第二百五十五話 ぼっち妖魔は告白される
あ、なんかぶっくま、いくつも増えている・・・!
みなさん、ありがとうございます!!
みなさん、こんばんわ。
麻衣です。
無事にワイバーンたちの襲撃を撃退する事が出来ました。
まだ、夜にというには早い時間かもしれないけど、
もう太陽は殆ど沈んで、お空は夕焼けというより、透き通るような紫色だ。
魔物の襲撃なんか気にしないでいいのなら、この綺麗な景色に心を奪われてもいいと思う。
日本のような建築物も何にもないから、吸い込まれそうなお空なんだよね。
さて、
この場の状況を確かめよう。
みんなの傷はタバサさんが治してくれたけど、
馬車の天井部分がボロボロになっている。
雨が降ってきたら大変だ。
もちろん、ケイジさん達で簡単な補修は済ませてくれたけど。
まぁ今晩は雲が殆どないから雨が降る心配はなさそうかな?
「ううう、戻ったら修理代がバカになりませんねぇ・・・?」
ラプラスさんが頭抱えて身をよじっている。
見てて飽きないけど大袈裟な動きをするよね、この人。
そうそう、
ワイバーンの巨体の死体なんだけど、
素材剥ぎでもするのかと思ったら、
護衛騎士さんがワイバーンの死体を細切れにして土に埋めていた・・・。
いったい何の意味がと思ったら・・・
あのロリ妖精のエサになんるんだとか・・・。
逆にそれをしなかったら、ここでも騎士さんがロリ妖精の今晩のおかずなるしかないらしい。
ユニークスキルなのか種族スキルなのか知らないけど、
あれだけの術を使ったら、そりゃそれだけの栄養を要求されるだろうしね、
仕方ない話だとは思うけど・・・うん、まぁ・・・。
今はみんなで一息ついて、暖かいお茶を飲んでいる。
そこでカラドックさんがこの後のお話をするようだ。
「ところで、この辺りだと魔人の居城まではあとどれくらいなんだい?」
「そうですな、アークレイから魔人クィーンの黄金宮殿までの直線距離にして、
3分の2程度くらいでしょうかね?」
「そこまで進んでいるのか、
ならあと一息と言っていいのかな?」
「私としましては一晩休息をいただき、MPを万全の状態で目的地に辿り着ければと考えておりますが。」
「なるほどね、
ギリギリの状態で敵地に辿り着くよりかは、安全だろう。
もちろん、距離を取った所で遠くから観察するだけの余裕も必要だよね?」
「その辺りの塩梅はお任せしますよ?」
「そうだ、一つ疑問なんだが・・・。」
「はい? なんでしょう?」
「ラプラスさんは、魔人の黄金宮殿とやらに行ったことが?」
「・・・ございますよ、商人としてですがね。」
「その時には、魂の召喚とか邪龍については何か情報を?」
「いえ、
今申しましたように、商人としていろいろな取引に応じただけでしたからな。
そもそも魔人クィーンにも会えたわけではありません。
配下の者と商取引を行った、ただそれだけの関係です。」
その後も、カラドックさんがラプラスさんと打ち合わせをしている間、
あたし達は野営の準備をする。
こんな大型の馬車があると、その中で寝泊まりできるから楽だね。
それにしても、国から国の移動には何日もかかるのに、
ラプラスさんの飛行スキルはさすがだと思う。
実質まる一晩でアークレイから魔人の居城に辿り着けるというのだから。
果たして鬼が出るか蛇が出るか、
なんとなく蛇が出てきたら嬉しいなぁ、思うのはあたしだけだろうか?
ちなみに明日、あたし達が遭遇するであろう魔人の一団とのイベントについて、
察知スキルのようなものは働かない。
遠隔透視もするつもりもない。
さっきの話から、ある程度の距離は想像できるので、覗こうと思えば覗けるだろう。
でもラプラスさんによると、魔人の魔力はあたし達の誰よりも強力だとか。
そんな人を覗こうと思ったら何らかの反撃を覚悟せねばならない。
リスクの方が高すぎる。
まぁ、今夜の所はこれ以上、何も起きないだろう・・・
そう思っていた時があたしにもありましたよ・・・。
みんなで夕飯を食べた後、
あたしはある人の強い決意を感じた。
・・・何故か対象はあたしに。
なにごと?
その思いの発信者は誰かと思ったらケイジさんだ。
なんであたし?
まさか、こ、こ、こっこコ告白タイム?
それは困るよっ、いくらあたしが種族にはそんなに拘らないと言ったって、
あくまでそれは普通に仲良くするだけの話で、あ、いや、
そうじゃないから!
そっ、それはない!
さすがにそれはあたしの自意識過剰だ!
だ、だいいちケイジさんにはリィナさんが・・・
とあたしがパニクってたら、あたしの肩を叩く人がいる。
そのリィナさん!?
「麻衣ちゃん、ごめんね?
ちょっと寝る前に時間作れる?」
「あ、は、はい?
それは・・・でもリィナさん、あれ?」
見たらリィナさんとケイジさんでアイコンタクトをしていた。
あたしに用があるのはお二人で?
そ、そうだよね、別にケイジさんにモーションかけたつもりは・・・
ほとんどないけど(全くないとは言わない)、こんな女子校生相手に間違い犯すような人じゃないよね、うん。
「話があるのはケイジなんだよ、
でも他の人に聞かれたくないから、あたしが周りの見張り役でね。」
え? え?
いったい何の話を?
あたしがキツネにつままれたような顔をしていると、
申し訳なさそうな顔をしたケイジさんが近づいてきた。
「実は麻衣さんに聞いてもらいたい話がある。
・・・でも内密にお願いしたいんだ。
これからオレがする話を・・・誰にもしないと約束してくれないだろうか?
あ、もちろん、麻衣さんに迷惑をかけるような話じゃないんだ・・・。」
なんだろう?
確かにあたしに危険が迫るような兆候も雰囲気もない。
取りあえず、あたしたちは3人でみんなの所から離れることにした。
もちろん、急にあたし達の姿が見えなくなっても心配されるだけなので、
互いにその姿が辛うじて見える範囲に・・・。
「麻衣さんは鑑定スキルを持っているんだろ?
オレのステータスが見える?」
「あ、み、見ていいんですか?」
「ああ、是非見て欲しい・・・。」
何かあるのだろうか?
あたしはケイジさんのステータスを・・・
うおおおお?
なんだ、このレベルはあああああ!?
滅茶苦茶レベルが高いぞぉぉぉっ!?
「オレのステータスに何かおかしなことでもあったかい?」
「え? ・・・て、い、異常でしょう!?
な、なにと戦ってたらこんなレベル上がるんですかぁ!?」
今までカタンダ村は勿論、キリオブールの街でも、冒険者だろうが衛兵の人だろうが、
こんなレベルは見た事ない。
さすがにAランクってことだけの話ではなさそうだ。
「それについてはおかしなことはないさ、
オレの戦闘歴は50年以上だ・・・。
人だろうが魔物だろうが、それだけの間、戦い続けていたらレベルも上がるだろう。」
え?
「ご・・・50年?
ケイジさんてまだ・・・20代・・・では。」
リィナさんの方を見ると、彼女は黙ったままだ。
リィナさんも知っている事実なのだろう。
あたしの当然の疑問に、すぐに思い付く回答が一つある。
でもケイジさんの称号は何もない。
何もないなら・・・
いや待て、ステータスウィンドウが当てにならないのは吸血鬼エドガーの時に学んだじゃないか。
・・・いや、あの時はエドガーが高位の魔物だったからこそ・・・
え?
ええ?
まさか?
「ケイジさん・・・?」
「麻衣さん・・・オレは転生者なんだ・・・。
カラドックと同じ世界のな・・・。
半分、日本人だよ。
15,6の頃まで日本で暮らしていた・・・。
ちなみに最初の剣の師匠は、麻衣さんも知っているガラハッドな。」
な、なんだってーっ!?
・・・どこかの媒体に魔人クィーンの正体を明らかにしてしまいました。
そのうちここでも画像を出したいと思います。