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第二十五話 ぼっち妖魔は冒険者ギルドの扉を叩く


レベル9→12

スキルポイント450取得

トータル1450 取得可能スキル 爪格闘術、吸血、昆虫召喚、

↑「だからそんなスキル要りませんっ!」


<視点 麻衣>


や、やっと着いたぁ・・・人間の村ぁぁぁ・・・。


村?

村だよね、この大きさ。

街と言えそうな規模も賑やかさもない。


ヨーロッパのイメージでもなく、

東南アジアの雰囲気もなく・・・

勝手な偏見かもしれないけど貧しい中近東か中央アジアか、

家とかの壁の材質は・・・土壁?

雨とか降ったとき大丈夫なんだろうか?

ああ、屋根の部分は焼きが入ってるのか。

滑らかに光を反射している。

陶器みたいに鮮やかな色だ。

村の周囲は格子状の塀に囲まれて、獣程度では飛び越えて侵入したりは無理な高さだろう。


村の入り口の門の前。

門番みたいな人はあたしを見るなりギョッとした。

そりゃそうだよね、

ホーンラビットの死骸抱えた女の子が、見たこともない軽装でふらふら現れたんだから。


ちなみに今のあたしは白のブラウスに制服のスカート姿だよ。

セーターはホーンラビットを包む風呂敷代わりにしている。

持ち方に気を付けないとセーター伸びるぅ・・・。


 「ど、どうした、君!?

 一人でどこからやってきた!?」

 「あ、あのー、

 道に迷ったっていうか、この村に滞在できますか?

 お金もないんですけど、このホーンラビットを換金できれば・・・宿かどこか・・・。」


いつの間にか、頭から矢が消えていた。

ホントに体に溶けちゃったのだろうか?

矢が突き刺さった状態のままだったら、さらに大騒ぎされた事だろう。


門番の人は仲間の人を呼んだ。

二人して、あたしの事を怪我はないかとか、家族とはぐれたのかと、色々心配してくれた。

うん、まぁ、いい人たちだよね。

もちろんあたしの外見が幼く見えるせいもあるんだろう。

いちおう、もうそろそろ16才になるのだけど。


とりあえず落ち着こうということで、村の中にちょっと入ったところにある東屋みたいなところで腰を下ろさせてもらった。

ここでもちゃんと会話通じるんだね。

さすがは異世界だ。

いろいろ根掘り葉掘り聞かれたけど、まぁ怪しまれるようなことは喋らずにやりすごせた。

ラミィさんのことも言う必要はない。

ホーンラビットの換金は、やはり冒険者ギルドで行えるという事で、途中まで案内してもらえることになった。


村の中は、結構人口密集しているらしく、塀に囲まれた家がたくさん並んでる。

土壁はほとんどどこも一緒だ。

塀やら壁の一部や屋根が凄いカラフルだけど。


道はもちろん、舗装なんてされてないし、時々、馬車やロバが荷台を牽いて通り過ぎてゆく。

冒険者ギルドへは少し距離があるようだ。

歩いていくのには時間がかかったけど、それほど苦になるという事もなかった。

なにしろあたしは海外旅行なんてしたこともない。

日本以外の文化や景色に触れること自体新鮮。

村の様子や建物を見るだけでも結構たのしい。


・・・ていうか、

あたし以上に、村の人たちがこっちをガン見してくるんですけど・・・。

門番の人と今、あたしは一緒に歩いているんだけど、数メートル後ろをみんなで物珍しそうについてくる。

老若男女関係なくだ。

ううう、落ち着かない。


冒険者ギルドの建物は他の民家と見た目は完全に異なっていた。

木造のログハウス風で、入り口にドアはなかった。

と言っても、西部劇で見かけるような、上と下がスカスカで両面開きの戸板がついている。

誰でもいつでも出入りできるようにしているのだろうか。


・・・それはいいのだけど。


周辺にやたらといかついおじさんやお兄さんがたむろってる・・・。

もちろん、あたしはジロジロ奇異の目で観察されてしまう。


とはいえ、

だいたいが馬鹿にしたり、いやらしい目で見てるというより、本気であたしみたいな弱そうな女子が、冒険者ギルドに何の用なのか判断につきかねるということなのだろう。


まぁ、もうここまで来たらあたしだって腹は決まってる。

矢でも鉄砲でも何でも来い。

あ、矢は既に喰らってた。


 「ごめんくださーい!!」

ギルドの中には十人近い人間がいたけれど、当然みんなの視線が突き刺さった。

門番の人が受付はあっちだよと一緒についてきてくれた。

本当にいい人だ。

それはいいけど・・・受付?

なんかプロレスラーみたいなおじさんが受付のカウンターにいるんですけど・・・。


この人、受付?

受付ってこう、若いお姉さんがいたりするんじゃないの?

なんか、既に三十人は殺ってますよ、と言わんばかりの風貌のおじさん。

さすがにあたしもここから無事に出られるか、心配になってきた。


 「どうした、お嬢ちゃん、依頼か?」


ああ、そうか、

あたしみたいなのが来たら、冒険者登録より魔物退治の依頼にでも来た方が有り得る話か。


そこで門番の人が口添えしてくれる。

 「えーと、この人、ギルドマスター代行エステハンさんね、

 こんないかつい顔してるけど女性や子供には優しいから。」

 「いかつい顔は余計だ、

 あと俺は老人にも優しいぞ!!」


おお、それはいい人そうだ。

え、でもギルドマスター代行って結構、上の役職の人だよね?

なんで受付に座っているの?

・・・あっと、先にこっちの用を済ませておくか。


 「あ、あの・・・ここで魔物の素材を換金してくれると聞いてきたんですけど。」


エステハンさんは、そこであたしが抱えてるホーンラビットの死体を凝視した。

 「む? お嬢ちゃんがしとめたのか、

 すごいな?

 いや、確かに身体能力がそこそこあれば女性でも苦も無く倒せるだろうが、その体格で?」


ああ、すいません、

ほとんどスネちゃんにやってもらいましたんで・・・。


 「せっかく来てもらって悪いが、魔物の引き取りや魔石の回収は冒険者でないと受け付けられないんだ。

 まぁ顔見知りの冒険者がいれば、そいつを受付に来させりゃそれで事足りるんだが・・・。」


えっ、そうなんだ?


 「一応、決まりでな、

 名目上は魔物を倒す実力もない子供たちがお小遣い目当てで無茶をさせないための措置なんだよ。

 知り合いがいなくても、そこら辺にたむろってる冒険者に頼めば仲介してくれると思うぞ。

・・・手数料は取られるがな、

 そこは交渉次第だ。」


なるほど、それは分かりやすい。

冒険者登録をする時に、実力があるか確認できるもんね。

換金できないってわかれば無茶な真似することもないか。


 「えーと、それでもいいんですけど、あたしが冒険者になるのはできますか?

 この辺りに身寄りもいないんで・・・。」


その場が一斉に静まり返った。

よっぽど大それたことをあたしは言ったらしい。

みるみるエステハンおじさんの顔が凶悪になっていく・・・!

うわああ、怖っ!


 「帰んな!

 子供がお遊びで冒険者になれるわけねーだろ!

 だが、身寄りがないと言ったか?

 家族に奴隷として売られたってわけでもないのか?

 事情を話してみろ、

 悪いようにはしない・・・!」


なんかすごく親身になってくれそうな発言だけど顔が怖いよ・・・。


 「あ、は、はい、えーと実はあたしはこの世界の人間でなくて、異世界から飛ばされてきたんですけど・・・。」


 「はぁぁぁっ!?」


この辺りは喋って大丈夫なはず。


 「異世界人だと? そんな馬鹿な・・・

 いや、その風変わりな格好は・・・。」

 「冒険者ギルドで鑑定ができるんですよね?

 あたしの言葉はそれで確かめられると思います。」


 「な、なるほど、それは確かに・・・。

 だが、どうして・・・?」


 「それはあたしが聞きたいところです。

 学校でみんなと授業を受けてたらいきなり光に包まれて、気が付いたらこの村のずっと向こうの平原に立ち尽くしていましたので・・・。」


矢に刺されたことは黙っていよう。

余計なツッコミが入って話が長くなる。


 「そばには誰もいなかったのか?

 誰かに召喚されたというわけでもないのか?」


 「召喚でなく転移だそうです。

 誰もいませんでしたけど、あたしの頭の中に声が聞こえました。

 とりあえず、魔物でも倒して冒険者ギルドに持っていけば生活費は賄えるって・・・。」


 「なんだ、そのいい加減なアドバイスは・・・。」


まったくだよ・・・。


 「だが困ったな、そういう事なら冒険者になってもらっても構わないんだが、一応規約で冒険者になるには13才からと・・・。」


は?


 「あのー、あたし15さいですがー。」

 「は?」

 「15です・・・。」

 「誰が・・・?」

 「あたしですが。」

 「おじょうちゃんが?」


いいかげん怒るよ?

 「鑑定で年齢もわかるんですよね?」

 「ああ、そ、そうだが、

 いや年齢もそうだが、その体で無茶だ!

 大体武器だってかなりの重量になるんだぞ、その体格で扱えやしないだろう!!」


 「ホーンラビットやはぐれウルフ程度ならもう倒せるんですけどね。」

あたしが倒すんじゃないけど。


 「あ、そ、そうか、しかしどうやって・・・

 ん? ということは君は魔法でも使えるのか?」

 「魔法は使えませんが召喚術なら使えます。

 あと、感知系能力がありますので探索は苦にならないかと。」


にわかに場が騒然となった。

どっちもレアスキルらしい。

ラミィさんと話してた時はそんな大層なスキルという自覚はなかったけど、人間の社会の中だと珍しいのかもしれない。

ていうか、小さい村の中なら仕方ないか。


 「本当か!

 ちょっと鑑定させてくれ!」


慌ててエステハンさんは席を立った。

やっぱり大きい。

熊みたい。

そうだ、精神障壁解いたままだったかな?

 

エステハンさんは、いそいそと私の前にやってくると、身長が半分とまでは大げさだけど、そのぐらい差のあるあたしを見下ろして鑑定魔法を使ったようだ。


大丈夫、妖魔変化と未来視は隠蔽スキルを使って消している。


 「うおおおおおっ!」


うわっ、びっくりした!!

突然エステハンさんが大声を上げた。


 「職業適性が巫女と召喚士っ!!

 本当だ!! しかも15才だ!!」


まだ疑ってたんですか、そこ。

そして周りからも歓声が上がる。


 「だ、大丈夫そうですか、それで?

 あ、あとここで職業決められるって・・・。」

 「う、うむ、問題ないとまでは言えんが、どこかのパーティーに入る分には大丈夫だ。

 直接戦闘を避けられないソロは認められんが、冒険者登録はOKだ・・・!」


 

麻衣

「冒険者ギルドの入り口に扉なかった・・・」


あるのは戸板だけ。

タイトル詐欺だ。

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