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第百六十話 ぼっち妖魔は教会を訪ねる


気を取り直してあたしたちは教会へとお邪魔する。

 「はい、いらっしゃいませ、この度はどのよう、な・・・?」


シスターらしき人があたし達を出迎える。

あんまり場慣れしている雰囲気ではなかったので、ツァーリベルクさんの言うところの見習いシスターなのかもしれない。

 

いや、この場は単に狼狽えてると言った方がいいのかな?


 「あ、あの、そちらの方は、ど、どうなさいましたか?

 おぐしが大変なことに・・・!?」


見るとゴッドアリアさんの髪が爆発したみたいになっている。

ううん? 正気に戻すためにフクロウのふくちゃんに襲わせただけだよ。

あ~あ、また髪の毛が減っちゃったね?


 「・・・ううう、グスン、ヒック、ヒック・・・」


うん、泣いても容赦しないから。

 「だいじょぶです、気にしないでください、

 いつものことですので。」


 「は・・・はぁ。」

 「あ、それで司祭のツァーリベルク様はいらっしゃいますか?

 冒険者の伊藤が来たと言えばお分かりになるかと・・・。」

 「あ、冒険者のっ!

 はい、すぐお呼びします!!」


どうやら話は伝わっていたようだ。

すぐに案内の人が来て、入り口の棟を離れて別の建物へと向かう。

教会というだけあって建物すべてが白いイメージだ。


 「おう、待っていたよ、伊藤殿、

 おや? そちらの女性は?」


いつの間にかあたしは伊藤殿と呼ばれていた。

まぁ、毎回、お嬢ちゃんて呼ばれるのもなんだかね?


 「あ、こちら同じ冒険者のゴッドアリアさんです。

 あたしのパシリ・・・いえ、一時的なパーティーです。」


 「麻衣・・・なんかアタイの評価がどんどん下落しているような・・・。」


ん? これ以上、下がることがあると思っているのだろうか?


 「そ、そうかね、

 それでギルドで話を聞いてこられたんだね?」

 「ええ、事務的な話は。」


そこでここでは、行方不明になった見習いシスターのお話を聞くつもりだった。

念のために先程の花屋さんの話もしておいた。


あまり疑う点はなかったと話したのだけど、ツァーリベルクさんは何か思うところがったようだ。

 「・・・花・・・か、む?」

 「あれ? 何か気になるところでも?」


 「いや、気になると言えば、この教会でもいたるところに花壇があるので、

 いろいろ人の通る場所に花は活けてあるのだが。」


そうだね、別に違和感なく見過ごしていたけど?


 「行方不明になった見習いの子が、一時期、教会の敷地でなく、別の場所から花を買ってきて・・・別に花を飾るのに敷地の中の花を使わねばならない決まりはないから、大きな話にはならなかったのだがね、

 同じシスターの中で一時期もめていたと記憶が・・・、

 おい、誰かいるかね!?」


そこでツァーリベルクさんが席を立って、他の人を呼んでいた。

 「ああ、失踪したキャサリンと同期の子がいたな、

 ああ、そうそう、フェリシアがいたか、

 ちょっとこちらに呼んでくれるかな?」



すぐにシスター見習いの子が・・・あ、さっきの受付の子だ。

ベールの脇から赤茶けた髪が見える素直そうな印象だね。


 「は、はい、お呼びでしょうか、フェリシアと申します。」

 「うむ、お勤め中、すまんな。

 いなくなったキャサリンのことで聞きたいことがあってな。」

 「あ、はい、キャサリンの・・・、はい。」


 「彼女が一時、教会の外の花にこだわってた時があったろう?」

 「ああ、ええ、・・・あれですかぁ?」


なんか含んだ表情浮かべたな?

素直そうと思ったけど、裏でいろいろ考え込むタイプかもしれない。


 「ああ、アレは確か、中央市場のお花屋さんにぞっこんだったんですよぉ!

 みんなでお花屋さんに憧れるのはいいけど、見るだけにしときなさいって言ったんですけどねぇ?」


 「えええええ!?」

ここであの花屋さん!?


 「ちょ、ちょっと待ちたまえ?

 キャサリンがいなくなった時、そんな話は聞いとらんぞ!?」

 「えっ、だ、だって、みんなでアレは誘拐だって・・・、

 それにいくらなんでも、あんなお花屋さんにフラフラついていくような子でもないし、

 向こうにしたって、あんな病弱そうじゃあ、キャサリンを匿ったり閉じ込めたりとか出来ないですよ!?」


とは言え、いくらなんでも偶然が重なりすぎる。

花屋さんなんて、この大きなキリオブールの街に、それこそ沢山あるだろう。

いくら人気店と言ったって、ここまで一つの店に集中するなんて考えられない。


 「伊藤殿、昨日私に対して行った鑑定では、その花屋は怪しいところはなかったのだな?」


ギクリ!!


 「あ、はい・・・あ、いえ?」

 「む? どうしたんだ?」

 「さすがに花を見に来たというていで、あたしが花屋さんのカラダに触れるのは不自然だったので、あたしが行ったのは遠目からの鑑定だけです。」

 「それは直接肌を触れての鑑定とは効果が異なると?」


ああ、これ、どう言えばいいんだろ?

あたしもよくわかってないんだよね?


 「え・・・と、鑑定スキルはいわゆるパーソナルデータって言うんですかね?

 名前とかレベルとか職業、種族とかがわかります。

 例えば花屋というのは仮の姿で、実は奴隷商だったり、

 あるいは病弱に見せかけて、女の子を力ずくで誘拐するような人なら、

 何らかの不自然なステータスが見えるかと思ったんですよ。

 ・・・でも実際、あのエドガーという花屋さんの鑑定結果は怪しいように見えませんでした。」


 「ではカラダに触れての鑑定は?」

 「ああ、すいません、実を言うとアレは鑑定ではありません。

 あたしはサイコメトリーと呼んでいる能力です。

 人や物に触れてその術を使うと、目には見えない色々な情報が見えてくる能力です。

 ・・・例えばその人が心に囚われてる思いとか・・・。」


ツァーリベルクさんが一度静かになった。

そりゃびっくりするよね。

気分だって良くないだろう。

ツァーリベルクさんは、しばらく何も言えないような表情だったけど、やがてあたしの顔をマジマジと見つめてきて口を開いた。


 「・・・心の中まで読めるのかね?」

 「いえいえ、そんな大それた能力じゃありませんよ?

 例えばツァーリベルクさんに触れて視えたのは『後悔』のイメージだけです。

 具体的に何に対してそんな思いがあるのかまでは全く・・・。」


 「・・・後悔。」

 「すいません、それでもご気分を害されたでしょうね、申し訳ありません・・・。」

 「い、いや、それは気にするな、

 状況が状況だしな、何よりも優先すべきは行方不明の少女たちの安否だろうとも。」


いい人だな。

戸惑ってはいるようだけど言葉を偽っている様子はない。

ここらで話を戻そう。

 「一度、あの花屋さん、確かエドガーさんでしたね、

 どうにかじっくり調べた方がよさそうですね・・・。」



でも何かしっくりこないな・・・。


あたしの能力が万能でないことは、過去の経験で痛いほどよくわかってる。

でもここまで怪しい情報が出てこないというのも、釈然としない。

花屋に手掛かりはある。

でもエドガーさん自体は無実?


この二つを成立させる別の答えでもあるのだろうか?


 



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