表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
241/748

第二百四十一話 ぼっち妖魔は語られない夢を見た後、称号を得る

ぶっくま、ありがとうございます!


前回、タイトル入れ忘れました。すみません。

そして今回、またネタバレ回アンド胸糞シーン有りです!


別作の該当シーンはガイドラインに引っ掛かって削除されてしまいましたが、

今回は・・・大丈夫、かな?

直接表現してないし。

お願い、運営さん、見逃して。



あれ?

また予知夢か?


・・・じゃないな。

たぶん、いま、あたしはすやすやと眠りについている状況なのは間違いないと思う。


このふわふわした感覚は夢を見ている状況に近いのだろう。

ただ、今のこの感じは、

どちらかというと他人の作り出した結界の中に意識を潜り込ませた感覚に近い。


・・・ここはどこか誰かの精神世界・・・。


そう意識した瞬間、

あたしの周りの景色は劇的な変化を起こす。

赤黒く血塗られたような洞窟の中に、

鋭い尖った刃物が無数に並ぶ・・・まるでそれは拷問のための場所、

つまり地獄のようなイメージ。


ん、と、違うな、

地獄なら他にも大勢の罪人がいそうだけど、

周りに誰も見かけない・・・。

まさかあたしをターゲットにするなんてないよね?

さすがに恐怖耐性のあるあたしでもそれはご勘弁願いたい。


ここは誰かの精神世界。

なら、その人がこんな世界を創り出していると言うなら・・・


その時、叫び声が聞こえた。

一人・・・たった一人だけの叫び声・・・

必死で痛みに堪えようとしているようにも聞こえる。


あたしはその叫び声が聞こえた方向に注意を向ける。

天然の鍾乳石のようなところに鎖でぐるぐる巻きにされた男の人がいる。


思わず「ある人」のことを思い出しそうになったけど、別人だよ。

体格も風貌も全く異なる。


少なくとも日本人じゃない。

知り合いでもない。

外人で知ってる人となると、またしてもマーゴお姉さん関連を思い浮かべるけど、

あの時の、ライラックさんやガラハッドさんにも似ていない。


異世界で出会った人たちの中にも関係なさそうだな。


あたしは恐る恐る近づいてみる。



・・・うわ、これは怖い。

責めを負わされている男の人の左右に、

仮面をつけた無機質な人形が、幾つもの針がついた棒状のものを、機械的に男の人の下半身やお腹に打ち付けている。

当然、男の人の身体からは夥しい血液が流れ続けている。


あたしが近づいても人形は一切反応しない。

・・・これ、男の人を助けようとしたら、二つの人形は一斉にあたしに襲い掛かってくるんだろうな。


うん、そんな事はしないから。


ここがこの男の人の精神世界だと言うなら、

きっとこの状況を産み出しているのは、この責め苦を負わされている男の人本人。


つまり、自分で自分を痛めつけている。

何か自分でも絶対に許せないことをしでかして、後悔し続けているのだろう。



あたしは人形の邪魔をしない程度に、

自分に被害が届かない程度の距離を保って、男の人の正面に立つ。

相変わらず定期的に人形達は男の人を嬲り続ける。

その度に男の人は呻き声をあげるが、必死に歯を食いしばって、痛みに耐えているといった具合。


こんなところ、さっさとおさらばしたいけど、

ここにやってこさせられたという事は、ここで何かしろという事だろう。

予知夢や遠隔透視の場合だと、自分が何か出来る事は何もないのだけど、

他人の精神世界の場合だと、ある程度の干渉は出来る。

ただし、相手に悪意がある場合だと、こっちも危険なんだけどね。


 「お兄さん?」


見た感じ、大人の人というにはあどけない感じがする。

あたしよりは年上だけど、二十歳ぐらいの年齢だろうか?

男の人は目は見えているみたいだけど、今まであたしの姿は瞳に映ってなかった。

そして、あたしが声を発したことにより、

驚いた眼であたしを見つめたのだ。


 「・・・き、君は・・・誰だ!?」


どうだろ?

自分で声をかけておきながら、この状況、名乗っていいのかな?

多分、あまり意味はない気がする。

現実世界であたしと触れ合う機会はない気がしたからだ。


 「誰でも・・・取りあえず『闇の巫女』とでも。」

うわああああ、何言ってるんだあたしはああああっ!?

い、いや、確かにこの地獄の一風景みたいなところにはマッチするけども!


 「や・・・やみの巫女?

 ここに来た人は、は、はじめてだ、

 いったい、何しに・・・?」


 「あ、と、それはあたしにもよくわからないんです、

 気が付いたらここに・・・。」


どういう仕組みなのか、

あたしが会話を始めたら、二体の人形は動きを止めてしまった。

あたしがここを離れたら、また動き出すのかもしれない。


 「い、いったいどうやって、ここに・・・、

 いや、それはどうでもいいか・・・。」


 「お兄さんはなんでここで罰を受けてるんですか?」


多分あたしの判断は間違ってないんだろう、

もう最初から、この男の人が何かをやらかした前提で話を始める。


 「・・・それは。」

 「人には言えないようなことをしでかしたんですか?」



 「・・・最低なことをやってしまった。

 大事な大事な妹に・・・。」


家族に対してなにかやってしまったのか。

それはなんとも重そうな話だ。


 「何をしたんです?」


 「もう、・・・口にしたくもない。」


その時だ、

遠く離れた所で女の人の悲鳴が聞こえた。

誰よりも動揺したのは目の前の男の人だ。


 「ああ! やめろ! やめてくれ!!

 あいつに触るな!! やめてくれ!! やめろっ!!」


これは・・・精神世界ならではだろう、

あたしの目の前にその光景が、トップスピードで近づいてきた。


目の前の空間にぐちゃぐちゃに汚れたシーツのかかったベッドの上に、

頭部が赤くパンパンに膨れ上がった裸の男が、

一人の女の子の上に覆いかぶさろうという異様な光景。


女の子は必死に叫んで抵抗するも、

男の腕力に敵う筈もなく、みるみるうちに蹂躙されていく。

・・・これ・・・

あたしは手を出せない。


これも現実の光景じゃないから。


そしてあたしはこの世界全てに響くような少女の叫び声で全てを理解する。


 『お兄ちゃん! やめて!! なんでこんなことするのっ!?

 いやっ!! やだっ! 放してっ!! 痛いっ!!』


振り返ると、鎖に縛られている男の人が狂ったように頭を振り回していた。

 「やめろっ! 彼女から離れろっ!!

 やめろっ! やめてくれっ!! 妹だぞっ!!

 絶対に守るって言ってただろっ!!

 なんで・・・なんでそんな事をするーっ!!」


胸糞悪過ぎる。



激しい後悔・・・か。

これは誰にも許す事なんか出来ないだろう。

もし許せるとしたら、その妹さん本人・・・いや、本人が許したとしても、

やった自分のことを許せるはずもない、ということか。


・・・え?

これ・・・あたしに何もできないよね!?

それこそ、なんであたしはここに呼ばれたの!?


男の人は、もうあたしなど眼中にないようで、必死に体を柱や鎖から外そうともがいているんだけど、

この光景を産み出しているのはこの人、本人。

この人自らが自分に課した責め苦だ。


当然、その鎖が外れる事などないし、

あたしがそれを外してあげることも出来ない。


じゃあどうすればいいのか?


再びあの、

女性としても絶対に受け入れることのできない不快な光景を見るに、

苦痛に顔を歪め、泣き顔を晒す女の子を助けて上げられればと思うのだけど、

「後悔」である以上、これはもう起こってしまった悲劇だ。


過去を変えられない以上、どうすることもできない。


じゃあ、いったい?



・・・これは見る方、聞く方にとっても苦痛だよ。

現実であるならどうにか介入できるのかもしれないけど・・・

それに当たり前だけど、ここでは虚術サイレンスも、ダークネスも使えない。


他人の精神世界なのだから。



このむかつく光景が永遠に続くかと思っていたのだけど、

ある瞬間、あたしはとんでもない事に気付いてしまった。

それも二つも。


一つ、

この女の子・・・見たことある。


予知夢でだ。


二年前・・・能力を使い過ぎて熱を出した時、

あの中に出てきた黒髪の女の人・・・のもっと若い時の姿・・・。


あ、ああああああああ、

なんてことだ・・・。


酷い・・・酷すぎる・・・。

こんな目に遭っておきながら、その後も・・・なんて、

確かあの女の人は「魔女」とか呼ばれて死刑台に・・・そして火炙りに・・・


その悲劇の出発点となったのが、あたしの目の前にいる男の人なのか・・・。


そしてもう一つの「真実」。

これ、男の人は自分の意志でこんなことをしでかしてしまったかのように後悔してるけど・・・


あの女の子の上で繰り返し繰り返し腰を打ち付けている頭の膨れた男の周りに・・・

影が・・・黒い靄のような・・・


誰かに操られている!?

それは本人の意識や思考を奪うものではないけれど・・・

暗示・・・誘導・・・本人の心の底に浮かんだ小さな邪念を増幅し、自制心を失わせるような・・・いや、それでも・・・。




あたしは少なくとも、

この男の人に同情する気はさらさらなかった。

女の人の方は、なんとか助けてあげられないかと思うのだけど、

「未来に起きる過去」という、何故かあたしにもよくわからないフレーズが何度も何度もあたしの頭の中でリフレインされている。


誰だ、これ?

あたしの声なのか?

自分でも手を出せないと心の底で理解しているということなのだろうか?



あたしはゆっくりと男の人に近づいた・・・。

既に男の人はあたしを見ていない。

目の前の光景を拒絶しようと・・・否定しようと必死だけど、もちろんその責め苦が消える事などない。

・・・それでも、あたしは男の人の首にやさしく腕を回す・・・。


 「・・・助けたいんですね・・・。」


そこでようやく男の人はあたしに意識を向けた。

 「た、助けられるのか!?

 彼女を!! い、妹を助けてくれるのか!?」


 「・・・いえ、残念ですがあたしにはそんな力は有りません・・・。」

 「お願いだ!!

 オレはどうなってもいい!!

 あいつを・・・あいつを助けてくれるならオレはどんなことでも!!」


会話が通じない可能性はもちろんあった。

だからあたしもこの人を説得しようとも思わない。

あたしはあたしが出来ると思う事を告げるのみだ。


 「助けることは出来ません。

 ・・・でも救うことは出来るかもしれません。」


 「・・・!?」


起こってしまったことは変えられない。

でもこれから先のことは変えられるかもしれない。


それに気づいた瞬間、


その世界が砕け散った。


男の人も女の人も消えている・・・。



真っ白い何もない空間だ。

あたし以外誰もいない、何もない。



そんな中、一つの声が辺りにこだました。

 『手伝ってくれる?』


あたしはため息をつく。

 「はい、はい、やるよ、やりますよ、

 そもそもあなたの命令にあたし達が逆らう訳ないじゃないですか。」


 『いやいや、君らは自由だよ、

 この話は断ってもらってもいいんだ。

 だから引き受けてくれたらご褒美は用意しておくよ、

 君が本当に望むものではないかもしれないけど。』


あたしはこの人を知っている。

過去に会ったというよりも、本能ベースで知っている。

だから何となく、どういう人なのかもわかってしまっていた。


 「あたしに直接、声をかけてきたってのは、

 『闇の巫女』と自分で意識したのが関係あるんですか?」



 『そうだね、後でステータス確認してみるといいよ、

 君がそれを受け入れたことで新たな称号がついたはずだ。』


うわ、確定なのかー。

ステータス隠蔽かけておいた方がいいのかなー。


 『ちなみに君が見た映像の子は、「闇の祭司」になってるから。』

 「あたしより役職、うえじゃないですか!?」

 『まぁ、形だけだよ、

 どっちにしろ君らが現世で会う事はないし。

 ・・・ないかな?』


 「なんで疑問形なんですか・・・。

 あの女の人・・・イブですよね?

 闇の眷属にしちゃっていいんですか?」


 『本人が受け入れた事さ。

 ただ、今のセリフだと、

 君もまだ、この世界の成り立ちを理解してないね?』


う・・・まぁ、わからない。

ここで聞いてもいい気がするけど・・・。


 『残念ながらそれは教えてあげられない。

 闇の巫女はこっちの声を聴くだけさ。

 まぁ、気まぐれで教えてあげることがあるかも?』


釘を刺された。


でも、直接、声をかけられたなんて、初代は別としても、

その後の歴代のリーリトでもいないんじゃないかな?

これはリーリト麻衣の大出世の予感!!


しかし、残念ながら、あたしがその喜びに浸ることはなかった。



目を覚ました時、

この時、何があったのか、ほとんど覚えていなかったからだ。


寝ぼけまなこで「すてーたすうぃんどう」と呟いたら、

称号欄に「闇の巫女」の称号が増えていたのだけは間違いなかったけど。

 

前も書きましたが、タイトルに「語られない」がついたら、それは別の物語のストーリーです。

何故、今回こんな話を挿入したかというと、

急に降って湧いたイメージに、ある人物が異世界転生を果たすシーンが出来てしまったのです。


まだ物語として成立するかわかりませんが、

以前「物語」には登場予定はないと書いた気がするので、今作には登場させません。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
表紙
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ