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第百七十三話 ぼっち妖魔は必要以上に大声で驚く


なんか吸血鬼からラミィさんの魅了行為にクレームが飛んできた。

当のラミィさんは、腕を回してゴッドアリアさんの右の耳の中に指を入れてかき回している。

・・・ゴッドアリアさんは、必死に何かを我慢するような顔で真っ赤っか。

一方、ラミィさんは首をコロンと傾けて吸血鬼エドガーの言葉に疑問の?マークを浮かべる。


うん、あたしだってエドガーが何言い出したのか、すぐに理解できなかった。


 「僕の話が理解できないのか!?

 ラミアの君は、僕の『魅了』に対抗するために呼び出されたんだろう!?

 ならば同じスキル同士で、同じ土俵で勝負すべきでないのか!?

 そんな女の武器を使うのは卑怯極まりないぞ!!」


・・・えっと・・・

あ、ラミィさん、コテンと今度は首をあたしの方に向けてきた。

これは・・・ラミィさん呼んだのはあたしだから、あたしが話を付けろという事だね。

・・・なんかおかしな方向になってきたな。


 「あ、あのー、エドガーさん?」

あたしは階段の下から呼びかける。


 「なんだ、召喚士の少女よ!?」

 「あたしたち、さっきまで殺伐とした戦闘してましたよね?」

 「・・・早死にしたいなら、いますぐその喉元に牙を突き立ててあげるよ・・・

 でも、この僕に魅了勝負を挑んできた下劣な蛇女に種族の優劣を教えてあげるところなんだ、

 もう少し待ってもらいたいね。」


 「えーと、それなんですけど・・・。」

 「なんだね? 勝負のルール確認でもしたいのかい?」


いつから何の勝負になったんだ・・・。

 「あのー、あたし達のさっきの会話が聞こえてたかどうか知りませんけど、

 あたしたちはゴッドアリアさんを戦闘から隔離したいだけで、別にラミィさんが魅了できるかどうかはどうでもいいんですけど?」

 「それは君たちの目的であって、僕の目的じゃない。」


え、あ、それはそうだろうけど、

・・・なんか頭がおかしくなってきた。

こういうのはどうつっこめばいいんだ。


 「えーと、それはあなたの目的にあたし達が付き合う必要はないってことでいいんですよね?」


 「何を言ってるんだ!?

 この僕に勝負を挑んできたのは君らだろう!?

 今更なにを言い出すんだ、

 頭を冷やして考えてみるがいい!!」


何故にこっちが説教されるのか。

そろそろあたしも怒っていい頃かな。


 「そうですね、あなたに挑んだのはあたしたちですね、

 そこへあなたが『卑怯』にも魅了スキルを使ってあたしの友人を操ったわけですよね?」


 「卑怯・・・!?

 卑怯!? 卑怯!? 卑怯だと!?

 吸血鬼を侮辱するのも大概にしたらどうだ!?

 吸血と魅了は我が一族の誇りにして象徴だ!!

 君たちの目にどう映ろうが、これらの行為は崇高にして美しき行為なのだよ!!

 人間如きの価値基準で僕らの誇り高き行為を測ろうとするんじゃあないっ!!」


なるほど、そういう理屈か。

でも関係ないね。

 「ラミィさん、吸血鬼はそう言ってますけど?

 ラミア的にはどうなんですか?」


 「えー?

 ならあたしたちの性行為も崇高にして美しい行為だわよー?

 本来、こうやって男の人を誘惑するんだしー。」


やっぱりそうだよね、ダナンさんは危ないところだった。


あ、吸血鬼エドガーの眉がピクピクしてる。

 「・・・ふざけるなよ・・・。

 ラミア如きの低俗な行為をこの至高たる存在のヴァンパイアと同列に語るなど言語道断!!

 この僕自ら容赦なk」

 「あっあっそこダメっ! も、もう許してーっ! 」


 「・・・・・・。」

激高するエドガーのセリフの途中でゴッドアリアさんが悶絶していた。

エドガーのご高説の間もラミィさんは容赦なくゴッドアリアさんを攻めたてていたようだ。

ゴッドアリアさん、果たしてこの後、お嫁に行けるのだろうか?


 「この蛇女がああああああっ!!」

 「ねーねー、麻衣?

 あたし思ったんだけどー?」

切れかかったエドガーとほぼ同時に、ラミィさんが呑気にあたしに話しかける。


 「ラミィさん、どうしました?」

 「えっとさー、思ったんだけどー、

 この吸血鬼のお兄さんさー、

 ・・・なんか童貞くさくないー?」


 「ほわっと!?」

 


うわお、

さっきダナンさんの事を思い出したら、あの人みたいな反応をしてしまった。

けど、ラミィさんの分析は衝撃。

い、いえ、本来生き死にの戦闘をしている時にそんな分析はどうでもいいと言いたいところだけど、当の吸血鬼エドガーが、LPでもごっそりと削り取られでもしたかのような悲壮な表情を浮かべていた。


あれだけの女性に囲まれ、魅了でいくらでも女の子を好き放題出来そうな感じなのに、

蓋を開けてみたら、なんとまぁ「童貞」。


ちぇりーぼーい。

いえ、バカにするつもりなんてありませんよ?

ホントですよ?

ただただ意外だったもんで。

動物園で有名な動物の知られざる生態を初めて知ったようなそう言う感動。


あたしは声を大にして驚く。

声を大にしたのは他意があってのことではない。

単に広いエントランスホールの中に必要以上に大きくこだましただけだ。

 「童貞!?」


ラミィさんも首をこくこく上下に動かして再肯定。

 「うんうん、童貞童貞。」

 「ちぇりーぼーいですかっ!?」

 「いえす、ちぇりーぼーい、ちぇりーぼーい。」


ふと、隣で空気になっていたツァーリベルクさんに気づくと、

お爺さんはとても優しい目をして吸血鬼エドガーを見上げていた・・・。

 「・・・べ、別にそんな気にするものではないぞ?

 どんなモテ男とて、最初は誰でも童貞なのだ。

 それに君なら周りの女性がほっとかないだろう、すぐにそんな・・・」



 「やっかましいんだよぉぉぉ、おまえらぁぁぁぁぁっ!!

 僕をそんな可哀相なものを見る目でみるなぁあああああああああっ!!」


あ、壊れた。


 「童貞童貞って・・・仕方ないだろおおおおおお!?

 同族のバンパイアの女性なんて出会い自体滅多にないんだからさああああああっ!!

 僕らにとって人間の女性は食糧に過ぎないから性の対象じゃないんだよぉぉぉぉおおっ!!

 お前ら人間がサルと交尾するのか!?

 オークやゴブリンと性行為するのかよっ!?

 僕らにとって人間なんてそんなものなんだよっ!!

 むしろ人間と性行為したら吸血鬼として負けだろうがよおおおおおおっ!!」


うむうむ、理屈はなるほどだ。

そして同族に出会えないというのも十分に同情できる。

それは可哀相だ。


 「「でも童貞なんだよねぇぇぇ!?」」


 「うっがああああああああああああああっ!!」

隣でツァーリベルクのおじいちゃんが「き、君ら、もうそろそろやめてあげて」みたいにおろおろしていなさる。

あなたは身内が辱められたんですから、もっと怒っていいんですよ?


 「あ、ああっ、うう、エドガー様、

 あたしも・・・お互い初めて同士で・・・

 ダ、ダメ、ラミィ様、そっちはエドガー様の為に、・・・あっ、やっ!」


ゴッドアリアさんがいろいろとヤバすぎる。

これ、あたしにも責任あるのかな?

いいや、この先、何が起きても関知しないことにしよう。


 「ゴッドアリアアアアアアアッ!!

 君はそこのラミアにも魅了を掛けられているんだろうが、

 そいつは無視していいっ!!

 あっちの黒髪の小娘だけでもブチ殺せぇぇっ!!」


え? あたし?

ツァーリベルクさんが速攻でプロテクションシールドをかけてくれる。

今度はこっちの方が確実に早い。

でもゴッドアリアさんの呪文は・・・


 「はぁ、あンっ、は、母なる大地よ、・・・わ、我が槍となりて、て、敵を穿て・・・

 ス、ストーン・・・!」

 

息も絶え絶えに放った呪文に対処する時間は充分にあった。

けれど、今までの経験で分かる。

ツァーリベルクさんの防御呪文では、

ゴッドアリアさんの高威力土系魔術を防ぐ事など出来ない。

ここであたしが出来ることと言えば・・・!?


 「あー、ゴッドアリアちゃん、撃つのは向こうだよー?」

 「あっ、そ、そうか、ランスッ・・・! あれ!?」



あれ?


 「あれ・・・げっ ぐぼぁっ!?」

肉をえぐるような破壊音が聞こえてきたっ。


何が起きたの?

吸血鬼のカラダがくの字に折れ曲がり、口から大量の吐血をブチ撒いている。

・・・と、というかお腹をストーンランスが貫きっぱなしだ・・・。



ゴッドアリアさんが魔法を撃つ直前、

ラミィさんがゴッドアリアさんの目の前で、

指先をエドガーに向けてちょんちょん動かしたみたいである。

そしたら・・・

ゴッドアリアさん、何に釣られたのか、

吸血鬼に向けて何の殺意も持たずにストーンランスをぶち込んでしまったようなのである。


・・・やっちゃったな、ゴッドアリアさん・・・


こんなところで残念ドジ魔女っ子の本領を発揮してしまったというわけか・・・。

味方の時じゃなくて本当に良かった・・・。




 「ぐ、ほぁあ、ゴ、ゴッドアリアァァアァ・・・!?」

 「きゃあああああああ、エドガー様あぁぁぁっ!?」


 

エドガーさん、なんか可哀相になってきた・・・。

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