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第二百二十八話 発覚


 「大変! ケイジ兄様が息をしてないのっ!」



どこから話を再開すべきか、

一時はどうなるかと思ったけれども、

半死半生だったケイジはタバサによって回復術を施される。

肉体的ダメージは回復したようだが、何か精神的ショックの方が大きいらしい。

私だってこんな事態、予想できるものか。

それにしても、意表を突かれたとはいえAランクの獣人の防御力をここまで突き破るとは、

リィナちゃんたちが怯えるのも無理はない。

ちなみにタバサが、最近出番が増えてきたようでご機嫌である。


 「ケ、ケイジ兄様、申し訳ありませんっ!

 わたくしったら、あまりの嬉しさについつい昔みたいな調子で・・・」

 「い、いや、子供の頃も強烈だとは思ったが、攻城兵器並みの威力になっていたぞ?」


傍に立っていたマルゴット女王は他人事のように呑気な発言を行う。

 「・・・全くイゾルテのお転婆ぶりには困ったものよのう?

 公族としての自覚が少々足らぬようだの。」


 「「「「少々!?」」」」

あの家の教育は誰がやっているんだ。

一度激しく問い詰めたい。

何気なくメイドのニムエさんの視線を感じたので、そちらに顔を向けるとすぐに視線を逸らされた。

・・・自分は関係ないってかい・・・?


そこで魔族のヨルから衝撃の発言。

 「あああああ、

 あの体当たりは魔族の魔闘法を無意識に使っているですよぅぅぅ!?」


そうなのか?

それであの威力か!?

確かイゾルテには魔法の才能がないとのことだったが、

魔力の体内循環は並々ならぬ力量を秘めているという事か・・・。


それにしても・・・

 「マルゴット女王、まさかグリフィス公国を空にして出てこられたのですか!?」

私は半分呆れつつ、そして半分責めるようなニュアンスで疑問の言葉を放つ。

おや?

後ろで青白い顔色の騎士が何も言えないとばかりに俯いて、

メイドのニムエさんがもっと言ってくれとばかりに頭を上下に振る。

・・・大変なんだな、君たちも。


そしてもちろん、そんな事を気にする女王などではありはしない。

 「なんの、国の方はコンラッドに任せてきた。

 あやつもこっちに来たがったようじゃがな、

 長男の立場も理解しておるのじゃろう、

 悔しそうにケイジ達を頼むと言ってきおったわ。」



コンラッド君は留守番というわけだね。

さすがに全員でこっちに来るようなことはないか。


そこでようやくケイジも普通に喋れるようになったようだ。

 「コンラッドの剣の腕は上達したのか?」

 「おう、ケイジよ、

 今度会ったらそなたを打ち負かして見せると豪語しておったぞ?」

 「・・・ふん、上等だ、存分に揉んでやる・・・。」

嬉しそうだな、ケイジ。

久しぶりに舌なめずりフェイスを見た気がするよ。



・・・それにしても、

ここに来て、未だに誰も女王の首元の幼女について誰も突っ込まない。

確かにケイジの命の危機があったから、そっちを優先するのは仕方ないにしても。


人間でないのは間違いなさそうだが、人間なら4~5才くらいなのだろうか?

この世界にも髪の脱色技術はあるが、全く別の色に染めなおす習慣は聞いたことがない。

つまりあの緑銀の長い髪は自前の物ということか。

そして何よりも、あの幼女自体にかなりの魔力を感じる。

さすがにマルゴット女王ほどのものでもないが、

まだ生まれて数年だということを考慮すれば、この先恐ろしいほどの存在となるに違いない。


まぁ・・・誰も突っ込まないとは言ったけど、仮にも相手は一国の女王、

身分を気にせず話しかけられるとしたら、確かに私かケイジしかいない。

ケイジはそれどころじゃなさそうだし、もういっそ私が聞くしかないようだね。


 「女王、その首元の・・・。」


そこまで喋った時だ。

麻衣さんが信じられないものを見たかのように大声をあげた。


 「マ・・・マーゴお姉さん・・・!?」



・・・えっ?


呆気にとられた私たちを無視して麻衣さんが女王に向かってダッシュする。

え? ちょっと待ってくれ。

いま、麻衣さんは母の愛称を・・・「マーゴ」とその名を口にしたのか!?

なぜそれを知っている?

彼女は私の母に会った事があるのか?


麻衣さんは日本から出たことは一度もないと言っていた。

母は・・・少なくともこの私を産んでからは日本になど一度も行っていない筈・・・



いや、その事は後回しだ!

当たり前のことだが、いきなり紹介もまだされてもいない人間が急接近したならば、

女王の護衛は行動に走らざるを得ない!!



女王の後ろに控えていた青白い顔の騎士が、剣の柄を握りしめて女王の前に飛び出る!

同時にメイドのニムエさんが、両手にナイフを構えていつでも襲撃者を斬り刻む用意を完了させた!


 「え、あっ、きゃあっ!?」


驚いて麻衣さんが足を止める。

これは不用意に近づいた麻衣さんに非がある。

相手は一国の最高権力者なのだ。

私たちにとって麻衣さんは恩人だが、それは私達パーティーの中での話。

もちろん、トラブルが起きたらそれを解決するのは私の役目だ。

すぐに私も麻衣さんの背中を追う。


そして女王にしても今の状況をすぐに理解したのだろう。

たとえ麻衣さんがステータスを隠蔽したとしても、女王の魔眼は麻衣さんが異世界人だと見抜いたはずだ。


 「・・・良い、

 ブレモアにニムエよ、

 その少女に妾を害そうという意思は視えぬ。

 後ろで控えているがよい。」


青白い顔の騎士の名前はブレモアか。

そう言えば、宮廷で顔を見た気がするな。

直接名前を聞くのは初めてだけれど・・・

・・・でも以前は、あんな顔色悪かったかな?

長旅やら女王の世話で神経をすり減らしているのかもしれないな・・・。


私は麻衣さんの背後から、彼女を守るようにその両肩に手を乗せる。

 「・・・紹介がまだでしたね?

 私と共に異世界から送られてきた少女・・・

 伊藤麻衣さん・・・です。」


彼女は私の顔を一度見上げ・・・

すぐに再び女王の方へと視線を戻した。

 「・・・あ、あっ、は、はい?

 あの、いえ、マーゴお姉さんもこの世界に転移を・・・

 あれ? マーゴさん・・・あれ?

 瞳の色が赤い?

 カラコン?」


まだ麻衣さんは事態を飲み込めていないようだ。

無理もない。

別々の世界にそっくりさんが都合よく存在していると考えられる方がどうかしている。


 「麻衣さん、

 こちらが昨晩話したグリフィス公国のマルゴット女王・・・、

 フェー・マルゴット・ペンドラッヘ様だ・・・。」


 「え・・・え?

 フェー・マルゴット・・・って?

 それ、マーゴお姉さんの名前にそっくり・・・。」


麻衣さんは、母のフルネームもご存知か。


 「カラドックよ・・・

 この娘子・・・異世界の妾を知っておるのか?」


さすがというか・・・マルゴット女王はそんな驚いている風でもないな・・・。

既に私の件が先にあったせいなのだろう。

それでも状況の飲み込みの速さは凄まじいものがある。


 「いえ、・・・いま、初めて聞きましたよ、

 麻衣さん、今君が勘違いした人の名前は・・・

 フェイ・マーガレット・ペンドラゴンであってるのかい?」



 「え? え?

 あ、人違い・・・あ、そうですよね?

 ここが異世界なら・・・

 え、でもおかしいっ?

 魂の匂いもそっくりなのに・・・

 ていうか、カラドックさんもマーゴお姉さんのこと、知ってるんですか!?

 あ、そうか、お二人ともイギリスの人・・・。」


やっぱり知っているのか。

いや、麻衣さんの尋常でない魔力・・・


・・・そうか、もしかしたら裏の世界の繋がりか・・・。

麻衣さん・・・


君はやっぱり・・・

普通の女子高生なんかじゃなかったんだね・・・。



この時、私には麻衣さんに対する疑念と言えるものは、ほんのわずかなものでしかなかったと白状せざるを得ない。

彼女の背後に、

如何に大きな秘密が隠されていたのか、

この時点でまだ知る由もなかったのだ・・・。


 

次回、更新遅れたらごめんなさい。

・・・今回もギリギリですよううう・・・。

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