第二百二十五話 ぼっち妖魔は考察する
麻衣
「えっ、あの人たち、今までキスの一つもしてなかったんですか!?」
タバサ
「ケイジはヘタレ。」
アガサ
「ケイジはチキン。」
ヨル
「ふわああああああああっ! カラダが蕩けそうなくらいロマンチックですよぉぉぉぉっ!」
カラドック
「子供の頃から一緒だったからなぁ・・・。」
リィナ
「ちょ、なんでみんなその場で見たかのようにっ!?」
ケイジ
「・・・いっそ一思いに殺してくれ・・・。」
麻衣
「実況中継はマイマイTVがお送りしました!!」
・・・などという事は起きていません・・・。
ふぃ~、
取りあえず目的のカラドックさんとは合流できました。
イケメンのおじさんだったね。
話しぶりやあたしへの接し方もスマートでいい人っぽかった。
これなら安心して行動をともにできそう。
まだエルフの人たちとは仲良くなれてないけど、
たぶんお互い様的にどう接していいか距離感が掴めないんだろう。
ていうか、あの人たちの独特の話し方に、どうつきあえばいいのか素で分からない。
あの喋り方のマネをすればいいのか、
ツッコミをいれればいいのか、
ボケをかませばいいのか、誰か教えてください。
リーダーのケイジさんは外見こそ凶悪な狼フェイスだけど、
あたしとの出会い方がアレだったからね、
あたしのことを命の恩人扱いしてとてつもなく丁重にもてなしてくれる。
あれかな?
受けた恩は忘れないという犬的な何かだろうか?
ケイジさんは狼だけど。
その意味ではリィナさんも気さくに話しかけてくれている。
ただ・・・なんていうか・・・
カラドックさんの時にも思ったんだけど、
このリィナさんにも何か既視感というか・・・どこかで似たような魂の匂いを感じた気がするんだよね。
考えすぎかな・・・。
ピッタリ記憶と同一というならともかく、似てるかな程度のお話ならどこにでもいるのかもしれないし。
最も気になったのはリィナさんの腰に提げる剣から、異様なまでの霊的エネルギーを感じる件・・・。
鑑定させてもらったら天叢雲剣って!?
しかも異世界で消失したはずの神剣・・・て。
完全にあたし達の世界由来のアイテムじゃない!?
それを転生者でもないリィナさんが物心つく頃から持っていたって・・・
この話はさすがにカラドックさんにも伝えておいた。
その・・・例の『悪魔』の話と繋がりがあるかのようにも思われたのだ。
あの場では話をごまかしたけれど・・・
悪魔とか魔人とか・・・あれはどういう意味なんだろう?
あたしは・・・あんなそれこそお伽噺に出て来るような、
「異形の悪魔」なんて存在は一切信じていない。
いつだったか「いない」とまで断言した記憶もある。
魔族についても同様だ。
そんな得体の知れない生き物がそうそういて堪るか、この21世紀に。
ただし、あたしたちリーリトのような、人の社会に潜む存在までは否定できない。
彼らは必ずこの世のどこかに存在する。
それは人間以外の生物という意味ではない。
あくまで「彼ら」は人間なのだ。
それを「魔族」と呼んでいいのかどうかは定義の問題。
広い意味ではあたし達「リーリト」だって魔族なのだ。
定義次第では、
リーリトだって魔族にもなるし妖魔にもなるし、当然人間であるともいえる。
ただこの世界の「魔物・魔族」のカテゴライズには、体内に魔石がある事で区別するらしいから、
その条件ならあたしはこの世界では「人間」と強く主張して問題ないはずだ。
・・・ステータス画面は棚に上げておく。
それ以上はこの話に足を突っ込めない。
足を突っ込めない理由は他にもある。
「悪魔」と聞いてあたしが真っ先に思い浮かべるのは、
あんなお伽噺に出て来るような「雑魚」の話ではない。
「本物の悪魔」・・・
そう、
人間が生まれる以前から存在する古の大神と言われたら・・・あたしは一切否定できないのだ。
その存在をあたしたちリーリトは知っているから。
そしてもし「そんなもの」があたし達の前に出てきたなら・・・
こんな世界など簡単に壊してしまうだろう。
あんな鰐の化け物など足元にも及ばない存在。
いろんな意味でそれ以上考えたくない。
あれが出てきたら全てが終わる。
魔王?
邪龍?
見た事ないけど、たぶん次元が違う。
それこそ対抗するには天使でも・・・うん、どうなっちゃうか全く想像できません。
そんな未来あるのかな?
そうそう、話を戻しましょう。
一つ浮かんだ考えがあるんですよ。
あたしたちには・・・転移者かこの世界の人とかの区別もなく、
この世界にはゲームのような成長システムがある。
誰が作ったのか与えたのかも不明なわけで。
でも人為的なものには違いないわけだよね?
・・・じゃあさ、
その召喚された悪魔とかやらも・・・人為的に造られた存在だとしたら?
だって伝説とかお伽噺とか言った「設計図」があるわけでしょ?
どうかな?
いい線いってますかね?
あとそれと・・・もう一人・・・
ヨルさん。
なんか絡まれた・・・。
あたしに対抗意識を燃やしているようです。
彼女がカラドックさんにアタックしまくっているのはわかったけれど、
カラドックさんにその気が全くないのも理解できています。
まー、あたしも妻子持ちの人に本気で何かしようなんて思いもしませんけど、
ちやほやされる分には気持ちいいですからね。
いいじゃないですか、ぴったりお近づきになっちゃっても。
へっへっへっへ。
ていうか、マジな話。
あたしの体力はレベルが上がっても雀の涙ほどしか伸びていないのだ。
険しい山道など、ついていくのでやっとという話。
本気で他の人にお世話にならないと、途中で脱落する可能性が高い。
みんなはあたしの感知能力で安全性が格段に高まると言ってくれちゃってるけど、
機動力が落ちてしまっているのが非常に申し訳なく思うのです。
だから色恋沙汰抜きにして、ケイジさんやカラドックさんのように体力に余裕ある人と仲良くなっておかないとならないのだ。
うぇっへっへっへ、
なのだ。
あ、ヨルさんの件?
あんまり煩いから、ダークネス&サイレンスの刑に処してあげました。
しまいに暴れ始めそうだったんで最後には解除してあげましたけど、
完全にガチ泣きしてました。
「ううううう、真っ暗で何も見えなかったですようぅぅぅっ!
音も何にも聞こえなくなってみんなに置いていかれたとおもったですぅぅぅぅっ!」
多少、かわいそうだった気がしたので。
巾着袋から予備のプリンを出したら涙を流して平らげてしまいました。
「こ、こんな美味しいものははじめてですよぉぉっ!!
ヨルは麻衣ちゃんにずっとついていくですよぉぉぉっ!!」
・・・なんか・・・気のせいか自分が桃太郎さんに見えてきました・・・。
あっ、この異世界転移ってそういう?
>気のせいか自分が桃太郎さんに見えてきました・・・。
麻衣
「あ、そういえばお供に、蛇とフクロウと・・・ラミィさんか、数はもう揃ってる・・・。」
いぬ
「姐さん! 今度こそキャラ被りの危機です!!」
うりぃ
「ま、まだや!
うちもそろそろ隠された設定を公開するさかいにな!!」
ナレーション
「・・・そういえば何か仕込んでいましたね。」
そして次回!!
いよいよあの方が合流!!
果たしてそんな大人数にして物語の展開は大丈夫なのか!?
作者本人が一番心配しています・・・。