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第二百四十八話 前世の柵

ぶっくま、ありがとうございます!!


今回のお話に名前が出て来るツォンという子供は、こっちの世界には登場しません。

彼について前作「メリーさん」のフラア編に登場します。


フラアを主人公とする物語の中で、世界を救う立役者の一人とまでなるのですが・・・



<視点ケイジ>


景色が流れてゆく。

あっという間だな、

冒険者ギルドの建物や領主の館でさえも、どんどん小さくなっていく。

アークレイの街並みがミニチュアの模型のようだ。

オレは遠くの山々に視線を移す・・・。

標高の高い山には、うっすらと雪が積もっているようで、頂きの周辺は真っ白だ。

それが地平線の彼方まで続く・・・。


本当に空を飛んでいるんだな・・・。

オレの両隣それぞれでは、リィナとイゾルテが子供のようにはしゃぎまくっている。

リィナは最初怯えていたようだったが、もう慣れたようだな。

さすがの順応性だよ。


それにしても、ラプラスの飛行スキルでこんな大勢の人間を運べるのも脅威だが、

重力も風の抵抗も感じないのはどういうわけだ?

馬車の小窓には左右に厚手のフリンジがついたカーテンが備え付けられている。

オレはそのカーテンをかき分けるように窓の外に鼻を突き出す。

外気は冷たいが、風の流れは感じない。

結構なスピードでこの馬車は空を飛んでいるにも関わらずだ。


さすがのオレでも興味を抑えられないようだ。

オレは席を立って、御者席のラプラスに近づく。

・・・途中で揺れたりしないんだろうな?

一応、壁に手を突きながら、慎重に進む。

さっきっから揺れも振動も感じないんだけどな、一応慎重にな。


 「おう、ケイジか!」

ラプラスの席に後ろにはマルゴット女王が鎮座していた。

やはりこの人も知識欲旺盛なんだろうな、

機嫌良さそうにラプラスと魔術論議を行っている。

となると、当然、エルフの二人組も黙ってないわけで。


 「おや、お待ちかねのケイジ熱烈歓迎。」

 「さぁ、私たちが極上のおもてなし。」


そいつは嬉しいね。

エルフの二人が両腕を拡げ、ウェルカムポーズでオレを迎える。

実際は、オレに飲み物を用意してくれたのはニムエさんだけどな。

アガサ達の言うおもてなしって、カラダを使ったもの限定な気がする。

リィナの視線が怖いからやめて欲しいのだが。


 「歓談中、悪いんだが、オレもラプラスに聞きたいんだ。

 これだけのスピードで飛んでいるのに風圧とかどうなっているんだ?」


運行中、ハンドルや舵のようなものは必要ないのか、ラプラスはオレに振り返ってウィンクする。

 「ハッハッハ、ケイジ様は私の得意な術はご存知でしょう!

 風術エアスクリーンはこういうタイミングで使うものですよ!!」


強烈な向かい風をエアスクリーンで抑えているのか!?

でも、そうなるとどれだけの魔力を使うんだ!?


 「一応、これでもAランク魔術士並みの魔力は持っておりますからな、

 もちろん、魔力の残量が心許なくなりましたら、

 地上に降りて休息をいただきますよ?」



なんでも、飛行スキルそのものは何の対価もなく発動できるようだが、

実際は高速で空を飛ぶと、いろんなものが顔に当たったり、強風で体が凍えそうになったりと、

エアスクリーンと併用しないと、とてもじゃないが、安全に使えるものではないそうだ。


それでも便利だよな。




そうだ、

・・・空を飛ぶって言えば・・・

オレの前世の・・・ツォンは元気かな。

うまく話を誘導すれば、カラドックもあいつの事を話してくれるだろうか?

ラプラスとの会話を終えたオレは、ゆっくりと席に戻っていた。

 「・・・そういや、カラドック、

 お前専属の従者で、空を飛ぶ子供がいるって言ってたよな?」


一度カラドックは、自分の記憶を辿るように顔を天井に向ける。

 「ん?

 ああ、ツォン・シーユゥか。

 そう言えばそんな事も言ったかもね。

 正確には私の従者ではなく、父の従者なんだけど、

 父が失踪してしまったので、私が国王になった時に、

 そのまま彼の所属も国王に直接仕える形になったんだ。」


知ってるけどな。

その時はオレもあの国にいたし。


ツォンは人付き合いが苦手そうだったが、

その分、一度心を開くとやたらとこっちとの距離を詰めてきやがる。

「恵介兄ちゃん、恵介兄ちゃん!」と、こっちの世界のイゾルテなみに後ろをついてきたっけ。


 「・・・まぁ、空を飛ぶって言っても、

 父上と天才技術士ジェフティさんて人が一機だけ開発した、飛行船を動かす事が出来るってだけの話さ。

 それを造ったのも、旧世界の技術が残っている時代に完成出来たからこそであって、

 今の時代、同じものは二度と作れない。」


おっと、ツォンの話ではなく、あの空飛ぶ船、キントクラウドの話になったか、

確かに元々そっちの話だったものな、

いや、・・・今の言い回し、

なんとなくわざとツォンの話から飛行船の話に持っていったような・・・。


何か喋りたくない事でもあったのだろうか?


 「・・・カラドック、そのツォンという男に何かあったのか?」

 「えっ? い、いや、何故だい?」

 「あ、ああ、何となく言いづらそうな雰囲気があったんでな。」


 「・・・そうか、

 いや、別に何もないさ、

 単に、彼は弟の恵介に懐いていたようだったんでな、

 あいつの死を引きずっているというか・・・復讐に囚われているというか・・・。」


う・・・


やっちまった。

・・・聞かなきゃ良かった。

オレのせいじゃねーか。

カラドックはこの場の空気を悪くさせないように、気を遣ってくれたというのに・・・。

 「すまなかった、余計な事を聞いてしまった。」

 「いや、大丈夫だ、気にするな。」


カラドックには当然だが、

あのツォンにも悪いことをしてしまった。

あいつはオレが殺されるまで、ずっと存在しないオレの仇を憎んでいたのか。


・・・ん?


待てよ。

オレが死ぬとき・・・

あの戦場に、

キントクラウドが飛んでいたよな・・・。


当然、そこに乗っていたのはツォンだろう。

てことは・・・


あの時、オレは父親を短剣で刺した。

あれで奴が死ぬとは思えなかったが、オレに反撃しようとする素振りさえ見せなかった・・・。


じゃあ、オレを殺したのは・・・


そうか、

ツォンは・・・ある意味、復讐を果たしたと言えるのかな・・・。

それにキントクラウドのレーザービームなら、死体を一瞬で灰と化すだろう。

焼死体なら死体の顔の判別など出来やしまい。


カラドックのことだ。

その秘密は絶対にツォンには明かさないだろうな。


・・・そうとも、

もしツォンが、自分が殺した男がオレ本人だと知ったら、

あいつの心は粉々に砕け散ってしまうかもしれない。

幼い頃から親兄弟に見捨てられ、裏切られて、

まともな人間関係も作れないでいたあいつが、よりにもよって、

自分自身で懐いていた、それこそ兄のように慕っていたオレを自分の手で殺したと知ってしまったら・・・



オレは自分の正体をカラドックには明かせない。

だからこれ以上のことはカラドックには聞けないけども、

だいたい、今のやり取りで、元の世界のしがらみが、また一つほどけたような気もする。

本当にただの思い込みなのかもしれないが。




てなわけで、オレは少し気分が良くなったつもりでいた。

油断していた。

気を抜いてしまっていた。


そこに麻衣さんが爆弾を落としてくれやがった。

しかも誘爆するタイプの・・・。


 「天才技術士・・・ジェフティ・・・さん?」

 「麻衣さん? あれ、何か?」

 「あ、いえ、その人って、フルネームは、

 ウランドン・ジェフティネスさん、で良かったですか?」

 


・・・なんで麻衣さんが知ってんだよ!?



ケイジの前世「加藤恵介」を中心にした人間関係図簡易版


加藤恵子・・・母さん

斐山優一またはシリス・・・くそったれ

カラドック・・・腹違いの兄・・・それでいいだろ?

李那・・・お、幼馴染!

陽向おばさん・・・李那のお母さん

梨香おばさん・・・李那の叔母さん

完全なる騎士ガラハッド・・・父親のような存在・・・でもないか、剣の師匠その1

白鳥亮・・・剣の師匠その2

朱全・・・李那の兄その1・・・軍師としてはカラドックのライバル。

朱路・・・李那の兄その2・・・何度か戦ったが結構強い。

ミュラ・・・こいつ、年下の癖に李那に気があるっぽい・・・。

ラヴィニヤ・・・カラドックの嫁さん、うん、天然・・・。

ツォン・シーユゥ・・・「あいつ」が拾ってきた手のかかる子供、まぁ憎めないやつだけどな。

マーゴ・・・母さんの恋敵。

アーサー・・・カラドックの叔父、それ以外はノーコメント、そもそも一度しか会った事がない・・・。

破壊の王アスラ・・・マジで強かった。ていうか、一人の男として腹を割って話をしてみたかった・・・。


リィナ

「時々動揺してるみたいなんだけど・・・。」

麻衣

「嘘ついてる気配もします。」


ケイジ

「ちょっと! まだ麻衣さんにはオレが転生者だと明かしてないだろ!!」


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