第二百二十七話 再会
ぶっくま×2!!
ありがとうございます!!
・・・ふふふ、まさかあのキャラが復活するとは誰も思うまい!
さて、朝になった。
冒険者ギルドから馬車が二台やってきて領主の館に向かう事となる。
ギルドマスター、オルセンは既に出発したらしい。
アークレイの街から馬車で揺られることほぼ一時間・・・。
広大な領主の館が見えてきた。
まぁ、この辺りは土地がいっぱい余ってるらしいから。
鉄柵で囲まれた庭園を眺めつつ、
私たちの到着と同時に門が開かれる。
グリフィス公国の宮殿のように華美なイメージはない。
季節的なもののせいもあるのだろうが、
庭園についても花が咲き乱れているといったものもなく、
個人の趣味で花を植えてますよ、という程度に見えてしまう。
まぁ、あの派手好きの女王の宮殿と比べる方が間違いか。
私たちは初老の執事らしき男に出迎えられ、
馬たちは厩舎の方に向かう。
だが・・・
その手前にはいくつかの・・・豪勢な馬車が数台とまっているのも見逃さない。
様式の異なる荷台だな・・・。
一種類はこの国の・・・
もう一種類は別の存在のもの、ということだろうか?
ん?
何か異様な気配があるな・・・。
なんらかの隠蔽術を使っているのか正体が掴めない。
「麻衣さん・・・?」
彼女なら感知できるだろうか?
見ると彼女の顔から汗が垂れている・・・。
「麻衣さん!?」
他のメンバーも気づいたようだ。
「麻衣さん、何に気づいたんだ!?」
「あ、う・・・凄い魔力です・・・
抑えてはいるみたいですけど、カラドックさんに全く引けを取らないくらい・・・。」
ケイジが信じられないとでもいう表情で口を開く。
「カラドック並みの魔力って、てことはここにいるアガサやタバサをも上回るってことか!?」
「ぬうう、タバサちゃん屈辱・・・。」
「ダークエルフの面目丸つぶれ・・・。」
最近思うのだけど、タバサにアガサは口数こそ少ないものの、
自分たちの名前を出された時には、必ず何かしらの反応を見せてくれる。
サービス精神が旺盛なのかもしれない。
それよりそんな使い手が紛れ込んでいるのか・・・。
何者だ?
冒険者か、それともベードウーア王宮の守護者か?
まさかいきなり戦闘になることはないだろうが、
これは相当、予定を見直した方がよさそうだ。
最初の通された部屋は応接室や会議室といった雰囲気ではなかった。
広い客間、といえばいいのか、
それともパーティーにでも使えそうな部屋だった。
まぁ人を呼んでおいていきなり会議を始めるといった無粋な領主ではないらしい。
・・・ところが執事の様子がおかしい。
「どうかされたのですか?」
「い、いえ、
実はこの場は異国からのお忍びの一団の方々が、
『蒼い狼』の皆様がやって来たら、ここに案内するようにと・・・。」
なんだ?
まさか罠の類か!?
もちろん、私はすぐにその警戒をした。
「あ!?」
「麻衣さん!?」
彼女が何か感知したようだ。
「どうした、何か視えたのか!?」
「ここに向かっています、先程の強い魔力・・・。
これは・・・喜び? 渇望?
まるで愛する人にこれから会えるとか、そんなイメージの・・・。」
「「え?」」
なんだい、それは!?
全く意表を突かれた私に、次にその気配を感じたのはケイジだった。
「あ!? この香水の匂い!?
まさか!?」
「ケイジが知る人物か!?」
すぐにケイジは、「何を言ってるんだ」目線を私にぶつけてきた。
呆れているような表情に見えたが、
それ以上に焦っているようでもある。
「カ、カラドック、お前も良く知ってる奴だぞ!?」
「なんだって!?」
「いや、まさか、こんな所に本人が・・・でも?」
ケイジは首を左右に振りながら、まるで逃げ道でもどこかにないかと探すかのような挙動に・・・
そこで扉がノックされた。
執事が恭しく扉を開ける・・・。
そこにいたのは・・・。
ベールで顔を隠した女性・・・。
お忍びで来ている・・・という説明通り地味目な衣装だが、かなりの高貴なドレスだ・・・。
だがかなりおかしいのは、その首元に何故か幼女が襟巻のように抱きついている。
緑銀の髪を後ろに垂らし、透き通るようなひらひらのドレスを纏った幼女が首元に・・・。
ていうか、あの瞳は何だ?
虹彩のない赤紫の瞳だなんて・・・まさか魔物じゃないだろうな?
あ、あれ?
この雰囲気・・・まさか。
「やっと・・・やっと会えたのうっ!!
会いたかったぞ、ケイジッ!!」
あ、あ・・・
そ、その声、その喋り方・・・まさか・・・
「「マルゴット女王っ!?」」
あ、有り得ない・・・。
ここはグリフィス公国ではない異国の地だ。
そ、それを国のトップが・・・最高権力者が・・・
外交手続き全て無視してお忍びで来ているというのか・・・!?
「おお! カラドック!!
見事、ケイジを見つけてくれたのじゃな!!
感謝するぞ!!」
「あ、は、はい、それは、はい、いいのですが・・・。」
「なに?
ちょっとここの領主を脅して、替わりに飴玉を見せてやれば、
うまく話しを通してもらえたのでな。
心配は要らんぞ?
後始末はこちらで済ますのでな?」
女王・・・!
あなたは何をやったんだぁぁぁあああっ!?
やはりマルゴット女王は私の疑念などお見通しなのだろう。
この人は何も考えずに破天荒な振る舞いをしているわけではない。
全ての大胆な行動は、しっかりとした計算・打算の上に基づいているのである。
本当にこの人が敵でなくて良かったと思う。
おや?
その時、私と女王の首元の幼女と視線が合った。
けれど幼女は人見知りするのか、すぐに私から視線を逸らせてしまった。
以前会った時にはこんな幼女はいなかった。
いったい何者だろうか?
そしてマルゴット女王はベールをずらせて、その下の素顔を私たちに晒す・・・。
相変わらず魔眼の赤い瞳は健在だ。
「ケイジ・・・。」
そうだ、ケイジは置手紙を残して王宮を去ったのだ。
果たして何年ぶりとなるのか・・・。
あ、ケイジがめっちゃ緊張している・・・。
まるで悪戯を見つかった子供のように・・・。
「ケイジよ・・・。
もっと顔をよく見せよ・・・」
「あ、う・・・。」
女王はケイジの真正面にやってきた。
後ろに反り返るケイジに、女王は・・・
感動の再会を・・・
バッチィィィンッ!!
ケイジの頬に強烈な平手打ちが飛んだ!!
誰も予測できなかった・・・。
ケイジも何の反応も出来ない。
頬をぶたれたその姿勢のまま固まっている・・・。
「バカモンが・・・。」
女王の言葉は震えていた・・・。
あ、もうわかった・・・。
女王の性格なら・・・この後は・・・。
「バカモノ・・・ケイジのおおバカ者!!
なぜ! なぜ妾たちに何も言わずに出ていったぁっ!!」
女王は小さい握りこぶしを固めてケイジの胸元を叩く・・・。
泣いているのだ・・・。
あの女王が・・・人目も憚らず・・・。
「マルゴット女王・・・」
ようやくケイジの口からその名前が出る・・・。
ケイジの言葉が重い・・・。
単に、女王の言う通り、何も言わずに飛び出て言った事への謝罪だけではないような気がした。
「すみません・・・
オレは・・・
あなたがオレにしてくれた事に、どう報いればいいのか、わからずに・・・。」
女王は髪を振り乱すかのように首を振る。
「バカモノォ!!
そんなものはどうだっていいのじゃ!!
我らは家族のように暮らしておったではないか!?
そなたにとっては、我らはそれほどの物でなかったというのかっ!?」
「・・・うっ、い、いえ・・・。」
「そなたが父親を恨むのは当然じゃ!!
・・・確かに妾がそなたを引き取ったのは、あのバカの罪滅ぼしのつもりだったのは否定せぬ!!
しかし!
それを越えるだけの暮らしを・・・
ともに同じ時間を過ごしておったのは幻だったとでも申すのかっ!!」
「いえ・・・マルゴット女王、
あなたは、私の・・・もう一人の母親のように・・・私を包んでくれました・・・。」
「ケイジ!?
いま、妾を母親と!?」
「マルゴット女王、
私は・・・あなたを・・・もう一人の母親と・・・思って良いのでしょうか・・・。」
その瞬間、女王は愛する息子を抱きしめるかのようにケイジに飛びついた。
「何を今更じゃ!!
妾の子供は、そなたにカラドック!
コンラッドにベディベール!! イゾルテ!!
みんな妾の自慢の子供たちじゃっ!!」
ああ、元の世界で母の子供は私一人だけだった・・・。
もし、子供がたくさんいたらあのひとはこうなってしまうのかな・・・?
「ありがとう・・・ございます・・・。
あの人も・・・世界が違ったら・・・オレの母親に・・・。」
「ん? どうした、ケイジよ?」
「いえ・・・なんでもありません・・・。
あの・・・みんなは?」
「おお、そうじゃ!
みなのもの、入ってくるがよい!!
ケイジの仲間を紹介してもらわんとな!!」
え、まさか・・・。
女王が入って来た入り口の方へ顔を向けた。
その瞬間・・・
「ケイジ兄さまぁぁっぁぁぁぁぁぁぁあっ!!」
隕石が飛んで来た。
いや、扉の向こうから隕石が突撃してきた。
「ぐはっ! いぞる、てっ!?」
そしてドレスを纏った隕石はそのままケイジを巻き込んで館の壁に激突する。
リィナちゃんとヨルが「「あわわわわわわわわ」」と震えているんだけど・・・。
続いて入って来たのは恥ずかしそうに顔を覆いながらベディベール君、
後は護衛の人かな、青い顔をした騎士っぽい感じの人、
それとメイドの女性、・・・確かニムエさんだったかな、
もう表情を落として何があっても関知しないとばかりに・・・。
これ、どう収拾付けるの?
次回・・・下書きストック切れのピンチ!!
誰か私に休日を!!