第二百二十二話 いよいよ・・・
ちょっと短めでごめんなさい。
麻衣ちゃんが、ケイジのつぶやきに反応したのか、
説明を続けてくれるようです。
でも、そこから更に信じられないお話が・・・。
「え、あ、はい、多分男女関係的なお話の様でしたけど、詳しくは聞いていません。
でも、この世界限定ですけど、過去現在未来が視えるスキルを持っているそうですよ?」
「「「はいいいいっ!?」」」
うわああああ、なんですか、その人はあああああ!?
もしかして滅茶苦茶重要人物!?
「あたしの印象では、そのマスターって人は、向こうの世界で愛していた人を、今も想い続けているようです。
布袋さんはマスターがとても寂しがっていると言ってましたし。
あ、そう言えばその時にあたしの他にも転移者がいるって聞いたんです。
みんな揃ったらマスターに会えるかもって・・・。」
「え? みんな?
麻衣さん、今『みんな』って言った?」
「は、はい? 何か?」
あれ?
カラドックがまた何かに反応しています。
「現在判明している転移者は、私と麻衣さんだけだ。
二人しかいないものを『みんな』って表現するかな?」
「・・・え、・・・あ!?」
「そう、もしかしたら他にもいるんだろうね?
白い矢に射抜かれた転移者が!!」
さすがは賢王ですね、
あんな一言でそこまで気づくんですから。
てことは他にも強力な助っ人が現れるんでしょうか?
これは期待が高まります!!
「ああ、そう言う事になるんですね・・・
あたしやカラドックさんの他にもいるって可能性か・・・。」
「そうだね、
事によると、魔人を追うより、先にそのマスターに会う方がいいのかもしれない・・・。」
「・・・また戻るのか・・・。」
ケイジが隣でげんなりしてます。
確かにここの所、同じルートを行ったり来たりしてるだけでしたからね。
魔族の街に着いた時はいい刺激にはなりましたけど。
「急がば回れと言うだろう、
そもそもここまでが順調すぎたんだ・・・。
あの悪魔にもいいようにあしらわれた事を考えると、もっと慎重に進むべきだと思う。」
ここでアガサが両手をついてカラドックににじりよります。
その体勢だと、二つの胸が重力に揺られて凄いことになりますよ?
「もしかすると先に深淵の黒珠入手!?」
あれ? 反対側で麻衣ちゃんが「ううう、いや、でもラミィさんの方が・・・」と目をギョロギョロさせてます。
「ア、アガサ、君は・・・いや、
そうなる可能性もあるな、
・・・だがそっちを先にするとアガサがパーティーから抜けて・・・ぐっ!?」
そのままアガサの強烈なハグ!
「その心配は無用!
私は最後まであなた達と行動!!」
「う、うわ! そ、そうか、よろしく頼む・・・って苦しいっ!」
「ああああああああ、ヨルのカラドックがぁぁぁぁあああああっ!?」
あ、ヨルが隅っこで血の涙を流していますよっ?
ぐるぐる巻きにしても煩いですね、彼女は。
麻衣ちゃんがボソッと呟いていたのを兎さんの耳は聞き逃しません、
「あー、この人、ゴッドアリアさんと同じ立ち位置だ・・・。」
「そ、それで布袋という男は、麻衣さんにその情報をつたえるために近づいたのかな?」
「あ、それは偶然だって言ってました。
あたしが異世界知識特権でプリン作って売ってたら、
懐かしさのあまり、近づいてきて・・・
あ、そうそう、あれもユニークスキルになるのかな?
布袋さんには『異世界の記憶』があるようです。
布袋さんご自身の記憶ではなく、異世界・・・あたし達の世界でいいと思いますけど、
そこに生きていた誰かの記憶をマスターに貰ったようなことを言ってました。」
「布袋・・・あれだけの強力な土魔術だけでなく、そんなものまで・・・。」
ケイジが呻きます。
布袋って人にはあたしも会った事があるけど、人のよさそうなおじさんにしか見えなかったんですけどね。
でも、麻衣ちゃんは不満そうでした。
「人がよさそうに見えたからこそ、あそこであたしを知らんぷりするなんて!!」
さて、
これからの大まかな予定が決まりました。
後は、夕飯を食べながら雑談など・・・。
そうそう、リザードマンの一団は、パーティー名が「水辺の守護者」だそうです。
リザードマンというのは、あたしたち獣人以上に珍しい存在です。
いえ、人口が少ないというわけではないのですが、ヒューマンに混じって暮らす人たちが圧倒的に少なく、冒険者の中でもたまにしか見掛けません。
・・・理由はあたしたち獣人が不当な扱いを受けているのと同じです。
違う点は、獣人はヒューマン社会の中に組み込まれているのに対し、
リザードマンはヒューマンとは別の集落で暮らしている者が多い、というところでしょうか。
リザードマン自体も、ヒューマンに蔑視されているのは自覚しているので、
わざわざ人間社会に混じって暮らすのは、何らかの理由でやむを得ず、という場合がほとんどとか。
たまにお金を稼ぐとかで冒険者になるものもいるようですが、同じリザードマン同士でパーティーを組む方が、何かと都合が良いのでしょう。
もっとも、一番リザードマンを見かける機会が多いのは、冒険者のクエストではなく、
戦場でしょうね。
これが傭兵とかになると、かなりのリザードマンがいるようです。
彼らは集団戦が得意と聞きますので。
「リザードマンのあんたらには失礼な言い方かもしれないが・・・。」
雑談中、ケイジが麻衣ちゃんやリザードマンの皆さんに何か聞くようです。
「なにキャな、ケイジ殿?」
「いや、麻衣さんは異世界・・・つまりヒューマンしかいない世界から来たのに、
オレらみたいな獣人や、あんたらリザードマンに何の拒否感も見せないのが不思議でな。
特に女の子なら、そういうのって・・・。」
あー、確かに。
獣人のあたしでも鱗持ちのリザードマンにいきなり友好的に話しかけるのはちょっと抵抗あるものです。
いえ、もちろん、差別するとか軽蔑してるとかそういう話じゃなくて、生理的なもので。
一緒に行動するうちに慣れてくるとは思いますが。
「ああ、それは我らも最初はそう思った。
けれど麻衣殿は我らの外見には全く気にもならないらしい。
自分にちキャづく敵意や害意をびんキャんにキャんじとれるおキャげキャもしれんがな。」
ああ、そういうことですか。
なるほど、ある意味便利ですね。
でも麻衣ちゃん本人にとっては違うみたい?
「あ、いえ、それ以前に別に・・・あたしが・・・いえ、
あ、その、あたし学校で生物部に入ってるんで、動物にそんなに抵抗ないし・・・
第一、爬虫類ってかわいいじゃないですか、
トカゲとか蛇とか・・・?」
あれ、かわいいんですか?
リザードマンが?
う・・・ん、見慣れれば・・・そうなのでしょうか・・・。
あたしにはよくわかりませんけど・・・。
さて、いよいよお時間です。
皆様、長らくお待たせしました。
お仕置きの時間ですよ・・・。
さぁ、次回、いよいよケイジの正体判明!?
・・・いや、もうバレてるから・・・。