第二百三十九話 ラプラスの目的
会話シーンが続きます。
ストーリーのおさらいと思ってお読みください。
何気に徐々に新たな情報も入れたりしてます。
あとこの場で空気になっている人たちもいますが、
文章書いてるうちに余裕出来たら付け加えときます。
忘れてるわけじゃありません。
麻衣ちゃんがやらかしているだけです。
全世界の少年少女よ、こんばんは。
私はニムエ。
そう、私の名前はヌィィムゥウェェ・・・!
気軽にニムエ様と崇め奉って欲しい。
ああ、うん、申し訳ない。
いま、頭が混乱しちゃってて・・・。
そう、ようやくこの目の前に起きている状況を説明できる場面となったみたい。
いま、私たちの目前には・・・
割れた窓ガラスの向こうに浮いている一人のおかしな格好の男、
元世界有数の商会会長だったという「怪盗バブル三世」の一味ラプラス!
そんな人が何しに来たのかというと、
なんでも「蒼い狼」の皆さんを、魔人クィーンとかいう人の本拠地に連れてってくれるのだとか。
そんな美味い話がどこにあるのか、
当然、カラドック様たちは疑いの目を向ける。
「怪盗バブル三世・・・ラプラス・・・か、
あいにく、君の話を素直に信じるほど、こちらも楽天家なわけでもないのでね、
それより、いつまでそんなところに浮かんでいるつもりかな?
話があるなら、まずはこちらに降りてきたらどうだい?」
「ふふふ、もちろん、そうしたいのは山々なのですが、
こちらとしても皆様のことが信用できるわけではありませんのでね、
・・・まぁ、こちらにも深淵の黒珠という弱みがございますので、
この位置からお話をさせていただければと思います。」
え?
何言ってるの、この人?
ケイジ様たちに用があったから自分でこっちに来たんでしょ?
なのに、信用できないから話の場に下りないって、どうかしてるのでは・・・。
ケイジ様ですら私と同じ考えを持ったみたい。
「話す気がないなら、帰ってもらってもいいんだがな?」
ところがこちらがそう返すのは想定内だったようだ。
「話が折り合わないなら仕方ありません。
ですが、もう一度あなた方のメリットをよく考えてもらいたいものです。
このまま闇雲に魔人クィーンへの道を探すのにどれだけの時間をかけるのか、
仮にそのルートを見つけたとして、戦闘に陥った時にどれだけの犠牲を払うのか・・・、
ああ、一応、条件があります。
あなた方が魔人を撃破できるという実力を示され・・・、
そして、
そちらの異世界よりやってこられた闇の巫女、伊藤麻衣様を私たちに一時お貸しいただけるなら・・・
という事です。
あ、その後、深淵の黒珠もお返しできますよ?」
そこでみんなの視線は、あの幼く見える異世界の妖魔?に降り注ぐ。
「え!? あたし!?
て、ていうか、布袋さんも同じこと言ってたけど、や、闇の巫女って・・・」
そのラプラスは、私たちのことか、或いは転移者全ての事情を把握しているのか、
麻衣様の事も知っているようだった・・・。
ああ、そういえば仲間の布袋という人と既に麻衣様は会っているのだっけか。
ただ、麻衣様が面食らっているのは、ご自分が名指しされた事より、
「闇の巫女」という称号のようなものを付け加えられたことみたい。
後で麻衣様に聞いたら「厨二臭い」とのことだった。
厨二ってなんだろう?
でもなんとなくわかる気がする。
そう言えば実家の弟も、彼が剣の練習をしてる時、
「ハァァァ、天の祝福を受けし必殺のシャイニングソード!!」とか一人で叫んでいるのを目撃してしまったことがある。
私はいたたまれなくなって、こっそりその場を後にした。
多分、それと近い類いの話なのだろう。
おっと、こっちの話はどうなった?
「・・・ああ、あなたが伊藤麻衣様ですね、
以前、ウチの布袋さんがプリンをご馳走になったそうで、その節はどうも。
おかげであれから私がプリンを造らされる羽目になりましたよ、
特にもう一人のオデムが食わせろ食わせろ煩くて・・・。」
・・・プリン?
何だろう?
語感的にとても甘美で美味しそうな雰囲気をこのメイド魂が感じる。
「え、じゃあ、あなたも布袋さんと同じように異世界の記憶を?」
「いえいえ、私がマスターから与えられたのは『異世界の知識』でしたからね、
プリンの作り方も知っていると言えば知っています。
他にもいろいろ異世界知識を使って商会の経営に役立てましたが、
布袋さんのように誰か個人の記憶を持っているわけではありません。」
あー、なるほど、
ラプラス商会が急成長を遂げたのは、
盗みなどの犯罪行為を行っていたというよりも、
異世界の知識や技術をこの世界に持ち込んだからなのか。
そこでケイジ様が麻衣様の前に立つ。
おお、
かっこいいじゃない!!
宮廷には当然たくさんの騎士たちがいるけど、獣人の騎士なんか要る筈もない。
だからこそ奇異に見える部分もあるけど、その分、余計に尖って見える!
「会長ラプラス、
さっきも言ったが、オレはあんたを敵とは思っていない。
だが、それ以上にこの子には恩義がある。
彼女に指一本触れてみろ?
あんたを八つ裂きにすることも厭わない。」
「ケイジ様!
そこは信じていただけますか!?
私は麻衣様に如何なる危害を加えるつもりもありません!!
本当にマスターのために麻衣様にご協力いただきたいだけなのです!!」
「あ、ケイジさん、多分それは大丈夫、
この人たちがあたしの力を借りたいだけっていうのは間違いないと思います。
・・・ただ、本当にあたしが出来る事なのかどうかはわかりませんけど・・・。」
「おお、麻衣様!
ご理解いただきありがとうございます!!
そうなると、以前布袋さんがあなたと良い出会いをしたのも偶然ではなかったのかもしれませんね・・・。
もしかするとマスターの愛する方のお導きがあったのかもしれません・・・!」
あれ?
出来る子メイドの私は見逃さない。
女王とケイジ様に一瞬反応があった。
今のラプラスの言葉の何に反応したのだろう?
「マスターの愛する方のお導き」・・・の部分だろうか?
二人とも、そこに引っ掛かる何かがあるというのだろうか?
「で、でもあたしに一体何を・・・?」
「深淵の黒珠は闇属性です、
そしてその力を使えば異世界への窓を開く事が出来る。
マスターにはそれを出来る魔力そのものはあるのですが、
属性が違うために・・・言いやすくすれば鍵の形が合わない、ということなのでしょうかね?
闇の眷属たる麻衣様・・・元の世界より来られた麻衣様ならば、正しく異世界への扉が開く事が出来る・・・。
その為にあなたの力をお借りしたいのです。」
「あ、ああ、うう、そ、そういうことで・・・。」
麻衣様は戸惑い続けているが、理屈の上では理解されたみたいだ。
・・・闇の眷属・・・ねぇ。
異世界の妖魔だっていうし、いったい何者なのだろう、あの子は。
ケイジ様も戦闘態勢を解除したようだ。
「麻衣さんが納得できるなら、そこはいいとしよう。
ならオレからまとめて聞いておきたい。
そもそもだ、
お前らは何者だ?
そしてお前らは何をどこまで知っている?
魔人と邪龍について、
そして、ここにいるカラドックや麻衣さん、転移者のことについてだ。」
ああ、大まかに言えばそんなところだよね、
個別の話を聞くよりわかりやすくなるかな?
「なるほど、
さすがはケイジ様、確かにその疑問に全て答えられるのであれば、
大まかな部分はあなた方も納得されるでしょう。
ですが、残念です。
私たち以外のことに関しては、
『なにも』・・・と、答えざるを得ませんな。」
はい?
なにも?
いま、何もって言った?
何それ?
ふざけているの?
当事者でもない私ですら殺意を覚えた。
思わずメイド用ロングドレスの襞の中のナイフに手が伸びる。
マルゴット女王が私のその動きを見逃さなかったようだ。
すぐに視線で私を制し・・・いや制さない!?
いえ、そこは私を止めるとこでしょ、女王!!
よし、次回分まで下書き終わった!!