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第二百十三話 タバサ

ぶっくま、ありがとうございます!


<視点 タバサ>


ハイ、皆さん、ご機嫌いかが?

ハイエルフのハイパーゴージャスカリスマプリーステス、タバサだよ。


びっくり?

びっくりしちゃった?

ホントはこんな喋り方なんだよ、うん。


誰かから聞いたかもしれないけど、いつものあの喋り方は修行の一環。

ご存知のように、ウチの家系は代々ハイエルフの神官職。


当然幼いうちからこのタバサには、神職に携わる者として英才教育がなされていたの。

その教育の一つ、

呪文の詠唱の効果を高めるために、

普段の口調から一定の制約を掛けるという考えは、幼い私にとって面白かった。


実際にそれを実行する者は少なかったようだけど、

神官長の娘の私がその喋り方を始めても、周りの者はすぐに納得してくれたようで、

「なに、この子供、イタすぎ」などという失礼な連中はいなかった。


あ・・・いなかったというより、いなくなったという方が正解かな?


後で父上がそんなニュアンスのセリフをぼそっと言ってた気がする。

あの時の父上のニヤリとした笑みは忘れられない・・・。





まぁ、多少なりとも現状認識能力がある人間なら当然だよね。

父は中央神殿トップの神官長、

その娘である私には親から受け継いだ類稀な魔力持ち。


父か私が、神殿運営において致命的な失策なり不祥事を犯すならともかく、

滞りなく職務を果たしていれば、このまま私たちは神殿内において決定的な権力を振るえるのだ。


わざわざ、何の利益もないのにその権力者の不興を買うようなマネはバカのする事である。


そんなこんなでやりたい放題・・・ゲフン、いや、

そんな毎日を送っている私たちにも転機が訪れた。


あ、一応言っておくけど、別に私たちは仕事に手を抜いたりさぼったりはしない。

全力を尽くすよ。

努力も惜しまない。


単に人の話を聞かないだけ。


うん? 最低?

何のことかさっぱり。


他人の都合など知ったことではない。

世界は私を中心に回っている。


そうそう、転機の話。

前の年からハイエルフの森都ビスタールに、

御霊のお戻りが少ない兆候は報告されていた。


とはいえ、毎年死んでいく人たちの数が常に一定というほどでもないわけだし、

年によってはそう言う事もあるだろうと。

ところが今年もとなると・・・そして去年よりさらに、となると話が違うわけ。


しかし原因が分からない。

そもそもどうやって原因を追究すればいいの?


その時にダークエルフ達から面倒な依頼が舞い込む。

あいつらは、こっちのことなどお構いもなしに自分たちの都合を押し通そうとする。

全人類中、最も魔力が高い種族を自認しているせいか、

自分たちこそ世界の中心だと勘違いしているようだ。


少しは私たちを見習ったらどうだろうか?

皆さんもそう思うよね?



まぁ、ビスタールは私たちの街、

彼らに勝手はさせないけども、

父上が話をつけて互いに協力を取り付けることになった。

・・・全く、あの忙しいリ・ボン祭り当日になんということを・・・。


私がひそかに楽しみにしていた、ハイエルフの少年音楽団「ストーム」の舞台が見れなくなったらどうしてくれるの?


結局、私が彼らエルドラの魔法兵団の案内・交渉役を任された。

ちょうど、捜索の一人が狼獣人にボコボコにされたというから、

その狼獣人が泊っているというホテルに捜査協力を依頼。

一応、私はその場に立ち会う事に。


全く・・・いくらリ・ボン祭りとはいえ、こうも粗野な他種族の亜人を迎える風習もどうなのか?

所詮は余所者。

金払いはいいのかもしれないが、トラブルを巻き起こす原因にしかならないのは子供とてわかるだろうに。



なんでも部屋の中にいるのは男の狼獣人、そして女性の兎獣人と聞いた。

何それ?

捕食する側と捕食される側でないの?


てっきり兎の女の子の方が無理やり従わされているのかとも思った。

ヒューマン社会では獣人の奴隷は珍しくもないと聞いていたからだ。

ああ、やっぱり兎さんは奴隷なのね。


思わずため息が出る。


捕まえるならさっさと捕まえて・・・とも思っていたが途中から私の認識が変わっていた。

あのヒルゼンとかいうダークエルフの方が偉そうな態度でむかつく。


更には亜人差別・奴隷への侮蔑の言葉が耳に触る。

あんな言い回しなら狼獣人が怒るのも当然だ。

もし彼が無実だったらどうするつもりだろう?


あら? 殴られちゃったよ、あのオヤジ。

めんどくさいなぁ、

これ、まとめるの私の仕事になっちゃうじゃないか。

ただ、やっぱりダークエルフのやり方は一方的過ぎ。


そんな勝手な決めつけして許されるのは私だけだ。

他の奴はダメ、絶対。


ん?


とてつもない巨乳・・・いや、とてつもない魔力持ちだと思っていたダークエルフの一人が呪文を唱える。

へぇ? 光系呪文!?


それは凄い、けど、そんな力技など許さないよ。

揉め事起こすな。

まずは話し合えと思う。


私はとっさにホーリーウォールを展開。

詠唱破棄したから効果は弱いかもだけど、ダークエルフの呪文などに・・・


あれっ!?

一発でホーリーウォールを破壊されちゃった!?


なに、あのダークエルフ!?

なんとか光系攻撃呪文ホーリーレイを防ぎきることはできたけども・・・。


当然のごとく、攻撃を邪魔されたダークエルフ、アガサという名のその巨乳魔法兵団隊員は、この私に抗議の声をあげる。

けれど、この私の目の前で、道理に合わない行為など許すわけにはいかない。

この短絡的なダークエルフと、一戦交える必要もあるかと最大限の警戒もしたが、

意外にも巨乳アガサは話が分かる女だった。


その後、狼さんと話をしてみたら、こちらのほうが色眼鏡で見ていたと、反省するほど理知的な男だった。

さらに言うと、確かに兎さんも奴隷には違いなかったようだが、

二人の間にそんな主従関係は存在していなかった。

後で話を聞いたら、狼さんは兎さんを奴隷から解放しようとしていたことも聞かされた。


なんだ、いい男じゃないの。


もう一つ意外だったのは、巨乳アガサ。

選民意識の凝り固まったダークエルフは、全員似たようなものと思っていたがとんでもない。

むしろ真っ当な価値観を持っていると思えたし、

それどころか、あの下品なヒルゼンとかいう上司をも否定してしまった。


・・・私と同じ言霊法を使うのは、少し気まずかったけど、

ダークエルフで初めて、私の興味を惹く者が現れたと思ったものだ。




ごめんね、少し嘘をついちゃった。

いや、アガサを大した女性だと思ったのは間違いないよ。

ただ・・・あの場で私の興味は・・・


全て狼獣人ケイジと、兎獣人リィナに向かっていたのだ・・・。




なに、あれ、反則・・・。


 

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