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第二百十八話 ぼっち妖魔は土下座される


うん、

とりあえず、あたしがここに旅してきた目的は達成だね、

あたしは後ろを振り返って、あたしを護衛してくれていたリザードマンの皆さんに目配せをした。

すると、リーダーのエルザードさんがその事を察してくれたようだ。


 「麻衣どの、依頼達成・・・ということで良いのキャな?」

 「はい、ここまで護衛していただきありがとうございました!」


 「なんの、護衛とは名ばキャりではないキャね、

 襲ってくる魔物は全て麻衣殿がキャん知、さらには無力キャしてしまい、

 我らは止めを刺すだけのキャん単なお仕事、

 しかも、ここまでの獲物の素材と魔石は全てキャい収、

 こっちが代金を支払いたいくらいの美味しい旅じゃった。」


そうそう、

リザードマンさんたちは、「か」の音が発声しにくいようなのだ。

聞いてるとその内慣れちゃうけどね。


 「あはは、お役に立てて何よりですよ、

 まぁ、でも正確にはこの後の交渉次第ですからね、

 もうちょっとお付き合いいただければ・・・。」


 「全くキャまわんよ、キャえり道もあることだしの。」


さすがにあたしでも、アークレイの街からここまで一人で旅できるはずもない。

そこで、新たなフロンティア開拓で沸く冒険者の一団から、

リザードマンさんのグループに交渉を持ちかけて、

『蒼い狼』の皆さんに追いつくまで、護衛をしてもらうことにしたのだ。

といっても、ギルドに護衛の依頼を出したわけではない。

あくまで冒険者のあたしが、冒険者のリザードマンさんのパーティーに、個人的な依頼をかけただけである。




 「き、君はどうして・・・私のことを・・・?」

カラドックさんの疑問は当然だ。



 「あ、はい、えーと、何から話そうかな、

 あ、っと魔人って・・・。」


と言いかけてたところで、アースウォールで出来た坂道から、救助された皆さんが登って来た。


狼獣人の人は、多分まだフラフラしてるに違いない。

露出の多い浅黒い肌の人に支えられている。

ああ、この女の子も泣いちゃってるね。

 「グス・・・、うぇぇぇぇぇん、ケイジさあん、良かったですよぉぉぉぉ、

 こっちが生きた心地しなかったですぅぅぅぅ!!」


 「わ、悪いな、ヨル、心配かけて・・・

 ていうか、気を遣わなくていいぞ、お前、毛深い奴嫌いなんだろ・・・?」


あ、肩を貸してる女の子が怒った。


 「何馬鹿な事言ってるですかあああああっ!!

 それはあくまで結婚対象ですよぉぉぉぉっ!!

 ケイジさんがいい人だって最初からヨルは言ってるですうぅぅぅ!!

 いくらなんでも怒りますよぉぉぉぉっ!!」


 「そ、そうか、すまない・・・。」

 「で、でも、さっきのケイジさん、かっこよかったですぅぅ!

 リィナさんへの口説き文句最高でしたあああぁぁぁぁあ、

 あれは女の子なら一度は言ってもらいたいセリフですよぉぉぉ!」


 「あ、

 あんなセリフ、聞こえて・・・

 そ、それは、わ、忘れて・・・。」



あたしには聞こえない場所だったけど、だいたい想像できるね。

ふたりっきりで女の子の事を抱きしめてたんだものね、

そりゃあ、その時の言葉を他の人に聞かれたらたまんないだろう。


そしてその後、続いて、兎獣人の女の子が、同様にダークエルフの人に支えられて登ってくる。

最後尾は得意げな顔のハイエルフのお姉さん。

 「リィナ安心、もう大丈夫。

 みんな全員無事。」


 「は、はへ、そっか~、

 ああ・・・よかった・・・あああ、よかったねぇ~・・・。」


兎の人は意識がまだはっきりしてないのかな。

受け答えでやっとってとこなんだろうな。

まぁあれだけぐるぐる回されたらね?

・・・てか、兎の女の子、

心の中にすっごい激怒の感情の塊が見えるんだけど・・・

これ、後で修羅場が待っていそう・・・。




狼獣人の人は、ようやく坂道を登り切って、

あたしたち新しい人間が増えているのを見てポカンとしていた。

状況が掴めないのだろう。

すぐにあたしの目の前のカラドックさんに声をかける。


 「カ、カラドック、お前が精霊術でオレたちを?

 だ、だが、とても間に合う筈が・・・、

 それにその女の子たちは・・・。」



そこでようやくカラドックさんがあたしの手を放してくれた。

でもテンション高いままだよ!

 「ケイジ!!

 そう、そうなんだ!!

 私の術では間に合わない筈だった!!

 落下する二人の重量を浮き上がらせる事なんて、あのタイミングじゃ不可能だったさ!!

 そ、それをこの子が・・・この女の子が、不思議な術で、

 君らを無重力状態にしたらしいんだ!!

 だから私の精霊術も効果を発揮した!!

 それで君らを助ける事が出来たんだ!!」



わお、あれだけで正確に事態を把握しちゃってるよ、この人。

かなり頭の回転が早い人なのかな。


するとどうだろう?

狼獣人の人は、支えてる女の子を「もういいぞ」とばかりに放して、

ヨタヨタしながらこっちに近づいてきた。

最初は半信半疑だったようだけど・・・


あ、これは・・・




ビッタアアアアアアアアっ!


うわああああ!

土下座だ!!

狼獣人の人があたしに向かって、これ以上はないというほど、

頭を地面にこすり付けて土下座してくるううううう!?


 「君が!

 あ、ありがとうありがとう!!

 君のおかげでオレは大事な人を失わずに済んだ!!

 この恩は・・・この恩は決して忘れない!!」


ああ、もうカラドックさんと二人して似たようなことを・・・!

あ、そしたら兎の女の人も続いてマネするように土下座してきたぁ!!


 「いえ、あの、そんな、ほんと大袈裟ですって、

 みなさん、ご無事で何よりです・・・。」


これはほっとくと永遠にお礼だけで時間が過ぎてゆく危険がある。

どうやって話を区切ればよいだろう?

と、思っていたらダークエルフの人がきっかけを作ってくれた。

 「・・・まさかヒューマン?

 ヒューマンでこれだけの魔力を?」


今のあたしは他人から鑑定できない状態の筈だけど、

内在魔力は大きいと、どうしたって反応されちゃうものね。


 「私の鑑定も阻害。

 これはとてつもない逸材の予感。」

ハイエルフの人にも見られたようだけど、あなたたちの魔力も、とんでもないですよ。

ていうか、あたしより多い魔力持ってません?

さすがはこの世界で最も高い魔力を有すると言われるエルフさんたちだ。



そのタイミングに合わせてくれたのだろう、

あたしを護衛してきてくれたリザードマンさんのリーダー、エルザードさんが助け舟をだしてくれた。


 「落ち着いて話すのであれば場所をキャえてはどうキャな?

 ここは先程まで戦闘があった様子、

 いつ何時、相手が戻ってこないともキャぎらぬ。」


 「そう、そうですね、

 ここは簡単な紹介だけして、直前に休憩した場所まで戻りましょう。」


カラドックさんが同意してくれて、

あたしたちは「蒼い狼」のメンバーさん達の紹介を聞く。

アークレイの冒険者ギルドで、事前に情報を得ていたから、

そんなに真新しい話ではなかったけども。


ただ、魔族のヨルさんについては情報がなかったからびっくりした。

「琥珀色」の瞳について、少し興味があったけども、

・・・べつにあたしたちの同族だとか、同じ出自という訳でもなさそうだ。


やけに頭の覆うターバンのようなものが大きいなと思っていたら、

未婚の女性はあの中に角を隠しているんだって。

へぇ、そういう文化なんだ。



そして肝心なのはあたし達の話だ。

 


次回、麻衣ちゃん、またもややらかす?


リザードマンの言葉遣い、

漢字なくても分かりますかね?

ちなみにリザードマンさんたちはゲッコ族ではありません。

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