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第二百五十六話 ぼっち妖魔はお話を聞く


 「ケ、ケイジさんが転生者っ!?

 でも・・・でもステータスに何も表示されてないじゃないですかっ!?」


ここに来て、またもや驚愕の事実が明らかになった。

あたしの感知能力や巫女のジョブなど、本当に当てにならない。

人よりほんのばかし、アドバンテージがある程度なのだ。


 「そうだろうな、

 それに関しては、オレのこの世界のおふくろが結界師でな、

 オレが生まれてすぐに称号の欄を隠蔽したんだ。

 ・・・おふくろが亡くなる直前にオレはそれを知らされて・・・

 そしてそのおふくろが亡くなった瞬間・・・

 前世の記憶が蘇った・・・。」


へえ?

これまでのあたしの冒険者の知り合いに、

結界師なんていなかったな、

召喚士並みのレア度なんだろうか。


 「結界師・・・結界師って他人のステータスも隠蔽できるんですか?」

 「そうらしいな、

 オレも自分のステータスウィンドウで、辛うじて隠蔽の操作表示があるから、その称号の内容を確認できるが・・・

 オレが術士って訳じゃないから、一度隠蔽を解いたら、もう二度と隠すことは出来なくなる。

 もちろん、どこか高位の結界師を新たに見つけてきて、もう一度同じスキルを使ってもらえればいいんだろうけども。」


 「・・・なんか凄い裏テクを聞いてしまった気がします・・・。

 そ、それで・・・えっ、あ、じゃ、リィナさんは?」


カラドックさんの話だと、リィナさんのそっくりさんが、元の世界で亡くなっていたらしい。

なら、その人の転生した姿という可能性は十分にあるのでは?


 「・・・・・・。」


おや?

リィナさんは何も言わない。

うーん、代わりにリィナさんからは、例えようもない不安感を感じるね・・・。

ある意味、ケイジさんと正反対だ。

ケイジさんからは迷いのない覚悟と信念のようなものを感じる。

リィナさん、何か心配事がありそうだ。


 「・・・オレもリィナは李那の転生した姿と思いたいんだが、

 今のところそれを示す称号は何もない。

 もちろん、リィナに前世の記憶はないようだ。」


ん? 今の話だと、ケイジさんも李那さんて人の知り合いになるのか?

なんかそんな流れだよね。

わざわざ確かめなくても良さそうかな。


 「ケイジさんみたいに途中で思い出す可能性は・・・。」

 「ないとは言えない。

 ただ、今のところ確かめようもない話だ。」


それはそうか。

 「そ、そうですか、

 それで・・・なんであたしに・・・それとどうしてわざわざ内密に?」


 「まず一つ・・・

 オレの正体をカラドックに知られたくない。

 今後も麻衣さんは予知夢や何かで、オレらも知らなかった驚愕の事実を口にするかもしれない。

 そんな時、オレが狼狽えてしまい、カラドックにバレるような事態を避けたいんだ。

 ・・・できれば麻衣さん・・・君に、協力を求めたい・・・。

 麻衣さんには何もメリットがないから・・・

 本当に世話になってばかりで申し訳ないんだが・・・。

 対価を求めると言うなら、金銭や何かオレに出来る事があれば、何でも言って欲しい。」


 「え、あ、いえ、今のところあたしもお金とかは必要ないので・・・。」


 「今すぐ思いつかないなら、後からでもいいさ。

 カラドックにさえ気づかれないなら、君の奴隷になってさえもいいと思ってる。」


はい!?

何言い出すの、この人は!?

 「いいいい、いやいや、何言ってるんですか!?」


バチン!

リィナさんがケイジさんの頭をはたいた!

 「ケイジのおバカ!!

 物には限度があるでしょっ!!」


そりゃ、リィナさんだって慌てるよね。

 「で、でも、とりあえず、理由を聞かせてもらえませんか?

 そ、そりゃ、人様の過去をペラペラしゃべるつもりは有りませんけど、

 あまり特定の人に肩入れするってのもなんだし・・・。」


この先の展開が全く読めない。

まさか、ケイジさんとカラドックさんで争いごとになるとか?

その場合、あたしはどっちの味方になれと言うのか?


 「なるほど、それはその通りだな、

 少なくともオレとカラドックは元々敵同士ではない。

 ・・・だが、全てが明るみになった場合、

 カラドックはあいつの意志如何に関わらず、オレを処刑しなければならない立場なんだ・・・。」


 「はぁぁぁあぁ!?」

 「麻衣ちゃん、声大きいっ!!」

リィナさんに怒られた。

ヤバい、

確かに声が大きくなってしまった。

・・・向こうの人達には聞かれてないかな・・・。


 「ご、あ、ごめんなさい、でも・・・なんで・・・。」

 「それは今から最低限の事は話すよ、

 でもどっちにしろ、麻衣さんはオレたちの間に関しては、

 干渉しないという態度を取ってくれさえすればいい。

 そうすれば、オレやカラドックのどっちの味方になればいいかなんて、悩まずに済むだろう。」


 「あ、な、なるほど・・・

 って、ケイジさん、カラドックさんとそんなに深い関係なんですね・・・。」


 「カラドックから聞いたろう?

 あいつの腹違いの弟・・・それがオレ・・・加藤恵介さ。」


はっ?


 「えっ

 そ・・・それって・・・部下の裏切りで殺されたっていう・・・

 ん? ちょ、ちょっと待ってください?

 加藤・・・て・・・。」


 「麻衣さんが夢で見たっていう女性は、恐らくオレの母さんだ。

 アイツのことを斐山君と呼んだんだろ?

 なら間違いないと思う。」


 「・・・理解が追い付かない・・・。」


 「気持ちはわかる・・・

 ていうか、オレにしてみれば、麻衣さんがオレらの世界の過去の出来事を夢で見ていたなんて方が、理解できない話なんだが・・・。」


 「あ~、それはまぁ・・・。

 えーと、えーと、ケイジさんがカラドックさんの腹違いの弟で・・・

 ケイジさんの前世のお母さんが、あたしの夢で見た加藤さんと・・・。

 え・・・てことは?

 ケイジさんのお父さんは・・・まさか!?」


 「ああ、カラドックと同じ、

 斐山優一と呼ばれた男だ。

 後に天使シリスと呼ばれるようになる。」


マジかい!!

 

 「あああああ、どうしよう、

 思いっきり、この異世界転移に誰かの思惑を感じるぅぅぅ。」


 「それについてはオレも思うところがある。

 ただ、今は麻衣さんに、オレの立場だけ理解してもらえればいい。」


そうは言ってもね?

 「え、あ、あの、

 義理とは言えご兄弟なんですよね?

 確かカラドックさんは、弟さんとは仲は悪くなかったって・・・。

 どうして・・・そんな?」


 「それこそがまさにオレがカラドックに正体を明かせない理由なんだ。

 カラドックはオレが部下の裏切りで殺されたと思っているようだが、

 実際にはオレはその後も生き永らえた・・・。

 李那を目の前で殺されて、

 守ることも出来ず・・・たった一人生き延びちまった・・・。」


 「それって、カラドックさんにあわす顔がないってことですか・・・。」


 「もちろん、それもある、

 が、それだけじゃない。

 麻衣さん、君はオレの父親に会った事があるんだったね。」


 「・・・ええ、まぁ。」

 「人としてどう思った?」


それは・・・いくらなんでも人の父親について、本人の目の前で・・・


 「・・・え、と・・・。」

 「遠慮はいらない。

 言いにくいなら先に言おう。

 あいつは最低最悪の男だ・・・人間としてはクズの部類に入る。」


 「・・・ああ。」

 「麻衣さんは、何か因縁があるようだったけど・・・。」


因縁なんてもんじゃないけどね。

 「・・・夜の学校に連続殺人鬼と一緒に閉じ込められました。

 あたし自身はおまけとして扱われていたみたいですけど、

 とある人物やその関係者がどんな動きをするのか、観察したかったみたいです。」


 「・・・クズどころの話じゃないな・・・。

 人の命をモルモットか何かとしか見ていないんだ・・・!」


それについては同意する。

 「ケ、ケイジさんは・・・実の父親を憎んでいるってことなんですか・・・?」

 

うーん、

人の家庭環境っていろいろだからなあ。

あたしは、頭の中にパッと浮かんだ疑問を脊髄反射で聞いてみたけれど、

何か、ケイジさんの話に引っかかりを覚える。


それが何なのか、今ひとつ自分でもわからないので、そっちの方は後回しにしたい。

隠し事・・・は、ケイジさん本人が秘密にしたいと言っているのだから、

あたしの引っかかるというのは、別の部分なのかな?

あたしとカラドックさんの生きていた時代や世界も違うというなら、ケイジさんもカラドックさんと同じ時代、世界の人間だとして、それに関する食い違いの件だろうか?



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