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第二百二十話 公私のけじめをつけよう


<兎さんの状況報告>



はい、みなさん、・・・こんばんわ。

兎型極上美人剣士、リィナ、です・・・。

今日はいろいろなことがありました。

正直、情報を整理するだけで大変です。


・・・え?

前はこんなテンションじゃなかった?

そうでした?

・・・別に。



・・・話を続けます。

あたしだけでなく、その場のメンバー全員、混乱しまくっているという事で、

一度、カラドックがみんな集めて夜の内に情報共有を行う事になったんです・・・。



ここはまだ、魔族領の一帯、

魔族執事シグとの戦闘の場からUターンして、

前日にキャンプを張った拠点まで戻ってます。

岩場が続く道のある地点に、

人間が10人くらいは余裕で過ごせるような洞穴を発見したので、

昨夜はそこにテントを張りました。


今晩もここで過ごすことになりそうです。

・・・もっとも、今晩はリザードマンの人達もいるからちょっと手狭に感じるかも。


え、と、ではどこから始めましょうか?


そう、まずはあたし達の前に現れた黒髪の小柄な女の子。

そんな派手な顔つきではないのだけど、どこの国の子かもわからない異民族?

神秘的な顔立ち、とでも言うのでしょうか、

エメラエルドグリーンの瞳なんて、あたしはかつて見た事もありません。

彼女はCランクの冒険者だというのですが、

あたしがこれまで見た事も聞いたこともない魔法を使うのです。

これにはカラドックは勿論、あらゆる魔術の知識を持つアガサでさえも驚いていました。


 「改めまして、伊藤麻衣です。

 巫女職、鑑定士、召喚士のジョブを持っています。」


はぃぃ!?

この子は何をナチュラルにそんなレア職を・・・

て、あれ?


カラドックとケイジが驚いてます。

いえ、みんな驚いているのは間違いないんですけど、二人だけ驚きポイントが違うような・・・。

名前の方に反応しているんでしょうか?


ケイジは何も言わないけど、カラドックがすぐさま疑問の声をあげました。

 「名前についてはさっきも聞いたけど・・・、

 それにその黒髪と風貌・・・

 麻衣さん、

 あ・・・麻衣さんと呼んでいいかな?

 イトーマイという連続した名前ではなく、『麻衣』と・・・。」


 「あっ、はい! 

 伊藤が苗字で麻衣が名前です!!」


年齢は16才だそうです。

もっと幼く見えるけど、内在する魔力が桁違い・・・。


でもやっぱりカラドック達が驚いているのはそこじゃないみたいなのです。


 「麻衣さん、

 ・・・君の顔立ち、苗字と名前、

 まさか・・・。」


あたしには、最初カラドックが何に驚いていたのかわかりませんでした。

でも当の麻衣ちゃんには通じていたようです。


 「あ、あたしからも確かめさせてもらったほうがいいですか?

 カラドックさん、

 『ユナイテッドステーツオブアメリカ』、

 『ユナイテッドキングダムオブグレートブリテン』・・・

 という名前をご存知ですか?」


ん?

何か今、麻衣ちゃんの口調が変わったような?


それと今の長ったらしい名前は何でしょう?

誰かの名前?

でもそこでカラドックは確信したようなのです。


 「麻衣さん!?

 いま、君は私に英語で・・・

 そして、アメリカとイギリスの二つの国名を!?」


 「あっ、良かった、

 英語は英語として認識されるんですね?

 あ、でも異世界の人たちには、日本語も英語も翻訳されて聞こえるのかな?」



え・・・?

どういう事ですか?

ま、まさか、麻衣ちゃんもカラドックと同じ異世界からの転移者!?


 「な、何という事だ!?

 私の他にも向こうの世界から送られてきた人間がいたなんて!?」


そこでようやく私やアガサたちも理解したのです。

・・・ていうか、ケイジ、

お前やっぱり・・・。


いえ、彼のことは後回しにしましょう。

あいつに言いたい事は山ほどあるのですが、それはあいつとあたしの個人的な話です。


この世界の一大事が控えている状況では、今はやめときましょう。




その後・・・


 「えっ、

 カラドックさん、心臓に矢を撃たれたんですか!?」

 「麻衣さんはこめかみに!?

 殺す気満々だろう!?」


 「あたしなんか、いきなりメールで

 『主人がオオアリクイに殺されて一年が過ぎました』なんて、ふざけたメッセージ送ってきたんですよ!?」

 「麻衣さんもかい!?

 私のところには『トンボ万年筆の佐藤です』って書き出しだったよ!!」

 「何のインターネットのガイドラインですか、それ!?」



・・・すっごく盛り上がっています。

この世界の危機の話はどこに行ったんでしょう・・・?

ていうか、ヨル?

悔しげな目をしてカラドックの隣の位置をキープしなくても?


でも麻衣ちゃんは空気を読める女の子だったみたいです。

敏感にヨルの視線を感じ取り、後ろめたそうに・・・。

 「あ、あの、大丈夫ですよ?

 あたしはカラドックさん、盗りませんからね・・・?」


 「い、いや、ていうか、私はヨルさんのものじゃないし・・・。」


 「きぃぃぃぃっ!

 泥棒ネコですよううぅっ!!

 この子、カラドックの子種を奪い取る気満々ですぅぅぅぅっ!?」


あ、ケイジが立ち上がりました。

 「すまん、ヨル、話が進まないから今は我慢してくれ。

 ・・・リィナ、手伝ってくれるか?」


・・・。

あたしはケイジと二人がかりでヨルを縄で拘束します、

・・・無言で。


 「あっ!? ケイジさん、リィナさん、酷いですようぅぅぅっ!?

 あたしの方が先にカラドックにツバつけてたのにぃぃぃ!!」


 「あ、あの、リィナ、・・・さん?

 手伝ってくれてありがとう・・・?

 で、でも何で無言で・・・オレに目を合わせてくれないのか、な・・・?」

 「・・・・・・。」

 「あ、リ・・・リィナ・・・さぁん?」


ケイジが何か言ってます。

でも今はケイジと口を聞きたくありません、

その分、後でたっぷり話を聞かせてもらうつもりです。


 「リィナさぁん! この縄をほどいて欲しいですぅぅぅ!!

 こうしてる間にもヨルの大事な大事なカラドックがぁ・・・あ?

 ・・・ヒィィッ!?」


ヨルが煩かったですけど、

この場に充満する異様な空気を感じ取ったのか、静かになっちゃいました。

・・・きっとこれが勇者の覇気というものなのでしょう。


あれ?

見れば麻衣ちゃんも震えています。

何をそんなに怯えているのでしょう?

おや、

そう言えばあたしの説明文体も微妙に変化しています?


後で麻衣ちゃんが告白してくれました。

 「ううう、あの時はヨルさんより、リィナさんの方が数百倍怖かったです・・・。」



 「ハイエルフ、危うきに近寄らず」

 「触らぬウサギさんに祟りなし」


タバサにアガサ、

それはどこの国の諺です?


 


 「いやいや、

 いきなり異世界に飛ばされた人間が、旅の果てに同じ世界の人と出会えたんだから、テンション上がるのも仕方ないだろう?

 それにオレたちにとっては命の恩人だし、そんな気にやむ事はないって。」


ケイジは何を偉そうに言ってるのでしょう?

自分が何様だと思っているんですかね?

 「え・・・あ、あの、オレ、このパーティーの・・・リーダー・・・。」



 「いえいえ、すいません、

 調子に乗ってました、

 以後、気をつけます。」


土下座まではいかなくても、

さっきあたしとケイジがしたみたいに、

平身低頭に麻衣ちゃんが正座して頭を下げてます。

いえ、ホントにあたしは麻衣ちゃんに感謝こそすれ、怒ってませんよ?

あくまでケイジに文句を言いたいだけで。


カラドックが場を取りなすようです。

 「そ、そうとも、

 これは私の方が気をつけるよ、

 それで麻衣さん、

 私も日本には行ったことがあるよ、

 私の父親が日本育ちで、腹違いの弟の母親が日本人なんだ。」


 「あー、それは話しやすくて助かります。

 あたしは日本から出たことないですけど、一緒に住んでるエミリーって子がイギリス生まれなので、彼女から英語を教わって・・・。」 


さっきより大人しいペースで会話が進みます。

でもまだ核心には至らず、互いの紹介の域を越えませんね。


でも、この後、大事な話が待ってます。

あたしは心の中の憤怒の炎を滾らせておきましょう・・・。


 



・・・この場をどう収拾してくれよう・・・?

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