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第百六十五話 ぼっち妖魔は敵を見定める

評価ありがとうございますーーーっ!!


前にゴッドアリアさんの家に行ったときにそんなものはなかった。

本人も貧乏で花を買う余裕もなかったと言っている。


あのお花屋さんで買ったものなのか?


猛烈に嫌な予感がするぞ!?



あたしは遠隔透視をゴッドアリアさん本人に向ける!

結界などのようなもので隠されていない限り、絶対に姿は見失わない。


・・・見つけた!!

でも、どこを歩いているの!?

さすがにこの街に1ヶ月近く暮らしているとはいえ、遠隔透視のぼんやりした景色では、場所を特定することは困難だ。

しかも今は真夜中である。

昼間記憶している風景と一致させるのはさらに難しい・・・!


そして何よりも・・・

ゴッドアリアさんの足取りはまるで夢遊病者の様・・・。

たぶん、直接いまのゴッドアリアさんを鑑定したら、何らかの状態異常が表示されるはずだ。




これはあたし一人でどうにかできるとは思えない。


今度の依頼、もし戦闘行為があるなら、あたしは密かにゴッドアリアさんに攻撃役を担ってもらおうと思っていたのだけれど、そのゴッドアリアさんが先に狙われるとは!


・・・ならこの街で一番頼りがいがありそうな・・・あの人・・・


遠隔透視ぃっ!!


あれ!?

弾かれたぁぁぁあっ!?


布袋さーん!!

酷ぃいいいっ!

着信拒否ですかああああっ!!


ううう、

・・・まぁ、そもそもこの街に留まっているかもわからない。


仕方ない、

順当にツァーリベルクさんにお願いしよう。


あ、夜中ってあの人、教会にいるのかな?

それとも自分の家に帰っているのだろうか?


お?

いたいた、見つけた。

この部屋の風景は・・・うん、教会のベッドっぽいね。


よし! 真夜中に申し訳ないが突撃をかます。

なんでそんな慌てているのかって?


ゴッドアリアさんが遠隔透視で姿が見えなくなったからだ。

最後に視えた風景は、街外れの大きなお屋敷の前だ。

その門がゆっくりと開き、ふらふらゴッドアリアさんがその敷地に足を踏み入れた途端、

ゴッドアリアさんの姿が消えたのだ。


つまりその敷地自体が結界に包まれている。


その気になれば、その結界自体を強引に突き破る手段もあるのだけど、

いろんな意味で危険が大きいからやりたくない。



まずは教会の扉を乱暴に叩く。

 「やぶんにすみませーん!!

 ここを開けてくださーい!!」


夜中なんだから、みんな寝ているのだろう、

反応がない。

それでも叫ぶ、ガンガン扉を叩く。

手遅れになってからでは遅すぎる。


ようやく誰か出てきてくれたようだ。

知った顔だと嬉しいのだけど、さすがにそんな都合良くはいかない。


 「・・・はい、こんな夜更けにどうなさいました・・・?」


夜中に教会のドアをガンガン叩かれて、どんな異常事態かと多少は緊張してたであろう、若いシスターの人が、寝ぼけた目をこすりながらも、慎重に扉を開けてきた。


 「この教会のキャサリンさんたちを攫った犯人を特定しました!!

 ・・・そしてあたしの友人が今、攫われかけています!!

 ツァーリベルクさんを呼んできてください!!」


仰天したシスターさんはすぐにツァーリベルクさんを呼んできてくれた。

寝起きのようだが、顔だけでも洗って来たのだろう、目はしゃっきりしている。

 「伊藤殿、待たせたようだな、

 犯人を特定したとは本当かね!?」


 「こんな時間にすみません、

 まだ人物までは絞れてませんが、友人のゴッドアリアさんが今、現在進行形でふらふらとある屋敷に引き寄せられています。

 その屋敷は結界に覆われていて、もうあたしの能力では中を窺い知ることは出来ません!」


 「の、能力!?

 伊藤殿・・・その能力とは・・・!?」


驚くよね、そんな反則的な能力。

でもここで出し惜しみしている時間はない。

 「遠隔透視です!

 離れていても特定の人物・場所を見通せるスキルです!!」


 「そんなものがあったのか・・・。

 ん? では・・・例の花屋か・・・。

 彼を透視することも出来るのか!?」


それは・・・


 「可能ですが・・・怖いのでしたくありません・・・。」

 「怖い・・・とは?」

 「相手に感知スキルがあった場合、あたしが覗いてることがバレてしまうんです。

 その時に、悪想念をぶつけられるとあたしの無防備な精神にダメージを食らう恐れがあるのです。」


 「なるほど、その力も万能ではない・・・のだね。」



まったくだよ。

だから相手をよく知っているか、害意のない人間にしか使えない。

それよりもだ。


 「それと・・・以前、キャサリンさんが買ってきたお花ってまだどこかに残ってますか!?」


それは夜中に起こされたシスターの人が覚えていた。

かなり時間が経っていたので、明日には他の花と取り換えるところだったという。

危なかった。


シスターの人が持ってきてくれた花瓶の中の花は、

すでに元気がなくなりつつあって、花弁にも皴が現れ、恐らく元は綺麗な赤みを帯びていたかもしれないが、今はその鮮やかさも失われ始めている。



 「この花か?

 たしかに萎れかけ始めているが、何の変哲もない花ではないか?」


うん、あたしもそう思う。

でも今は・・・念のために精神障壁を強めに掛けておく。

その上で花瓶に刺さったままのお花に手を触れ・・・

思えば最初に家を訪ねた、エミリアさんの所で同じことをしていればもっと早く・・・。


 「・・・ギルティ・・・ッ!」


 「い、伊藤殿、何かわかったのかね!?」


 「このお花に・・・強烈な暗示が込めてあります・・・。

 それこそお花に触れるたびに、あのお花屋・・・エドガーを思い出させるように・・・。

 そして少しずつ精神を侵食・・・。」


特定の屋敷の風景も刻まれていた。

恐らくこの術に取り込まれた人間は、無意識のうちにあの館にまで足を延ばすように仕組まれているのかも知れない。


 「で、では、伊藤殿、キャサリンもゴッドアリア嬢も、この花に・・・魅了、いや催眠か!?」

 「恐らくですが、スキルとして魅了や催眠を使ったわけじゃないようです。

 誘拐犯はステータス上に状態異常が現れない方法で、彼女達を操ってるんだと思います!」


これはかなり巧妙な手段だ。

女の子が一人の男性にお熱をあげていても状態異常とはならない。

また継続的に、しかも強制でも何でもなく手を触れるところに暗示を与える何かがあっても、それも状態異常にはならない。


ただ・・・意識の薄い間・・・すなわち睡眠状態から半覚醒の今なら、なにがしかの状態異常とはなっているだろう。

実際に鑑定してみないとわからないが、魅了、催眠でないとしたら「夢遊」とでもなるのであろうか?


今まで明け方に女の子がいなくなったケースも、その時間に特定の意味があったわけではない。

おそらく、たまたま寝ぼけて意識が薄い状態に術の効果が表れる仕組みなんだろう。



では何故、宿屋のフローラさんの時は、花になんのイメージもなかったのか。

それは恐らく、花屋のエドガーが、フローラさんをターゲットにしなかった為。


理由までは正確に測る術はないが、宿屋の看板娘であるフローラさんに何かあったら騒ぎが大きくなると思ったのだろうか?


確かに外で働いてもいない民家の娘なら、騒ぎが広まりにくいというのはあるだろう。

まぁ、こっちの詮索は後回し!


 「それで一刻も早くゴッドアリアさんを助けに行きたくて!!」


後、分からないのは犯人の目的か。

いたずら目的か、奴隷として売り捌く為か、

・・・考えたくないのはもっと恐ろしい目的。


 「わかった!

 ならさっそく馬車を用意しよう!

 おまえは館長を叩き起こせ!」

ツァーリベルクさんはシスターの人に指示を出す。

 「は、はい! わかりました!」


 「それで、伊藤殿は場所が分かるのか!?」


うっ・・・


 「ゴッドアリアさんの家から向かったルートは指定できます・・・。

 でも具体的な住所とか、建物の所有者が誰のかとかは・・・。」


 「よし、ではお前はフェリシアも起こしてきなさい、

 伝言役として連れて行こう。

 ・・・そして伊藤殿、

 昨日、君の剣となり盾となるとは言ったが・・・。」

 「はい・・・。」

 「相手の正体は・・・」



 「相手が人間なら高い魔力を持った人物・・・

 もしくはかなり上位の魔物の可能性があります・・・。」


 「危険だな・・・冒険者ギルドを通せば最低でもBランク案件だ。

 下手をするとそれ以上・・・かもな。」


Bランクならツァーリベルクさんは依頼を受ける権利を持っているけどあたしでは無理だ。

そしてさらに言うと、敵がAランク相当ならあたし達では受注すらできない。

ていうか、そんな手続きを待っている暇がない。


 「ついてきてくれますか!?」


 「・・・伊藤殿の目の光は全く臆することがないのだな、

 よかろう! この爺の命を使うがいい!!」


あたしはバトルジャンキーでもないし、避けられる戦いなら極力関わらないようにしてきた。

でも、立ち向かわねばならない相手からは一度も逃げたことはない。


必ずケリをつける。



 

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