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第二百三十一話 会議はまだ?


世界が違う?


私と麻衣さんは・・・同じ世界ではなく、全く別の世界の住人だったって言うのか?

一方、麻衣さんの方も口をパクパク開けて、言葉が出てこない様子だ。

けれども女王の言わんとすることは理解してくれたようだ・・・。


 「そ、そんなことって・・・

 あ・・・でもそれだとすると・・・少年の様子がまるで別人みたいだってってのも辻褄が・・・。」


ようやく彼女の口から発されたのは、

私には意味がよく分からない言葉であった。

 「少年?」

 「あ、いえ、こっちの話です、すいません、なんでもないです。」


・・・?

まあいい。

マルゴット女王の言っている意味は分かる。

だが、その言葉を易々と受け入れるわけにはいかない。

だいたい、自分の住んでる世界と似たような世界が別々に存在するなんて、

どうやって確かめる術があると言うのか?


 「・・・俄かには信じがたい話です。

 ですが、よく女王はそんな発想に思いが至りましたね・・・?」


あ、前も見たことがあるドヤ顔決めてくれたね、マルゴット女王。

 「ふふ、さすがの妾であろう?

 ・・・といいたいのじゃがな、実はこの思い付きは妾の手柄というわけではない。」


 「え?」

マルゴット女王は得意げな顔を浮かべたのはほんの一瞬。

すぐにもとの柔らかい笑みに戻っていた。


 「妾の異世界における息子、カラドックよ、

 心して聞くがよい、

 既にそなたらの他に、別の異世界の転移者がやってきておると言ったらなんとする?」


 「なんですって!?

 私や麻衣さんの他にも!?」

 

当然、私も麻衣さんも驚く他はない。

麻衣さんも情報を整理しきれず、どこから考えこめばいいのかわからない様子だ。


 「うむ、先日妾はその者の訪問を受けておる。

 『彼女』は自分と同じ世界からの転移者であるというカラドックを追っていたそうだが、

 先に妾に会いに来た。

 ・・・まぁカラドックを召喚したのは妾、という噂が出回っておったせいじゃがな?」

 「彼女・・・女性ですか・・・、

 一体何者ですか?」


 「フム、その時の話をしても良いのじゃがな・・・

 そろそろこちらの領主たちとの話をする時間であろう?

 おお、どうやらそちらの執事殿が困っておるようじゃ、

 先にそちらの用件を済ませてしまおう。」


ああ、この館の執事が、私たちの会話に口を挟めなくて、あからさまに困った表情を浮かべていた。

ようやく女王が本来の話題を持ち出したので、一安心と言ったところだろう。

これは申し訳ないことをした。


・・・それにしても・・・

魔人のこともまだ少ししか分かっていないのに、

自分たちの足元のことですら、こんな不明確なことが起きているとは・・・。



その後、私たちは会議室に案内された。

貴族の屋敷や王城で見かけるような部屋ではないな。

片面にはガラスがはめ込まれており、

太陽光が室内を照らしている。

今回は外部の者がどこからか、覗き見など行うのを恐れて、メイド達がカーテンを閉めて光を遮断した。

全体的に、文化の違いか、

どちらかというと、領主の館というより役場の公共施設の会議室といった雰囲気。

一応、立派な絨毯は敷かれているけども。


いよいよ、このアークレイの領主と対談するのだ。

そこにはこのベードウーア王国の中央からも人間がやってくるという。

いったいどんな話になるのか・・・。


そういえば、

会議室までの短い道中、

女王が麻衣さんに話しかけていた。


 「・・・麻衣殿、先程はすまんな、

 えらく混乱してしまったじゃろう?」

 「あ、い、いえ、でも大事なお話でした・・・。

 またこれからいろいろ考えなくちゃダメですね・・・。」


それについては私もだな。

麻衣さん一人加わっただけで話がこれだけ変わっているのだ。

もう一人の人間の出自自体では、更なる混乱が起きる可能性もある。


 「それで妾の方から聞きたいことがあるのじゃがな?」

 「あ、は、はい?」

 「異世界の・・・そなたの世界の妾は・・・

 麻衣殿の・・・を知っておるのか・・・?」


ん?

麻衣さんが一瞬、ビクリと反応していたようだが、何を聞いたのだろう?

肝心な部分が聞こえなかったけれども・・・。



 「な、な、なんでそれを・・・?」

 「妾は魔眼持ちでの、

 普通のステータス隠蔽など妾には効かぬ。

 まぁ、そなたの世界の妾にはそんなスキルはなさそうじゃしの?

 それでも、そなたが異世界の妾に気を許していたのか知りたかっただけじゃ。」


 「ああ、う、う、

 あ、あの頃はあたし自身、そういった自覚がなかったので・・・、

 さっき話に出した邪悪な魔法使いがあたしの・・・を見抜いて、その場でばらしてくれやがりまして・・・。」


 「そういうことか・・・

 それでも異世界の妾は、そなたに対する態度を変えなかったのよな?」

 「それは・・・はい、

 全くと言っていいほど・・・。

 あ・・・ていうか、むしろ守ってくれていたのかもしれません・・・。

 もしあたしの・・・が知られたら・・・あの人たちはあたしを捕まえにきたとしてもおかしくなかったのかも・・・。」


何の話をしているか、わからなかったが、

そこで女王はにっこりと笑っていたようだ・・・。


 「さすが異世界の妾よな・・・。」


そこで単純な好奇心から、

女王に何の話か聞こうとした時だ。

タイミングが悪く、それまで空気と化していたケイジが口を開いた。


 「な、なぁ、マルゴット女王、

 その・・・首元の幼女はなんなんだ?

 人間の匂いが一切しないぞ?

 ま・・・魔物だよな、それ・・・。」


そう、そうだよ!

それも凄い気になっていたんだよ!!


 「・・・おお、こやつか!

 そうよのう、こやつの紹介もせねばなるまいな、

 これ、ラウネ?」


ラウネ?

するとラウネと呼ばれた幼女は不機嫌そうに首を振り回した。



バチン!

あ。


思いっきり首をまわしたもんだから、幼女の緑銀の長い髪がケイジの頬を引っ叩いた。

わざとだよね、あれ。


ケイジの身体がプルプルと震える・・・。

 「・・・やってくれやがったな、このガキ・・・。」


幼女はさらに自分の目の下を指で引っ張り・・・アッカンベー?

挑発するなぁ・・・。

 「クソガキ・・・上等だぁ・・・!」


 「ちょ、ちょ、やめなよ、ケイジ、子供相手に。」

リィナちゃんがケイジを抑えてくれた。

ケイジが怒るのも分かるが、さすがに本気で怒るのは大人げないだろう。


 「これこれ、ラウネ、

 ケイジは妾の息子同然じゃ、

 仲よくするのじゃぞ?」


 「フーン!」

お、ようやく口を開いた・・・って言っていいのかな?

 「マルゴット女王、彼女は妖魔か何かですか?」

 「ふむ、区分としては妖精になるのかの?

 先ほど話しかけた異世界からの転移者に一度は討伐されたのじゃがな、

 本体と魔石が無事じゃったので、妾の魔力を注いでみたら復活しおったのじゃ。

 まぁ、前回の個体とは微妙に異なるようじゃが・・・。」


 「え?

 じゃあ、時系列的には・・・生まれたばかり?」

 「うむ!

 それこそ、グリフィス公国を出発直前にようやく人型になった所よ!

 今では言葉も普通に喋れるぞ?」


うしろでベディベール君がボソッと呟く・・・。

 「あれ・・・普通に喋れるってことでいいのかなぁ・・・?」



 

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