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第百七十八話 ぼっち妖魔は変化(へんげ)する


先に言っておきますからね。

あたしはエドガーに魅了されてもないし、惚れてもいない。

単に先程のシーンが絵になるとしか思っていなかっただけ。


美形も、細マッチョも得点は高いと思うけど、さすがに真っ白な瞳は好みの外だ。

好みの外っていうか、多分本能的な意味での対象外だ。

・・・人化中だったら危なかったかもしれないけど。


そろそろあたしの事を昔から知っている皆さんも、

実はこの女、気が多すぎじゃね? とか思われるかもしれないけど、

よく考えてみて欲しい。


あたしは女子校生だ。

男の子や恋愛ネタでキャーキャー言って不自然なことは何もないお年頃でしょ?


え? ママはパパ一筋だったって?

いやいや、何を言ってるんですか、みなさん。

そりゃ、あたしだってこの人と決めた人がいるなら一筋になりますよ。

今現在、そんな相手いないんだからフリーに動きますよ、フリーに。


ていうか、あたしの場合、あたしの正体知っても動じない人を選ばなきゃいけないんだから、

真剣に探さざるを得ない。

むしろ死活問題なのだ。

あたしの境遇と覚悟を知っておいてから突っ込んで欲しい。


おっと現実に帰らないと。


 「貴様、伊藤殿から離れろ!

 ホーリーウォーターっ!!」

 「フッ、喰らわないよ!」


ツァーリベルクさんが聖水を放つと、エドガーはあたしのカラダを放して飛び上がった。

アースウォールの天辺に音もなく着地する。


・・・何も見えない筈なのに正確にあの位置に立てるという事は・・・

匂いではなく・・・音か。

もちろん、壁がどんな大きさでどんな距離にあるか把握できるのなら、

それはあたし達の言う聴覚ではなく・・・

恐らくもう一つの吸血鬼の特性だろうか。


あたしが真面目に考えてる間にエドガーはまたも童貞臭いことを言う。

 「・・・大人しそうに見えてとんだ食わせ者だ、麻衣。

 残念だよ、そうやって男を誘って来たのか・・・!?」


は? 人を淫乱女みたいに言わないでもらえる?


 「あー、麻衣、

 さてはこないだの男の人、食っちゃったんだぁ?

 やるわね、麻衣、隅におけなーい!」


 「ラミィさん! また誤解されるようなこと言わないでください!!

 食べるの意味が違います!!」


上を見上げるとまだエドガーが、「所詮、低劣な妖魔が・・・」とかなんとか言っている。

頭来た。


ていうか、また一つ理解した。

 「そういえば、ゴッドアリアさんは・・・何となくわかるけど・・・

 教会のキャサリンさんも、

 話に聞く限りの印象ではエミリアさんも、靴屋のメイジャさんも・・・

 エドガーさん!

 あなた他の男性を知らない女性しか相手できないんですか!?」


 「それこそ誤解を招く言い方をしないで欲しい!!

 僕の嗜好の問題だ!

 処女の生き血程、僕にとってそそられるものはないんだ!!」


経験者かそうでないかで味が変わるのだろうか?

どんな理屈で?

でも、実際、それで匂いを嗅ぎ分けられるというのなら、何か違いがあるのかもしれない。

いや、今はどうでもいい。


 「単に味の好みの問題なら、

 低劣とか経験そのもので差別する必要ないでしょ!!

 それこそエドガーさん!

 あなたが同族の女性と関係持ったら、その後、あなたは低俗な存在になるって言うんですか!?

 あなたの相手は低俗な存在に変わるんですか!!」


 「うっ・・・!

 うるさいっ!!

 余計なお世話だ!!」



今ここで考えることじゃないけど、宿屋のフローラさんが狙われなかった理由もわかった。

あの人がいなくなったら騒ぎになるとか保身のためじゃなかった。

たぶん、あの明るい性格は男の人もほっとかない。

つまりはそういう理由だ。

単にエドガーの攻略範囲外。



あたしは本来、口が上手い方じゃない。

他人と言い争いすると言い負かされる機会の方が多い。

そのあたしに反論できなくなった時点で、もう負ける気はしない。

マウント取らせてもらった。


例え妖魔の格が上でも魔力があたし以上でももう負けない。

 「エドガーさん!」


 「なんだ!?」

 「あなたの負けです!!」

 「は!? 何を言ってるんだ?

 僕は余力たっぷりだぞ?

 奥の手も残している!!」


 「そう言う事じゃありません!

 人間社会からも逃げ、

 大人の女性からも逃げ、

 自分の殻からも抜け出られないあなたに勝ち目はないと言ってるんです!!」


 「くっ、こ、この半端妖魔の分際でぇぇぇぇっっ!!」

再びあたしに襲い掛かろうと身構えたエドガーを、迎え撃つ形でラミィさんがストーンバレットを放つ!

エドガーは体勢を崩しかけたが、辛うじてストーンバレットを避けてアースウォールの向こうに消えた。


そう、あたし達より高い身体的ステータスを持っているくせに逃げる。

だからこそあたしには勝算があった。

 「ラミィさん! 協力を!!」

 「えー? それはいいけど、麻衣、

 まだ魔力持つのー?」


 「フッハッハッハ! 強がりは止したらどうだい?

 もう君の魔力もいっぱいいっぱいだろう?

 片や、僕はまだ半分も魔力を使ってないよ?

 君に勝ち目なんかある筈もない!!」


二人とも正確にあたしの余力を分析してるようだね。

でも!!


 「妖魔・・・変化!!」


 「あら?」

 「ぬ?」

 「伊藤殿!?」



この世界に来て初めての全能力解放!!

瞳の色が翡翠色から更に色素が変化!!

魔族たる黄金色へと近づいていく!!

髪は伸び、爪や牙もさらに伸びていく!!

そして皮膚は手触りも滑らかな鱗状に変わるのだ!!


ツァーリベルクさんに直視されなくて本当に良かった!!


そしてこの状態になった以上は尽き欠けていた魔力は増大!!

ただし、この後は何もしなくてもどんどん魔力は減っていく!

短期決戦!!


 「麻衣・・・それが君の奥の手か・・・。

 楽しいな・・・そして残念だ。

 君とはもっと語らいたかったよ・・・。」


こっちも色々と残念だったよ、エドガーさん。


でも、もう・・・引き返せないからね!!


 「しょうかんっ!!」


 「伊藤殿、まだあのフクロウを呼べるのか!?」


いつもの光が・・・って言いたいけど、

ダークネスの効果中の為か、その姿はあたしには見えない。

けど遠隔透視でその存在は確認できる。

それよりツァーリベルクさん、今の一言・・・ナイスアシスト。


 「フハハ、確かにフクロウは夜目が利くのだろう!

 けど、完全に暗闇と化したこの状態で僕が分かるのかい!?」


 「そしてツァーリベルクさん!

 1時の方向に聖水発射で!!」

 「む? わかった!! ホーリーウォーターっ!!」



 「一体何を!?

 僕のいる方角とは見当違いだぞ!?」


ホーリーウォーターの発射先・・・

それは何を隠そう、ラミィさんだ。

そして別にラミィさんはホーリーウォーターには何のダメージもない。

ただびしょ濡れになるだけだ!


 「はーい、じゃあ吸血鬼のお兄さん、いくわねー?」

ラミィさんの尻尾が床を激しく打ち付けながら、ラミィさん特攻!!


 「ほぅ! ラミア如きが直接、この僕に立ち向かうか!!」

 「うう~ん? ストーンバレットーっ!!

 あたしは立ち向かわないよー。」

 


エドガーはラミィさんのストーバレットを避ける。

そう、「避ける」。


眼で視認して避けるのではない、恐らくその耳で。

縦横無尽に避けるエドガーに、

さらにラミィさんはアースウォールまでをも交えつつエドガーを追い込む。

さぁどうする?


さらに逃げるか、それとも反撃するか・・・!


 「では僕も一枚手札を切ろう・・・!」



 「あっ!?」

 「伊藤殿、奴は何を!?」


遠隔透視で視えた!!

せ・・・背中からコウモリの羽根が!!


そしてエドガーが空中に浮き上がった!?

これ以上、エドガーに機動力が加わると?


いけない・・・

不味い展開だ・・・。


これ以上、時間を引き延ばすことは出来ない!

あたしの魔力が限界だ・・・・

ここで勝負をかけるよ!!






さて・・・次回で決着なるか?

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