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第百六十七話 ぼっち妖魔は説教される

ぶっくま、ありがとうございます!!

 

屍鬼グール・・・!

この異世界で出会うのは初めてだ。


今まであたしが見たことあるアンデッド系の魔物はゾンビとスケルトンのみ。

近似種としてはゾンビが最も近いけど、屍鬼との最大の違いは、知能の有無という話だ。

ゾンビには本能としての食欲しか備わっていないけど、

屍鬼は人間同様の生活や会話ができる。


・・・ただしそれらは全てフェイク。

普通の食事をするフリ、睡眠するフリ、人と交流するフリ、

もちろん、見る人が見れば見破れるのがほとんどらしい。

けど、人との接近を避ければ、遠目に見る限りは誰もその人間が屍鬼だとはわかるまい。


そして今、あたし達の前にいる屍鬼は・・・!


フードの下の顔は透視するまでもない、生前の顔が腐り落ちたそれであり、

口から出る言葉もぎこちない。

歩き方もよく見れば不自然だし、何より近寄れば肉の腐り始めた匂いがするのだ。

 「伊藤殿、後ろへ!!」


言われずともすぐにあたしはツァーリベルクさんの背後に回る。

どうやらツァーリベルクさんは戦闘態勢ばっちりのようだ。

 「覚悟するがいい!

 屍鬼が人間のフリをして街中に潜んでいるのを、司祭であるこの私が看過する事などできんぞ!?」


 「・・・ぐ、きょ、教会の人間でし、たか、

 そ、れなら、隠し事、できま、せんな。

 仰る、とおり、私は屍鬼・・・それで?」



え? それでと来たよ?


  「こ、こはエドガー様の所有する、屋敷、

 そ、して私は、エドガー様に、仕える屍鬼、

 そこ、へあなたがたは強引に、おし、いり、問答無用、に、暴力行為を?」


うわ、まさかアンデッドに法を説かれるとか!?

た、確かに相手に知能がある以上、相手を悪と決めつけるわけにはいかないか・・・。


基本的にこの世界では魔物に人権も法律もない。

発見次第即討伐したとして、その人を罰することもないそうだ。

ただし、テイムされていたり、ちゃんとした人の隷属化にある場合は、その主人の持ち物として扱われる。

・・・確かにそうじゃないとあたしのスネちゃんも討伐されかねない。


あたしはツァーリベルクさんに視線を送る。

さすがにちょっと戸惑ってるようだね。


 「・・・なるほど、気を急ぎ過ぎたらしい。

 だが、この子がこの屋敷にふらふらとゴッドアリアという少女が入っていく姿を見ている。

 そちらの方の申し開きは出来るのかね?」


 「し、知りませんな、

 他人の空似では?

 もし、おうた、がいなら、官憲を連れ、て正規の手続、きで、昼、間に来て、ください、

 だい、たい、こん、な時間に、非常識、だと思わない、んです、か?」


ううう・・・アンデッドに常識を説かれるなんて・・・。

途切れ途切れに出てくる言葉が、また無性に腹立たしい。


だけどね、引き下がるわけにはいかないんだよ。

はい、もういっちょ遠隔透視!

・・・いた!!


 「ああ、ゴッドアリアさん二階にいますね、

 奥の階段登って右側の通路の奥・・・より一つ前のお部屋かな?

 立派な寝室だね、

 一緒にいるのは・・・花屋のエドガーさん、

 今のところは無事・・・か。」


途端に慌てる姿の屍鬼。

 「あ、なたは・・何を!?」


そこであたしはドヤ顔を・・・じゃなくて笑み浮かべる。

 「これでも巫女職なんですよ、

 そしてあたしのスキルに遠隔透視があるからね?

 敷地全体に隠蔽結界張った所で、中に入っちゃえばあたしの目から逃れることなんて出来ませんので。

 ・・・ああ、同じフロアに別の女性が何人かいますね。

 今まで同様の手口で拐かした人たちかな?」


どうやら、殺されたり奴隷に売り飛ばされたりはしてないようだ。

行方不明のエミリアさんやキャサリンさんだろうか?

あたしが会った事ない人達なので、人物の照合までは出来ないけど、最悪の事態は避けられたと見ていいのかな?


そこはツァーリベルクさんも少し安心できたようだ。


 「さて、もう惚けても無駄だと理解したかね?

 まだ知らんぷりし続けても構わないが、こちらには確証があるのでね、

 ここから先は実力行使させてもらうが?」


どうやらツァーリベルクさんも腹をくくってくれたらしい。

例え一般的に証拠と言われるようなものがなくても、あたしの能力を信用してくれるという訳だ。

さて屍鬼の反応は?


 「・・・ぐ・・・、な、らば、エドガー様に話して、ください、

 私では、どう、にもなりま、せんので・・・。」


お?

彼はあたしたちを屋敷の中に招き入れた。


エントランスに罠らしきものもないし、他に人間(アンデッド含める)もいない。

屍鬼はぎこちない動きであたし達の前に立ち、二階への正面階段へと向かう。


 「エドガー殿は若い女性を集めて何をしているのだ?」

ツァーリベルクさんは肝心な話を始めるが、この屍鬼は一切話す気はないようだ。

 「そ、それも直、接お聞きになるが、よろしいか、と。」


ところが、エントランスの中央あたりで、屍鬼の様子に変化が起こる。

急にこいつは足を止めたのだ。

ふん、

あたしに害意を隠せると思っているのか。

 「ツァーリベルクさん、来ます!!」

 「む!?」


 「お、思い、出した、

 エド、ガー様には女たち、のことを調べる、者がいたら、始、末して良いと、言われ、たのだ・・・。」

  

言うが早いがそいつは襲い掛かって来た!!

知能が有るとは言え、記憶力がいいと言うわけでも頭の回転が速いわけではないということかな。

けど殺意を沸かせた瞬間、それはあたしの感知で拾えるという事!


顔のベールが外れて醜い口蓋が開かれる!!

攻撃対象はあたしじゃない。

不揃いの汚い歯がツァーリベルクさんを齧り取ろうとしている!!



 「ふん!! クロスピアッシング!!」


速っ!?

目にも止まららぬとはこの事!

ツァーリベルクさんは全く臆することなく腰のレイピアを連続突き!!


でもあたしがダンジョンで戦ったゾンビには刺突攻撃は効果が薄いようだった。

屍鬼にそれが通じるのだろうか!?

確かに攻撃を受けたことで屍鬼の足は止まったけど・・・ダメージには・・・


 「ぐっ、ぐはっ!?

 こ、あこの、攻撃・・・!?」

お、これは、効いてる!?


 「これでも私はアンデッドバスターでな、

 ミスリル銀のレイピアに聖属性を付加した攻撃は、アンデッドの貴様にとってかなりの苦痛だろう?」


おおっ!!



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