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第二百五十話 急襲!


麻衣さんの発言はカラドックには信じられまい。


 「麻衣さん、それは・・・それは有り得ない!

 ち、父は・・・父の能力なら・・・!?」

 「あ、はい、カラドックさんの言いたい事はわかります。

 あたしだってあの人の能力はおぼろげながら知ってますし、

 だからこそ、その光景を見た事も半信半疑で・・・。」


 「そ、それで刺された父は!?

 その父を刺した男は!?」


 「・・・少年は何かつぶやいて・・・

 独り言を・・・その後、空気に溶けるように消えてしまったんです・・・。

 少年を刺した将校は・・・何かから逃げ出すようにその場から一目散に走り去ろうとして・・・

 空から降って来たレーザーみたいな強い光を浴びて・・・」


やっぱりそうか・・・。

もはやオレには麻衣さんの予知夢とやらを疑う余地などなかった。

オレにとっては過去の物語ではあるのだが、

ここまで正確にあの時の状況を説明できる麻衣さんは・・・いったい何者なのか・・・。


いや、ちょっと待て!

消えた!?

オレに刺された後、空気に溶けるように消えただと!?

一体それは何を意味している!?



 「父上は人間の社会に二度と干渉しないと言って、私たちの前から姿を消した・・・

 では・・・そのシーンはいったい何時の話のことだって言うんだ・・・。

 いや、レーザー?

 それはキントクラウドの?」


いくら賢王カラドックとは言え、そんなものを見極められるはずないよな。

だがオレは知っている。

今の麻衣さんの語った夢とやらは、カラドックの未来十数年後に起きる事だ。


何故、オレが断言できるのか。

それはオレがカラドックの父親を刺した本人だからだ。


・・・あの場でオレは真実を聞かされた。

元々あの男を殺す気ではあったが、殺せる自信なんか何もなかった。

むしろ数十年に渡るオレの苦悩のケリをつけるため・・・

どちらかというと、オレは殺されるためにあの男に会いに行ったのだ。

その前に、あの男に恨み言を・・・オレの苦しみ、母さんの苦しみを少しでもぶつけてやれればいい、

たったそれだけでオレはヤツに会いに行ったんだ。


正直、会える自信すらもなかった。

あいつにとってはオレなど何の価値もない。

オレが死んでないことくらい、いくらでも知る手段があったにも関わらず、

ヤツはカラドックや他の家臣に知らせなかった。

それだけオレのことはどうでもいいと思っていたのだろう。

だからあの戦いで、ヤツがオレの前に現れた時、

オレの最初の感情は歓喜だった。


やっとこの地獄が終わる・・・。


どんな結末が待っているかなんて想像すらしようとも思わない。

全てが終わる・・・。


ある意味、初めてオレはヤツに感謝したんだろうな・・・。

オレの望みを叶えてくれたんだから・・・。



だがそこで、・・・オレはヤツに予想だにしてない事実を聞かされた。

・・・まるでオレはピエロじゃないか。

オレのこれまでの数十年間は何だったんだ・・・

オレは何に振り回されていたんだ・・・。

その新しい事実を知らされたことで、あいつに対する憎しみが消えたわけじゃない。

むしろ怒りを新たに沸かせただけだった。


その直後、あの男の真実の姿に触れるまでは。




あいつは・・・

あの男は・・・本当に



人間じゃなかったんだ・・・。


比喩じゃなく。

本当に。

全く別の生物。

この世界で言う亜人という範疇にさえ入らないだろう。

何かわけのわからない姿をした生き物。

あれが天使の正体だと!?

そんな生き物に、オレは何を求めていたと言うのか。



だからオレは逃げ出した。

何もかもわからなくなって。

自分を今まで支えてきたものが粉々に砕け散った。

憎しみも・・・恨みも・・・苦しみさえも、

無駄な・・・無意味な人生を送ってきたことを知らされて。



それが・・・加藤恵介の、惨めで情けない男の人生の終点だったんだ。





 「あっ、私としたことが・・・っ」

突然ラプラスが大声をあげた。


 「なんだっ!?」

反射的にオレは怒鳴り返す。


 「い、いえ、空の魔物のことを忘れておりましたっ!」

 「なっ、なにぃぃぃっ!?」


ラプラスの顔の角度から判断し、

オレは左手の窓の外に顔を突き出す。

どこだ?

どこに・・・いた!


ワイバーンかよ!?

まぁ、でもこのメンバーなら・・・


 「いえ、ケイジ様・・・

 どうやら近くにワイバーンの巣でもあったようで・・・

 あ、でもこっちを認識しないでくれればこのまま・・・。」



 「あ、認識されたみたいです・・・。」

麻衣さんが遅れて反応した。

そうか、麻衣さんの察知能力は、敵や魔物が自分たちに害意を向けた段階で発動するんだっけか。

便利な能力だが、この段階ではどうしようもないな。


ていうか、ラプラスの言葉に引っ掛かった。

 「ワイバーンの巣?」


オレが目視していたワイバーンが鳴き声をあげる。


 「キシャアアアアアッ!!」

これ・・・仲間を呼ぶ声じゃなかったか!?


 「あ、ああ、あ・・・!」

麻衣さんが別のものを探知したようだ。

 「麻衣さん! 感知能力で何かわかるのか!?」


 「ケ、ケイジさん!

 こっ、これ、ひーふーみー・・・ぜっ、全部で20匹近くいますよっ!?」


最悪だ、

どうやら一匹に見つかった後、仲間を呼ばれたくちか。

 「ラプラス!

 お前のトップスピードでワイバーンを引き離せるか!?」


 「あ・・・さっさすがにそれは無理かと・・・。」


だろうな。

では次の問題は・・・。


 「お前のエアスクリーンでワイバーンは・・・」


 「エッ、エアスクリーンはエアスクリーンですよっ!?

 一部の魔法や弓矢には効果がありますが、

 くちばしや爪の直接攻撃に防御効果はありませんっ!!」


そう言ってる間にどんどん集まってきやがった。

ギャアギャア煩いぞ、トカゲモドキ。

これは総力戦ってヤツだな。


 「タバサ!

 プロテクションシールドは使えるか!!」


 「無問題!!

 この馬車ごと包容可能!!」


頼もしいな、おい!


そしてこの場には精霊術士が二人!

高位の魔術士が一人!


 「カラドック! 女王!!

 二人は精霊術で・・・!」


 「任せて欲しい、と言いたいところだけど、

 精霊術だと、周りに乱気流を発生させて、接近を阻害するとか追い払う程度だぞ。

 この距離と状況では致命傷を与えるのは難しい。」

 「それ以上の力業も出来んことはないがの、

 この馬車にも影響を与える。

 あまり上策とは言えんの。」


 「アガサは!?」

 「問題は術の射程距離!

 空中のワイバーンは、距離を取られるとこちらの術を回避!」



てことは・・・良し!


 「ならば、カラドックと女王は精霊術でワイバーンの群れの接近を阻害・・・!

 いや、1~2匹だけがこちらに近づけるようにコントロールを頼む!」


 「なるほどね!

 こちらに有利な地の利にしてしまうわけか!」

 「全く、妾たちでなければなんという無茶振りかと叫ぶところよな!

 じゃが面白い!!

 ベディベール!

 そなたも来るがよい!!」

 「うぇ!? は、はい!!」


そういやベディベールは精霊術の素質があるとか言ってたな。

・・・大丈夫なのか?

いや、いまは女王たちに任そう。


 「アガサはラプラスの後ろで近づいてくるワイバーンを迎撃!

 ヨルはアガサたちの護衛を頼む!」


 「委細了解、ワイバーン斬殺指令!!」

 「任されましたですよぉぉぉっ!!

 ヨルも風魔法は使えるですぅぅぅ!!」


術の威力ではヨルはアガサ程ではない。

それでもワイバーン相手ならアガサの補助役としては使えるだろう。


 「リィナは全体監視と指示を出してくれ!

 いざという時は自由に動いてくれて構わない!!」


 「あいよ!」


リィナには遠距離攻撃手段がないからな。

あの神剣天叢雲剣とやらもあるが・・・あれは対ボス戦のとっておき・・・

いや・・・

遠距離攻撃・・・あるのか、あの時見たビジョン通りなら・・・。

ダメだ、少なくともあの技には通常以上のエネルギーがいるはずだ。

どっちにしても乱戦には向かない!


 「ケイジ?」

 「あ、いや、何でもない、頼むぞリィナ!」

 「お、、おう!」


 「さて・・・イゾルテ・・・。」

 「はい、ケイジお兄様!!」

 「弓の腕は上達したか?」

 「ケイジお兄様の期待は裏切りませんわ!!」


護衛騎士ブレモアとニムエさんはオレが言わずとも女王の傍を守るだろう。

お?

すでにカラドック達は精霊術で空飛ぶ馬車の周りを気流で覆い始めた。

ワイバーンどもが近づくのに苦戦しているようだな。


 「よし、

 イゾルテはオレと共にワイバーンを一匹ずつかたしていくぞ!!」

 「はい、ケイジお兄様!!」


これで全員配置についたな、

さぁ、十匹だろうがニ十匹だろうが、今のオレらに勝てると思うなよ!?



あ、いえ、これイベントのうちに入れてませんよ、

ほんとに魔人の元へ一直線で・・・。


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