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第二百十話 崩壊へのカウントダウン


喋った・・・。

本物か・・・本物の悪魔なのか!?


魔族シグが、まるで当事者ですらないかのように、余裕の言葉を発する。

 「地獄の公爵殿、

 あなたには歯応えないようなお仕事でしょうが、

 是非、あなたのお力をここで振るって頂きたい。」


 「ふむぅ、私は構わんが、

 君は大丈夫なのかねぇ?

 私の能力は、この辺り一帯を巻き込む故、君もただでは済まんぞぉ?」


 「ご心配には及びません、

 私はどうとでもなりますゆえ。」


 「ふむぅ、仕方ないねぇ。

 ではちゃっちゃっと済ませてしまうよぉ?」



まずい!!

もしこいつが本物の悪魔だというなら・・・

「あの」アガレスだというなら・・・こいつの能力は・・・!!



ズズ・・・ン!



老人の足元の鰐がその巨大すぎる脚を使って地響きを立てる。

よく目を凝らしてその姿を見れば、

その脚の数も6本と、通常の鰐の姿ではない。


ズズン・・・・ズズン・・・ズズン、ズズン・・・!!


ただ単にその場で足踏みをしているだけで、こちらに攻撃はおろか、接近すらもせずに・・・


だが、その地響きはどんどん大きく間隔を短くして、

そのうち私たちは立っていることすら出来なく・・・


これは・・・

あの足踏み一つ一つにとんでもない魔力が込められている!


いけない!!

 「全員! 元来た道に引き返せ!!

 奴は・・・悪魔はこの私たちの足場を崩壊させるつもりだ!!」


 「ええええっ!?」

 「で、でも、でもこれじゃ・・・歩行・・・困難っ!!」


 「這ってでも戻るんだ!!

 この岩場が崩壊したら、私たちの命はないぞ!!」


私たちにタバサのプロテクションシールドがかかっているのがせめてもの救い。

これが崖下まで持てば命は助かるかも・・・




だが魔族シグはとことん用意周到な男だったのだ・・・。


 「そうそう、私の闇系僧侶呪文には、

 司祭が習得するディスペルに対応する呪文がございましてね・・・

 『暗黒を司る闇よ、光を吸い込むがごとく、全ての祝福を奪い給え、ヴォークテス!!』」


 

 なっ!?

私たちの身体から、タバサがかけたプロテクションシールドの効果が消える!!


まずい!

 「タバサ! もう一度シールドを!?」


タバサは先程、ホーリーウォールをかけようとして、その術を中断したままだった。

もちろん、悪魔アガレスがこれから行おうとしている事に、ホーリーウォールなど何の役にも立たない。

まだプロテクションシールドかエアスクリーンの方が私たちの身を守る確率は高いだろう。


だが。




 「ダ、ダメ!

 こ、こんなに揺れてはしゅ、集中不能っ!!

 せ、せめて揺れの少ない向こうの道に・・・!」


なんだと!?

見ればアガサもエアスクリーンを試みているようだったが、タバサと同じ結果のようだ。

じゃあ、シグはこの揺れの中でどうやって呪文を!?


その疑問の答えに先に気付いたのはアガサ。

 「あ、あの魔族、宙に浮いて・・・浮遊スキル!?」

 「浮遊スキルだって!?」


相変わらず魔族のシグはオーバーリアクションで両手を広げる。

 「ああ、このスキルは私の自前のものですよ。

 妖魔が多く覚えるスキルですが、魔族でも相性があれば覚えられますので・・・。」


こいつはいったいどれだけ手札を持っているのか・・・。


 「まぁ、ご安心ください、

 これだけ働けば私も魔力がギリギリですので、これでお暇させてもらいます。

 アガレス殿も、この地面が崩壊した段階で戻しますのでね・・・。」



そう言ってシグは向こうの道へと浮き上がった状態のまま離れていく。

これで目的は果たしたという事なのか。

悔しいが、もはや私たちもヨルが倒れたままの元来た道に戻るしかない。

這いつくばってでもあそこに戻らないと・・・!


揺れはどんどん大きくなっていき、

足元から嫌な音が聞こえてくる。


私と・・・タバサ、アガサはなんとか、間に合いそうだ・・・


だが、

私が後ろを振り返ると・・・


戦いの場のど真ん中にいたケイジとリィナちゃんが、

あろうことか、こちらに戻ることも出来ずに地面に這いつくばっていたのだ・・・!


 「ケイジ!?

 リィナちゃん!!」



 「だ、ダメ・・・歩けない・・・!」

 「ク、クソッ・・これだけ揺れていては・・・。」



そんなっ!?

悪魔に近い位置の方が揺れが大きいのか、ケイジはこちらに戻ることも出来ないっ!

こ、このままではっ!!


円形の岩場からは、亀裂がそこかしこに走り始めたのか不気味な音がどんどん激しくなっていく!

な、何かないのか・・・二人を助ける術は!?


絶望の表情をこちらに向けるリィナちゃん・・・


ダメだ・・・!

あきらめちゃダメだ!!


ケイジ・・・君は・・・ケイジ!?


その時、私は一瞬だけ胸を撫で下ろした。

ケイジの目に光が灯ったのが見えたからだ。


遠目からでもわかる・・・

あいつは諦めていない!

あの目の光りは何かを見出したものだ。


何をする気だ!?

助かる打開策を見つけることが出来たのだろうか?


ケイジは這いつくばりながらリィナちゃんのもとへ・・・



ケイジ・・・

彼は何を思いついたのか・・・

なんとかリィナちゃんの元までたどり着いたと思った瞬間、

彼女の身体をケイジの黒い体で覆いかぶさるように抱きかかえたのだ・・・!!


おい! 待て、ケイジ!?

それじゃあ・・・君が



 そして崩壊が・・・


それまで、飄々としていた老悪魔の表情が醜く歪んだ・・・。

まるでこれから起こる惨劇こそ、自らの愉悦だと言わんばかりに。


そして悪魔は高らかに叫ぶ。

 「うっひゃっひゃっひゃっはあ!!

 グゥゥウリモォリアル・アースクェイク!!」



次回、また、視点変更します。

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