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第百九十二話 封じられし女神

ぶっくま、ありがとうございます!


 「あ・・・ああっ・・・」

 「わ、私たちは夢でも見ているのか・・・?」

 「も、もしや・・・ここが・・・。」

 「なんという・・・神々しい・・・。」


両ひざの痛みに気付いたのはいつだったでしょうか?

私はいつの間にやら跪いていたのです。


無理もないでしょう、

私だけでなく、ここにいる全員・・・、


まるでそれは古典演劇の舞台でもないと目にする事も出来ないような・・・

いえ、そんなもので比べること自体不遜と言えましょう。

洞窟の最深部には巨大な樹木が聳え立っており、まるで洞窟の天井を突き破って地上に生えているかのように思われたのです。


・・・いえ、我々が膝を折ったのはそれが原因ではありません。

その圧倒的な樹木のど真ん中に・・・


二つの目を閉じた、

薄い肌着を纏っただけの、あまりにも美しい女性が幹の中に埋まっていたのですから・・・。


 「お・・・おい、これ・・・これ?」

 「まさか、これが・・・世界樹・・・。」

 「いやいや! そんなことよりあの女性は!?

 い、生きて・・・生きているのかあれは!?」

 「彫像・・・なんてことはない、よな!?」

 「こんなところに誰が彫りに来るって言うんだよ!?」

 「いや、それを言ったら、こんなところにどうして絶世の美女が樹の中に埋まっちまってんだってことだろうがよ!?」


もはや誰が何を言ってるかなど、気にしている場合ではありませんからね?


見ればこの美しい貴婦人は四肢を全て世界樹(?)のなかに埋められています。

自分の意志でそうしているようにはとても思えません。


年の頃は・・・20代真ん中か後半くらいでしょうか?

艶のある黄金色のウェーブヘアが、

辺りの光をあらゆる角度に反射しています。

先程誰かが彫像とかなんとか言ってましたがとんでもない!

あの白桃のような瑞々しい頬を、彫像がどうやって再現できるというのか!


 「・・・魔力の元は・・・間違いなくあの樹だと言いたいが・・・。」

 「どうしました、テルミオンさん?」

 「区別がつかん・・・

 この限界の見えぬ魔力を保持しているのは、あの樹か、それともあの女性・・・か?」


なるほど、それはつまり、あの女性と樹は一体化しているという事でしょうか?

ていうか、我々がここで騒いでいても、あの女性は目を開こうともしていません。


・・・死んでいるんでしょうかね?

でも死んでいるとしたら、腐りもせずに艶やかな肌を保持していられる筈もないでしょうし・・・。


 「睫毛長ぇ・・・。」

 「唇もぷるるんとしてます、ねぇ・・・。」

 「胸もなかなかだな・・・。」

 「おい? ・・・下着、つけてないよな・・・!?」

 「なにぃ!? それはおおごとだぁ!!」


ああ、こんなことなら女性メンバーを入れておくべきでした。

野郎だけだと、どうしても下卑た事態に発展しそうです。

 

 「ちょっ、ちょっ、ガルバさん!!

 目を覚ましたらどうするんです!!」

 「いや、いや、確かめるだけ確かめるだけだってよ!」

 「た、確かめるって何を確かめるんですか!?」


このオヤジ、事もあろうに眠っている婦女子の肌着の裾をつまみ上げて、めくろうとしやがりますよ!?

これはエルフ紳士として見過ごすわけにも参りません!!

 「・・・て、二人とも止めてくださいよ!?」

 「あ、ああ・・・そうか、あまりにその女性が美しかったので、見惚れていた・・・。」

 「・・・ていうか、見よう・・・。」


テルミオーンっ!!

このむっつりスケベがああああああああっ!!


あ! って言ってる間にガルバが肌着の裾をめくりあげて、

白く麗しい太腿が露わに・・・


こっ、これは思わず顔をうずめたく・・・




 「・・・あなたたち・・・」



 「「「「あっ」」」」


まるでゴミムシでも見下ろすような、

冷たい二つの眼が私たちを捉えておりました・・・。


 

あのような表情は二度と忘れられません。

あの! まるで女神のような完璧な美しさと、見るものすべてを蕩けさせるような妖美な顔が、一瞬にして歪んだのです!


まるで信じられない程汚いものを見てしまったかのように・・・。


ええ、その視線の先は私たち四人ですとも。

これはなんと言い訳をしないといけないのでしょうか・・・。

ていうか、言い訳を許してくれるものなんでしょうか・・・?


 「・・・あなたたち・・・そこで何をしているのです・・・。」


声が震えてます・・・。

疑問ではありません、詰問です。

怯えてる気配はないですね・・・むしろこれは怒りを無理やり抑えてるかのような・・・。


 「へ・・・へへへ、いやあ・・・。」

ガルバァァ! その下品な笑いは逆効果っ!!


 「・・・あなたは、いま、私のキャミソールを手につまんでいるようですが・・・

 その後、私に何をするおつもりなのでしょうか・・・。」


 「おおっ、この肌着はキャミソールって言うのか、

 滑らかな手触りだな!!

 しかも透け感がたまらねぇっ!!」


 「・・・もしかして下着フェチの方ですか・・・?」


むむっ?

ガルバは自分の興味が下着の方にあると思わせる作戦ですか!?

意外といけますかねっ!?


 「・・・いやいや、ガルバよ、ここは正直に言うべきだ・・・。」


おっ、テルミオン、ここは頭を下げて許しを乞う方向ですか!

その方が確かに怒りを買う可能性は低くなるかも・・・


 「・・・正直に・・・、

 はて? ではなんとあなた方は仰っていただけるのでしょう?」


 「・・・美しい姫君よ・・・。」

 「なんでしょうか?」

 「・・・是非あなたの素晴らしいお姿を余すところなく我らに見せて欲しい・・・!」


ばかですかああああああっ!

テルミオーーーーーーーーンっ!!


あっ! 女の人の形相が憤怒の表情にっ!!


 「スライムさんっ!!」


えっ、スライム?

・・・ぬぉっ!?

私たちの背後に一体のスライムが現れました!!

なんのっ! たかがスライムごとき・・・っ?

 

 

 「なんだ、このスライム・・・はっ?

 スライムかっ!?」


それはAランク冒険者の私たちが初めて見るタイプ!!

形状は間違いなくスライム!

ネバネバと粘体を前後に動かしながら我々のすぐそばまで・・・速いっっ!?


動きの速さがスライムのそれではありませんっ!

半透明の体躯の中心に、赤く光る魔石が輝いているのですが・・・えっ、輝いてっ!?

何ですか、それはっ!?


そんな魔石聞いたことも・・・いえ、お伽噺程度には聞いたことあります!

確かSランクの冒険者が仕留めた古竜の魔石が、正視できないほどの光を放っていたとか、事の真偽も確かめられないような伝聞ですが・・・まさかそれがこんなスライムに!?


 「ぬおおおっ!! フローズンソイルっ!!」


 ビキィッ!

テルミオンの地形変化魔法!!

この辺りは、足元に冷たい水がチョロチョロ流れています!!

どんな素早いスライムとて、そこから逃れる事など出来ません!!

流石の高速スライムも移動を封じられましたよ!!


 「でかした、テルミオンっ!!

 ぬりゃああああっ!! ビッグバンインパクトォッ!!」


ガルバの飛び上がってからの振り下ろし斧技!!

あれならスライムのボディなど欠片も残らず四散するでしょう!

ていうか、そこまでやったら私たちスライムまみれになりますよっ!?


ところがっ!!

有り得ないことにそのスライムはガルバの斧を粘体で受け止めたのです!!

まるでボディの一部を腕のように変化させて・・・!


 「あっ、有り得ねぇっ!!」

通常のスライムなら私でもレンジャーのライオットでも余裕で倒せますが・・・

あれは違う!!

進化を果たしたスライム以外の何かです!


 「・・・どけ・・・ガルバ・・・ファイアーランス・・・!」

洞窟内に炎の渦が発生!!

瞬く間にそれは槍の形を取りスライムに特攻っ!!


何かが瞬時に溶けるような音と、鼻を塞ぎたくなるような臭気が私たちを襲いました・・・。


どうでしょうか・・・。


炎の槍が消えた後・・・そこには・・・

当然ですね、

ハイエルフのテルミオンのファイアーランスに耐えられるスライムなんて存在するわけもありません。

スライムの肉片や、剥き出しになった魔石が転がっていたのです・・・。


 「きゃあああああああ!

 スライムさぁああぁああああん!?」


そして・・・

狂乱する磔の女性・・・。

 

次回、

女神無双。

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