表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
199/748

第百九十九話 ぼっち妖魔は天使を憐れむ

ぶっくま、ありがとうございます!





 「ひ、斐山君、

 ・・・待って・・・本気で言ってるの!?

 え、エリナちゃんは・・・エリナちゃんは・・・。」



あたしの身体に鳥肌が立っていく・・・。

これ・・・現実を目の前にしたら、あたしでさえ正気を保っていられないかもしれない。

現にあの加藤さんて人は、もう立っているのもやっとだ・・・。


 「斐山君、しっかりしてっ!

 エリナちゃんはあの植物みたいな化物に、こ、ころ・・・むぐっ!?」

 

あ、ジェフティ君って人が加藤さんの口を塞いだ。

 「(加藤さん、ダメです! 優一様は・・・優一様はショックで!?)」

 「は、放してっ・・・

 う、嘘よ、だって・・・だって斐山君は・・・斐山君はぁ!!」



あ、加藤さん、部屋を飛び出してっちゃった・・・。

 

 「なんだ、加藤はいきなりどうしたんだ?

 ジェフティ、悪いけど加藤の様子を見にいってくれるか?」


 「え? あ、は、はい・・・!」

 

続いてジェフティ君も部屋を出ていく・・・。

どうしよう?

この二人の後を追うか?


うん、「少年」の様子も気になるけど・・・まずは。




加藤さんが廊下の隅で泣いている。

泣きじゃくっている。


・・・エリナさんて人、

友達だったんだね、

仲良かったんだね、

同じ男の人を好きになっていたんだよね・・・わかるよ。


後ろからジェフティ君が追い付いてきた・・・。


 「加藤さん! 大丈夫ですか!?」

ジェフティ君は優しく彼女の肩に手を乗せる。


それがきっかけとなったのか、加藤さんは堰を切ったかのように大声をあげて泣き叫んだのだ・・・。


 「ジェフティ君、酷い、酷いよ!!

 こんな・・・こんなのってないよ!!」

 「加藤さん・・・。」

 「あたし! 

 ホントは斐山君が許せなかった!

 斐山君は、今度の事が起きても冷静に・・・

 あまりにも冷静だったから・・・なんて冷たい奴って思ってた・・・!


 あんなに一緒に、いつも一緒に行動していたエリナちゃんがあんなことになったのに!

 エリナちゃん、あんなに斐山君に尽くしていたのにっ!!

 斐山君は怒りも悲しみも感じない、人でなしだと思っていた・・・!


 あたし、もうこんな所、出て行ってやろうとまで思っていたんだよっ!?

 斐山君みたいな冷たい人のことなんか忘れて、日本に帰ろうとも思っていたんだよ!!


 でも・・・違った!

 でもそうじゃなかったっ!!

 斐山君は・・・斐山君の心は・・・エリナちゃんがいなくなったことを受け入れられないだけだったっ!

 その現実を認められなくなっている!


 なにっ!?

 心がない!?

 感情がない!?

 そんなの嘘よっ!!

 高校の時と一緒だった!!

 斐山君は、感情を持ってないように見えるだけっ!!

 実際はそんなことない!!

 誰よりも優しいっ!!

 誰よりもデリケートだよっ!!

 だから・・・だから斐山君はエリナちゃんが死んだことも認められない・・・

 受け入れられない・・・


 いまも・・・いまも斐山君はエリナちゃんと一緒にいるんだよ・・・。」



 「加藤さん・・・。」


きっつい。

・・・これは・・・あの「少年」が・・・こんな状態になるなんて・・・

あたしの知る彼からは想像できない・・・。


 「ジェフティくん、あたし・・・どうすればいいの?

 斐山君に心があったってことは・・・喜んでいい事なの?

 どうなの!?

 そんな事に喜んでいるあたしって最低なのかな・・・!?

 いまは、いまはエリナちゃんがいなくなって悲しいだけの筈なのに、

 辛いだけの筈なのに・・・!

 あたしったらなんて嫌な奴なのかなって思う!?」



この加藤さんて人の取り乱し方も半端ないけど・・・

無理ないんだろうな・・・

さて・・・肝心の「少年」の方は・・・変化は・・・。



あ、相変わらず誰もいない空間に向かってしゃべっている。


・・・待って?

本当に誰もいないのだろうか?

そこに生きている人間がいないことは間違いない。


けれど、

あたしには今、二つの可能性を考えている。


一つ・・・普通の人間には感知し得ないものがそこにいる。


・・・視えない。

リーリトのあたしの目を以てしても何も見えない。

少なくともあたしの能力では。


一瞬考えたのは、霊魂みたいなものがそこに存在して、

他の人間には見えない・・・そう、「少年」のような特殊なものだけが見える何かがあるかと思ったのだけど・・・


その可能性はないと言っていいのだろうか?


するともう一つの可能性は何か。


それは・・・あたしたちが二年前に遭遇した「あれ」。

天使の能力の一端。

対象の人間の認識を操作する能力。


もしかしてだけど、それを無意識のうちに自分自身に対して使っているのではないだろうか?


すなわち、いま「少年」の目には、

その「エリナ」さんという女性が、

今も、彼に向けて笑いかけている姿が映っている?



 「優一さん。」



 「・・・なんだ、エリナ。」




 「私・・・幸せなんですよ?」


 「あ? いきなり何を言ってるんだ?」




 「子供の頃からの夢が叶って・・・

 優一さんに出会う事が出来ました。

 優一さんにお仕えする事が出来ました・・・。

 私は・・・私の全ては優一さんのものです・・・。」



 「・・・当たり前だ、

 お前はオレのものだ・・・。

 勝手にどっかへ逃げようだなんて許さないからな・・・。」





まるでこの部屋は時が止まっているようだ。

誰もいない空間の中に、

ただ一人、「少年」だけが、

誰もいない場所に向かって言葉を発している風景・・・。


あまりにも・・・さみしくて・・・痛々しい姿だ・・・。



なんで・・・どうして・・・

あたしはこんなものを見せられているのだろう?

この光景を見ることは、あたしの異世界転移に、何か関係があるとでも言うのだろうか?



あたしはかつてのレッスルお爺ちゃんとの会話を思い出す。

レッスルお爺ちゃんが言ってたのはこの事だったのだろうか。


「天使は人間の心を学ぶ」


友人を、恋人を、家族を、愛する者を得ないで、人間の何を理解しようというのか?


そうか、そうなんだね・・・

「少年」はこうやって・・・人間の心を学習していたのか・・・。

今は過渡期・・・


この後、「少年」は自分の大事な人を失ったことを、いつか現実として受け入れなければならない日がやってくる。

その時、初めて彼は「愛する者を失う気持ち」を理解するのだろう。



でも、

なんて・・・なんて残酷なことをするの!?


確かに「彼」はこれで目的を達するのかもしれない。

人間の心を理解して。


「天使」に理解不能だった「人間」の正体を突き止められるのかもしれない。

でも、でもそれって・・・


「天使」にとってそれは・・・



「堕落」ではなかったのか?

エデンの園に生えている「禁断の樹の実」・・・



すなわち「心」。



それを口にしてしまえば・・・いかに「天使」と言えども。

 

画像用意しようかと思ったけど今一つ、イメージ通りに写せませんでした。

そのうちひっそりと載せるかも?


さて、麻衣ちゃんが解説してますけど、

可能性は二つです。


霊魂か、

それとも幻覚か、


優一君が見ているものがどちらなのか、

物語で明かすつもりはありません。

皆さまのお好きな解釈で・・・。



なお、

このお話は他の物語で叙述されるべきものです。

さて、次は何の話を持ってこよう?

いよいよ異世界編、後半に突入したいのだけど・・・。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
表紙
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ