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第百八十七話 ぼっち妖魔は見届ける


 「二人とも楽にしておくれ・・・。」

ついにラスボスお祖母ちゃんの声が放たれた。


 「まずはうちの人を助けてくれてありがとうよ、

 異世界から来たんだって? 伊藤麻衣さん?」


ツァーリベルクさんには、あたしが異世界人であることを、みんなに話してもらって構わないと伝えてある。

さもないと、あたしの色々な能力を説明できなくなってしまうからだ。


 「あ、はい、こちらこそツァーリベルクさんには助けてもらいましたので・・・。」

 「いやいや、いくらうちの人でも一人で吸血鬼相手にして生き延びられる筈もないからね、

  あなたには感謝しても感謝しきれないよ・・・。」


その言葉に嘘はなさそうだ、

他のご家族からも感謝の念が飛んでくる。


 「個人的には異世界の話にも興味があるんでねぇ、

 なんならこの館に逗留してもらって、たくさん話を聞きたいところなんだけど、

 もう一つこの家のことで重大な話も出ちまったからねぇ?

 ええと、ゴッドアリアと言ったね、

 ・・・あんたがクィンティアの娘・・・なのかい?」


そこで話がゴッドアリアさんに飛ぶ。

果たしてこの話の終着点はどこになるのだろうか。



 「あ、あ、・・・あう、はい、は、はじめまして!

 さ、・・・さすらいの土魔術士ゴッドアリアです!!」


だからさすらうなと!

初っ端からかましてきたよ!

事前に釘差しておけばよかった!!

ていうか、今からでも遅くないかな?


 「すいません、こちらのゴッドアリアさん、

 山奥で育ったので友達が少ないらしくて・・・、

 いろいろ残念な言動しますけど気にしないでください。

 あたしは慣れましたけど。」


 「な! なんてことを言うんだ、麻衣っ!?」


その場に静かな空気が流れる・・・すべったかしら・・・。


けど次の瞬間、ツァーリベルクさんが噴き出した。

よし!

ナイスタイミングだ、お爺ちゃん!!

釣られるように若夫婦が笑い始めた。

子供たちは笑いポイントがどこかわからずに親のマネしてニコニコしているだけ。


・・・相変わらずキサキさんだけ目が笑ってない・・・怖いよ。



 「伊藤さん・・・。」

えっ? あたし!?

 「伊藤さんにはほんとうに色々お世話になったようだねぇ・・・。

 夫の事も、孫の事も・・・。」


 「い、いえ、本当に大したことは・・・。

 乗り掛かった舟というか、流れで・・・。」

 「きっかけや経緯はどうでもいいのさ。

 あなたがこの家に寄与してくれたことは、百の言葉でも感謝しきれない。

 ・・・ただ。」


うわ、きた。


 「クィンティアとその娘の事は話が別でね。」


ツァーリベルクさんにも若夫婦も緊張が高まった。

この館は完全にこのキサキお祖母ちゃんが支配しているのだろう。


 「いや、なに、

 この私にもクィンティアが元気なこと、

 それに孫娘がもう一人いたこと自体は喜ばしいのさ。

 一応、あれでもこの私がお腹を痛めて産んだ子だ。

 親としての愛は変わらないつもりだよ・・・。」


この言葉にも嘘はなさそうだ。


 「ただ、この家を飛び出していったのはクィンティア本人だ。

 それをいきなり孫娘だと、身元も怪しげな女性が現れたと言って、はいそうですかという訳にもいかない。

 そこで、ゴッドアリア・・・あなたに少しばかし確かめたいことがある。」



何を確かめるというのか、

若旦那の合図の元、

執事のマヌエルさんが扉を開けた。

 「では皆さま、恐れ入りますが庭園の方に足を運んでいただけますでしょうか。」


お庭で何かのイベントだろうか?

昼食会でも始まるような雰囲気ではない。

ツァーリベルクさんに聞きたいところだが、

いまやツァーリベルクさんは「あちら側」である。

その場に着くまで諦めるしかないだろう。


庭園というからには、花壇やらお花やら咲き乱れている事だろう、と思った。

けど、そこは違った。

確かにそういう綺麗なお花の並んでいる庭はあった。

けれどあたしたちはそのお花エリアを通り過ぎ、

まるで学校の狭い校庭のような、無味乾燥の何もない広場に出たのである。


 「なに、別に取って食おうっていうんじゃないさ。

 ゴッドアリア、あんた土魔法が得意なんだって?

 ならあんた自身でクィンティアの娘だという話を自分の手で証明して欲しいのさ。」


ああ、そう言う事か。

お母さんのクィンティアさんの魔力は規格外と言ってたもんね。

それを娘であるゴッドアリアさんも規格外である事を見せれば、

親子関係の強力な証明になる。


だが、その証明方法とやらは、あたしの予想を遥かに超えてきた。

 「いまからあたし達で強固なアースウォールを組み上げる。

 ゴッドアリア、あんたはストーンランスでその壁を貫いてみな。

 一枚でも貫けたら、お前を孫娘と認める。

 貫く事が出来なかったら、今後何が有ろうとあたしたちはお前を孫とは認めない。

 いいかい?」


なんと、キサキお祖母ちゃん、娘のロワイエルさんと孫のエンジェちゃん、メサイアちゃん共に4人がかりで呪文を唱え始めたよ!?

 「・・・よし、同調するよ・・・、枚数は3枚だ。

 タイミングを合わせなね?

 『アースウォール・硬! 硬!! 硬!!』」


うぉぉぉ、一気に三枚のアースウォールが出現した!!

大きさはそれほどでもないけど、硬さに特化した様子である。

これをゴッドアリアさんにぶち抜けということなのか。

あたしの見た感じ、かなりの魔力が込められていることが分かる。

さすがにこれだけの術となると・・・


今回あたしは何もしない。

何もできない。

主役はゴッドアリアさんだ。

そしてあたしは彼女を振り返るも、

どうやら杞憂だったようだ。


 「心配いらないよ! 麻衣!!

 アタイはやるぜ!!」


そうだったね、

土魔法はゴッドアリアさんの唯一の拠り所なんだ。

その土魔法で勝負を挑まれて逃げる人ではないよね。


 「そうですね、こういうところでゴッドアリアさんはやりすぎることはあっても、

 力不足を示した事なんて一度もありませんものね、

 思いっきりやっちゃっていいんじゃないですか?」


 「う? うう・・・、あ、アタイやるからな!!」


三枚のアースウォールの直線上で構えに入るゴッドアリアさん、

その手には例のニューフレイムゴッドアリア!!

ゴッドアリアさんの魔力は知っているけど、懸念があるとすれば、

このアースウォールはゴッドアリアさんの親族によって造り上げたもの、

その親族の造ったものにどれだけゴッドアリアさんの魔術は通用するのか・・・。


 「母なる大地よ、我が槍となりて敵を穿てっ!!

 ストーンランスっ!!」


迷いはないね、

魔力の変換もスムーズだ。

見せてもらいましょう、ゴッドアリアさんの全力を!!


瞬時にゴッドアリアさんの前方でストーンランス形成!!

 

 「・・・ほう。」

 「はっ、速いっ!?」

 「こ、この魔力はっ!?」

 「「うわあああ!?」」


ご親族の皆さんが驚いている。

でも驚くのはこの後にした方がいいでしょう。

そのまま一気にストーンランスが前方の壁に向かって発射っ!!


バゴバゴバゴォォォンッ!!


雷でも落ちたかのような破壊音!!

見事、ゴッドアリアさんのストーンランスは、アースウォールを・・・


を?


 「「「な、ななななななっ!?」」」


いちまーい・・・その後ろも・・・にまーい・・・、

そして最後の壁も・・・さんまーい・・・!


それどころか壁をぶち抜いただけに留まらず、アースウォールは3枚とも木っ端微塵に砕け落ちたのだ・・・!!


ゴッドアリアさん、威力上がってない!?

あ・・・エドガーとの戦いでゴッドアリアさんにも経験値入ったんだ!

単に魅了されて、麻痺されて床に寝っ転がってただけだと思ったけど、

よく考えたら、エドガーのどてっぱらに思いっきり激しいのをぶち込んでいたものね。


どれどれ、今のゴッドアリアさんの魔力は・・・

MP最大値852!?

ニューフレイムゴッドアリア装備で体感魔力2割増しとか言ってたから、

実質、魔力1000越えの威力で放ったことになるのかな!?


ご親族皆さんはもとより、ツァーリベルクさんまでもが驚く中、

ただ一人、キサキお祖母ちゃんだけが嬉しそうな声をあげる。

 「アッハッハッハ、こりゃあ凄いね!!

 クィンティアよりとてつもない魔力じゃないか!!

 お前たち、もうあたしに遠慮することないよ、

 認めよう、ゴッドアリア!

 あんたはこのあたしの孫さ!!」



良かった、どうやら合格の様である。

ゴッドアリアさんはどうだ! とばかりに素敵な笑みを浮かべ、

ツァーリベルクのお爺ちゃんはほっと一息ついたところであたしと視線が合う。

一瞬、微笑んでくれたようだけど、・・・あれ?

微妙に首を横に振られた?


何か落とし穴でもあるの?

 

まだ終わらない・・・!

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