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第百九十一話 世界樹を求めて

今回「泡の女神」と言いましたね、

それは嘘です。


・・・すいません導入部で彼女の所までたどり着くのでやっとでした・・・。


 「おい! この道で合っているのか!?

 いきなり断崖絶壁とか勘弁だぞ!?」


 「無駄口、叩く暇あったら魔物の警戒してくれよ・・・。」


 「『前人未到』の地なんですから、道も何もありませんよ。

 獣道・・・でいいんですかね?

 それがあるだけでも有難いものなんですから。」


 「・・・強い魔力を感じる・・・。

 我々の目的のものがあるかどうかはともかく、

 手ぶらで帰ることはなさそうだ・・・。」


 「だといいんですけどねぇ・・・?」


えー、皆さま、

はじめまして、あーいえいえ、名乗る程のもんじゃありません。

でもまぁ、この後の話を聞きやすくするために自己紹介だけはさせていただきましょうかね?

私はエルフとヒューマンのハーフでロプロと申します。


まぁ私たちはいわゆる冒険者ですね。

4人パーティーです。

先頭はドワーフの荒くれもの、ガルバ。

続いてレンジャーのヒューマン、ライオット、

そして私、

最後尾はハイエルフのテルミオンと続きます。

ああ、名前覚えなくていいですよ。


それより重要なものは、いま、私たちが探索しているものです。

依頼元は、この世界最大の宗教である金枝教。

ありていに言えば「世界樹信仰」というわけですかね。

真っ当に人生を送った者の魂は、死後、この世界のどこかにある世界樹に吸収され、

知識・記憶・情念、全てクリアな状態に浄化され、新たな生命に生まれ変わる・・・

まぁ、証明されたものは何一つないのですがね、

金枝教に関わらず、この世界の多くの宗教で大体似たような認識をされています。


ただ、そもそも、その世界樹自体がどこに存在しているのか?

この地上のどこかに存在しているのか?

それとも死後の世界の話なのか?

はたまた異世界に存在しているのか、全てが謎のままなのです。


その辺りは各宗教や学者それぞれ意見はバラバラです。

そこでたまにですが、我々のような高ランクの冒険者に探索依頼が来るのですよ。

はぁ? Aランクの冒険者パーティーが受けるような仕事でもない?

そこが難しいところでしてねぇ、

そもそもあるかどうかも分からない・・・つまり依頼達成の見込みは全くない状態で、

なおかつ、今まで誰にも見つからないのだから、

普通の人間では足を踏み入れることのできない天険の地を通らなければならないことは明白なわけです。


誰も足を踏み入れることのできない・・・というのは自然環境だけを指すわけでもありません。

魔物の存在もあり得ます。

そんなところにレベルの低い冒険者が行けるわけないでしょう?


そして依頼を受ける我々にしたところでかなりのリスクがあります。

何より「何の収穫もない」可能性の方が高いのです。

そしてまた、何の収穫もないケースが多々あるために、教会の依頼料もギリギリなわけです。

せめてそれぞれの冒険が無駄にならないよう、未踏地域のマップ作製、詳細な環境報告、魔物の分布状況をこと細かく報告することによって、次回の探索に繋げることで、探検の意義を見出している状況です。


今回も無駄足に終るかと思っていましたが、

ハイエルフのテルミオンが強い魔力を感じると・・・。

私にもエルフの血は入ってますが、純血ハイエルフに単純に魔力や魔力感知で敵う訳もありません。

まぁ、その分、体力・戦闘術、そして何よりも状況判断力は私の方が上と自負しておりますけどね。



 「おい! どこまで歩かせるんだよ!?」

文句が多いのがドワーフのガルバ。


 「・・・強大な魔力の存在は疑いえない・・・。

 問題はそこへ辿り着くための道がない事か。」

ボソボソ喋っているのがハイエルフのテルミオンです。


 「ロプロ、あんたは何だと見るね?」

あ、こいつはレンジャーのライオット。

名前覚えなくていいですよ~?


さて、さすがにここまでくれば私でも魔力自体は感知できますけどね。

 「見当もつきません。

 ・・・ただ、魔力そのものは落ち着いていて、活発に反応しているわけでもありませんから、

 魔物とかの類じゃないのは確かでしょうね。」


 「・・・まさかとは思うが・・・活発な反応を見せないってことは・・・

 世界樹が存在する可能性って奴はあるのか?」


 「可能性くらいならあるでしょう。

 しかし・・・仮にも世界樹というのなら、そろそろ我々の視界に入っても良さそうだとは思うのです。

 ここから見えるのは雑多な茂みと岩肌くらいですよ?

 それよりかは何らかの鉱物資源という方が考えやすいかと。」


 「・・・これだけの魔力を持つ鉱物・・・というのも、それはそれで恐ろしいが・・・。」

 「ああ、確かにそうですね。

 むしろ、何らかの理由で封印されたままの遺物、と考えた方がマシですかね?」

 「そっちも怖いだろがよ!!」

煩いですねぇ、ガルバはホントに。



さてさて、私たちは確実に魔力の元を感知していました。

にもかかわらず、道が途切れているせいでどうしても、もっと近い場所に移動できません。

レンジャーのライオットなら、もう少し機動力があるのですが、

私を含めた他の三人が・・・


 「いや、ロプロならエアライドを使えるだろ?

 少なくとも地形の確認だけでも頼めないか?」

 「無茶を言いますねぇ?

 あれは魔力で作り出した空気の壁の上を跳ねるだけの魔法ですよ?

 着地に失敗したら、私は大惨事なんですが・・・。」


 「心配要らぬ・・・死んでなければ回復してやる・・・。」

 「いや、崖下に落ちてたら、テルミオンの回復をどうやって私に届かせるというのですか!?」


テルミオンは魔術士でありながら光属性の回復術をも使えるという万能魔術士です。

さすがにランクAの冒険者と言えますが、

何でもできるわけではありません。

このメンバーで最も移動力に難があるのが彼なわけです。


 「・・・はぁ、仕方ありませんねぇ、

 このままでも埒があきませんからねぇ、

 一応、私もAランクの冒険者である事を示しましょうかねぇ?」


 「何気にロプロはMP多いからな、

 ・・・期待してるぜ!!」

 「何気には余計ですよ!!」


今のところ強力な魔物のいる気配はありません、

来る途中でキラーアントの群れを見ましたが、あいつらの縄張りに入らなければ大丈夫でしょう。

後は普通の獣や、昆虫型の魔物が数種・・・、何とかなりそうですかね?


私は崖の上から、自らの前方下にエアライドを展開、

並みの魔法使いなら、3~4枚、連続で使用するのが限界なんでしょうがね、

30メートルくらいの崖下など余裕ですよ。

よっこらせっと!


とはいえ、崖の下にも何かあるわけでもないでしょう。

何とか自前の足で移動できるだけの道があればよいのですが・・・。


 「おーい! なんかあったかぁ!?」

 「・・・気が早いですよ!!

 いま、降りてきたばかりでしょう!!」


まったくガルバはあんな気が短くてどうしようというのか?

それでも戦闘では頼りになるんですから、私たちのパーティーに彼は欠かす事など出来ません。


・・・それでも魔力の元には近づいた気がしますね。

いや・・・これ は




私の視界に、異物がありました。

とはいえ、そんな珍しいものではありません。

動物の死骸・・・。


骨だけです。


なんでしょうね?

ヤギかなにか?

この辺りに生息してるんでしょうか?

それはいいのです。

何故ここで死んでいるのか?

上から落ちてきて崖を登れなくて餓死したんでしょうか?

それとも怪我を負って?


ただもしこの獣が、何らかの他の生き物に捕食されたのなら、

私も警戒しないとなりません。


そうなると私の感覚機能はいやがうえにも高まります。

・・・道のようなものがある?

うっすらとですが。

その「ライン」だけ雑草の生え方が薄い・・・そんな感じでしょうか。

いえ、土の上だけではありません。

石畳のような地形もあるのですが、ある「ライン」だけ石の色が変化してるような・・・黒ずんでるというべきでしょうかね?

何かをひきずったような・・・。


 「みなさん、聞こえますかー!?」

 「おお! 聞こえてるぜー!!」

 「ちょっと気になるものを見つけましたので、

 静かにおねがいしまーす!!」

 「なんだよ、気になるものってー!?」

 「何かを動かした跡、ですかねー!

 またわかったら声をあげますよー!!」

 「りょーかいー! 気を付けろよーー!!」


あるラインを目で追うだけですからね、難しいことは何もありません。

時たまわかりづらくなってる箇所もありましたが、エアライドでちょっと上から確認するとはっきりします。

まぁ、魔物の接近に気を配るのが大変なだけなんですけどね。


そして・・・


あっさりと・・・というべきなんですかね?

私は見つけてしまったんですよ、


・・・その洞窟を。

その入り口を。


さすがにこれ以上は単独で進むわけにも参りません。

私は急いでみんなの所に戻って報告いたしました。


 「でかした! ロプロ!!

 おめぇはやるときはやる奴だと思ったぜ!!」

 「はぁ、調子がいいんですからねえ?

 それより皆さんはどうやってここまで降ります?

 さすがに皆さんの分までエアライドは作れませんよ?」


 「・・・問題ない。

 私がアースウォールを使う。」

 「最初からそれを使ってくれれば・・・。」

 「確実性のないものに魔力を使う訳にもいかんだろ・・・?」


テルミオンはアースウォールを階段状に作り上げ、三人で悠々と降りてきやがりました。

いや、これだけでも確かにかなりの魔力を使うんですけどね、

彼にはまだ余裕あるんですよ。


 「・・・なるほど、洞窟か・・・。」

 「おい、こいつはひょっとすると・・・。」

 「ライト。」


テルミオンの光魔術で洞窟の中を照らします。

・・・ひんやりしてますね・・・。


 「足元に水が流れているな。」

 「魔物や毒虫に気をつけろよ?」


時折ジャイアントバットが向かってきましたが、この辺りなら私たちの敵ではありません。

難なく排除してあげましょう。

こう、魔物とかじゃなくて、お宝の気配でもあるといいんですけどねぇ?


さてさて、どれくらい進んだでしょう?

ある曲がり角を境に、洞窟の風景が様変わりしました・・・。

 「む? なんだ、この壁は!?」

 「おおおっ!?」


テルミオンのライトに反射されて、洞窟の壁が輝き始めたのです。

 「これは・・・宝石か?」

 「いや、鉱物には違いないんだろうが、

 かなり純度の高い輝石を含有してるのではないか!?」

 「これ・・・砕いて持って帰るだけでも結構な儲けになるぞ!?」

 「ああ、そうですね、

 ガルバはドワーフでしたものね、

 鉱物には造詣があるのですよね?」

 「バカ野郎、こんなお宝の洞窟なんて見た事も聞いたこともねーわ!!

 ていうか・・・宝石・・・なのか、これ?」


その時です、

 「ガルバ! 上だ!!」

 「おおっとぉ!!」

頭上から何かが落ちてきました!!

 「スライムか!!」


頭の上にかぶさって来たようですが、ガルバはすぐに地面に叩きつけました。

迷う事もなくスライムの核を叩き潰します。

 「鮮やかですねぇ。」

 「ケッ、スライムごときにやられるかよ?」


 「・・・先に行こう・・・

 魔力の反応が高くなっている・・・。」


その後も魔物の襲撃はありました。

まぁ、魔物と言っても、私たちには何の脅威もないレベルです。

というか、倒しても素材や魔石も大した額にはなりません。

ダメージこそ溜まりませんが、ストレスの堪り具合が半端ない。

ドワーフのガルバはそのイライラを隠そうともしませんし、

レンジャーのライオットやハイエルフのテルミオンでさえ、眉間にしわを寄せています。


 「・・・これ、奥に何もなかったなら、オレは暴れまわるからな・・・!」

 「止めてください、ガルバ!!

 周りの鉱石を持ち帰ればいいでしょう!!

 調べないとわかりませんが、かなりの値打ちがあると思いますよ!?」


 「・・・お前、鑑定使えたろ?」

 「できますけどね、まずは奥にあるものを確かめるのが先ですよ。」


その後、洞窟は大きなカーブを描くようになりました。

いえ、カーブというより、蛇の身体のごとく右に左にウネウネと・・・。


そのうちやけに広い場所に出ました。

この先もまだあるのでしょうか?

それともここで行き止まりでしょうか・・・。



 「・・・おい、あれはなんだ・・・。」

 「え? 奥に・・・何か・・・。」

テルミオンがライトを消し、

より広範囲を明るくする、「ライトネス」を詠唱。

我々の周り広範囲に光が届きます・・・。


 「あ・・・」


・・・そこで我々の見たものは・・・



果たして彼らの出会いは何をもたらすのか・・・。

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