第二百三十四話 認定
呆気にとられるタッカーナ王太子達。
もちろん、ヨルさんも認識阻害などはかけていない。
自分のステータスを絶賛公開中だ。
「ま・・・魔族・・・。」
ようやく執政官が言葉を絞り出した後に、王太子が立ち上がった。
「き、貴様ら何を考えておるぅぅぅぅっ!?
何故魔族の娘がこの場におるというのだぁぁぁっっ!!
えっ、衛兵は・・・誰かこの者を討ち取るのだっ・・・!!」
私は落ち着い口調のまま、タッカーナ王太子を追いつめる。
「討ち取る?
如何なる理由で?」
「・・・なっ、り、理由・・・だと?」
「私もこの国の法律を調べさせてもらいましたが、
『魔族』の存在を取り締まる法律などこの国にはないはずですが?」
その気になれば、不法入国を罪状に上げられるかもしれない。
もっとも、魔族の扱いは亜人の範疇ですらないので、法律の枠外の存在なんだよね。
一方、間の抜けたバカ面を晒す王太子。
「えっ? あっ?」
「・・・冒険者ギルドの方では、滅多にないケースのようですが、『魔族討伐』の依頼が出されることはあるようですね。
ただそれらについても、先にその魔族が人間社会に仇為した場合を前提としているもので、魔族そのものがいるという理由だけで依頼が成立することはありません。」
とはいえ、ここはかなり微妙なライン。
実際の所、魔人がヒューマンの街に紛れ込んでいるのは、だいたい良からぬことを考えているのが殆どで、実際は発見即討伐となるらしい。
言ってしまえば差別社会の象徴である獣人ほどの人権すら魔族には与えられていない。
「あ、ちなみに魔族の彼女は、魔族の街マドランドの町長の娘さんなので、
迂闊な発言は外交問題に発展するとお考えいただきたい。」
「「なっなにぃぃぃぃっ!?」」
「ほっほっほ・・・。」
ああ・・・ついにこの人が口を開いた・・・。
今までのやり取りは、ある程度私の想定内の出来事。
ケイジと私で、大体こんなパターンになるかなぁと相談し、
そのうちの幾つかの台本の一つに沿ったもの。
そう、一応、前日のうちにそういう用意はしておいた。
・・・ただ、この場にマルゴット女王が現れるなんて想定は一切してなかったからね!
ここから先はどうなるかわからないよ!
「マルゴット女王?」
私は心の動揺を見せないように無表情に振る舞う。
「ふ、ふふふ、カラドックよ、
これは愉快、いや、これが笑わらずにおれるものか・・・?
タッカーナ王太子よ、
妾はここでは当事者ではない故、黙って見ておこうとは思っていたが、余りにもお粗末よ、
そなたの兄上のスッキーズ王太子がこの場にいたら、さぞ落胆する事よのう?」
「なっ!?」
挑発するなぁ、
女王はもう一人の王太子とは面識あるのかな?
スッキーズ王太子という人が第一王太子なら次期国王の筈、
国のトップ同士顔を突き合わせる機会は多いのだろう。
「何より、この場にいる面々をただの冒険者と侮りすぎじゃよ?
しかも今になってやっと鑑定を使う始末。
まぁ、鑑定を阻害するアイテムを持つ冒険者も多いからの、
ならば事前に、パーティーのメンバーを下調べするくらいすればいいもの・・・。
そなたら、ここにいる面々の出自をまるでわかっておらんのか?」
「なっ、なっ、何を・・・!?」
「魔族のヨル殿の紹介は済んだから良いじゃろう?
ならば・・・順に紹介しようかの?
まずは異世界よりのレジェンダリーアイテムを持つ勇者リィナ。」
名指しされたリィナちゃんが無表情に手を振る。
舐められていたからサービススマイルは封印という事だね。
「「「ゆっ、勇者ぁぁぁっぁあっぁぁっ!?」」」
どうやらこの辺りで、リィナちゃんが勇者であることを公表するという事か。
・・・そうだね、そろそろ各国を巻き込むならそれは仕方のない話なのだろう。
「そして妾の元に現れた・・・異世界の賢王にして天使の息子カラドック!」
紹介されたからにはご挨拶いたしましょうね、
優雅にね。
「「「けっけっけっけん賢王っ!?」」」
お次はエルフ達。
「ダークエルフの国エルドラの魔法兵団において最強最高の実力を持ったアガサ殿。」
ポーズ取るよね、必ずやるよね、絶対取るよね、ほらやった!
ダブルピース決めてくれやがった、あのダークエルフ。
「そしてハイエルフの森都ビスタール中央神殿、神官長アラハキバ殿の娘、タバサ殿。」
負けずとタバサも・・・あれ?
これは意外、
机に突っ伏して興味なさそうに手を・・・
ああ、さっきの怒りをアピールしたいのか、
手の動きが「あっちへいけ、シッシ!」とご機嫌斜めの様子だ。
「「「・・・な、なんでそんな高位の・・・」」」
「更に異世界より・・・・巫女にして召喚士の伊藤麻衣殿・・・。」
ぺこりと頭を下げる麻衣さん。
ああ、普通の人っぽい反応で癒される。
ただ、あちらのお三方はそれでも衝撃展開のようだ。
鑑定してみればわかるけど、あの子も魔力2000オーバーなんだよね。
「「「て、ててて、転移者がふふふたりも・・・!?」」」
そこでマルゴット女王は更に笑みを深くする・・・。
まるでそのためにここへ来たのだとでも言うように。
「そしてケイジよ。」
呼ばれたケイジは覚悟するかのように立ち上がった。
「・・・それでよい、
皆の者、心して聞くがよい、
この冒険者パーティー『蒼い狼』のリーダー、ケイジこそ・・・
このグリフィス公国が女王、マルゴットの血の繋がった甥にあたる!!
それを踏まえて扱ってもらおうぞ!!」
「「「えええええええええええっ!?」」」
美味しい反応するね、君たち。
「りょっ、りょっ、領主ベルゴよっ!」
「は、ははっ!?」
「な、なぜ、そんな大事な情報を私たちに寄こさなかったのだっ!?」
「もっ、申し訳ございません、
しかしながら私にも初耳の話ばかりで・・・オルセンっ!?」
責任の擦り付け合いか、
そんなことをしても状況は一向に変わらないけどね。
「た、確かに私どもは知っておりましたが・・・
申し訳ありませんが、冒険者の情報は外部に漏らしてはならぬとの決まりがございます故・・・。
もっともケイジ殿がグリフィス公国王族の血縁者とは、今の今まで私も存じ上げませんでしたが・・・。」
というわけだ。
「さて、話は戻るのじゃがな?」
マルゴット女王の目的はまだ先にあるようだ。
「な、ななななんだというのだ!?」
「なに? 王宮に戻ったら是非にと伝えて欲しい。」
「ななななにをだ!?」
「・・・知れたことよ、
今この日を以て、グリフィス公国は女王マルゴットの名のもとに、
獣人リィナを勇者と認め、冒険者パーティー『蒼い狼』をその保護下に認定する!!」
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」
「同時に。」
「さらに。」
おっと、ここで二人のエルフもダメ押しだ。
「エルフ5大都市は。」
「冒険者パーティー『蒼い狼』を。」
「「全面的に支持をすることを了承済み。」」
「「なっなんでぇぇぇぇぇぇっ!?」」
実は私達冒険者パーティーの動きとは別に、
ダークエルフの街エルドラと、森都ビスタールの神殿が中心となって、
他のエルフの国々にも手を回していたそうだ。
この後の話となるが・・・
これでリィナちゃんが公式に勇者と認定される条件もそろったという事。
実際は手続き上の問題であと少し時間が必要だけれども。
「しょっ、正気か、マルゴット女王っ!?
そのパーティーは、じゅっ獣人を勇者にしようというのだぞっ!?
い、いや、そもそもあなたがご自分の血縁者に獣人がいることを公式に認めるという事がどんなことを意味するのか・・・!」
「ふむ、心配はいらぬ、
そしてここで妾の首元のこ奴の話をしようかの?」
「なんだというのだ!?」
それ、私も聞きたい!
「・・・見て分からぬか?
人の子ではない、こ奴も魔物・・・妖精種よ。
今は元の力を取り戻してはないが、元々はAランクに属する人に仇為す魔物でのう。」
Aランクの魔物を首に抱きつかせていたっての?
女王はテイマースキルでも極めているのか!?
「え・・・よ、妖精・・・はぁっ!?」
「つまりの、
この女王マルゴットは使えるものは獣人だろうが魔物だろうが、
目的のためには手段は選ばぬ!!
妾が守りたいものは、如何なる手段を使っても守り抜き、
そして妾の敵になるものは、如何なる手段を以てしても潰す!!
・・・それを理解していただければ嬉しいのじゃがの?」
最後の最後でここ一番の笑顔を振りまく私の異世界の母。
本当に敵に回さなくて良かったよ・・・。
https://www.youtube.com/watch?v=_mkfqnEGYEg
以前お伝えしてましたが、VRoid二周年記念、
各自の作成キャラを使っての動画が出来ました。
当初死神の鎌を持たせたメリーさんを出そうと思ったのですが、
改造しすぎた結果MMDに移植できず・・・。
フラア・ネフティスを出馬させました。
2分12秒あたりから・・・
一曲全部撮り終えて・・・
・・・動画の分割は編集者の人におまかせっきりなので・・・
うん、なんか回転してるシーンが・・・回転しまくってますね・・・。