表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
184/748

第百八十四話 ぼっち妖魔はお見舞いする

評価来ましたー!!

ありがとうございますー!!


・・・前回、話数を間違いました。

今回が184話です。


 「それでどうなんでしょう?

 決めるのはご本人たちの意思次第だとは思うんですけど、

 今現在、ゴッドアリアさんはキリオブールのダウンタウンで一人暮らしをなさってるんですよね。

 冒険者としても特にどこかのパーティーに参加するでもなく・・・。

 ゴッドアリアさんの年齢や能力を考えた場合、

 どこか彼女の後ろ盾のようなものがあったほうがいいと思うんですよ。」


能力というか、あの残念体質の弊害が起きた時、誰か庇ってあげる人もいないとね。


 「ま、麻衣・・・アタイのために・・・そんな。」


 「いや、伊藤殿、君の言わんとする事は良くわかるよ。

 私もゴッドアリアのために何とかしてやりたいのだが・・・。」



だが?


 「何か問題でもあるんですか?」

 「今の話を一般的に対応するなら、私の家にゴッドアリアを迎え入れることなんだろうが・・・

 その・・・私の妻と・・・娘は非常に・・・

 非常に、本当に、まさに母娘というべきくらい似たもの同士というか強情でね。

 クィンティアが出て行く時も、

 妻は妻で『この家に二度と帰ってくるな』と言い放ち、

 娘は娘で『こんな家、誰が帰ると思うか』と放言していったくらいなのだよ。

 もちろん孫のゴッドアリアにまで、妻はそんな態度を取らないとは思いたいが、

 心の準備をまずはさせておかないと・・・。」


うわぁ、めんどくさい事この上ない。


 「ツァーリベルクさんは娘さんのご結婚には反対されていたんです?」

 「反対と言えば反対だった。

 娘の結婚を祝福はしたかったが、何も明日の命も知れない冒険者を選ぶ必要がどこにあるのかと。

 少なくとも娘が結婚したい相手がいると言ってきた時に、

 私は娘の味方をできなかった・・・。」


ああ、それが一番最初にツァーリベルクさんをサイコメトリーかけた時に感じた「後悔」の正体か。

そして娘さんは、自分が選んだ相手以外、誰も味方がいなかったので、

誰にも知られない場所で生きていくことを選んだと。


・・・でも強い人だよね。

ゴッドアリアさんを産んで、間もないうちに愛する旦那さんを失って・・・

そこで実家に帰るでもなく、一人でゴッドアリアさんを育て上げたというのだから。

やってることはあたしたちリーリトに近い部分があるので素直に感心する。


ゴッドアリアさんが山を降りて、街で暮らすと言った時も、

一緒に行動する選択もあったはずだ。

それでもその人は、自分の家を動かずゴッドアリアさんを送り出した。

そして自分がされたように、娘を家に縛り付けることもせずに。


世の中のお母さんと言うものはこんな強い人ばっかりなのだろうか。



 「ゴッドアリアさん。」

 「な、なんだい、麻衣?」

 「ゴッドアリアさんが家を出る時、お母さんは何て言ったんですか?」


 「あ? ああ、

 そうだな、ニッコリ笑って・・・

 あんたの好きなようにやりなさいって、

 その代わり、逃げてここに帰ってくるんじゃないよとは言われたな。」


強くて厳しい~っ!


 「負けず嫌いのクィンティアらしい言葉だ・・・。」



 「それで、ツァーリベルクさん、

 ゴッドアリアさんの身の振り方なんですが。」

 「あ、ああ、なんならこの教会で便宜を図っても良い。

 館長に掛け合えば、私の地位でもだいたいは通せるだろう。」


さすがである。

 「それは良かったです。

 ・・・でも肝心な方の話がまだですね。」


 「う・・・妻の方だな・・・?」

 「ここらで若い頃の後悔を解消させてみたいと思いませんか?」

 「私に妻を説得しろというのか・・・。」



 「さっき言ったじゃないですか、

 種族が違うだけで誰もそれを責める事が出来ないって、

 ツァーリベルクさんご自身で。

 種族どころか身分や職業が違うくらいで、誰が責める権利を持っていると言うんですか?」


 「・・・あの会話はそれを狙っていたのか・・・。」


しばらくツァーリベルクさんはうつむいて考えこんでいたようだったが、

やがて頭を起こして決めたようだ。


 「いや、考える必要など何もなかった。

 よし、ゴッドアリア、後日私の屋敷に来てもらおう。

 妻を・・・お前のお祖母ちゃんを紹介したい!」


実は話に一番ついていけてなかったのがゴッドアリアさんだったりする。

無理もない。

ちょっと生き死にの冒険から生還したら、一緒に行動してた教会の偉い人が、自分のお爺ちゃんだったと聞いて、どんな反応すればいいのか。

・・・更に言うと、かなりあられもない姿をご披露してしまっている。

まあ、あのお爺ちゃんは、そういうところにデリカシーは持ってそうだから大丈夫か。



さて、話が一通り済んだ後に、

助け出された女の子たちの事も書いておこう。

ごくごく最近に被害に遭ったキャサリンさんも、エミリアさんも、

そこまで酷い状況ではない。

日常生活に不都合はないし、異常行動を取ることもない。

ただ、体内に混入している屍鬼的な毒素を完全に取り除かなければ、

再び、カラダは徐々に屍鬼に近づいていくのだという。


そしてさらに恐ろしいのは、普通の戦闘で掛ってしまうような状態異常なら、

同じくその場で掛けられるディスペルなどの呪文で解除できるのだが、

時間をかけて徐々にカラダの組織を変容させていってしまう屍鬼化は、

やはり長い時間をかけて治療していくしかないらしい。


 「え? ヒールとか回復呪文を掛けるだけじゃダメなんですか?」


あたしの正直な疑問に返って来たのは残酷な現実だ。

 「うむ、ヒールは体の回復を促す光の術だな。

 それを屍鬼化している体に施すとな・・・、

 屍鬼化した部分を中心に、そのカラダが壊死してしまうのだよ。

 そのダメージを帳消しにするぐらいのもっと強力な治癒呪文を使えばという方法論もあるにはあるのだが、その時の痛みに常人では耐えきれずに狂い死ぬこともあるという。」


 「うわぁ・・・厄介。」

 「そうなのだ。

 なので、治療法としては希釈した聖水を飲んで、少しずつ体内の毒素を清めていく、

 また同じく聖水を使ったプールで沐浴するといった地味な手段しか使えないのだ。

 ・・・その際も、患者にはある程度の苦痛が発生するのだが。」



それは大変だ・・・。

治療は出来るとはいえ、かなりの代償が必要のようだ。

そのために実社会から隔離・入院のような措置を取らないといけないわけか。


キャサリンさんとエミリアさんは相部屋で治療を受けていた。

症状が軽症とのことで治療コースも同じ程度のものになるらしい。

エミリアさんにはもう妹のユーノちゃんとお母さんが面会に来ていた。

 「あっ! お姉ちゃん!!」


 「ユーノちゃん、お母さん、こんばんは。

 エミリアさんの具合はどうですか?」


 「あ、あの、え、と、昨夜に、なるんですか?

 助けていただいて、ありがとうございます、

 昨日はたしか、あたしお礼も言えなかったようで・・・。」


当のエミリアさんは、まだ混乱している部分もあるようだ。

あたし達が解放した昨夜は魅了が解けたばかりで、状況判断もろくに出来ていなかった。

家族に会えて、説明を受けて、ようやく自分の身に何が起きていたのか把握したらしい。


 「大丈夫ですよ?

 お気になさらず、治療は長くなりそうですけど、見通しは良さそうですので安心してください。」


 「お姉ちゃん、ありがとう!!」

お母さんのほうが大変だった。

ユーノちゃんの純粋無垢の感謝の直後、いきなりあたしの手を掴んで瞳を潤ませてきたのだ。

それまで安堵の緩やかな感情だったのが、あたし達の訪問で一気に決壊してしまったと思われる。

 「ありがとう・・・ありがとう、

 よくエミリアを助けてくれて・・・、

 しかも相手は吸血鬼だったなんて・・・

 下手したら・・・発見がもっと遅かったらこの子は・・・。」


あ、いえ、確かに見たいのはこの涙だって、前に格好つけましたけどね、

・・・いやあ、気まずい。

人から感謝されるのに慣れてないわけで・・・。


でも良かった。

あたしは照れ隠しで周りに目を逸らすと、

反対側のベッドにいるキャサリンさんにも目が合ってしまった。

 「あ、あたしからもありがとうございます!

 あ、あと、なんかフェリシアにも気をつかってもらっちゃったみたいで!」

 

 「あ、い、いえ、そっちはついでみたいなもんですので・・・。」

なるほど、確かに顔立ちがねずみっぽい。

フェレットとどう違うのか、人によって議論が分かれるだろう。


ん?

誰ですか、お前が言うなって?

あたしが蛇みたいな顔だとでも?

なに? 蛙!?

何ふざけた事、言ってるんですか!?

よりにもよって蛙はないでしょう!!

確かにかわいいけど!

食べちゃいたいくらい可愛いけど!!

いくらなんでも年頃の女の子に蛙は失礼ですよ!!

絞め殺されたいですか、食い殺されたいですか?

お好きな方をどうぞ!

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
表紙
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ