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第百五十九話 ぼっち妖魔は花屋に行く

ぶっくまありがとうございます!


・・・下書きのストックが・・・いや、明日は休日!!

書き溜めるぞ!


 「はぁーい、伊藤様、おかえりなさませー!

 お食事はどうされますかぁー!?」


このノリのいいフロントの女性は、あたしがずーっと連泊している宿のフローラさんだ。

たぶん、年の頃19あたりか、

あたしより年上でも、えらそうにせず、普通に同世代感覚で声をかけてくる気持ちの良い人だ。

 「あ、今夜は他で食べてきたので、このまま部屋に戻ります。」

 「はーい、りょうかいしましたー。

 ベッドメイキングは終わってますからねー、ごゆっくりー!!」


まぁ、もう三週間以上も泊まってるからね、かなり打ち解けている気はする。

あ、そう言えば・・・。


 「フローラさん、ここのフロントのお花、いつも綺麗ですよね? 

 定期的に変えてるんですか?」

 「あはっ! 気づいてくれた?

 ありがとう!! 毎週変えてるんだよ!

 それがさっ、花屋のお兄さんがかっこよくって!!

 いつも取り換えにきてくれるんだけどさ!

 なんかこう儚いイメージの人でたまらないんだよねーっ!」


お仕事的な会話と、

雑談とで喋り方を変えてくる。

ある意味、自分なりのポリシーを持って働いてる感じなんだよね、この人。


 「へーっ、憧れの人なんですか?」

 「あはは、そこまでじゃないんだけどね、

 でもお店行くと、結構その人のファンの子が多いらしいんだわ、

 もうお花が目的じゃなくて、その人に会いにいくためにお花買ってる子もいるんだって!」


へ、へー、それは重度だな・・・。


ん?

花・・・か?

そう言えば、今日行った家のうち二軒は飾られていたな。


既にこの時、あたしは何らかの予感を得ていたのかもしれない。

少し気になったので花の方に触れてみた。

 「あれ? どうしたのー?」

 「あ、いえ、すいません、

 ちょっと今、受けてるクエストに何か関係あるかなと・・・。」



・・・特に何もない。

いや、全く視えなかったわけじゃない。

たぶん、この花を取り換えに来た人の見た景色だろう。

頭に浮かんだ映像の中に、ここでも明るく振る舞ってるフローラさんの笑顔が見える。

・・・でもそれだけだ。


花屋さんは男の人らしいから、フローラさんを見て、

特別な願望を浮かべることくらいは仕方ないとも思っていたが、

それすら何もない・・・興味がないっていうかくらい淡白なイメージだった。


まぁ、女性に不自由してない人ならそんなものかもしれないか。


 「なにかわかったー?」

 「あ、いえ、特になにも・・・。

 一応、この花屋さんの住所教えてもらえますか?」


あくまで念のためだ。

この先、何があるかわからないのだから。





そして翌日、冒険者ギルドにて。

 「あ、伊藤様、いらっしゃるのをお待ちしてました!」


こまめに依頼をクリアしているのと、特徴的な外見のあたしは、

もはやギルドの受付嬢みなさまに顔を覚えられてしまっている。

まぁ、こーゆー時は話が早くていいけどさ。


 「・・・おはようございます、もしかして教会の方のお話ですか?」

 「あ、そ、そうなんです、

 もしかしてもう会われたんですか?」

 「ツァーリベルクさんなら、昨夜お話を・・・。」


 「そうでしたか、

 もしよろしければ情報の擦り合わせなどをしたいので・・・。」


あたしは別室で話を聞いた。

特に真新しい情報はない。

無論、行方不明になった教会の見習いシスターを見つけたら報奨金が増えるよ。

やったね、麻衣ちゃん。


一応、昨日、3軒の家に聞き取りに行った話は担当の受付嬢に報告しておく。

 「では今日は残りの2件にお話を?」

それでもいいんだけどね。


 「いえ、後程ツァーリベルクさんの教会に行こうと思ってます。

 そちらの方も最近のお話らしいので。

 ・・・それと。」


 「それと・・・なんでしょうか?」

 「ギルドの方では被害者の女性たちに、共通の趣味のようなものがあったかどうかは把握されてます?」


受付嬢のお姉さんは目を見開いた。

 「い、いえ、こちらでも依頼の時の聞き取りでも、過去の冒険者からもそのような話は・・・あるんですか!?」

 「まだ確証はないです。

 なのでこれから・・・確かめに行こうかと。」


 「今の段階で私たちがそれを聞くことは?」

 「さすがにまだ『気になる』程度なので。

 今日、少しでも根拠になるようなものがあったら報告しますよ。」


気になるとあたしが言ってるのは無論、花屋さんである。

でもさっきのサイコメトリーではシロだった。


あの時点で花屋さんが宿屋のフローラさんに邪念を抱いていたのであれば、

あたしももっと疑いを深くしていただろう。


だからあたしが万一にと考えているのは、花屋さんそのものはシロでも、

何か手掛かりがあるかもという程度である。


そしてギルドの別室を出て、さぁ出かけようかというところで、

依頼ボードの前で、見知った顔を見つけたのである。


 「あっ! ま、麻衣!!」


見なかったことにしよう。



 「な、なんでアタイの顔見て逃げるんだよ!?」

 「しまった、見つかったか・・・。」

おなじみゴッドアリアさんです。


 「まるでアタイを避けてるみたいじゃないかっ!」

 「いえ、そういうわけじゃないんですけどね・・・。」


冒険者ギルドでしばらく彼女の姿を見なかった。

理由は知っている。

そして今、ここに来た理由も。


すぐにゴッドアリアさんは締まらない笑顔を浮かべて、これ見よがしに右手の杖をいじり始めたのだ。

 「ああ、今日は右手が重いなぁ・・・どうしちゃったのかなぁ!?」


うざ。

次に会ったら絶対こうなるだろうなぁと思っていた。

 「完成したんですね・・・。」


 「うっひゃあ! わかるかい麻衣!!

 そう、気づいちゃったぁ!?

 これがロックワームの魔石を使った新しい杖!!

 ニューフレイム・ゴッドアリアさ!!」


自分の杖に名前つけたのか・・・。

いや、っていうか、ニューフレイムってこの杖の属性は土じゃなかったの!?

フレイムは火でしょ!?

おかしい! いろいろおかしい!!


 「これさえあれば、オーガでもワイバーンでもアタイの敵じゃ・・・あたたたた!?」


周囲から白い視線の集中砲火を食らったあたしは、ゴッドアリアさんの耳を捕まえてギルドを後にした。




 「ちょ、ちょっと麻衣! アタイは依頼を・・・!」

 「ああ、そうだ、ゴッドアリアさん。」


そこで引っ張っていた耳を放してあげる。

ゴッドアリアさんの白い肌に片方の耳だけ真っ赤っかだね。

青い瞳の両目が涙ぐんでるけど。


 「な、なんだよ!?」

 「パーティー組みましょうか?」


 「えええええっ!?」



あたしは今受注しているクエストの概要を彼女に話してみた。

魔物の討伐のように、ドロップ品や素材と言ったボーナス的なものはないけども、

あたしには散々世話になってる筈なので、まさか嫌とは言うまい。


 「も、もちろん、やらせてもらうさ!

 麻衣がそんなにアタイを頼りにしてくれるなんてな!!」


いえ、頼りにはしてません。

雑用とか伝言係くらいはできるでしょ?


ツァーリベルクさんのいる教会に行く前に、例の花屋さんを覗いてみようと思った。

徒歩でそこまで辿り着く間に、ゴッドアリアさんに、あたしの懸念と退魔士のツァーリベルクさんの事は話しておいた。


 「へぇー、アンデッドバスターか、アタイも見た事ないや?

 一度でいいからアンデッドを浄化するところ見てみたいな?」


ああ、そうか、魔法で物理的に魔物をやっつけるのと違う概念なのかな?

そう言われるとあたしも興味あるな。



噂の花屋さんはキリオブールの中央市場でお店を開いていた。

お店と言っても、その市場には大きなテントががいくつも並んで建っていて、

その内の一つ一つが独立した商店なのだ。

テントの前はかなりのスペースをロープで仕切って、お隣さんと区画表示がはっきりわかるようにしている。


日の当たるスペースには日光に強い鉢植えや観葉植物が並べられ、

テントの奥は反対に陽の光を嫌う植物やお会計の場所となっているのであろう。


・・・それはいいけども。


 「・・・凄い。」


アイドルの出待ちかとでもいうように、若い女の子が溢れていた・・・。

うん、たまに若くないお方や、性別が・・・え? と思うようなお方もいらっしゃったけども、確かに繁盛しているようだ。

みんなお花より従業員の人にハートマーク飛ばしている。


ていうか、お花屋さん一人だけ?

お客さん、捌けるの?


見ると・・・・あー、あー、あれは確かに・・・。

どこの少女漫画から抜け出てきたの?

とでもいうような、線の細い・・・顎のラインも細い病弱そうな高身長の方が、

フラフラしながら女性たちを相手に一生懸命接客をしていた。


うん、バックがお星さまどころでなく、まさしくお花が見えるよ!!

 「・・・はい、こちらです、アンネ様、いつもありがとうございます・・・。」



あ、あの奥さん、お花を受け取るときにさり気なく、花屋のお兄さんの手を握りしめている。


・・・二秒・・・三秒・・・長い!

後ろに控えている若い女の子がイライラしているぞ!?


マダムは名残惜しそうな笑みを浮かべて去って行った。

お花屋のお兄さんは・・・複雑そうな表情だな。

でもすぐに切り替えてるのか、次のお客さんの相手をしている。


あたしたちはお店の外で、そんな様子を眺めていた。


 「ゴッドアリアさん、こんな人気のお花屋さん、知ってました?」

 「い、いや、アタイはホラ、花を買う余裕なかったし・・・。」


あと、ぼっちでしたもんね。


 「おや、いらっしゃいませ、どうぞ店内に気軽にお立ち寄りください?」


そんなあたし達に気付いたのか、お花屋さんは気さくに声をかけてきた。

あ、え、と、どうしようかな?

 「あ、ありがとうございます、

 あの・・・お客さんいっぱいで、大変そうな・・・

 あと顔色も・・・大丈夫ですか?」


 「え? ・・・ああ、心配してくれるんですね、

 はは、大丈夫、慣れてますので。

 何か探してるお花とかあったら、声をかけてくださいね。

 テントの中にもたくさんあるから、ご自由にみてってください。」


ああ、宿屋のフローラさんの言ってた儚そうな笑顔って奴だ。

これは耐性のない子はあっという間に堕ちるでしょう。


ここでこっそり鑑定してみた。

・・・もしかして弾かれるかと思ったけど無事に鑑定できたようだ。


エドガー・グリース 23才 男性(状態 貧血)

レベル7

種族・・・ヒューマン

職業・・・花屋



・・・シロだったか。

いや、ここでいうシロというのは、あの布袋さんの言ってた高い魔力の方の話だ。

もしとんでもない魔力持ちならあたしの鑑定が弾かれると思ったからだ。

でもまだ誘拐犯の方の疑いまでは晴れたわけじゃない。


でもなぁ、こんな病弱そうお兄さんが誘拐なんて無理だよね?

あっ、ていうか貧血!?


 「慣れてるって・・・ぐ、具合悪そうですけど・・・。」

 「うん、だいじょうぶ、自分の体調は把握してますよ、

 いつも午後三時くらいでお店しまうから・・・。」


それでやってけるのか・・・。

あっ、お花屋さんがふらつく度に黄色い悲鳴が。



とりあえず、見るものは見た。

なんか振出しに戻った感じはするけども、他の手掛かりを探した方がいいか・・・。


 「ゴッドアリアさん、そろそろ・・・。」


そこであたしは信じられないものを見た。

・・・もう全てを放り投げ出したい・・・。


え? 何が起きたのかって?

聞いてくださいよ、


あろうことか、ゴッドアリアさんの目がハートマークになっていたのだ・・・!!



 

一話につき3000字程度でいいかなと思うのですが、

キリがいいところで終わらせようと思うとついつい・・・。


次回! 初っ端から!! 召喚術起動!!

「ふくちゃん、襲えーっ!!」


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