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第二百六話 理由


<ケイジ視点>




驚いた。

驚かされたよ・・・。


今から正体不明の魔人とやらに会いに行くんだ、

色々想定外の事態も起こり得るだろうとは思っていた。


だがまさか、待ち構えているのではなく、追ってこられているとは全く考えもしなかった。

しかもそれが面識のある相手・・・とはな。



あの、魔族ヨルとその父親、ゴアとの冗談のような、ある意味微笑ましい掛け合いの後だけに、信じられない衝撃も大きい。


執事魔族シグとやらが姿を現した時も、何かのドッキリ的なパフォーマンスかとも思った。

・・・だが、オレの中の何かが危険を告げたのだ。


こいつは敵だ・・・と!



匂いとか音とか言った獣人の感覚でも、

ユニークスキル「鷹の目」とも全く関係のない、

オレの中の何か・・・記憶か・・・!



そうだ、後になって思い返してみたら何度も覚えがある筈じゃないか・・・。

寡黙だと思っていた奴がいきなり雄弁になる・・・



ん?


何度も・・・?

おかしいな・・・そんな記憶は・・・いや、今はどうでもいい。


こいつの話を正直に受け止めるなら・・・、

魔人クィーンに敵対するかもしれないオレたちは敵で、町長の娘ヨルとは敵対しないということか?


カラドックが待ったをかける。

 「待て!

 戦う前に確認だけはさせて欲しい!

 もし私たちに誤解があるなら魔人クィーンと敵対するつもりはない!

 私たちが知りたいのは・・・魔人クィーンが人類社会に害をなす存在なのかどうかだ!!」


確かに今のところはっきり魔人側の話を聞いたのは、かつてオレたちが倒した知恵有る竜のみ。

ダークエルフのベルナールからは大した情報を得られていない。

そして後はハイエルフ達の現状認識からの推測だけなのだ。

・・・さて、執事の答えは!?


 「・・・ふむ、そうですなぁ?

 私ごときではあの方の真意は測りかねますが、

 そのようなお考えはなさそうですぞ?」


あ? それは本当か?

まぁいい。

尋問はカラドックに任そう。


 「・・・私たちの知るところでは、今現在、人間・亜人社会から魂が急激に減少しているとのことだ・・・。

 魔人クィーンはそれに関与してないという事でいいのかい!?」


そこで執事シグがため息をついて首を振る。

 「・・・どうでもよいのでないですか?」


 「なんだと!?」

カラドックに会話を任せるつもりだったが、思わず口を挟んでしまった。

今の返答は聞き捨てならない。


 「どうでもよいのでは、と言ったのですよ。

 ああ、これは恐らく魔人クィーンも同じお考えかと。

 ヒューマン、エルフ、獣人、その他の亜人・・・ですかな?

 別に彼らに対して害為すとか、敵対しようとかはこれっぽっちもお考えではないでしょうな?

 ただし、彼らが勝手に殺し合いしようが、滅んでしまおうが気にもしないという事。

 別に魔人だろうが、魔族であればたいていは同じ考えではあるのかと。」



 「ふざけるな!

 『勝手に』じゃないだろう!?

 魔人が魂を奪っていくというなら、人類社会が滅ぶのはそっちのせいだろうが!!」


 「ほう、ではお聞きしますが・・・

 あなたはケイジ様でしたか?

 あなたは肉を食わないので?」


あ? 何言ってんだ、こいつ?

 「別に肉食オンリーってわけじゃないが、普通に食うぞ、それがどうした?」


 「いえ、それと同じことではないのですか?

 消費するのが肉か魂かの違いですよ。

 別に、人類や亜人を滅ぼそうなどという事ではありません。

 あなただって、獣の肉を食う時に、その種を滅ぼそうなどとは考えないでしょう?

 ・・・まぁ、今まであなた方は捕食する側だったのが・・・

 捕食されることになったと、ただそれだけの話です。」


シグの話を最も敏感に反応したのはハイエルフのタバサ!

 「魂を捕食!?

 まさか、それが・・・不老不死の与太話に関連!?」

そして続いてダークエルフのアガサも黙ってはいられないようだ。

 「魔人とやらにそんなマネが出来るとは推測困難!

 ・・・背後に邪龍の存在を想起!!」





 「ほう、これはこれは、話の理解が早いお方たちだ。

 ならばはっきり申し上げましょう、

 魔人クィーンはあの壁を越えて、人間たちに戦いをかけようなどとお考えは一切ございません。

 その代わり、有能な人材・・・まぁそこには見目麗しい男女も選定基準には含まれますが、その名クィーンが示すように、自らの王国を築こうとしているだけなのですよ。

 そして・・・自らは戦いを仕掛けることはないが・・・

 このようにその邪魔をするというなら、排除させていただくと・・・。

 難しい話は何もないでしょう?」


なるほどな、理屈はもっともだ。

魔人クィーンが誰にも迷惑かけずに自分の国を作りたいなら勝手にやればいい、とも思う。

だが・・・


 「新たに生まれてくるはずの魂を捕食すると聞かされて黙っていられるわけねーだろーがっ!!」


オレの言葉に全員が戦闘準備完了。

魔族の娘ヨルでさえも、執事シグに槍を向ける。

彼女の考えはあの時、聞いた。

カラドックの不用意な反応に呆れはしたが、ヨルの主張はオレにとっても何ら間違っているとは思えなかった。

ヒューマンと獣人の格差を否定するオレにとっては、

彼女が魔族である事も気にはならない。

だからオレはヨルがこのパーティーに参加する事も拒絶しなかった。

カラドックが、他の魔族との交渉役に適任と提言していたが、

オレはそれ以外にも、ヨルのしっかりした考え方に共鳴していたのだ。


だが、今回、ヨルはどこまで戦えるのか?

オレたちにとって、この魔族シグが敵になるなら全力で排するが、

ヨルにとっては、自分の執事と言い切ってもいいくらいだろう。


 「ヨル、大丈夫か!?

 お前は無理に戦わなくても・・・!?」


 「心配ご無用ですよぅぅ!!

 魔族は自分たちの主張がぶつかったときは、遠慮なく戦うですよぅ!!

 それより・・・下手に油断した方が危険ですぅぅ!!

 シグはお父さんの部下だけにあって、魔力も戦闘力も桁違いですよぉぉぉ!!」



 「・・・残念ですな、お嬢様、

 お嬢様ならあちらでうまくやって行けると思うのですが・・・。」


カラドックはまだ一つ確かめたいことがあるようだ。

 「待ってくれ!

 魔人クィーンは種族関係なく人材を集めているといったな!?

 それはヒューマンやエルフ、獣人も関係ないのか!

 もし、私たちが魔人クィーンの主張に賛同するなら、

 私達でも迎えてくれるということか!?」


何言い出しやがる、カラドック!

 「おい! カラドック!?」

 「ケイジ、今は質問をさせてくれ!!」

どういうつもりなんだ?

だが、確かに魔族シグが何と答えるかは興味ある。


 「・・・そうですな・・・、

 ふむ、スカウト役の私としては・・・

 カラドック様、ハイエルフのタバサ様、ダークエルフのアガサ様は、

ルックス、魔力、見識、能力、いずれも非の打ちどころはございませんな?

ええ、魔人クィーンの主義をご理解なされるなら、私は喜んでお迎えさえていただきましょう。」


 「・・・ケイジやリィナちゃんは条件に達してないというのかい?

 それは彼らが獣人だからか・・・。」


 「いえいえ?

 それこそ誤解でしょう。

 それに、そちらのお二人も、冒険者としての能力は群を抜いてらっしゃるのでしょう、

 ・・・ただ、そうですな、

 ええと、これは申し上げにくいのですが・・・。」


 「・・・さっさと言え。」

どうせ、魔人とやらも亜人差別主義なのだろう、

オレはイラつきながら話の先を要求する。


 「いえね、単純に個人的な好みの問題でして・・・

 クィーンはあまり毛深い者はお好きではないと・・・。」


はぁぁぁぁぁっ!?


 「あとすみません、この場にはいらっしゃいませんが、

 リザードマンのようなツルツルも遠慮したいと申されていました。

 ドワーフは毛深くても許容範囲内とのことでしたな。」



 「おい、ちょっと待て、それって、ただの・・・。」


 「はい、女性としての好みの範囲というだけの話ですので、

 そんなに目くじらを立てていただくような話ではないかと・・・。」



 「ちょっと待つですよぉぉ!!」

 「はい? お嬢様、何でございましょう?」


 「魔族は自分にメリットがなければ動かないものですぅぅ!

 シグはどうしてそんな女に従っているですかぁぁぁあ!?

 夜な夜な繰り広げられているという種族を越えたパーティに、そんなに出たいのですかぁぁ!?」


 「ははは、なるほど、確かに優雅なパーティーへのお誘いは魅力的ですな、

 それよりもですな・・・。」


執事シグは一度間を置く。

勿体ぶってんじゃねーぞ?


 「・・・自分より強い者に従うのも、魔族なら当然ではないのですか?

 さらに、忠誠を誓い、良い働きをすれば、さらに強力な力を与えてくれるのです。

 何もおかしなことはない!!」



執事シグの目が琥珀色に光る・・・!

問答はここまでのようだな。



 

しまった・・・予約投稿せずに直接投稿してしまった・・・。


校正途中なのに。

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