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第二百話 語られない物語 裏切り

評価とぶっくま、ありがとうございますーっ!!


またもや別世界のお話です。

といっても、前回と同じ世界ですよ。

初出の名前が出ています。


ほとんど李那ちゃんの血縁の方々です。


風が強いな・・・。

かなり南に来てしまった。

おかげで寒さは感じることはもうない。

むしろこの湿った風のおかげで、汗がなかなか乾かないのが厄介だ。


いや、これで風もなかったらもっと大変か。


それにしても随分遠くまで来たもんだ。


 「あ、恵介、ここにいたんだ?」


後ろから声を掛けられる。

彼女もよくこんな所までついてきてくれたよ。

 「ああ、李那か、下で休んでれば良かったのに。」


 「・・・恵介さぁ、もう少しデリカシー見せろよ?

 みんな腹心の部下とは言えさぁ、男だらけの集団なんだぜぇ?

 そんな中にあたし一人置いていくなよ?

 そりゃ、みんな気を遣ってくれるけど、逆にこっちが申し訳なく思うよ。」


 「ああ、そりゃそうか・・・、

 野郎だらけの集団は男臭さも半端ないしな、それは悪かった。」

 「・・・いや、そこまではっきりと・・・うん、もう慣れたけどさ。」


 「李那、せっかくここまで昇って来たんだ、

 ここの風景を眺めてみろよ・・・

 あ、風が強いからな、落ちないよう気を付けろよ?」


下は剥き出しの岩場だし、高さは10メートル以上ある。

落ちたらまず助からないからな?



この場所は簡単に言えば物見やぐらだ。

オレたちはウィグル王国を出発して、

いまだ王国に恭順の意を示さない南の抵抗勢力を落としに来ている。


そりゃ、戦わないで、交渉や脅しで話が済めば簡単なんだが、

あちらは地の利を過信しているせいか、現状のままでは戦いは避けられないだろう。

ここはその為の前線基地といったところか。


まだ大規模な戦闘が起きるとは考えていない。

何かあったとしても、オレが日本から連れてきた直属の部隊だけで何とかなる筈だ。

別に相手を殲滅させようなんて思っていないからな、

ただ、いよいよ戦いが本格化して、・・・その後、膠着状態になったら目も当てられない。

そうなったらそれはオレの失敗だということだ。

申し訳ないが、王都のカラドックに詫びを入れて援軍を送ってもらう事になるだろう。


せめてそうならないことを願う。

カラドックはこれからが大変なんだ。

余計なことで頭を悩ませないで、あいつの重荷は少しでも軽くしてやらないとな。

いまは、嫁さんと仲良くやってくれ。



 「うわああああ、広いねぇ・・・!」

オレたちの眼下には、見渡す限りの森が映っている。

この森の果てはどこにあるんだろうな?

まぁ、時折、緑の隙間から剥き出しの岩山も覗いているが。


なるべくならこういう所で戦いたくない。

視界を塞ぐものが多いし、状況判断もしづらいからな。


・・・おっと、今は戦いの事はいいか。

李那と二人で、この景色を楽しもう。


 「思えば遠くへ来たもんだな・・・。」


 「恵介はこの相手、すぐにケリをつけるつもりなんでしょ?」

 「まぁな、戦わずに済むんなら、一番それが有難いが、

 向こうが、敵との戦力差も見極められない愚か者たちなら、

 初っ端からガツンとやって、圧倒的な力を見せつけてやる。

 ・・・それでこのミッションは終了だ。」


 「・・・それでウィグルに凱旋・・・、

 カラドックと二人で王国を治めて、めでたしめでたしと・・・。」


ん?


 「いや、待て、ウィグルに戻るとは言ってないぞ、

 あ、勿論一度帰るのは間違いないが・・・。」

 「え? 恵介、じゃあどうするの?

 他に行くとこなんかないでしょ?」

 

 「い、いや、それは・・・そうなんだが・・・、

 ほ、ホラ、李那! お前の話だよ!!

 陽向ひなたさんや、梨香おばさんのところに戻るって選択肢があるだろ!」


 「恵介も?」


う・・・

こ、こいつ、いつもはそういうところで茶化しに来るかと思ったが、

今はオレたち、二人っきりのせいか、まっすぐオレの目を見返してきやがった・・・!


 「陽向さんたちは・・・オレだって生まれた時から世話になってるから、

 オレにとっても家族みたいな感じはするけど・・・、

 今はあの人たちにも、朱全って血の繋がった息子がいるだろ・・・、

 オレが今更割り込むつもりなんて・・・。」


李那は再び視線を広大な森に向ける。

 「そりゃ、あたしだってお母さんたちには会いたいよ、

 一緒に暮らせるんならそれでもいい。

 朱全・・・さんも、血の繋がった兄貴ってのは間違いないんだろうけどさぁ、

 あたしにとってはそれこそ今更なんだよねぇ?」


 「朱全・・・と仲良くできそうもないか?」

 「いやいや、そう言う事じゃないんだよ、

 あたし達が再会した時・・・

 あ、あたしは初めて会ったみたいなもんだから再会って言わないか?

 朱全さん、喜んでくれたよ?

 今は行方不明の朱路さんもね。

 たぶんそれは本心だと思うよ。

 でも、兄弟姉妹なんてものはさ、いつまでも一緒に暮らすもんでもないだろ?

 普通は一緒にいるのは子供の頃だけで、お互い別々の道に育っていくもんじゃないか。

 だから朱路さんも出ていった。

 だからミュラも戻ってこなかった。

 そう、そうだよ、恵介、

 お前もそうじゃないか、

 だからお前も、カラドックの所から離れたんじゃないの?」


う、うん、それはあるかもな・・・、

オレが王都から離れた本当の理由は・・・それが主な理由ではないが・・・

ていうか、ミュラが戻らなかったのはそれとは完全に別の理由じゃないか?

いや、今はオレの話か、

それこそ言うまでもないな、

李那はそれもわかって言っているんだろう。


 「李那・・・。」

 「うん?」

またこっちを見返してきやがった。

オレが何を言うか、待ち構えているんだな・・・。


 「お前・・・この先も・・・オレと・・・。」

 「う・・・うん。」

 「い、一緒に・・・」

 「恵介・・・。」





 「おっと、お邪魔してしまいましたか。」



ホントに邪魔だったよ、この野郎。

下から腹心の部下が上がってきやがった。

しばらく放っておいてくれと言ったつもりだったんだがな。


 

 「・・・何か緊急の報告か?」

オレは不機嫌そうに吐き捨てる。

まぁ本当に緊急の報告かもしれないからな、

いきなり咎めたりはしねーよ。


 「緊急というか、重大な案件でしょうかねぇ?」


ん?

何か言い回しが不自然だな。

いつも多少嫌味や持って回ったような話をすることが多い奴だが・・・。

後ろに別の部下も二人控えている。

何の話をしにきたんだ?


 「恵介様、少々お聞きしたいことがありまして。」

 「なんだ? さっさとしろ。」

 「いえ、この地域を制圧したらの話ですよ、

 恵介様はまた戦いに行かれるのですか?」


ああ・・・


オレはまたもや遠くの森に視線を送る。

 「今も李那とそんな話をしていたんだがな・・・。」

正確にはその意味合いは違うけどな。


 「ああ、それはタイミングが少し悪かったようですな、

 それは失礼いたしました。」

 「別に構わないさ、

 大事な話だもんな。」


 「その通りです、大事な話ですな。」

 「それで?」

 「いえ、恵介様のご命令で、

 我々は、この地域の事を虱潰しに調べてまいりました。

 正直、この国を武力で制圧するのは骨が折れそうですよ?

 土地の高低差が激しく、深い森や行軍を阻む、湿地帯、害虫、

 伝染病も頻繁に発生するようです。

 速攻っで落とせるものでしたら、楽なのでしょうが、

 一度攻めあぐむとかなりの試練があると言って良いでしょう。」


 「・・・そこを何とかするのがお前の役目だろう。

 と言っても、

 どうせまた無茶な作戦出して、オレが矢面に立つんだろう?」


 「はは、今まではそうでしたな、

 もっとも、如何に恵介様が前面に立とうとも、結局われらは一蓮托生。

 あなた様に何かあれば、我々も同じ運命を迎えます。」


 「・・・先に結論を言え、

 オレは何をすればいい。」


 「はい、簡単です。

 ここから、飛び降りてください・・・。」


・・・あ?

強い風が吹き始めたにも関わらず、

その言葉はしっかりとオレの耳に飛び込んでいた・・・。

 

 

ほとんど李那ちゃんの血縁と書きましたが、

ミュラだけは違います。


ただ彼は朱全・朱路と兄弟のように育ちました。

李那と出会って彼女に恋心を抱きます。

恵介の恋敵になりますね。


その話はまたいつかどこかで。

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