第百六十三話 ぼっち妖魔は諭す(おまけ画像有)
ぶっくまありがとうございます!
今回、物語本文の下におまけがあります。
パタパタとフェリシアさんが帰って来た。
「あ、お待たせしました!
館長にも伝えてきましたよ!
くれぐれも気を付けて行ってきてくれとのことです!」
「おお、すまんな、フェリシア。
ではさっそく行こうか。」
結局あたし達は3人連れで中央市場に向かう。
ご存知のように、
あたしは人付き合いがいい方でないので、昨夜ツァーリベルクさんと夕食を共にしたとは言え、まだ間を繋ぐ会話に困るシーンが多い。
・・・さっきの件もあると余計に。
ところがフェリシアさんはむしろ誰とでも仲良くなるタイプみたい、
緊張しながらでもあたしにいろいろ話しかけてきてくれた。
「・・それでキャサリンたら、みんなで止めた方がいいって言ってるのに、夢を見るのは自由だ、なんて言うんですよー?
そりゃ、憧れるだけなら自由ですけどねー、
あの子の場合、行動に移しちゃってるから始末に負えないんですよねー?」
うーん、これは微妙だなー、
仕方ない、少し誘導するか・・・。
「キャサリンさんて、その・・・言い方悪いですけど、あまり人付き合いのうまい方ではなかった?」
案の定、フェリシアさんは嬉しそうに顔を綻ばせた。
「あはっ、わかりますかぁ?
彼女、なんか自分の世界に閉じこもっちゃうタイプなんですよー、
あと、ちょっとからかうと反応が面白くてっ。
ネズミっぽい顔立ちしてるからそれを言うと、自分はネズミじゃない、フェレットだってむきになっちゃったりとかぁ・・・」
そこでツァーリベルクさんが会話に割り込んできた。
さすがに見かねたみたいだね。
「フェリシア、いい加減にしないか!
君はまさか獣人を差別する人間だったのかね!?」
「はっ!? あ、い、いえ!
す、すいません! 誤解です!!
自分はそんなつもりじゃ・・・!?」
あらら?
自分が取り返しのつかない言葉を使っちゃったのを理解したのか、
しょぼーんと、あからさまに元気がなくなっちゃった?
うーん、反省するのはいいけど、これからの仕事の事考えると、立ち直ってもらわないといけないしなぁ。
ツァーリベルクさんは、聞く耳など持たぬとばかりにさっさと前を歩いていってしまった。
よっぽど機嫌を損ねたようだ。
あたしの隣で涙目になったフェリシアさんが「違うのにぃ・・・」とぶつぶつ呟いてる。
うーん、自業自得な気はするけど、話振ったのはあたしだからなぁ・・・。
「フェリシアさん、・・・あの内緒にしておきますけど、
そんなにキャサリンさんの事、嫌いだったんですか?」
別に質問に他意はなかったんだけど、問われたフェリシアさんはとんでもないとばかりに首を振る。
「そんなことありません!!
そりゃ、要領悪い子だなとかいろいろ思う事はありますけど、
ほんとに嫌いだったら、みんなで構うこと自体ないですよっ!!」
どうなんだろうね?
こればっかりは、その状況を直接見るか、本人の立場になってみないとわかんないんだよね。
「さっき違うって言ってたのは・・・?」
「わたし、獣人差別なんかしませんっ・・・!
そりゃ誤解を招きそうな発言だったのはわかりますけど・・・、
単純にあの子の顔が面白かったから、ついついあの時はみんなで・・・。」
「どっちにしても年頃の女の子に、顔の事で何か言うのは傷つくんじゃないですかね?」
「・・・あ・・・、そ、そうですよね・・・。
あたし、なんてことを・・・。」
本気で反省してるのは伝わって来たよ。
あたしも人の事言えないけど、社会経験、人生経験少ない10代の子じゃ、いろいろ間違いをするもんなんだろう。
「キャサリンさんがどこ行ったか、気になります?」
「は、はい! ぶ、無事だといいと思ってます!!」
「なら、必ず見つけますので、その時謝ってあげてください・・・。」
「う・・・はい、わかりました・・・。」
あたしはフェリシアさんにハンカチを渡して、小走りでツァーリベルクさんに追いつく。
「フェリシアさん、反省してるみたいですよ・・・、
本気で悪意はなかったみたいです。
次にキャサリンさんに会ったら謝るって言ってました。」
「・・・どうも伊藤殿には世話になりっぱなしなような気がするな・・・。
身内のゴタゴタにまで気を使ってもらって申し訳ない気持ちでいっぱいだ。」
「女の子同士じゃよくあることですよ。」
「そうなのか、男同士だと疎遠になるか、殴り合いかどっちかだからなぁ。」
そうなんですか!?
それは極端な例じゃないんですか!?
おっと、そんな会話をしているうちに市場が見えてきましたよ。
後ろに離れてしまったフェリシアさんが追いつくのを待ってから、あたしは声をかける。
「・・・大丈夫ですか?」
「は、はい、すいません、お見苦しいものを・・・。」
「それは気にしなくて大丈夫です。
じゃあ行きましょうか?」
そしてあたしは再びあの光景を目撃する。
今日も女性連中は逞しい。
ツァーリベルクさんは信じられないものでも見たかのように口が開いている・・・。
フェリシアさんは・・・
あ、彼女は事前知識があったのかな?
「あ、あたしらは前に、キャサリンが騒ぐ花屋さんがどんな美形なのか、一度見に来たんで・・・。」
「フェリシアさんはそこまで騒ぐようなルックスでもないと思います?」
「あー、えー美形だとは思いますよ?
でもあたし、マッチョの方が好きなんで。」
なるほど、それは人それぞれだね。
つまり、失踪したキャサリンさんなら、二年前あたし達を弄んでくれやがったあの「天使」くん、
そして、このフェリシアさんは、同じく二年前あたし達を助けてくれた、あのおっきな「お兄さん」派になるということだろう。
「おや? いらっしゃいませ、
昨日も来てくれましたよね?
あれ・・・今日はブロンドの女の子はいないんですね。」
やっぱり覚えられてたか。
あたしみたいな顔は珍しいだろうしなぁ。
「ああ、昨日一緒に来た子は、今日具合が悪いんで、
それで今日は別のメンバーを・・・。」
「それは心配ですね、
お見舞いの花なら見繕いますよ?」
「あ、いえ、大したことないんですよ、それより・・・。」
そこであたしはツァーリベルクさんを見上げる。
「いやいや、私には花の事はそんな詳しくないぞ。
お前たちで決めなさい。」
おっと、もう打ち合わせ通りにしようってことだね?
「おや、何かお困りごとでも?」
「あ、いえ、あたしたち、教会に住んでるんですけど、
そろそろ敷地の花の植え替えでもしようかということになって・・・、
こちらでは花の種なんかも扱ってます?」
このタイミングで教会関係者である事をわからせる。
「教会」の名前を出した後で、このエドガーさんの反応を見たい。
「ああ、もちろん、ありますよ?
すでに花が咲いているのも、そちらにありますから、
実物を見て選んでください。
種はテントの中にストックしてありますから、ご希望通りに揃えられると思いますよ?」
うーん、怪しいところが全くない。
強いて言えば、今もふらついてるので、いつ倒れるんじゃないかとひやひやしている。
「そういえば・・・。」
「以前、キャサリンもこの花屋を贔屓にしていると言わなかったかね?」
ツァーリベルクさんとフェリシアさんとで、それっぽい発言をする。
あたしは黙って、花屋のエドガーさんの反応を観察だ。
「ああ、そういえばそうでしたっけ?
花屋さん、うちのキャサリンって子知ってます?
よくこちらにお邪魔してたって話なんですけどぉ?」
「・・・えーっと、・・・キャサリンさん?
ごめんなさい、さすがに買い物に来てくれただけの子だと、お名前までは一々聞かないので・・・。」
一瞬、花屋のエドガーさんは反応した気がする。
でもそれだけだ。
隙と言えるほどのものでもない。
「こちらなんかどうです?
パンパンジー、これから寒くなってきても綺麗に咲きますよ?
後はフクロクジュソウとかもいいですねぇ?」
なんなんだ、その美味しそうな名前は?
思わずよだれが出そうになったぞ?
あと、その後のはフクジュソウとまた違うのだろうか?
「あー、そういえばパンパンジーは教会の花壇にありませんでしたね、
司祭様、それでよろしいですか?」
「うむ、お前たちがそう決めたのならいいだろう。
店主、おいくらかね?」
「あ、はい、ありがとうございます、
いま、テントの中に在庫がありますので持ってきますね、
ええっと、種の方だと、お値段が・・・。」
金銭の受け渡しはあたしが行った。
その瞬間に肌に接触できるかと思ったからだ。
ただ実際は、サイコメトリー出来るほどの時間は稼げなかった。
掌に触れる事自体は出来たのだけど、あたしの中に何の情報も入ってはこなかったのである。
ストーリーには関係ありませんが、
たくさんのご評価に謝意を述べたく3D Vroid製麻衣ちゃん画像を上げます。
「レディ メリーの物語」でも画像つけてますが、
こっちの方ではメリーさんとのツーショットだけでしたので。
上の制服改造した方はVRM Live Viewerで撮ったやつです。
しばらく遊んでいないうちにクリスタルステージが実装されていました。