表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
177/748

第百七十七話 ぼっち妖魔はロマンティックあげるよ


避けることのできなかった吸血鬼エドガーとの戦闘は続く。

現状、このエントランスホールの中は闇魔法ダークネスで真っ暗闇!

外への玄関及び玄関側の壁は、ゴッドアリアさんのアースウォールで塞がれている。

そしてあたしたちの姿を隠すように妖魔ラミアのラミィさんがこしらえたアースウォールが三枚。

そんな大規模のものでなく、幅2メートル程の壁をランダムに配置した感じだ。

高さはツァーリベルクさんの身長を十分カバーできるもの。

恐らく吸血鬼エドガーが、さっきの立ち位置にいたままなら、直線的な攻撃魔法を撃ってきても全て防げることだろう。

もっとも、さっきみたいな瞬間移動ばりの浮遊と魔法を使ってこられたら、あまり意味のあるシールドとも言えない。

プロテクションウォールより万能とも言ったけど、

プロテクションウォールは被術者の周り360度全て覆うのに対し、

アースウォールは目の前に壁を作るだけだ。

横からでも上からでも隙はあるし、本人が移動しても壁ごとついてきてくれることもない。

本当に防御呪文は種類によって特性がバラバラなのだ。


そしてこちらは苦痛に顔を歪めるツァーリベルクのお爺ちゃん、

退魔術とレイピアを持つアンデッドバスターだ。

僧侶系呪文も一通り覚えている。


妖魔蛇女ことラミアのラミィさん、

魅了スキル、麻痺爪スキルを持っているけど吸血鬼には通じないとのこと。

下半身蛇ならではの体術と土と水魔法を使えるが、

もうそろそろ召喚したあたしの魔力が尽きてくる頃なので、あと数分しかこの場に留められないだろう。


エドガーとラミィさん二人がかりで魅了をかけられたゴッドアリアさんは、

さらにラミィさんの麻痺爪によって現在行動不能。

なんかそういう状況って、よく昆虫の世界でエモノを麻痺させて、幼虫のエサにされる姿を思い出さずにはいられない。

おかしいね。

おっと、笑ってる場合じゃないな。

意識はあるからあたしたちの声のやり取りは聞こえているだろう。

そして戦闘の巻き添えを食わないように、さっきラミィさんがゴッドアリアさんの四方をアースウォールで固めておいた。

戦闘途中でエドガーが血を吸いに行ってパワーアップ! なんてこともあるからね。

リスクは減らしておかないと。


そしてあたしである。

闇魔法ペインを食らって体に激痛が走っているけど行動を阻害されるほどのものはない。

召喚術は、あと最大攻撃力を持つ蛇型魔獣のスネちゃんと、巨大ふくろうのふくちゃんを呼び出せる。

ただ、召喚術には多大の魔力を消費するから使いどころが肝心だ。


あたし自身の魔術としては、ユニークスキル「この子の七つのお祝いに」・・・

これは既に使った。

別に何度でも使えるスキルだが、吸血鬼にはレジストされる可能性の方が高い、

最早あてにはできない。

残るは虚術だが・・・虚術には敵にダメージを与える効果は一切ない。

ホントにバランス悪いよ、あたしのスキル。


 「くっ、伊藤殿、何も見えない・・・!

 私の傍に近寄るんだっ!!」


むぅ、ツァーリベルクさんは視えないか。

 「安心してください、ツァーリベルクさん、

 時計の文字盤はわかりますか?

 エドガーは今、10字の方向から近づいてきます!!」


 「「なっ!?」」

二人して驚くか、

そしてあたしの言葉を証明するかのようにラミィさんがその方角にストーンバレット!!

 「ぐっぉ!?」


当たったようだ。

エドガーは堪らず一度距離を取って遠ざかる。


 「伊藤殿、暗闇でも奴の接近がわかるのかっ!?」

 「感知スキルはあたしの十八番です!

 ラミィさんとて立派な妖魔です。

 暗闇なんて何の意味もありませんっ!!」」


 「ハハハ、これは一本取られた!

 麻衣! 君の能力を見くびっていたよ!

 なるほど、曲がりなりにも君も妖魔というわけかっ!」


声の感じからすると殆どダメージにはなってないか。

やっぱり遠距離からでは吸血鬼を倒す手段はないと言って良さそうだ。

さっき仕掛けた酩酊からも回復しているようだ。


 「ツァーリベルクさん、

 ダークネスの効果範囲内は全く光は届かないんですよね?

 吸血鬼の真眼とやらは、光の全くない場所でも機能するんでしょうか!?」


あたしの遠隔透視は眼で視る能力ではない。

だからその場に光は一切不要。

ただ、真眼が光を媒介にする能力なら真っ暗闇なら何も見えない筈なのだ。

多少なりとも光が存在するならその限りでないが。

夜行性のふくちゃんが、あたしのダークネスで行動不要になったように、

いま、この時点でエドガーがあたし達の姿を捉えられるというなら、

他にもエドガーは感知系スキルを持っていることになる。

 

 

一方、ラミィさんには熱源探知がある。

あたしには微妙に理解しづらい能力だけど、これがあるから接近する生物は全て把握できる。

・・・あれ?

そう言えば熱源探知って赤外線を利用するんだっけ?

赤外線て光の一種だよね?

・・・え、と、あれかな?

ダークネスって可視光線だけアウトにするってことでいいのかな?

うん、あたし理科とか物理とかあんま得意じゃないから。

ほら、あたし生物部だから微妙にジャンル違うんだ。


 「私も詳しくないが、目を使っている以上、光がない場所では何も見えない筈だ・・・!」


てことは、あたしのように遠隔透視を持っているか、

或いは異常聴覚か嗅覚か。



 「吸血鬼なら鼻も耳も特別製だわよ?

 それら全てを封じるのは麻衣にも難しいんじゃない?」

 「おお、ラミィさん、ありがとうございます!」


ううむ、耳の方はサイレンスで封じることも出来るけど、

それをやったところで、あまり勝算が増えるわけじゃないんだよね。

もちろん鼻の方も同様。

その気になればそっちも封じれるのだけど、

あたしの考えは他にある。


その時だ!

 「「あ!!っ」」

あたしとラミィさんが同時に反応した!!

吸血鬼の姿を見失ったのだ!!


否!!

見失ったというか、補足できなくなった!!

次の瞬間、あたしは誰かに抱きしめられたのだ!

高速移動か、

ヤバい! 今までエドガーは手を抜いていたんだ。

そう、吸血鬼の身体能力ならこんな簡単に距離を詰められる。


ラミィさんにしても、ツァーリベルクさんにしても魔法では対処できない。

そしてもちろんあたしでもだ!!


左の喉元にエドガーの甘美な吐息を感じる!


 「やあ、会いたかったよ、麻衣。

 これで君は僕のものだ・・・!」


息ができない程の抱擁!

魅了スキルは効かない筈なのに指先一本動かせない。

・・・でも、

あたしはリーリト!

あたしの意志が拒否する者にはこのカラダを好き放題にはさせませんっ!!


 ガッチィン!!


 「うっ!?」

ちょっと女子的にはどうかと思うかもしれないけど、

あたしは自分の牙でエドガーの牙を弾いていた。

エドガーも詰めが甘い。

この状況で抵抗された経験などないんだろう。

もっと顔と顔を密着させられていた状態なら、あたしは対抗できなかった。

多少なりとも距離があったおかげであたしは一度首を捻って、エドガーの牙があたしの喉元に届く前に自分から唇をぶつけに行った。


なんか初キッスを失敗して歯をぶつけあったカップルみたいな点のみ非常に恥ずい。

普通ならお互いの口元周りに唾液で湿るところだろうけど、実際この場はお互い唇が裂け、流れ出た血で濡れている。


ていうか、唇自体も触れている。

・・・悪くはない。

もともと、エドガーは美形だし、吸血鬼の身体能力のせいか細マッチョだし。

ちょっとドキドキした。


いえいえ・・・魅了されてませんよっ!?


一方、エドガー自体は意外だったみたいだね。


 「驚いた・・・!

 この状態からそんな抵抗を・・・。

 君の口にも牙が・・・。

 さすが異世界の妖魔だ・・・。」


 「どうです?

 本気であたしを堕としたくなったんじゃありませんか?」


うん、ただの強がり。

二人っきりでこんな状況なら、ある意味絵になるだろう。


・・・でもエドガー君は所詮童貞ぼーいだった。


 「・・・残念だ。」

 「はい? 何がですか?」


 「麻衣・・・きみ・・・。」

 「エドガーさん?」


 「この匂い・・・君は処女じゃないのかああああああっ!?」 


おい、こら、エドガー。

いろいろ台無しにしてくれやがったな。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
表紙
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ