第二百二話 行軍 (おまけ画像あり)
前回から一週間も経ってる?
え、と、言い訳です。
急に仕事が立て込んできた。
家には眠りに帰るだけの日々、
空いた時間でVRoid二周年記念の話が持ち上がっていて、
各自の3DキャラをMMDで踊らせようという企画が・・・。
最初メリーさんを出そうと思ったのだけど、Unityで改造しまくっていたおかげでMMDに変換できず・・・。
替わりにフラアちゃんを出しました。
そのうち、有志の方が動画編集してくださいます。
出来たらここにリンク貼りますね。
風が強いな・・・。
まぁ、風が強いのはアークレイの街に着いてからもずっとあったのだが・・・。
「なぜ、こんな生暖かい風が吹く・・・。」
ついこないだまで冬の冷たい空気がこの辺りを支配していた筈だ。
どういう気象の変化でこんな不快な空気になるんだろう?
ご丁寧に湿気も酷い。
・・・何かを思い出しそうで心がざわつく。
オレは頭を振って、頭の中に浮き上がってきそうな過去の忌まわしい思い出を消し去る。
「時々、真冬でも暖かい気流が流れ込むことがあるようですよぅぅぅ!
マドランドには天気の研究をしている魔族もいるですよぅぅ、
街で情報を貰ってくるべきでしたかねぇぇえ!?」
こいつはヨル。
魔族の娘だ。
オレたちのパーティーは、
兎獣人のリィナ、
ハイエルフのタバサ、ダークエルフのアガサ、
異世界から転移してきた賢王カラドック、
そしてオレ・・・の5人に、何故か魔族の街、マドランドから町長の娘ヨルがついてきた。
いや、この女の目的はわかっている。
あろうことか、カラドックの子種が・・・いや、そこまではっきりとは言ってないな、
カラドックを男として見ている。
ふざけるなと言いたい気持ちもないではないが、
意外とこのヨルという少女は打算だけではなく、純粋にカラドックへの好意から動いているようだ。
ここから先の敵の出現に対し、命の危険や戦力的に足手纏いといった理由から彼女の同行を断る選択肢もあった。
だが、他の魔族に出くわした際に交渉役として考えた場合はどうだろうか?
実際、マドランドで何事もなく・・・いや、約一か所だけ大騒ぎになったが、
それ以外でスムーズに話が進んだのは彼女の功績が大きいと言える。
そしてその成果がこれだ。
魔族の別の街への訪問、
ヨルがいなかったら、いつまでオレたちは他の街を探すことに時間を費やしただろう?
そして魔人クィーンへの新たな情報を得るのに、どれだけの苦労を重ねた事か。
オレたちは今、断崖絶壁が多い道幅の狭い山道を行軍している。
これは人の手が入った道なのだろうか?
天然にこんな道が成立しているというならたいしたものだ。
それとともに、もし、途中で道が途切れていたならどうするのだと激しく問いたい。
この情報をくれた魔族の証言を信じるしかないのだが。
「もしあたし達が落ちたら、カラドックの精霊術でどうにかできる?」
リィナの質問はオレにも興味ある。
「・・・難しいね、
精霊術ってのは精霊との同調だからさ、
術の起動から、効果が出るまでどうしても時間のずれが発生するのさ。
さらに言うと、・・・この場合は風だろうね、
風を思い通りに強く吹かせるには、勢いを得るためのさらなる時間が要する。
人間一人を浮き上がらせるほどの勢いを得るより先に、落下の方が早いだろうね。」
では常時、タバサのプロテクションシールドをかけ続けるのはどうだろうか?
と、今度は質問をタバサに向けてみた。
「一時間程度なら余裕で継続可能、
ただし問題が一つ・・・。」
「問題というと?」
「プロテクションシールドはカラダの中心から一定の距離360度全て覆う同心球、
平地ならともかく、片側の岩壁がせりだしてきた場合、シールドが引っ掛かって歩けなくなる可能性大。」
却下だ。
それでは本末転倒。
やはり各自で落ちないように、気を付けて歩くしかないな。
まぁこんな場所じゃ邪魔者もいないだろう。
空から襲ってくる飛行型魔物の存在さえ気を付けていればいいのだろうか。
実際何度か襲撃に遭った。
ワシのような姿をした大型の魔物だ。
とは言え、オレの弓やアガサのウィンドカッターで見るも無残に斬り刻まれていた。
魔族のヨルも、単独で冒険者CかBランクほどの実力はあるようだ。
足手纏いになることもなかった。
やがてオレ達は、再び峡谷の谷間へと辿り着き、高低差のある道を進む。
この先にはまたもや関門があるそうだ。
なんでも天然の橋のようなものがあるという。
情報を教えてくれたものは直接見た事がないそうなので、
天然の橋とやらがどんなものなのか定かでないが、
安全に歩けるものだという。
ただ・・・そこから先こそ、魔人クィーンの縄張りであり、
招かれたもの以外は立ち入る事が出来ないそうだ。
新たに魔人クィーンについて得た情報では、
マドランドで串焼き屋のオヤジやら、ヨルの父から聞いた情報と矛盾するようなものはなかった。
むしろ、彼女のパーソナリティーを強調する情報ばかり入って来た。
すなわち露出度が高い、
連日パーティーを繰り広げている、
美男美女を見境なく集めている、とか。
逆に邪龍についての情報は全く入ってこない。
そこまでの話だと、人畜無害の放っておいてもいいような話に聞こえるのだが、
少なくとも魔人クィーン本人から確かめない限りは、はっきりしたことは何も言えない。
そりゃ、争いごとにならないのならそちらの方が好ましいのだが。
そうなると、この世界から新しく生まれてくる魂が減少しているという恐ろしい話の原因を、また探し出すところから始めないといけないので、そっちのほうが厄介な状況になる。
ここは魔人クィーンが全ての鍵を握る女と判断して、
彼女から全てを問い質すのが一番の近道になると考えよう。
ていうか、魔人クィーンとやらはそれほど巧妙に邪龍と繋がっている気配を隠しきっているとしたら・・・、
あのラプラス商会会長・・・ラプラスはよく最初にあれだけの真相を看破したよな?
そんなこんなで、魔物の単発的な攻撃以外は何事もなく、
オレたちは山道を確実に進んでいったのだ。
「・・・なぁ、ケイジ?」
「なんだ、リィナ。」
「仮にさ、今度の敵が魔人・・・そして邪龍か、
そいつらをぶっ飛ばしたらさ・・・!」
「直接オレ達と戦うかはまだわからないぞ、
仮にも邪龍が本物なら、勇者の称号を持つお前だってタダで済むかわからないんだ、
それこそ国家規模の戦力を持ってこないと相手にならないかもしれない。」
「ああ、そ、それはわかってるけどさ、
うまくいったらあたし達、Sランクに昇格するかな?」
「・・・活躍の仕方によってはあり得るな。
グリフィス公国と、ハイエルフ達の推薦は貰えるだろうしな、
有り得ない話じゃない。」
「うん、たださ。」
「他の心配か?」
「この事件が片付いたら、タバサもアガサもあたし達と一緒にいる理由なくなるんだよね?」
ああ、・・・そうなるな。
「そうだな、せっかく昇格しても、そのランクに見合う戦力は維持できなくなる・・・か。」
そうなると無理にランクを上げる必要もなくなる。
ていうかAランクを維持するのも難しいだろう。
カラドックだってどうなるかわからない。
奴が魔人や邪龍を倒すためにこの世界に送られたかどうかもわからないのだし。
・・・その時背中に柔らかい膨らみが二つ圧し潰された感触があった。
「ア、アガサ!?」
見るとリィナの後ろにもタバサがもたれかかっていた。
「ケイジ、この後どうなるかは私たちにもわからないけど、
今この時、私たちは間違いなくあなたのパーティー。」
「リィナ、あなた達の旅は愉快で充実、
このままいつまでも一緒にいたいのは私たちも一緒。」
嬉しいことを言ってくれるな、エルフ達。
頼むからオレを泣き落としにかかるのはやめてくれよ?
・・・カラドック、
オレたちを生暖かい目で見るのはやめろ。
あ・・・カラドック、お前の後ろにヨルが・・・
「うわああああっ、ヨルさんっ!?」
カラドックの背中に飛びつくヨル。
「みんなで抱き合う仲いいパーティーですよぉ!!
誰もあぶれませんですぅぅっ!!」
いや、数の上ではそうだけど、リィナに抱きついたタバサがやけに不満そうなんだが・・・。
行軍の途中でカラドックがオレと同じ位置に来た。
何か用でもあるのだろうか?
「ちょっといいか、ケイジ?」
「なんだ、カラドック?」
「君は私がくるまで、よくあの3人を相手にしていたな?
理性を保つの大変だったろう?」
何かと思ったら、そんな用かよ!!
「エルフのどちらかに手を出せば、オレがリィナに殺される。
オレがリィナに手を出せば、エルフ達との間に溝ができる。
3人いっぺんに手を出せば・・・って何言わせんだよ!?
できるわけないだろっ!!」
「ハハッ、リィナちゃんとの仲はエルフ達も認めているんだろ?
本人さえ良ければ遠慮要らないだろうに。」
「余計なお世話だ、
もともとオレたちは明日をも知れない身の上、
先のことなんて何もわからないんだ、
あてのない未来に何の保証がある?
そう考えたら迂闊な約束もオレは出来ない。」
「・・・だったら、なおの事、今を大事にしたらどうだ?
後になって『あの時、言っておけば良かった』と思っても後の祭りだぞ?」
「・・・それはお前の弟の話か?」
「そう・・・思ってもらっても結構だ。」
・・・頭ごなしにカラドックの言葉を否定できなかった。
確かに・・・死んでしまったら二度と言葉を・・・気持ちを伝えられない。
生きてさえいてくれたなら・・・
「・・・考えておくよ。」
オレはそう返すので精一杯だった・・・。
動画の方は、アンノウンマザーグースという歌と踊りを使うようです。