第二百四十七話 魔族ヨルはあなどらない
アークレイでの話し合いが終わったら一気に魔人の元へと言いましたよね・・・
間違ってませんよね・・・?
もう、余計な戦闘やエピソードは入れる予定もなく、
・・・
はい、後はこの流れで行けるとこまで行くつもりですよ。
それが何日後になるかは私もよくわかっていません・・・。
<視点ヨル>
・・・
きたです・・・
きましたです・・・
ヨルの時代がやってきましたですよぉぉぉぉおおっ!!
はじめてっ!
初めて実況解説の役がまわってきましたですよぉぉぉぉっ!!
はっ?
い、いけませんですよぉ、
つい我を忘れてはしゃいでしまったですぅぅぅ!
でっ、でも、これは興奮せずにいられませんですよねぇぇ!?
これっ、これって・・・
ついに!
ついにカラドックとのハネムーンが!
こんな形で・・・
こんなゴージャスな・・・キンキラキンの装飾に施された豪華な馬車で空の旅だなんて・・・
もう、ヨルは・・・ヨルはいつ死んでも構いませんですよぉぉっ!!
「ヨ、ヨルさん?
一応、ハネムーンって二人っきりで旅するものだからね?」
うっ、
麻衣ちゃんからツッコミ食らったですよぉぉ。
この子はプリンを食べさせてくれたからいい子なんですけど、
時々ヨルに意地悪するのですよぉ。
麻衣ちゃんは、ヨルのカラドックには手を出さないと口では言ってるけど、ヨルは油断できないのですぅ。
これは勘!
魔族ならではの勘がそう言ってるですよぅ!
そもそも魔族であるヨルが言える筋合いじゃないのは百も承知してますですけども、
初めて麻衣ちゃんを見た時、ヒューマンに見えなかったですよぉ。
むしろ肌の色さえ違っていたなら、あたしたち魔族だと言っても違和感がないくらい・・・
あ、もちろん、魔族のシンボルたる角がないから魔族にも見えませんですけどねぇ?
とはいえ、ヨルでさえ何もできなかった、ケイジさんとリィナちゃんを助けてくれたことには、全面的に感謝するですよぉ!
ヒューマンに見えないことも、異世界からやって来たって言うのなら、そういうこともあるでしょうしねぇぇぇ。
それにエルフのお二方も絶賛してましたけども、外敵の発見に関して、あの麻衣ちゃんの覚知スキルはまさに規格外ですよぉ!
だいたい、あの虚術ってなんですかぁぁぁぁあっ!?
ヨルやミドでさえ、一人では討伐困難なバジリスクやワイバーンを、
麻衣ちゃんたった一人で無力化できるんですよぉぉ!?
後は遠巻きから矢を射るだけで魔物の息の根は止められる事が出来るのですからねぇぇぇぇ!?
もっとも麻衣ちゃん自身も言ってましたけど、
あの子、魔力以外はホントにステータスがひ弱なヒューマン並みなんですよねぇぇ。
最初は、弱々しい振りをしてカラドックの気を惹こうとしてるんじゃないかって思いましたけど、ガチだったみたいですぅぅ。
だってHPがヨルの10分の1しかないんですよぉぉ?
お父さんの執事シグの張り手一発でお陀仏ですかねぇぇぇ?
麻衣ちゃんとは、そんなにたくさんお話したわけではないのですけど、
あの子の行動指針は、これまでの流れでなんとなく分かってきましたですよぉ。
それはあたし達、魔族のそれと異なる考え方ではないようですねぇぇ。
基本、麻衣ちゃんは、身を護る術に欠けているので、他の頼れる人に守ってもらわねばならない・・・それは理解できるですよぉ。
これがヒューマンのあざとい女どもなら、女の武器を遠慮なく使ってでも目的を果たそうとするんでしょうけど、麻衣ちゃんはそこまではしたないマネはしないつもりらしいですぅぅ。
・・・ただ・・・確かに女の武器は使ってはいないんでしょうけど・・・
何か・・ヨルには理解できない別の武器を使っているような気がしてならないんですよねぇぇぇ・・・。
魅了スキル・・・?
いいえ、それとも違うみたいですぅぅ・・・。
でも・・・でも、そしたらどうしてヨルのカラドックやケイジさんまでもが、
麻衣ちゃんを尊いものでも見るような目で仰いでいるのでしょうかねぇぇぇ?
一度、ヨルはリィナちゃんに相談してみたですよぉお・・・。
リィナちゃんにとっても麻衣ちゃんは命の恩人なんですけど、
一応、気をつけてみるとリィナちゃんは言ってくれたですよぉ。
・・・なのに・・・
なのになのになのに!
なんでリィナちゃん! 麻衣ちゃんと一晩で仲良くなってるですかぁぁぁぁぁ!?
陥落したですかぁ!?
プリンで買収でもされたですかぁぁぁ!?
ミイラ取りがリィナになっちゃったですかぁぁぁぁぁっ!?
あらっ!?
ヨルは何、訳の分からないことを言い出したですかねぇぇ!?
混乱してるですうっ!!
とっ、とにかくっ、このままじゃまずいですねぇ!
何か! 何か起死回生のアイデアをををををっ!?
・・・と、
ヨルはそんな取り乱した態度を表に出すほど未熟者ではないですよぉぉ?
ふふふふふ、
ヨルは大人ですしねぇぇぇ。
今はちゃんとこうしてカラドックの隣の位置をゲットしましたですよぉぉ!!
あはん、ヨルの愛しい愛しいカラドックぅぅぅ、
そんな照れなくていいんですよぉぉぉ?
その逞しい腕で、ほんのちょっと、ヨルを抱きしめてくれればぁぁぁ・・・
「そっ、空に浮かび上がっているですよぉぉ!?
こんな魔法ありませんですよぉぉぉぉっ!?」
うふふふふふ、
さあ、カラドック!
このいたいけで弱々しいヨルを、「大丈夫だよ、ヨルさん、私が守ってあげるからね」って言ってくれていいんですよぉぉ?
「凄いな!
何の揺れもブレもなく、どこも傾かずに垂直に浮かび上がったぞ!」
えっ、・・・あっ、すっ、凄いですよねぇぇぇぇ・・・
わ・・・わかりますですよぉぉ・・・?
確かにものすごいスキルだってわかりますけどぉぉぉ、
今は・・・今このチャンスを・・・
ほら、見てごらんなさいですよぉぉ?
ヨルと共にカラドックを狙っている二人のエルフ達ですら、
あのラプラスとかいうおじさんの飛行スキルに夢中になってるですよぉ!
いまが・・・今こそ最大のチャンスなのにぃぃぃぃ!!
あっ!
リィナちゃんは、さも当然とばかりにケイジさんにピッタリ寄り添って・・・
うっ、羨ましいですぅぅぅっ!!
反対側の隣にはあのイゾルテとかいうヒューマンの小娘がケイジさんの隣を固めてはしゃいでますですよぉ!
そして肝心の麻衣ちゃんは・・・
ケイジさんの正面に座って・・・
あれ?
この馬車の中の座席の正面て・・・よく見ると距離が近いですねぇぇぇ?
互いの膝と膝の間が50センチ程度しかないんじゃないですかぁぁ!?
時々・・・ほんの時々!
ケイジさんの視線が麻衣ちゃんの膝元に行ってませんですかあああああ!?
ヨルがそれに気づいた瞬間・・・
麻衣ちゃんと視線があったですよぉぉぉ・・・?
なっ、なんですかぁぁぁ麻衣ちゃん!?
その意味深な笑みはぁぁぁぁ!?
い、いったい何を考えているですかぁあああっ!?
ケイジさんとリィナちゃんの仲は本人たちは勿論、このパーティの誰もが認めていて・・・
その事は麻衣ちゃんだって理解している筈なのに・・・
なのに何故そんなアピールするですかああああ!?
わからないっ!
この子のことが分からないですよぉぉぉっ!!
そっ、
それだけじゃなかったですぅぅぅ・・・
こんな・・・こんな事があっていいんでしょうかねぇぇぇぇ・・・
この時、ヨルはとんでもないことに気付いてしまったんですぅぅぅ。
ヨルが・・ヨルがケイジさんと麻衣ちゃんに気を取られてしまった間・・・
そう!
それはほんの一瞬でしたぁぁぁ!
その一瞬の間に・・・
あいつが・・・あいつが!!
今までマルゴット女王の陰に隠れて大人しくしていたロリ妖精が・・・
赤紫色の瞳で・・・まるで獲物を狙うかのように・・・
ヨルのカラドックを見詰めていたんですよぉぉぉ!!!!!!
麻衣
「ヨルさぁぁん!
そんな次々とフラグ立てないでーっ!?
み、みなさん、本気にしたらダメですよ?」