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第二百五十二話 ぼっち妖魔は花の女子校生

<麻衣 視点>


うあああ、やっちゃた、言っちゃった、バラしてしまった!


今のところだけど、カラドックさんはあたしのことを敵陣営とは考えてない。

あくまでも「中立的」な立場の巫女の発言として聞いてくれているだろう。


けれど、いろいろ問い詰められれば、いつかは気づかれてしまう。

あたしがカラドックさんのお父さんとは敵方の人間だと。


もっともそれを言い出したら、リィナさんだってそう思われてしまう可能性があるのだ。

・・・あたしの杞憂なのかな。


少なくともあたしの方からはカラドックさんに敵対する理由はない。

あたし達の定義では、

「敵方」はあくまでも天界の生物・・・

そもそも人間同士で争う必要はない。

あ・・・あたしたちリーリトが被差別的な種族であることは別の話だけど。

そっちはあくまでも人間の種族内の話だ。


話を戻そう、

何でも肝心の人物・・・「少年」は人間世界のことは全てカラドックさんに任せて身を眩ませたそうだ。

カラドックさんが人間の立場である以上、あたし達の敵になることはないと思いたいのだけど、

一番の懸念は・・・カラドックさんがこの地上の支配者となり・・・

人間全てを天空の神々に「売り渡す」こと。


もしそれが少年・・・天使の目的だったら?

それこそが天使が地上に降り立った最大の目的?



だとしたらあたしは絶対にそれを許さない。

どんなことをしてでも、阻止する。


ただ・・・現状、あたしはそこまで危機意識を持っていない。

カラドックさんは自分の父親のことを冷静に分析している。

話を聞く限り、カラドックさんは自分の父親のことを、

尊敬すべき点は尊敬して、

認めない部分は冷静に切り捨てているような感じだ。


「人間を神々に売る」

その気になればできるのかもしれない。

けれどそんなマネはしない。

あ、そもそもそんな発想自体持っていないか、カラドックさんは。


たぶん、そんな感じなのだろう。


考えてみればリィナさんだって同じようなものだ。

リィナさんはカラドックさんの敵方の血縁者(の転生者?)の筈である。

けれど、カラドックさんがリィナさんに危害を加えることは絶対になさそうだ。


どうも・・・

いや、これに関しては確実かな、

天使の方も、あたしたちの「ご主人様」的な存在も、

あたしたち人間には、直接ああしろ、こうしろなんて命令したり指示したりする気配が何にもない。


ああ、そうか、これが「人間には干渉しない」というお決まりか?


うん、まぁ、だからこそ、

あたしが心配してるのは、人間側が自分の意志で「天使側」についてしまう事なんだけれども。


・・・少なくともこの異世界で、

魔人討伐のクエスト中は、そんな話にまで発展しないと思っていいのだろうか?


ん・・・いや、



・・・もしかしたら、

あたしの着眼点そのものが間違っているのだろうか?


そもそもカラドックさんやあたしが、

この異世界に送り込まれたのは・・・


そんな「未来」のお話とは直接は関係のない・・・

もっと単純なお話だとしたら?


 「少年が人を愛することを覚えた・・・」


そうだ、

繋がる・・・


繋がるんだよね、そう考えると・・・。


二年前、レッスルお爺ちゃんと少年のやりとり・・・

話の全容はぼかされたけど、

レッスルお爺ちゃんは、「人間の事を理解したいなら人を愛することを覚えろ」みたいなことを言っていた。


そしてその後に見た「少年」が登場する二回の夢・・・。


どんな経緯で・・・どんな結果に繋がるのかはさっぱり分からないのだけど、

もし、あたしやカラドックさんの、この世界への転移も・・・

どんな意味があるのか、

その「愛」とやらが、それを知る鍵の一つとなるのだろうか?


カラドックさんがこの世界に送られた時、

「勇者を救え」というテーマが与えられたという。

最初はケイジさんのことかと思ったらしいけど、

実際の称号はリィナさんが持っている。


そのリィナさんの出自もわからないことだらけだ。

「転生者」の称号はないにもかかわらず、

カラドックさんの世界の李那さんて人と瓜二つだとか。

更には、異世界アイテム天叢雲剣を持ってたり、あたし達「闇の者」が仕えるべき「あの人」の魂の系譜に連なっている。


でもそれは、単に「前世の記憶」がないと「転生者」の称号がつかないだけかもしれない。

もし、今後記憶を思い出したら後付けで称号が付くのだろうか?



・・・誰が、

何のために・・・あたしたちを・・・



そこなんだよね、気になるのは。


カラドックさんには「勇者を救え」、

あたしには何の指示もなく、単にこの世界を楽しめ的な・・・。


いや、それは・・・そもそもカラドックさんには弟さんを失ったトラウマというか、

心残りが・・・


それはもしかしたら、この異世界転移の首謀者が、

カラドックさんを動かす口実に・・・


逆にあたしには何にも・・・

いや、何にもないと思っているのか、

だとしたらあたしは怒るよ。


あたしにだって、ママという・・・

いや、それは筋違いか、そもそもあたしはその事実を認めないようにしてきた。

逆に首謀者が、そのあたしに配慮したと言われればそれまでだ。


・・・うん、

こうまで考えると、つくづくあたしは脇役なんだなぁと思う。

物語はカラドックさんを中心に回っているに違いない。

だったら、あたしは巫女としての役割を忠実に果たせばいいのか。


あたしが知った事、知らされた事は、主人公の皆様にお知らせし、

あとは彼らがその判断・解釈を進めて物語は続くのだろう。


いいですよ、

やってやろうじゃありませんか。


・・・ですけどね!

対価は貰いますよ!!

愉しませてもらいますよ!

美味しいところは貰いますよ!!


こちとら花の女子校生!!


カラドックさんがあたしを見てほっこりしてくれるのも、

ケイジさんがあたしに見つめられてあたふたしてくれるのも、

楽しんじゃって構いませんよね!?


あの二人なら、いろんな意味であたしに変なことできないでしょうし、

安心してプチハーレムを謳歌できますよ!!

あ、もちろん、リィナさんにケンカ売るつもりないので。

一線は超えないように気を付けます!



ちなみにあとでエルフのお二人に詰められた。

 「麻衣、あなたはあたしたちと同類。」

 「麻衣、あたしたちとの違いはそれを表に出そうとしないだけ。」

 「「つまり麻衣、あなたはむっつr・・・」」


あああああああああああっ!!

虚術さいれーんすっ!!

あーあー!

聞こえなーい!!

何にも聞こえなーい!!





・・・さて、

気が付いたらお空が大変なことになっていた。


ワイバーンさんたちの襲撃である。

真っ先に気付いたのは、飛行スキル展開中のラプラスさんだ。

ワイバーンの方が先にあたし達に気付いたなら、

彼らがあたし達を「獲物」と認識した時点であたしにも感知できる。


なのでワイバーンがあたし達に気づいたのは、ラプラスさんの発見後になるわけだ。

だからあたしの感知が遅れたとしても仕方ない。

危険察知能力についても同様だ。

現在、あまりあたしは危機を感じていない。


多分、今のあたしたちの戦力なら、問題なくこの襲撃を退けられるだろう。



・・・けれど、

だからといってあたしが何もしないでいるというのもおさまりが悪い。

あたしが何の力もない、本当にただの女子校生なら仕方ないと思うのだけど、


あいにくにも、あたしは守られてなんぼの非力な女子校生でもない。

これが元の世界なら、正体を隠す意味でも大人しくしていればいいのだけど、

ここでは既にCランクの冒険者。

さらに言うと、妖魔リーリトの性分としても、「女子は隅っこでも震えていればい」みたいな状況は我慢できない。


けど、正直戦う手段がない。

あたしの護衛としてならふくろうのふくちゃんは役に立つだろう。

でも、あくまでも護衛としてだ。

パーティーのみんなに貢献は出来ない。


せめて戦闘の場が飛んでない地面の上なら、虚術バンバン使って、ワイバーンなんか一掃できるんだろうけど・・・。



・・・あ、

ある。

あたしが役に立てる手段が。



・・・そう思ったら感知が働いた。

なんか来る。


ちょっと強そうだぞ?

方角を告げたら、目のいいケイジさんがその正体を明らかにしてくれた。


レッドワイバーン!?

ワイバーンの上位種だって!!

どうやらこの戦闘のボスになるようだ。




 



>単に「前世の記憶」がないと「転生者」の称号がつかないだけかもしれない。


ケイジは生まれた時に称号に「転生者」がついていたので、

この麻衣ちゃんの判断は間違いです。


ケイジとリィナちゃんとの絡みはこの後もちょっと予定がありますので、

まぁ話す機会があればその時にでも。

一応、作者的には、リィナちゃんが転生者かどうかは、

ストーリー上どうでもいい部分なのですが、


リィナちゃんご本人にしてみたら、そうは割り切れないでしょうからねぇ。


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