほど重要な気がしなかった。
冷たいと思われるかもしれないけど、
立派にこの世界に転生を果たしたんだから、悲しむ必要すらないと思う。
ただ、その後、
「少年」・・・彼は何か言ってたはずだ。
独り言のように・・・
自分の行いを後悔するかのように・・・。
確か人の名前を・・・
女の人と男の人の名前を・・・
ああ、あれは・・・
加藤さんと・・・その息子さんの名前を呼んでたんじゃあないのか・・・。
あいつ・・・
バカじゃないのか・・・
もしかして・・・人間を理解しようとするあまり・・・
人間に近づきすぎて・・・
人のしがらみから抜け出られなくなったんじゃないの?
まあ、かつて悪霊に近づき過ぎて、その悪想念にモロに感染してしまったあたしが言えた話ではないけども、
天下の天使さまが何をやっているのか。
・・・あれ? 待て・・・、
あの時、悪霊を覗きすぎると危険だとあたしに忠告したの、あいつじゃん!
似たようなことして自分がハマってんじゃん!?
なんという皮肉めいたお話だろうか。
でも・・・
そう考えると・・・
ケイジさんも、
加藤さんも、カラドックさんも、
いやマーゴさんですら、
元々少年の味方・陣営と考えるより、
あたし達の造物主さまが、天使を堕とすために用意された刺客という考えは・・・
さすがに、あたしの妄想かな?
「麻衣さん?」
「ふわっ!?」
やばっ、考えすぎてて意識が飛んでしまってた!
「大丈夫かい?」
「あ、ええ、どうにかこうにか・・・理解は。」
「それで・・・オレの頼みの方は・・・。」
「あ、え、ええと、
はい、干渉しないってことでいいんですよね・・・。
何があっても・・・。」
「ああ、万一、別の原因でオレの過去がバレたとしても、
麻衣さんは無関係な話と割り切ってくれればいい。」
「・・・。」
「・・・卑怯者だと思うかな?」
「えっ・・・。」
う・・・うん、
そう・・・考えることも出来るよね。
「本来なら全てを告白しカラドックに許しを乞うべき・・・てのが優等生の答えなんだろうけどな・・・。」
ケイジさんが自虐的な笑みを浮かべる。
確かにケイジさんがあたしに頼んだことは、
悪事を行った者が、それを目撃した人間に見なかったことにしてくれと、口止めしているのと同じ行為だ。
とはいえ、あたし的には、その「悪事」とやらが何なのかわからないし、
そもそもそれを糾弾する立場でさえもない。
「それを・・・あたしが口にすることじゃない、と思います・・・。」
「そうか・・・。」
「どうしても、というなら、ケイジさんが卑怯者かどうかを、
部外者のあたしに聞く方が卑怯な気もしますね・・・。」
「・・・そう・・・だな、
ハハッ、これは言い返すこともできないな・・・。
すまない、
部外者の方が偏見を持たずにオレを見極めてくれるかと思って聞いたんだが・・・、
確かに麻衣さんの言う通りだな・・・。
オレは何を甘えているんだろうな・・・。」
この後・・・ここまで聞いた情報を全て整理して、
ようやくあたしは気づくことになる。
もちろん、それは全て事実かどうか確かめられるものではないけども、
やはりあたしはこの人たちに、何かを教えるために、この世界に飛ばされたのだろう。
・・・ただ、
現時点では、さっきも言ったように、情報が溢れすぎて、考えが追っつかないだけだった・・・。
後一回で、ここのシーン終わるかな?
これから下書き!