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第二百五十三話 ぼっち妖魔は最前線へ向かう

評価ありがとうございます!!


 「あ!?」



ピキィンという破裂音と共に、タバサさんのプロテクションシールドが破られた!

シールドを張りなおすことは可能だけれど、

その一瞬のすきに、こちらの想定以上のワイバーンが何匹か侵入してくる。


 「・・・くっ、ダメだ・・・

 精霊たちの存在は感じるのに手が届かない・・・!」


ベディベールさんは精霊術の素質があると言ってたけど、

まだうまく使いこなせないようだ。

あたしにとっても精霊なんて未知の概念だ。

ベディベールさんの微妙な表現も理解しづらい。


 「・・・自信を持つのじゃ、ベディベール、

 精霊の存在を感じるのなら、もう扉を開くのは焦る必要などない。

 委ねるのじゃ・・・。

 彼らの存在の流れに・・・。」


ベディベールさんはあたしと年が近いせいか、

なんとなく学校の部活で頑張っている先輩を見ているような雰囲気だ。

是非、黄色い声を飛ばして応援したくなるような人である。


とはいえ、今現在、いろんな意味でそんな余裕がない。

あたしに出来る事。


その為にはまず!


 「カラドックさん!!」

カラドックさんは精霊術続行中だけど、会話する余裕があるみたいだ。

なら協力して欲しい。


 「どうしたんだい、麻衣さん!?

 何か異常でも?」


 「いえ、お願いがあります!

 あたしのジョブチェンジをお願いしたいんですが!」

 「そ、それはいいけど、戦闘に参加する気かい!?

 でも君のステータスだと・・・。」


 「矢面にはもちろん立てませんが、皆さんのお役に立てることはあります!

 お願いします!!」

 「麻衣さん、・・・君は強い子だな・・・

 尊敬するよ・・・。」


真正面から髭イケメンのカラドックさんに見据えられて、ちょっと照れるのだけど、

残念ながらその状態を満喫している余裕はない。

とっととステータスウィンドウを開いてジョブチェンジを済ます。

 「麻衣さん!

 なら、私やケイジ、後はブレモアやヨルさんの前には絶対に出ないでくれ!

 前衛職の後ろをキープする事!

 大丈夫かい!?」

 「わかりました!

 ありがとうございます!!」


さぁ、鑑定士から巫女にジョブチェンジ終了。

別に鑑定士のままでも感知スキルは使えるし、他の召喚・虚術と言った各種スキルも大丈夫なのだけど、それぞれの術の精度・威力はやはり専門職に就いた方が確実である。

ましてや次に控えてる、ラプラスさんのマスターさんには巫女のレベルを上げといたほうが有利とのことだ。


ならばここで経験値を溜めさせてもらいましょう!!


すでにタバサさんはプロテクションシールドを張りなおし終えている。

だが、このマイクロバス並みの大きさの馬車を全て包み込む必要があるために、

その内側に何匹ものワイバーンの侵入を許してしまっていた。


 ギュエエエエエエエエッ!!


後方からあたしとカラドックさんの元へ一匹のワイバーンが迫る!!


 「あっ! カラドック!

 一匹取り逃がした!!」

リィナさんが叫ぶ。


無理もない。

リィナさんの武器は神剣天叢雲剣とはいえ、能力を発動しない以上、それはただのブロードソード。

1メートルにも満たない刀身ではワイバーンの急所に刃を届かせる事自体困難だ。


 「任せて・・・くっ!!」


カラドックさんはすぐさま対応!

いつの間にか、用意していた両手剣でワイバーンの攻撃を薙ぎ払うも、

ワイバーンを倒す決定打には至らない。

ていうか、カラドックさんて剣も扱えるんだ。

そういえば適性職業に騎士もあるって言ってたっけ。

なに、この完璧超人?


 「麻衣さん、後ろに下がってて!

 これ以上は・・・!」


いえいえ、

お任せくださいな、やるといったらやりますよ、あたしは!!

もう出し惜しみしません。

手札をさらに公開しましょう!!


あたしはカラドックさんに鈎爪を向けようとしているワイバーンに左手を翳す!!

 「『この子に七つのお祝いを』!!」


 「麻衣さん!?」


カラドックさんの疑問に答えるのは後!!


状態異常!!

・・・抜け毛!

・・・ショック!

・・・痙攣!

・・・貧血!

・・・呼吸困難!

・・・呪い!

・・・黄疸!


うおおおおおおおっ、

軒並みステータスがダウンしていく感じ!

・・・抜け毛だけはよくわからないけど・・・。

ワイバーンに毛はないよね?


けど、あからさまにワイバーンの動きが瀕死に近い状態にまで変化しては、

もはやカラドックさんの目の前には何の脅威もないはず!


そしてカラドックさんは一発でそれを理解した!!

 「ウィンドカッター・収束!!」


あ・・・凄い。


分散して拡がる筈のウィンドカッターの刃を、ほぼ一か所に集めてワイバーンの頭部を斬り刻んだ・・・。


これなら殺傷力の低いエウィンドカッターでも瞬殺できるね!

頭部を失ったワイバーンが大地の底へ落ちてゆく。


 「凄いですね、カラドックさん!!」

 「い、いや、と言っても、命中率はそれほどでもないから、

 これだけの近さに接近されないと役に立たない小技さ・・・

 って麻衣さんの今のスキルは!?」


 「あたしだけのユニークスキルです!

 効果はランダムですが、敵に状態異常を7つ同時にかける必中スキルですよ!!」



開いた口が塞がらないといった感じのカラドックさん。

そんな化物を見るような目で見ないでくださいね?

あたしから見たら、カラドックさんの異常な魔力や精霊術も化物にしか見えないレベルなんですから。



そこであたしは先頭方向に振り返る。

馬車の先頭では激しい戦いが行われているようだ。

行かないといけない。


 「麻衣さん・・・。」


あたしはカラドックさんにニコっと笑う。

この人が「少年」の息子さんだろうと関係ない。

この人が、あたし達リーリトの大事な人の敵だったとしても、今は関係ない。


だから行く。


自分の手で。

例え与えられたスキルだろうと、仮初の術しか持っていないとしても。







途中、ケイジさんやイゾルテさんの後ろを通り過ぎる。

 「お二人とも大丈夫ですか?」


ワイバーンは横面からは攻撃をかけづらいようで、

比較的ケイジさんやイゾルテさんは安全に見える。


 「はぁい!

 麻衣様、こちらは気にしないでください!!」


頼もしいセリフだけど、それってケイジさんとの濃密な時間を邪魔するなってことじゃないよね?


 「問題があるとすれば、矢の本数に限りがあるってことだな。」


うわっ、それはヤバい。

早めにケリつけないと!!


そしてその後、ラプラスさんの横を通り過ぎる。

 「はい、ごめんなさい、横、通りますね。」

 「・・・麻衣さま。」


ん?

何かあたしに用かな?


 「・・・この後の話ですが・・・我らがマスターをよろしくお願いします・・・。」


この人からは、そのマスターって人を思いやる心しか感じないな・・・。

あたしたちの・・・ご主人様的な人を愛した女の人か・・・。


そして彼女は元の世界で何かあって・・・お亡くなりになって、

こっちの世界に転生したというわけらしいけど。


・・・やっぱり時系列がおかしい気がする。

あたしが二年前に「あの人」に会った時は、あの人は二十歳前後に見えた。


ラプラスさんのマスターは転生してこの世界で何年過ごしたのだろう。

なんでもマスターさんは、

ラプラスさんや布袋さんを産み出すまでに、

ずっと誰もいない洞窟の中で一人で、その場所から動くことも出来ずに、

ただただ、その想い人の思い出だけで生き永らえてきたのだとか。


まともな神経してたら気が狂いそうになると思う。



その人の転生って奴も、

今回のあたし達と同じく誰かの意図によるものか、

それとも偶然なのか・・・。


誰かの意図だとしたら、かなり性格がねじ曲がっていると言わざるを得ない。

あたしたちのご主人様がそんな事を考えて・・・とは思いたくもない気がするけど・・・。


あたしの過去を振り返っても、

確かに「ご主人様」的な「人たち」が直接あたし達に干渉してきたというわけでもない。

・・・なんていうか・・・

向こうは向こうの理屈で動いていて・・・

その道筋にあたし達がたまたまいたから、手を差し伸べてくれた・・・


そんなイメージなんだよね。


ただ、今回の異世界転移は全く別の話。

何かしら・・・

いや、まだ首謀者が「あの人」と決まったわけじゃないけど、

何かしらの介入はしている気がする。


だから何らかの意味はあると思うんだ。


まぁ、いいでしょう。

あたしは「あの人」を異性とは見てないけども、

「あの人」に惹かれるという女性としての気持ちは理解できる。

敢えて干渉する気もないけども、夢を見せてあげることくらい、何でもないことです。


 「・・・ええ、会えるのを楽しみにしてますね。」

 「ああ、麻衣様・・・。」


ラプラスさんまであたしを尊い目で見始めたよ!!

いや、この目はカラドックさんやケイジさんとも違う目だ!!

何か方向性が違う気がする!!


さ、さぁ、さっさと先に行きましょう!!


 

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