第百九十話 ぼっち妖魔は感謝する(おまけ画像有り)
物語ラストに登場【しない】人物紹介あります。
久しぶりにVRoid頑張りました。
驚くというより、半分呆れているかのような表情のキサキお祖母ちゃんである。
「本当に伊藤さんは面白い子だねぇ、
その存在も、その性質も・・・。
ウチの人も言ってたけど、何かあったらあたしたちを頼っておくれ。
・・・それよりゴッドアリア。」
いきなり話を振られたゴッドアリアさんは、食事を口の中に一杯詰め込んでいた。
まるでリスのように。
「ふがっ!?」
「あんたの気持ちもわからないでもないが、
伊藤さんは自分の目的をはっきりと持っている。
それに協力するのはいいけども、邪魔になるようなことだけはするんじゃないよ。
・・・友達ならなおさら・・・だ。」
「う、・・・ゴクンッ、げほっ、ゲホッ・・・はい。」
あたしをこの街に引き留める事だね。
ゴッドアリアさんも頭ではわかってる筈だ。
それに気持ちがついてこないんだろう。
「い、いや、わかってるよ、、
麻衣にだって、家族や友達がいるんだもんな、
そ、それはわかっているさ・・・。」
あ、すいません、友達はあまりいません。
「伊藤さんの家も女系家族と言ってたねぇ?
やっぱりお祖母さんかお母さんが家をしきっているのかい?」
キサキお祖母ちゃんの言葉に、隣でツァーリベルクさんが神妙な顔をしている。
あ、娘婿のキングストーンさんもだ。
でもその辺の説明どうしよ?
「えーと、かなり複雑なことになってまして・・・
二人ともすでにこの世にいないことになってます。」
ちょっと違うけど、まぁいいか。
「・・・すまなかった、立ち入り過ぎた質問だったようだねぇ。」
「いえ、大丈夫ですよ・・・。」
微妙な答え方をしてしまった。
その気になれば、いくらでも突っ込みが入るところだけど、
キサキお祖母ちゃんは遠慮してくれたようだ。
ここでもう一人の娘さんのロワイエルさんから何気なく・・・。
「では伊藤様はお父様と暮らしてらっしゃるのですか?」
「はい、あと、父や母が、とある邪悪な魔法使いから保護した二人の女の子と一緒に暮らしてます。
血は繋がってませんけど四人暮らしの家族のようなものです。」
「へぇ、そういうご両親がいたからこそ、伊藤さんのような子が育ったのかねぇ?」
キサキお祖母ちゃん、
そういう話は恥ずかしいのでやめて欲しい。
「でもそれは・・・そうじゃないと思いますよ。
目の前に困ってる人がいて、それを自分が助けられる状況なら、
誰でもそうするんじゃないんですかね?」
うん、あたしがこれまでに関わってきた人の中にもいっぱいいた筈だ。
勿論みんながみんなというつもりもないけれど。
「伊藤様はまだお若いのに、とても冷静にお話しなさるのですね、
それこそ成熟した大人の女性の話を聞いているようです。」
だからやめてくださいってば、ロワイエルさん、
人を分析しないでください。
「あー、いえ、それも遺伝のようなものです。
あまり感情が表に出ないだけで・・・。」
「本当に15、6の娘さんとは思えん。
いや、むしろ外見はもっと若く見えるのだが、
行動や考え方を聞いていると、どこかの高名な貴族の女主人でもと・・・。」
ツァーリベルクさんまで何を言っているのか。
これは褒められてるのか、さり気なくけなされているのかどっちだ。
悪意はないんだろうけど、
外見は子供に見えるけど中身は年増って言ってるのと同じだよね?
「ごめんなさいね、伊藤様、
わたしたちにも、エンジェとメサイアという娘たちがいるので、
親として、伊藤様のご両親が、どうやって伊藤様のような方を育てたのか興味があっただけなのですよ。」
「はぁ、と言われましても、
ウチは特殊ですからねぇ・・・。
基本的にはあたしの世界での一般家庭と変わらないと思いますけど・・・。
基本的には。」
「でも伊藤様にとってはご両親は素敵な方ではなくて?」
「・・・そうですね、
でもそれも・・・一般の子供たちが親に対して持つものと、そう変わらないと思いますし・・・。
強いて言えば・・・。」
「強いて言えば・・・?」
そう、強いて言えば。
「あたしは両親に関して言えば、特にあたしを産んでくれたこと、
育ててくれたこと、
・・・それと、さっきの邪悪な魔法使いに殺されそうになった時に命を救ってくれたこと、
それらについてはそれほど感謝とかしてないんですよ。
もちろん、普通にありがとうとは思うんですけど、
そんなの子供の親なら当たり前っていうか・・・。」
そんな主張、声を大にして言ったら怒られそうだよね。
でも正直な気持ちなんだ。
ママが最後の力を振り絞って悪霊を斬り伏せた時の事も、
意識ははっきりしていなかったけど、あたしの感知能力でその時の光景は視えていた。
あたしが悪霊の感染から解放された時、我に返った時にあった感情の津波も、
それはママに対して「ありがとう」といった感謝の念ではない。
一番大きかったのは、ママを永久に失った事への悲しみ・・・
テレパシーでママに呼び掛けても、返事が返ってくることは二度となかった。
何度も何度も呼びかけても。
そしてその後、思い知ったのは、
人形の身になってまでも、あたしのために、娘のために全てを掛けられた母親としてのママの意志の強さへの感動。
それらが交互に絡み合って、あたしの心の中で二つの感情が「解ける(ほどける)」事はなかった。
いや、・・・解く必要などないのではないか?
それらはあたしの心の中の強い芯となっている。
・・・それに・・・
恐らく子供を愛する母親なら同じことをするのではないか。
ここにいるキサキお祖母ちゃんだって、二人の娘を持つロワイエルさんだって、
いやいや、パパだって同じことしそうだし、ツァーリベルクさんもそうだろう。
だから。
「あたしは両親に対して、特に思う事はありません、
強いて言えば・・・
二人が互いに愛し合っていた事・・・
それをあたしに見せてくれたこと。
それがあたしが両親に対して感謝する事でしょうかね。」
パパがあたしを愛してくれていたとしても、
ママがあたしを愛してくれていたとしても、
二人がお互いを愛していなければ、今のあたしは存在しない。
二人が互いを愛していたからこそ、
人間と妖魔の中間たる伊藤麻衣は存在しているのだ。
たぶん、今のあたしの説明では、
あたしの言わんとしたことの意味は、半分しか皆さんに伝わっていないだろう。
あたしが妖魔とのハーフであることを知っているツァーリベルクさんならどうだろうかという所。
一度、ツァーリベルクさんと目が合ったけど、
どう思っているかな?
吸血鬼エドガーの時に話した内容を思い出してくれたろうか?
まぁそこまで他人に理解してもらおうとも思ってないしね。
あたしの言葉を、みなさんがどう解釈するかはそれぞれだ。
隣でゴッドアリアさんが考え込んでいる。
お父さんは、ゴッドアリアさんが5才の時に亡くなっていたんだっけ。
でも、お母さんの生き方から、二人の関係性はゴッドアリアさんにも見えていると思うのだけど。
うん、人の家族の形もだけど、それこそ人がどう解釈するのは様々だものね。
結局、この話は、
ロワイエルさんが「とても参考になる話を聞けて良かったですわ」と言った後に、
隣のキングストーンさんと目を合わせて意味深な笑みを浮かべて終わった。
その後もいろんな話をして、夕食会はお開きとなった。
その後、事務的な話で次にクィンティアさんの家にいつ行くのかという段取りだけ終らせて、
あたしたちは来た時と同じく馬車で送ってもらうわけだけども。
お屋敷の玄関で、
最後の最後にゴッドアリアさんが時限爆弾を発火させてしまった。
時限爆弾というのは、あたしも完全に忘れ切っていて、
たった今、あたしも思い出したという意味。
「そういえばさ、今ここで言うのもなんだけど、
吸血鬼のエドガーが言ってた魔人ってなんなんだろうな?」
これ以上、話を引っ張るなああああああああっ!!
☆ ☆ ☆ 登場【しない】人物紹介 ☆ ☆ ☆
エリナ・ウィヤード
中央アジアの少数民族出身、
村から行方不明になった「月の天使」に仕えるよう、幼少の頃から教育される。
念願叶い、日本の東京で「月の天使」こと斐山優一を見つけ、高校一年時は同じ家で暮らす事となる。
その後、優一を連れて自分の村に帰るわけだけども・・・。
いつか彼女の物語を語れる時が来るのだろうか・・・。
麻衣ちゃんのお話はここで一時終了。
魔人の話や、クィンティアお母さんの所へお邪魔する話も割愛します。
もともと今回のキサキお祖母ちゃんち訪問も、こんな長くするつもり全くなかったんですけど。
少年
「・・・それだけ?」
大地の底に眠る巨人
「あ? それだけって・・・?」
少年
「え、エリナは・・・出ないのか、この異世界に。」
大地の底に眠る巨人
「・・・出して欲しかったのか・・・?」
少年
「いや・・・そういうわけじゃ・・・。」
大地の底に眠る巨人
「・・・気持ちはわかるけどな・・・。」
次回・・・再び「泡の女神」!!